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第2章
26.父の横暴
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「ミリアを解雇……、ですか?」
その日の夕食後、父に呼ばれ私室に出向いた。
そこで告げられたのは私にとって衝撃の内容だった。
「ああ、シルビアにひどい態度を取ったそうじゃないか。私の屋敷にそのような使用人はいらない」
それはどんな暴挙なのだろう。
ただ妹の我儘を諫めただけなのに、どうして彼女が辞めさせられるのか。
「納得いきません。いくらシルビアが可愛くてもそれはあんまりです」
「なに我儘を……」
「我儘なんて、そんな……」
それを言うならシルビアのほうがよっぽど我儘ではないか。
しかし、今の父に正論を言ってもおそらく聞き入れてはもらえない。
(こんな暴挙をまた受け入れるなんてまっぴらよ)
前世の事を思い出し、どうにかしてこの不条理に抗おうと頭をフル回転させて考える。
そこで思い付いたのは、主観的に見ても矛盾した提案だった。
(これじゃあまるで、語り継がれた悪逆皇帝と同じね)
しかし、横暴には横暴で返すしかない。
「分かりました。なら私がこの屋敷にいる間はミリアを私とシルビアに一切近づけないことを誓います。その代わり、
この休暇期間が終わったら彼女を私と共に寮へ入寮させてください」
「なに?」
これは完全なる私の我儘だ。
しかし、このままにして彼女を失うわけにはいかなかった。
「彼女は使用人でありながら魔法が使えます。きっと私の護衛にピッタリだとは思いませんか?それに、寮にいる間私がヘマをすることの
ないよう監視が必要でしょう?」
「しかし、あの使用人は完全にお前の息が掛かっているではないか」
娘によくしている使用人に対して息が掛かっているなんて。
父は私を敵か何かとでも思っているのだろうか。
そのことにガクッと肩を落とす。
しかし、今はそんなことに気を取られている場合ではない。
このまま彼女を失うほうが私にはダメージが大きいのだから。
大丈夫。父が私をよく思っていないのなんて、本当はもう分かっていたじゃないか。
ならば、今更それが絶望的になってしまったところで、もう傷ついたりしないはずだ。
そう自分に言い聞かせ、この日最大の暴挙を父に言い放った。
「もし、この要求が飲めないのでしたら、私の前世と共にお父様がそのことを隠蔽していたことを国王陛下に進言してもよろしいのですよ?」
父の顔がまともに見れない。
でも今彼女と離れてしまっては、私は誰に頼ればいいのかわからない。
だから彼女を手放すわけにはいかないの。
「お前、何てことを!私を、父親を脅そうというのか!」
父は憤慨し、肩を震わせながら大声で怒鳴り散らした。
貴族一人気者と言われているとは思えないほど歪んだその表情を直視できなかった。
「この親不孝ものが!お前など、お前など……!」
拳を思いきり握り、何とか怒りを抑えていたが、爆発寸前のようなその表情は覚悟していても見ていて辛いものがあった。
「出ていけ!今すぐに!」
「……失礼します」
これ以上ここにいても父を苛立たせるだけだ。
素直に従い部屋を後にした。
もうそろそろ覚悟を決めなければならないのかもしれない。
いつか家族と離縁しなければならない日が来ると思っていた。
王子と婚約破棄なんてすれば、それは確実だ。
しかし、まさかこんなに早くその覚悟をしなければならない事態に陥るなんて思わなかった。
まさか父とこんな風に対立してしまう未来が来るなんて思いもしなかったな。
(でも大丈夫よ、お父様)
私がなにをしたとしても、この家に不利益が来るようなことは絶対にさせないから。
今日はこんな風に溝ができてしまったけど、家族だもの、きっとこんな溝すぐに埋まるわよ。
そうよね。
きっとそんな日は来ないかもしれない。
しかし、私は諦めたくなかった。
零れそうな涙を何とか引っ込めたくて、そう思い込んだけど、やはり流れてしまう。
本当はわかっている。
