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第2章
24.私と彼女の暇つぶし
家族全員で昼食を取った後、私は自室へ戻った。
父が居るのなら下手なことは出来ず、仕方がないから暇つぶしにそこらへんにあった教材を手に取った。
「お嬢様、ティータイムでございます」
いつの間にか、15時のティータイムになっていた。
ということは2時間も教材とにらめっこしていたのか。
「ありがとうミリア」
勉強机から円卓のテーブルセットへ移動する。
いつものように流れるような動作でミリアが紅茶を用意してくれる。
椅子に腰かけ、しばし紅茶を楽しんだ。
「あら、おいしいわね」
こういう紅茶や花は好きなのだけれど、いくつになってもどれがどういう種類のものなのかが覚えられない。
きっとそういうものを覚える器官が壊滅的に駄目になっているのだろう。
だからもう覚える気を失くしていた。そして面倒臭がりのミリアも、私だけのときは今日入れた紅茶の銘柄など運んでいるうちに忘れてしまっているのだろう。
いつからか、種類も告げなくなった。
私が紅茶を飲んでいる間、暇なミリアはそこらへんを見渡しながら話題を探っている。
面倒臭がりのくせに暇な時間が嫌いと言う若干矛盾の含んだ彼女の性格は熟知していた。
と、どうやら私の机を見てそれを見つけたようだ。
「お嬢様、課題でもなさっていたのですか?参考書がいくつも広げられていますが」
いつもは理路整然としている机の上がごちゃっとしていたるのだから、確かに誰でも疑問に思うかもしれない。
「いいえ、課題はもう終わったわ。あれはお兄様から借りた教材よ」
私は紅茶受けのクッキーに手を伸ばした。
一口サイズに作られたクッキーを口に頬張り、クッキーを飲み込んだところで紅茶を飲む。
やはり、この組み合わせは最高においしい。
「グレス様から?拝見してもよろしいですか?」
「えぇ、別に構わないけど」
何を思ったのか、ミリアは広げられた教材を手にとり、頁をぱらぱらとめくる。
結局面白いものが何もなかったのだろう。つまらなさそうな顔をして教材を閉じた。
最後に表紙を見て、彼女はぎょっとした顔になる。
「お、お嬢様、これ大学の教材じゃないですか」
「そうだけど、どうしたの?」
帯にそう書いてあるのを見たのだろう。
珍しく驚いている彼女は貴重だ。しかし、びっくりした顔もきれいなんて反則じゃあないかしら。
「グレス様も優秀だと言われておりますが、これは……。お嬢様、生まれる性別を間違えてませんか?」
「あなた……。よくそんな失礼なことを躊躇いもせず私に言えるわね」
普通の使用人だったら口が裂けても言わない。
そしておそらく、普通の令嬢だったら今すぐ解雇しているだろう。
しかし私たちはどちらも普通じゃない。
性格に難ありのネジがぶっ飛んだ二人なのだ。
ちょっとした暴言を吐かれてもどうとも思わない。
……自分でいっていて少しへこみはするけどね。
それにしても、そんなに驚くこともないだろう。
「あなた、私の前世が誰だか知っているでしょう?」
「えぇ、存じておりますが」
彼女とは3年前に知り合ってから、寮に入るまでほとんど私付きの使用人のような扱いをしてきた。
故に何かの拍子で私の前世がバレたことがあった。
しかし、当の彼女の反応といえば。
『前世ですか。本当にいるんですね、そういう人。悪逆皇帝?なんですかそれ。お嬢様ってそんなに悪い事したんですか?』
と、まるで世間話をするような軽さで受け止めた。
その後、私の前世の事を調べて知ったようだが、別にどうとも思わなかったらしい。
全く態度を変えない彼女に、ここまで達観した人間がいるのかと度肝を抜かれたほどである。
(当人である私でさえ、不眠症になるほど深刻に思い詰めていたのに)
そんな彼女が恐ろしいというか羨ましいというか。
まぁ、そんな風になりたいとは思わないけれど。
「王様だということは、それなりの知識を持っていて当然なのよ。小さい頃から英才教育を受けていたのだから、その記憶を、持っているなら
それぐらいできても当然よ。当然」
「お嬢様……」
まるで傲慢な人間を見たように嫌悪感を隠しもせず、じとーっとした目で私を見つめる。
見損なったとでも言いたげなその目に、誤解のないように反論する。
「別にこれは他の人を貶めているわけではなくて!つまり、その、カンニングしているようなもってことよ!」
「あぁ、確かにそう言われれば納得です」
ポンと納得したように手を打った。
全くこの使用人は。
どうしてこう捻くれているのやら。
まぁ、これぐらいで怒らないわよ。
怒らないけど、覚えてはいるのだからね。
