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第3章
52.迷惑な見舞い客
それからその週は、体調が優れずぼんやりとした意識の中学院に通っていた。
休みたいところではあったが、家にいたほうが悪化する可能性があったし、通えないほど体調が悪いわけではなかったから良いだろうと判断してのことだった。
幸いオリエンテーションが主で授業は無かったし、午前中で返されていたから体調が悪化することはなかった。
最初のうちはミリアにもエスティーにも心配されたが、私が平気だというと何も言わず納得してくれた。
そんな二人とは裏腹に厄介だったのはヴァリタスだ。
毎日馬車で送り迎えをすると聞かないわ、休み時間の度に様子を見に来るわ。
心配してくれるのは嬉しいけど、それ、迷惑だからやめてほしいと何度言いたくなったか。
馬車の件は頑なに拒否したら渋々受け入れてくれたし、休み時間は私が廊下に出て待ち合わせたものだから申し訳ないとやめてくれた。
全く、自分がこの国の第2王子だと自覚があるはずなのにどうして私の事となるとそう周りが見えなくなるような行動をとってしまうのか。
おかげでクラスメイトからさらに奇異の目で見られてしまったではないか。
ただでさえ前世が農民で魔法が全く使えないくせに第2王子の婚約者になったいけ好かない令嬢と印象最悪なのに。
そういう自分の身内に何かあると周りが見えなくなってしまうところは前世のバートンそっくりだ。
怒涛の週を終え、高等科に入学してから初めての土日休みを迎えた。
やっと休みが取れたと安堵した矢先。
早速休み1日目の午後13時、私の麗しい婚約者が見舞いに来てくれた。
「ごきげんよう、エスティー。体調はいかがですか?」
と言って私の自室に現れた彼は微笑みながら体調を気遣ってくれた。
手には花束を持っている。
わーうれしー。
こんな婚約者を持てて私ってばなんて幸せものー。
とでも言って喜ぶと思ったか!!
なんで私の自室に直接くるのよ! おかしいでしょ! 常識的に考えて。
来るなんて聞いてないし、彼の後ろで青ざめたメイドが可哀そうで怒るに怒れないし。
おそらく彼がサプライズだなんだと言って、応接室に通そうとしたメイドたちを押し切ってしまったのだろう。
一介のメイドが王子の命令に逆らえるわけがないし、彼もそれを知っての行動だろうし。
だから、なんで私の事になると非常識に突っ走ってしまうのかしらこの人は。
やっぱりどこかおかしいのだわ。
あぁ、やだなぁ。
いい加減私だって休みたいのよー。
いつもならそんな彼の暴挙にも完璧な笑顔でやり過ごせるけれど、今回ばかりは笑顔が引きつる。
出来れば花束をぶん投げて追い返したかったが、花たちに罪はない。
彼からそれを受け取ると生けてくれるように、後ろで青ざめていたメイドに頼んだ。
「寝ていなくても大丈夫なのですか?」
「えぇ、そこまで悪くありませんから。お気遣い感謝いたしますわ」
てめぇの前で寝れるか!!
おおっと、いけないいけない。
最近ナタリーから借りた『熱烈!極悪マフィアと箱入りお嬢様』を読んでから頭の中が少しだけ乱暴な考え方をしてしまうわ。
物語を読むとすぐ影響されてしまうの直さないと。口に出してしまったら取返しのつかないことになってしまうかもしれないし、気を付けなければ。
だがしかし、今の言葉は聞き捨てならない。
どこの令嬢に婚約者が来ているにも関わらず、ベッドで悠々と寝ていられる人がいるだろう。
もう少し物を考えて発言してほしい。
っていうかあなたが来なければ寝ていられたのですけどね!
