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第3章
49.うす桃色の彼女
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ダンスが終わった後、令嬢たちにまたもや囲まれていたがどうやら今度は自分で振り切ったようだ。
ムスッとした顔をしているものの、その整った容姿では拗ねていて可愛いと思われるくらいがオチだというのが、いつになったらわかるのやら。
というか、そういう顔をナタリーの前でしないでほしい。
ほらまた興奮しているのが背中ごしに伝わってきて、後ろを振り向けないじゃない。
「ごきげんよう、ナタリー嬢」
「ごきげんよう、ヴァリタス殿下」
サッと私をよけると後ろにいたナタリーに声をかける。
と、同時に腕を少し引かれ私とナタリーの間に割って入るように移動した。
微笑みながらも警戒するようにナタリーを見つめているのが、後ろから少しだけ覗く表情から読み取れる。
なんだか彼の様子がおかしい。どうしたのだろう。
幸いナタリーは気づいていないようだから良いけれど。
「そういえば、殿下はどのクラスでしたの? 」
タリエスタ学院では成績によってSクラス~Fクラスまでの7つのランクでクラスが分けられている。
私とナタリーはというとどちらもBクラス。
私の場合は勉学と家の地位でそこまで伸し上がってこれたが、ナタリーの場合は”神聖力”という特別な力があったためにBクラスに所属している。
まぁ、彼女も人並みに勉強はできるけれど、恐らく勉学だけで言えばDクラス程度のものだろう。それ程”神聖力”とは貴重な力なのだ。
とはいえ、Bクラスまでは勉学か魔法ができていれば所属することができるようなクラスだ。
しかし、AクラスやSクラスになると魔力と勉学、どちらも優秀なものしか所属できないようなクラスとなってくる。
特にSクラスなんていうと、上位10%の学生が所属する特別なクラス。
23名と他のクラスに比べても少人数で授業を受けられるというのだから羨ましい限りである。
ヴァリタスは中等科では常にSクラスをキープしていた。
つまり、勉学も魔法もこの学年で特に秀でているのである。
ということで、私もそしてナタリーも、彼がどこのクラスに振り分けられたのかは確認しなくてもわかり切っていることだ。
だがまぁ、形式として聞いておく方が良いだろう。
恐らく彼女もそう思って彼に聞いたのだろうから。
「私ですか? Sクラスでしたよ。エスティやナタリー嬢と一緒ではなくて寂しいですが、仕方ありません」
本当に寂しそうに笑うものだから、嫌味になど全く聞こえないから余計に腹が立つ。
とはいえ、彼はおそらく私と同じクラスになることを心の底から、嫌味など全く考えずに思っているのだろう。
だから、そんな事を思っているとは決して表には出さず「本当ですね~」なんて言って同意しておいた。
本心を言えば、クラスだけでも離れることができて安心している。
できれば違う学校に通いたかったが、貴族の、それも公爵位クラスの令嬢ともなるとここ以外通うと何かと外聞が宜しくなくなっていまうから厄介だ。
はぁ、とため息をつきたくなり、数歩後ろを下がった時―――
「っきゃ! 」
後ろを通り過ぎようとした女性にぶつかってしまう。
「あっ! すみません、大丈夫ですか? 」
急いで歩いていたのか、思っていたよりも彼女にダメージが入ってしまったみたいだ。
少しよろけたものの、彼女が倒れなくてよかった。
「ベ、ベルフェリト公爵令嬢! とんだご無礼を。も、申し訳ありません。」
私の顔を見て驚き、一瞬にして顔を青くして弱弱しく平謝りする。
その様子にこちらの方が申し訳なくなってしまう。
全くこれだから地位の高い人間は面倒だ。
いくらこちらが悪くても相手の地位が低ければこちらより先に謝るし、相手が悪いのだと言わんばかりに顔を青ざめるものだから宥めるのに苦労する。
例にもれず私が彼女を宥めていると。
