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第2章
45.救いとは
その後、結果は出たが見なくてもわかり切っていた。
結局私の数値といえば、魔力は殆どゼロということ。
つまり、私は魔法が一切使えないということだ。
ただ1つ引っかかることがあると前置きして魔法使いが告げたのは、私の魔力生成数は彼に匹敵するほどのものを持っている、ということ。
しかし、なぜだが私の魔力は生成された瞬間にどこかへ消えてしまうのだそうだ。
そりゃもう業火の中に水を放った瞬間蒸気に変わるように、一瞬で跡形もなく。
私も魔法使いもそれに対し非常に興味をそそられたのだが、同席していた父はそれには全く興味を示さず少し勝ち誇ったような顔で満足そうにしていた。
そして結果が書かれた紙の写しを乱暴に受け取ると私に目もくれずそそくさとその場を後にしてしまった。
置いていかれないよう、私も急いで後を追いかける。
と、その前に魔法使いにお礼を言った。
「ありがとうございました、プアドールさま」
「いいえ、とんでもない。これが私の仕事ですから」
優しく穏やかな彼の声はどこか安心する。
私に近寄り、ふんわりと肩に手を掛けると目線を同じ高さに合わせてくれた。
「もし、あなたがどこへも身よりが無くなったとき、ここへ来てください。いつでも歓迎しますから」
「でも……」
本当に、本当にそうなのだろうか。
私の前世を知っていてそれでもこんなに優しくしてくれるのはミリアと彼ぐらいだ。
それに彼は最初、あんなにリヴェリオを恐れていたのに。
「大丈夫です。たとえ誰もがあなたを拒絶しても、私だけはあなたの味方でいますから」
もしかしたら、彼だけは信じてもいいのかもしれない。
この教会だけは、信じても。
それでもまだ、彼を心から信じきれないのは、今までずっと誰にも心を開かない様にしてきたからなのか。
それとも……。
「今はまだ、答えを出さなくてもいいですよ。ただ、辛いときはいつでもここへ来てください。待っていますから」
「…はい」
教会であればどんな人間でも受け入れてくれる。
そして、きっと彼の言葉も嘘偽りのない本心からの言葉だろう。
しかし、それでもまだ私の心は揺れていた。
***
『リーヴェさま、リーヴェさま!』
誰かが呼んでる。
誰?
誰なの?
『リーヴェ様は私が絶対に守ります。だって私はあなたの、あなただけの騎士なのですから』
ほんとう?
本当に私を守ってくれる?
どんなことからも?
『はい、もちろんです』
信じてもいいの?
懐かしい、漆黒の髪に赤い瞳。
まだ私たちが幼少の折に交わした、大切な大切な約束。
その黄金色の儚い思い出にずっと浸っていたかった。
しかし、次の瞬間場面は赤黒く変わる。
繋がれた両手。
足枷に繋がれた足は重くて思うように歩くこともままならない。
体全体に刻まれた数々の傷はおそらく市中引き回しにされたとき、民たちから受けた制裁の印。
そこには無残にも赤く濡れた肉が露出している。
所々ボロボロの服に付着した血はおそらくすべてその傷から流れたものだろう。
無理やり歩かされ、連れていかれた場所は処刑台。
そこには剣を構えた彼――――
私の騎士だった親友が無表情で待っていた。
櫓のように高い場所まで行くと、周りに集まった民たちがよく見えた。
彼らは私に怒涛の罵倒を浴びせている。
彼らを救えなかった私の罪が今ここで完結する。
やっとこの生に意味を見出せる。
それだけが救いだった。
『どうしてあんなことをしたのですか?』
淡々と、少しだけ震えるような声で彼が問う。
『私を、私たち民を裏切るようなことをなぜしたのかと聞いている!』
どうしてなんて私が聞きたい。
しかし、それは民たちが望む答えではない。
『…どうしてかって?簡単だ、私はすべてがほしかった!私の願う全てが!』
血を吐き、咽ながらも答える。
これが私の最後の仕事だから。
可哀そうな彼。
正義感が強すぎたために、最後まで私を信じようとしていてくれたのかもしれない。
だからこそ、彼に応えなければ。
私が災厄なのだと。
『いいか!私をこんな目に遭わせてただで済むと思うな!死んだらこの国が滅ぶまで、呪いつくしてやるからな!!』
精一杯の大声で、果たしてここに集まった民たちに届いただろうか。
少しでも彼らの苦しみを持っていくことが、できるだろうか。
「殺せ」と誰しもが口を合わせて訴えている。
それはこの国の全ての民の願い。
だったら君は応えてくれるだろう。
『さらばだ、皇帝リヴェリオ―――!!』
そう言って彼の剣が振り下ろされた瞬間。
私の心は永遠に停止した。
ハッと目を覚ます。
体を起き上がらせることができず、寝たままの状態で辺りを見渡す。
辺りは薄暗く月の光が世界を照らしている。
ということは、まだ夜中なのだろう。
しかし、ここはまぎれもなくベルフェリト邸の私の部屋。
ということはさっきのは夢……か。
息は荒く、汗をびっしょりとかいている。
久しぶりに見た、あの悪夢。
私が前世を思い出すきっかけになった最悪の夢。
しかし、あそこまで鮮明な夢は初めてだ。
どうしたのだろう。
それが、これからの予兆のような気がして眠る気になかなかなれなかった。
もうすぐ夏季休暇が終わる――――