でも泣いたらそれを肯定しているようで、何度も何度もそれを否定するように袖で涙を拭き続けた。
その日の夕食後、父に呼ばれ私室に出向いた。
そこで告げられたのは私にとって衝撃の内容だった。
「ああ、シルビアにひどい態度を取ったそうじゃないか。私の屋敷にそのような使用人はいらない」
それはどんな暴挙なのだろう。
ただ妹の我儘を諫めただけなのに、どうして彼女が辞めさせられるのか。
「納得いきません。いくらシルビアが可愛くてもそれはあんまりです」
「なに我儘を……」
「我儘なんて、そんな……」
それを言うならシルビアのほうがよっぽど我儘ではないか。
しかし、今の父に正論を言ってもおそらく聞き入れてはもらえない。
(こんな暴挙をまた受け入れるなんてまっぴらよ)
前世の事を思い出し、どうにかしてこの不条理に抗おうと頭をフル回転させて考える。
そこで思い付いたのは、主観的に見ても矛盾した提案だった。
(これじゃあまるで、語り継がれた悪逆皇帝と同じね)
しかし、横暴には横暴で返すしかない。
「分かりました。なら私がこの屋敷にいる間はミリアを私とシルビアに一切近づけないことを誓います。その代わり、
この休暇期間が終わったら彼女を私と共に寮へ入寮させてください」
「なに?」
これは完全なる私の我儘だ。
しかし、このままにして彼女を失うわけにはいかなかった。
「彼女は使用人でありながら魔法が使えます。きっと私の護衛にピッタリだとは思いませんか?それに、寮にいる間私がヘマをすることの
ないよう監視が必要でしょう?」
「しかし、あの使用人は完全にお前の息が掛かっているではないか」
娘によくしている使用人に対して息が掛かっているなんて。
父は私を敵か何かとでも思っているのだろうか。
そのことにガクッと肩を落とす。
しかし、今はそんなことに気を取られている場合ではない。
このまま彼女を失うほうが私にはダメージが大きいのだから。
大丈夫。父が私をよく思っていないのなんて、本当はもう分かっていたじゃないか。
ならば、今更それが絶望的になってしまったところで、もう傷ついたりしないはずだ。
そう自分に言い聞かせ、この日最大の暴挙を父に言い放った。
「もし、この要求が飲めないのでしたら、私の前世と共にお父様がそのことを隠蔽していたことを国王陛下に進言してもよろしいのですよ?」
父の顔がまともに見れない。
でも今彼女と離れてしまっては、私は誰に頼ればいいのかわからない。
だから彼女を手放すわけにはいかないの。
「お前、何てことを!私を、父親を脅そうというのか!」
父は憤慨し、肩を震わせながら大声で怒鳴り散らした。
貴族一人気者と言われているとは思えないほど歪んだその表情を直視できなかった。
「この親不孝ものが!お前など、お前など……!」
拳を思いきり握り、何とか怒りを抑えていたが、爆発寸前のようなその表情は覚悟していても見ていて辛いものがあった。
「出ていけ!今すぐに!」
「……失礼します」
これ以上ここにいても父を苛立たせるだけだ。
素直に従い部屋を後にした。
もうそろそろ覚悟を決めなければならないのかもしれない。
いつか家族と離縁しなければならない日が来ると思っていた。
王子と婚約破棄なんてすれば、それは確実だ。
しかし、まさかこんなに早くその覚悟をしなければならない事態に陥るなんて思わなかった。
まさか父とこんな風に対立してしまう未来が来るなんて思いもしなかったな。
(でも大丈夫よ、お父様)
私がなにをしたとしても、この家に不利益が来るようなことは絶対にさせないから。
今日はこんな風に溝ができてしまったけど、家族だもの、きっとこんな溝すぐに埋まるわよ。
そうよね。
きっとそんな日は来ないかもしれない。
しかし、私は諦めたくなかった。
零れそうな涙を何とか引っ込めたくて、そう思い込んだけど、やはり流れてしまう。
本当はわかっている。
でも泣いたらそれを肯定しているようで、何度も何度もそれを否定するように袖で涙を拭き続けた。
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