「レイリー……? 」
ヴァリタスが後ろから女性の名を呼んだのが聞こえた。
その声の様子と振りかえったときに見た表情から、彼が動揺しているのがわかる。
もしかして彼女と知り合いなのだろうか。
しかし、今はヴァリタスよりもなおも謝りだ押している彼女の対応の方が先決だ。
「あの、もう大丈夫だから謝らないで。ええっと、あなた名前は? 」
「はい…。申し遅れました、私メドビン男爵家の娘、セイラと申します」
俯きながらも名前を教えてくれる。
なるほど、男爵家の人間なのか。
男爵といえば、一部では平民の成り上がり貴族と呼ばれている。
一番下の爵位であり、お金でその地位を買えることもできるため、そう呼ばれているのだろう。
そんな貴族の娘が公爵家の娘に対しここまで低姿勢になるのは仕方のない事だろう。
「メドビンって……。確か鉱山を所有している元商人の? 」
彼女の家について知っていたのか、ナタリーが彼女に優しく話し掛ける。
「えぇ、そうです」
いまだ申し訳なさそうにしながらナタリーの言葉に同意した。
元商人ということは、彼女の家は本当に爵位を買った家なのかもしれない。
だからあんなに平謝りしていたのだろう。
「ごめんなさいね、気を遣わせてしまった。急いでいたのでしょう? 」
「いいえ、本当に私の不注意ですから。ありがとうございます」
申し訳なさそうに笑う彼女の微笑みに少しばかり見とれてしまった。
うわぁ。
笑った顔の、なんて可愛らしい方なのかしら。
まるで童話に出てくるお姫様みたい。
ストレートに伸ばされたうす桃色の髪にダイヤのように輝く赤い瞳。
まるで”可愛い”と言う言葉を詰め合わせて具現化したみたいな少女だ。
その髪や瞳の色が珍しいのもそうだが、その可愛らしい容姿から、きっと多くの男性の目に留まったに違いない。
もしかしたら、その中には女性もいたかも。
それ程彼女の、特に笑顔は魅力的だった。
「それでは、ごきげんよう」
そわそわしていたのでもう大丈夫だと先を急がせると、ペコリと頭を下げて速足でその場を立ち去った。
その後ろ姿を見て、なんだか妙に懐かしく感じた。
ムスッとした顔をしているものの、その整った容姿では拗ねていて可愛いと思われるくらいがオチだというのが、いつになったらわかるのやら。
というか、そういう顔をナタリーの前でしないでほしい。
ほらまた興奮しているのが背中ごしに伝わってきて、後ろを振り向けないじゃない。
「ごきげんよう、ナタリー嬢」
「ごきげんよう、ヴァリタス殿下」
サッと私をよけると後ろにいたナタリーに声をかける。
と、同時に腕を少し引かれ私とナタリーの間に割って入るように移動した。
微笑みながらも警戒するようにナタリーを見つめているのが、後ろから少しだけ覗く表情から読み取れる。
なんだか彼の様子がおかしい。どうしたのだろう。
幸いナタリーは気づいていないようだから良いけれど。
「そういえば、殿下はどのクラスでしたの? 」
タリエスタ学院では成績によってSクラス~Fクラスまでの7つのランクでクラスが分けられている。
私とナタリーはというとどちらもBクラス。
私の場合は勉学と家の地位でそこまで伸し上がってこれたが、ナタリーの場合は”神聖力”という特別な力があったためにBクラスに所属している。
まぁ、彼女も人並みに勉強はできるけれど、恐らく勉学だけで言えばDクラス程度のものだろう。それ程”神聖力”とは貴重な力なのだ。
とはいえ、Bクラスまでは勉学か魔法ができていれば所属することができるようなクラスだ。
しかし、AクラスやSクラスになると魔力と勉学、どちらも優秀なものしか所属できないようなクラスとなってくる。
特にSクラスなんていうと、上位10%の学生が所属する特別なクラス。
23名と他のクラスに比べても少人数で授業を受けられるというのだから羨ましい限りである。
ヴァリタスは中等科では常にSクラスをキープしていた。
つまり、勉学も魔法もこの学年で特に秀でているのである。