覚悟していてほしいものよ。
父が居るのなら下手なことは出来ず、仕方がないから暇つぶしにそこらへんにあった教材を手に取った。
「お嬢様、ティータイムでございます」
いつの間にか、15時のティータイムになっていた。
ということは2時間も教材とにらめっこしていたのか。
「ありがとうミリア」
勉強机から円卓のテーブルセットへ移動する。
いつものように流れるような動作でミリアが紅茶を用意してくれる。
椅子に腰かけ、しばし紅茶を楽しんだ。
「あら、おいしいわね」
こういう紅茶や花は好きなのだけれど、いくつになってもどれがどういう種類のものなのかが覚えられない。
きっとそういうものを覚える器官が壊滅的に駄目になっているのだろう。
だからもう覚える気を失くしていた。そして面倒臭がりのミリアも、私だけのときは今日入れた紅茶の銘柄など運んでいるうちに忘れてしまっているのだろう。
いつからか、種類も告げなくなった。
私が紅茶を飲んでいる間、暇なミリアはそこらへんを見渡しながら話題を探っている。
面倒臭がりのくせに暇な時間が嫌いと言う若干矛盾の含んだ彼女の性格は熟知していた。
と、どうやら私の机を見てそれを見つけたようだ。
「お嬢様、課題でもなさっていたのですか?参考書がいくつも広げられていますが」
いつもは理路整然としている机の上がごちゃっとしていたるのだから、確かに誰でも疑問に思うかもしれない。
「いいえ、課題はもう終わったわ。あれはお兄様から借りた教材よ」
私は紅茶受けのクッキーに手を伸ばした。
一口サイズに作られたクッキーを口に頬張り、クッキーを飲み込んだところで紅茶を飲む。
やはり、この組み合わせは最高においしい。
「グレス様から?拝見してもよろしいですか?」
「えぇ、別に構わないけど」
何を思ったのか、ミリアは広げられた教材を手にとり、頁をぱらぱらとめくる。
結局面白いものが何もなかったのだろう。つまらなさそうな顔をして教材を閉じた。
最後に表紙を見て、彼女はぎょっとした顔になる。
「お、お嬢様、これ大学の教材じゃないですか」
「そうだけど、どうしたの?」
帯にそう書いてあるのを見たのだろう。
珍しく驚いている彼女は貴重だ。しかし、びっくりした顔もきれいなんて反則じゃあないかしら。
「グレス様も優秀だと言われておりますが、これは……。お嬢様、生まれる性別を間違えてませんか?」
「あなた……。よくそんな失礼なことを躊躇いもせず私に言えるわね」
普通の使用人だったら口が裂けても言わない。
そしておそらく、普通の令嬢だったら今すぐ解雇しているだろう。
しかし私たちはどちらも普通じゃない。
性格に難ありのネジがぶっ飛んだ二人なのだ。
ちょっとした暴言を吐かれてもどうとも思わない。
……自分でいっていて少しへこみはするけどね。
それにしても、そんなに驚くこともないだろう。
「あなた、私の前世が誰だか知っているでしょう?」
「えぇ、存じておりますが」
彼女とは3年前に知り合ってから、寮に入るまでほとんど私付きの使用人のような扱いをしてきた。
故に何かの拍子で私の前世がバレたことがあった。
しかし、当の彼女の反応といえば。
『前世ですか。本当にいるんですね、そういう人。悪逆皇帝?なんですかそれ。お嬢様ってそんなに悪い事したんですか?』
と、まるで世間話をするような軽さで受け止めた。
その後、私の前世の事を調べて知ったようだが、別にどうとも思わなかったらしい。
全く態度を変えない彼女に、ここまで達観した人間がいるのかと度肝を抜かれたほどである。
(当人である私でさえ、不眠症になるほど深刻に思い詰めていたのに)
そんな彼女が恐ろしいというか羨ましいというか。
まぁ、そんな風になりたいとは思わないけれど。
「王様だということは、それなりの知識を持っていて当然なのよ。小さい頃から英才教育を受けていたのだから、その記憶を、持っているなら
それぐらいできても当然よ。当然」
「お嬢様……」
まるで傲慢な人間を見たように嫌悪感を隠しもせず、じとーっとした目で私を見つめる。
見損なったとでも言いたげなその目に、誤解のないように反論する。
「別にこれは他の人を貶めているわけではなくて!つまり、その、カンニングしているようなもってことよ!」
「あぁ、確かにそう言われれば納得です」
ポンと納得したように手を打った。
全くこの使用人は。
どうしてこう捻くれているのやら。
まぁ、これぐらいで怒らないわよ。
怒らないけど、覚えてはいるのだからね。
覚悟していてほしいものよ。
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