第2章 閉幕
結局私の数値といえば、魔力は殆どゼロということ。
つまり、私は魔法が一切使えないということだ。
ただ1つ引っかかることがあると前置きして魔法使いが告げたのは、私の魔力生成数は彼に匹敵するほどのものを持っている、ということ。
しかし、なぜだが私の魔力は生成された瞬間にどこかへ消えてしまうのだそうだ。
そりゃもう業火の中に水を放った瞬間蒸気に変わるように、一瞬で跡形もなく。
私も魔法使いもそれに対し非常に興味をそそられたのだが、同席していた父はそれには全く興味を示さず少し勝ち誇ったような顔で満足そうにしていた。
そして結果が書かれた紙の写しを乱暴に受け取ると私に目もくれずそそくさとその場を後にしてしまった。
置いていかれないよう、私も急いで後を追いかける。
と、その前に魔法使いにお礼を言った。
「ありがとうございました、プアドールさま」
「いいえ、とんでもない。これが私の仕事ですから」
優しく穏やかな彼の声はどこか安心する。
私に近寄り、ふんわりと肩に手を掛けると目線を同じ高さに合わせてくれた。
「もし、あなたがどこへも身よりが無くなったとき、ここへ来てください。いつでも歓迎しますから」
「でも……」
本当に、本当にそうなのだろうか。
私の前世を知っていてそれでもこんなに優しくしてくれるのはミリアと彼ぐらいだ。
それに彼は最初、あんなにリヴェリオを恐れていたのに。
「大丈夫です。たとえ誰もがあなたを拒絶しても、私だけはあなたの味方でいますから」
もしかしたら、彼だけは信じてもいいのかもしれない。
この教会だけは、信じても。
それでもまだ、彼を心から信じきれないのは、今までずっと誰にも心を開かない様にしてきたからなのか。
それとも……。
「今はまだ、答えを出さなくてもいいですよ。ただ、辛いときはいつでもここへ来てください。待っていますから」
「…はい」
教会であればどんな人間でも受け入れてくれる。
そして、きっと彼の言葉も嘘偽りのない本心からの言葉だろう。
しかし、それでもまだ私の心は揺れていた。
***
『リーヴェさま、リーヴェさま!』
誰かが呼んでる。
誰?
誰なの?
『リーヴェ様は私が絶対に守ります。だって私はあなたの、あなただけの騎士なのですから』
ほんとう?
本当に私を守ってくれる?
どんなことからも?
『はい、もちろんです』
信じてもいいの?
懐かしい、漆黒の髪に赤い瞳。
まだ私たちが幼少の折に交わした、大切な大切な約束。
その黄金色の儚い思い出にずっと浸っていたかった。
しかし、次の瞬間場面は赤黒く変わる。
繋がれた両手。
足枷に繋がれた足は重くて思うように歩くこともままならない。
体全体に刻まれた数々の傷はおそらく市中引き回しにされたとき、民たちから受けた制裁の印。
そこには無残にも赤く濡れた肉が露出している。
所々ボロボロの服に付着した血はおそらくすべてその傷から流れたものだろう。
無理やり歩かされ、連れていかれた場所は処刑台。
そこには剣を構えた彼――――
私の騎士だった親友が無表情で待っていた。
櫓のように高い場所まで行くと、周りに集まった民たちがよく見えた。
彼らは私に怒涛の罵倒を浴びせている。
彼らを救えなかった私の罪が今ここで完結する。
やっとこの生に意味を見出せる。
それだけが救いだった。
『どうしてあんなことをしたのですか?』
淡々と、少しだけ震えるような声で彼が問う。
『私を、私たち民を裏切るようなことをなぜしたのかと聞いている!』
どうしてなんて私が聞きたい。
しかし、それは民たちが望む答えではない。
『…どうしてかって?簡単だ、私はすべてがほしかった!私の願う全てが!』
血を吐き、咽ながらも答える。
これが私の最後の仕事だから。
可哀そうな彼。
正義感が強すぎたために、最後まで私を信じようとしていてくれたのかもしれない。
だからこそ、彼に応えなければ。
私が災厄なのだと。
『いいか!私をこんな目に遭わせてただで済むと思うな!死んだらこの国が滅ぶまで、呪いつくしてやるからな!!』
精一杯の大声で、果たしてここに集まった民たちに届いただろうか。
少しでも彼らの苦しみを持っていくことが、できるだろうか。
「殺せ」と誰しもが口を合わせて訴えている。
それはこの国の全ての民の願い。
だったら君は応えてくれるだろう。
『さらばだ、皇帝リヴェリオ―――!!』
そう言って彼の剣が振り下ろされた瞬間。
私の心は永遠に停止した。
ハッと目を覚ます。
体を起き上がらせることができず、寝たままの状態で辺りを見渡す。
辺りは薄暗く月の光が世界を照らしている。
ということは、まだ夜中なのだろう。
しかし、ここはまぎれもなくベルフェリト邸の私の部屋。
ということはさっきのは夢……か。
息は荒く、汗をびっしょりとかいている。
久しぶりに見た、あの悪夢。
私が前世を思い出すきっかけになった最悪の夢。
しかし、あそこまで鮮明な夢は初めてだ。
どうしたのだろう。
それが、これからの予兆のような気がして眠る気になかなかなれなかった。
もうすぐ夏季休暇が終わる――――
第2章 閉幕
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お楽しみいただけると幸いです。