ということで、私もそしてナタリーも、彼がどこのクラスに振り分けられたのかは確認しなくてもわかり切っていることだ。
だがまぁ、形式として聞いておく方が良いだろう。
恐らく彼女もそう思って彼に聞いたのだろうから。
「私ですか? Sクラスでしたよ。エスティやナタリー嬢と一緒ではなくて寂しいですが、仕方ありません」
本当に寂しそうに笑うものだから、嫌味になど全く聞こえないから余計に腹が立つ。
とはいえ、彼はおそらく私と同じクラスになることを心の底から、嫌味など全く考えずに思っているのだろう。
だから、そんな事を思っているとは決して表には出さず「本当ですね~」なんて言って同意しておいた。
本心を言えば、クラスだけでも離れることができて安心している。
できれば違う学校に通いたかったが、貴族の、それも公爵位クラスの令嬢ともなるとここ以外通うと何かと外聞が宜しくなくなっていまうから厄介だ。
はぁ、とため息をつきたくなり、数歩後ろを下がった時―――
「っきゃ! 」
後ろを通り過ぎようとした女性にぶつかってしまう。
「あっ! すみません、大丈夫ですか? 」
急いで歩いていたのか、思っていたよりも彼女にダメージが入ってしまったみたいだ。
少しよろけたものの、彼女が倒れなくてよかった。
「ベ、ベルフェリト公爵令嬢! とんだご無礼を。も、申し訳ありません。」
私の顔を見て驚き、一瞬にして顔を青くして弱弱しく平謝りする。
その様子にこちらの方が申し訳なくなってしまう。
全くこれだから地位の高い人間は面倒だ。
いくらこちらが悪くても相手の地位が低ければこちらより先に謝るし、相手が悪いのだと言わんばかりに顔を青ざめるものだから宥めるのに苦労する。
例にもれず私が彼女を宥めていると。
「レイリー……? 」
ヴァリタスが後ろから女性の名を呼んだのが聞こえた。
その声の様子と振りかえったときに見た表情から、彼が動揺しているのがわかる。
もしかして彼女と知り合いなのだろうか。
しかし、今はヴァリタスよりもなおも謝りだ押している彼女の対応の方が先決だ。
「あの、もう大丈夫だから謝らないで。ええっと、あなた名前は? 」
「はい…。申し遅れました、私メドビン男爵家の娘、セイラと申します」
俯きながらも名前を教えてくれる。
なるほど、男爵家の人間なのか。
男爵といえば、一部では平民の成り上がり貴族と呼ばれている。
一番下の爵位であり、お金でその地位を買えることもできるため、そう呼ばれているのだろう。
そんな貴族の娘が公爵家の娘に対しここまで低姿勢になるのは仕方のない事だろう。
「メドビンって……。確か鉱山を所有している元商人の? 」
彼女の家について知っていたのか、ナタリーが彼女に優しく話し掛ける。
「えぇ、そうです」
いまだ申し訳なさそうにしながらナタリーの言葉に同意した。
元商人ということは、彼女の家は本当に爵位を買った家なのかもしれない。
だからあんなに平謝りしていたのだろう。
「ごめんなさいね、気を遣わせてしまった。急いでいたのでしょう? 」
「いいえ、本当に私の不注意ですから。ありがとうございます」
申し訳なさそうに笑う彼女の微笑みに少しばかり見とれてしまった。
うわぁ。
笑った顔の、なんて可愛らしい方なのかしら。
まるで童話に出てくるお姫様みたい。
ストレートに伸ばされたうす桃色の髪にダイヤのように輝く赤い瞳。
まるで”可愛い”と言う言葉を詰め合わせて具現化したみたいな少女だ。
その髪や瞳の色が珍しいのもそうだが、その可愛らしい容姿から、きっと多くの男性の目に留まったに違いない。
もしかしたら、その中には女性もいたかも。
それ程彼女の、特に笑顔は魅力的だった。
「それでは、ごきげんよう」
そわそわしていたのでもう大丈夫だと先を急がせると、ペコリと頭を下げて速足でその場を立ち去った。
その後ろ姿を見て、なんだか妙に懐かしく感じた。
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