心配してくれたのは本当に嬉しいけれど、タイミング考えてよ。
さっそくお得意のため息が出そうよ。
「よかった、大事ないのなら安心しました」
微笑む彼の笑顔は相も変わらず眩しい。
あはは、と愛想笑いで返してしまう。
「それでですね、エスティ。今日は言っておきたいことがあってきたのです」
「言っておきたいこと?」
彼はミリアに声を掛け、2人きりにしてほしいと頼む。
第2王子の願いに応えないわけにはいかず、私を心配そうに見つめるミリアだったが、渋々といった様子で部屋を出ていってしまった。
ああ、2人きりになってしまった。
それにしても話したいこととは何だろう。
思い当たる節がなく彼の言葉を素直に待つ、が。
なにが気まずいのか困ったような顔をしながら目線を右往左往するだけで、なかなか切り出してこない。
え? なにこの時間。
なに? 何かあるなら早く言ってくれればいいのに。
「あの、ですねエスティ」
やっと口を開いた彼の言葉をゆっくり待つ。
しかし、またもや目線をあっちこっちに巡らせ困り果てたような顔をして口を噤んでしまった。
いい加減、その態度に嫌気が差し催促しようとした矢先。
彼は思いきり息を吸い込むとその勢いのままに私に訴えた。
「私はレイリ―に未練はありませんし、メドビン嬢の事もどうとも思っていませんから! 」
急に大声を出すものだからびっくりした。
頬を紅潮させながら大声で訴える彼の剣幕に、何を言っているのかわからず一瞬ぽかんとしてしまう。
一旦停止した思考をどうにか再起動すると、ようやく彼の言った言葉の意図を理解することができた。
なるほど、今日の訪問の目的はそれだったのか。
いくら恋愛感情のない婚約者同士といえど、相手が心惹かれている異性がいれば少なからず面白くないと思うのは至極当然のこと。
だって将来その人と一生を添い遂げなければならないのだから。
もしそれがどちらかの勘違いで引き起こされたものならば、それほど不幸な夫婦関係もない。
だから彼は婚約者として当然の事を言っているのだ。
私を見つめるその瞳にどれほどの熱を持っていたとしても。
まぁ、きっとそんな考えも思い付くこともなく私に弁解しているのだろうけど。
だがこれでわかった。
彼は少なからず彼女を特別な存在として位置づけている。
そもそも前世の婚約者に似た人ならば彼が好意を持っていてもおかしくはない。
それでも私を一途に想っていてくれるのは、彼の美点なのだろう。
私には全くありがたくない美点だけど。
しかし彼のこの反応を見るに、もしかしたらあの計画が実行できるかも……。
そうなれば私の婚約破棄計画に大きな進展が見込めるかもしれない!
私はつい先日の、高等科進学前の春休みの時のことを思い出していた。
休みたいところではあったが、家にいたほうが悪化する可能性があったし、通えないほど体調が悪いわけではなかったから良いだろうと判断してのことだった。
幸いオリエンテーションが主で授業は無かったし、午前中で返されていたから体調が悪化することはなかった。
最初のうちはミリアにもエスティーにも心配されたが、私が平気だというと何も言わず納得してくれた。
そんな二人とは裏腹に厄介だったのはヴァリタスだ。
毎日馬車で送り迎えをすると聞かないわ、休み時間の度に様子を見に来るわ。
心配してくれるのは嬉しいけど、それ、迷惑だからやめてほしいと何度言いたくなったか。
馬車の件は頑なに拒否したら渋々受け入れてくれたし、休み時間は私が廊下に出て待ち合わせたものだから申し訳ないとやめてくれた。
全く、自分がこの国の第2王子だと自覚があるはずなのにどうして私の事となるとそう周りが見えなくなるような行動をとってしまうのか。
おかげでクラスメイトからさらに奇異の目で見られてしまったではないか。
ただでさえ前世が農民で魔法が全く使えないくせに第2王子の婚約者になったいけ好かない令嬢と印象最悪なのに。
そういう自分の身内に何かあると周りが見えなくなってしまうところは前世のバートンそっくりだ。
怒涛の週を終え、高等科に入学してから初めての土日休みを迎えた。
やっと休みが取れたと安堵した矢先。
早速休み1日目の午後13時、私の麗しい婚約者が見舞いに来てくれた。
「ごきげんよう、エスティー。体調はいかがですか?」
と言って私の自室に現れた彼は微笑みながら体調を気遣ってくれた。
手には花束を持っている。
わーうれしー。
こんな婚約者を持てて私ってばなんて幸せものー。
とでも言って喜ぶと思ったか!!
