悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第3章

47.新たなる生活の幕開け

15歳、春。
春休みが終わりを告げ、今日から私もタリエスタ学院高等科に通うこととなる。

やっと窮屈な寮生活が終わったと晴れ晴れしい気持ちになるかと思いきや。
実家に帰った方が窮屈で仕方なく、早く学生生活がスタートしてほしくて堪らなかった。

この家はすでに私の心の落ち着く場所ではない。
私を嫌悪し腫物のように扱う家族たちには正直うんざりだ。
それならば、顔を合わさなければ良いのだろうがそうもいかない。
なぜだか家族みんなで食事をするという習慣は継続して行われており、日に3度は顔を合わせる必要があったのだ。
それのなんと苦痛なことか。
なんとか言い訳をして欠席するも、父から外出を制限されているため毎日できるわけではないし、わざわざ部屋まで押しかけられてまで嫌味を言われる方がきつい。
3年前の夏に見放されたときからしばらくは、私の行動に干渉することもなかった父であったが、次の年になる頃には以前にもまして厳しくなり
招待されたパーティーや宮殿へ赴く時以外は敷地内から出ることを許されなくなった。
まるで本当に籠に囚われた鳥である。
まぁ、両親からしたら猛獣なのだろうけれど。

と、いうことで本日の入学式は久々の外出。
これからは昼だけでも家族と顔を合わせずにいられるのはとても良い。

ミリアと共に家を出るとき、玄関で振り返り大きな声で挨拶をしたが、誰もいないこの場所で声を張り上げたところで私の声が反響したものが返ってくるだけだった。

「それ、必要でしたか?」

「いいのよ。一応今日は新たな門出でしょう」

こんなに屋敷がしんと静まり帰っているのには理由がある。
今日は私の高等科進学と同時に、妹シルビアのタリエスタ学院中等科の入学式なのだ。
そのため両親はそちらの入学式に出席するとあり、朝早くから出掛けている。
使用人もなぜか数人駆り出されており、当主夫婦がいないのならば今日は休暇を出そうということで、私がいるにも関わらず両親が勝手に使用人の休養日にしてしまった。
と言うわけで本日働いている使用人は私専属メイドのミリアだけなのである。

とはいえ、それが無くてもあの両親見送りなどするはずはないのだが。

「お嬢様もう行きましょう。時間がなくなりますよ」

「わかっているわ。そう急かさないで」

今更この冷たい屋敷に寂しさなど感じないが、本当は自分の特別な日を家族で祝ってくれたら……とどうしても思ってしまう。
3年前に捨てた未練がまだ少しだけ自分の中に残っているのを感じつつ、私は屋敷を後にした。

校門に降り立ち、これから通う我が学び舎を見つめる。
厳粛でありながら美しい建築物は、学校とは思えないような出で立ちだ。

気持ちを新たにするため、目を瞑り深呼吸する。
来年の春、私たちの婚約が正式に締結される。

つまり後1年しか猶予が残っていないのだ。
それまでになんとしてでもヴァリタスとの婚約を破棄させなければならない。

しかし、いままでいろいろな手を尽くし彼に嫌われようと努力してきたが、一向に婚約破棄の気配はない。
だが、このまま諦めて堪るもんですか。

待っていて、私の平穏まったりライフ!
絶対手に入れてみせるんだから!

高等科の入学式を無事終えそれぞれのクラスに移動する。
そこで一通りのオリエンテーションが終了すると、すぐさま学院の講堂で入学記念パーティーが催された。
今年は第2王子が入学するとあって例年以上に華やかなのだそう。
私は彼と同い年なばっかりに、どの程度違うのか全くわからないが先輩たちのヒソヒソ話から察するに装飾やプログラムが若干違うらしい。

しかし、流石は我が国の誇るイケメン王子。
私と言う婚約者がありながらそんなことをものともしない図太い神経の令嬢たちから、ダンスのお誘いが引っ切り無しにやってきている。
私が殆ど社交界に顔を出さないのを見て舐められているのだろうが別にそんなことは構わない。
それを千切っては投げ、千切っては投げの繰り返しをしている彼を見てる方が面白いのでどうでもいいのだ。
1つぐらい受け入れれば良いのにと遠くで観察していると、とうとう彼にばれたようで鬼の形相でこちらに近づいてきた。

「エスティ~。一体あなたはそんな隅っこで何をのんきにしているのですかぁ」

「いえ、ただ私の婚約者はとてもおモテになるから、私としても誇らしいなぁと……」

目を泳がせながら苦し紛れの言い訳をする。
怒っているのもあるが相当不機嫌な彼を宥めるのは苦労する。

昔はもう少し扱いやすかった彼も、成長するにつれ私が妥折れても納得しなくなってきた。
もうそろそろ子ども扱いしてあしらうのも限界のようだ。
そもそも彼は私の前以外では、昔から賢く大人びていてしっかりしていると評判だった。
しかし、私の前になると年齢以上に子供っぽく甘えるものだから、こちらとしてもそれに沿うように対応していたのだ。
好意からくる甘えだと分かっていてあしらっていたがそれではもう満足できないらしい。

『もっとエスティの特別になりたい。男として見て欲しい。甘えるのではなく甘えてほしい。』

その想いが駄々洩れていて、はっきりと言葉にして言われなくても伝わってくる。
それが私にとって嫌な成長なのだけれど、彼にそれを伝えることはできない。
そのため、最近ではどのようにして距離を置くべきかで頭を悩ませているところだ。


「じゃあダンス、踊りますか? 」

「じゃあって……。なんですか、エスティは私と渋々ダンスを踊るのですか? 」

面倒くさっ!
不機嫌顔でこちらにため息を吐いているけど、それ、こっちのセリフっていうか態度だから。
全く。どう転べば私がヴァリタスとダンスを踊りたいと思うのよ。

だが相手はこの国の第2王子で婚約相手。仕方ない、ここは折れるか。

「ごめんなさい。ヴァリタス様、私とダンス、踊っていただけませんか?」

「……はい」

若干不機嫌ながらも頬を少し赤らめて答える。
こうしてみるとまだまだ子供のころのままだ。

っていうかこういう時って男性から誘うものでしょう?
なんで私から誘うのよ。
そういう常識的なことは絶対知識として持っているはずなのに、私の前でだけ欲を優先するあまりどこか非常識になるのよねぇ。
普通好きな女性の前ではそういうかっこいいところを見せたいと思うのだけど。
やっぱりこの男どこかおかしいのではないかしら。

内心吐いたため息を気づかされないよう、心底嬉しそうな顔をして次の曲が始まると同時に私たちのダンスが始まった。
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