なんで私の自室に直接くるのよ! おかしいでしょ! 常識的に考えて。
来るなんて聞いてないし、彼の後ろで青ざめたメイドが可哀そうで怒るに怒れないし。
おそらく彼がサプライズだなんだと言って、応接室に通そうとしたメイドたちを押し切ってしまったのだろう。
一介のメイドが王子の命令に逆らえるわけがないし、彼もそれを知っての行動だろうし。
だから、なんで私の事になると非常識に突っ走ってしまうのかしらこの人は。
やっぱりどこかおかしいのだわ。
あぁ、やだなぁ。
いい加減私だって休みたいのよー。
いつもならそんな彼の暴挙にも完璧な笑顔でやり過ごせるけれど、今回ばかりは笑顔が引きつる。
出来れば花束をぶん投げて追い返したかったが、花たちに罪はない。
彼からそれを受け取ると生けてくれるように、後ろで青ざめていたメイドに頼んだ。
「寝ていなくても大丈夫なのですか?」
「えぇ、そこまで悪くありませんから。お気遣い感謝いたしますわ」
てめぇの前で寝れるか!!
おおっと、いけないいけない。
最近ナタリーから借りた『熱烈!極悪マフィアと箱入りお嬢様』を読んでから頭の中が少しだけ乱暴な考え方をしてしまうわ。
物語を読むとすぐ影響されてしまうの直さないと。口に出してしまったら取返しのつかないことになってしまうかもしれないし、気を付けなければ。
だがしかし、今の言葉は聞き捨てならない。
どこの令嬢に婚約者が来ているにも関わらず、ベッドで悠々と寝ていられる人がいるだろう。
もう少し物を考えて発言してほしい。
っていうかあなたが来なければ寝ていられたのですけどね!
心配してくれたのは本当に嬉しいけれど、タイミング考えてよ。
さっそくお得意のため息が出そうよ。
「よかった、大事ないのなら安心しました」
微笑む彼の笑顔は相も変わらず眩しい。
あはは、と愛想笑いで返してしまう。
「それでですね、エスティ。今日は言っておきたいことがあってきたのです」
「言っておきたいこと?」
彼はミリアに声を掛け、2人きりにしてほしいと頼む。
第2王子の願いに応えないわけにはいかず、私を心配そうに見つめるミリアだったが、渋々といった様子で部屋を出ていってしまった。
ああ、2人きりになってしまった。
それにしても話したいこととは何だろう。
思い当たる節がなく彼の言葉を素直に待つ、が。
なにが気まずいのか困ったような顔をしながら目線を右往左往するだけで、なかなか切り出してこない。
え? なにこの時間。
なに? 何かあるなら早く言ってくれればいいのに。
「あの、ですねエスティ」
やっと口を開いた彼の言葉をゆっくり待つ。
しかし、またもや目線をあっちこっちに巡らせ困り果てたような顔をして口を噤んでしまった。
いい加減、その態度に嫌気が差し催促しようとした矢先。
彼は思いきり息を吸い込むとその勢いのままに私に訴えた。
「私はレイリ―に未練はありませんし、メドビン嬢の事もどうとも思っていませんから! 」
急に大声を出すものだからびっくりした。
頬を紅潮させながら大声で訴える彼の剣幕に、何を言っているのかわからず一瞬ぽかんとしてしまう。
一旦停止した思考をどうにか再起動すると、ようやく彼の言った言葉の意図を理解することができた。
なるほど、今日の訪問の目的はそれだったのか。
いくら恋愛感情のない婚約者同士といえど、相手が心惹かれている異性がいれば少なからず面白くないと思うのは至極当然のこと。
だって将来その人と一生を添い遂げなければならないのだから。
もしそれがどちらかの勘違いで引き起こされたものならば、それほど不幸な夫婦関係もない。
だから彼は婚約者として当然の事を言っているのだ。
私を見つめるその瞳にどれほどの熱を持っていたとしても。
まぁ、きっとそんな考えも思い付くこともなく私に弁解しているのだろうけど。
だがこれでわかった。
彼は少なからず彼女を特別な存在として位置づけている。
そもそも前世の婚約者に似た人ならば彼が好意を持っていてもおかしくはない。
それでも私を一途に想っていてくれるのは、彼の美点なのだろう。
私には全くありがたくない美点だけど。
しかし彼のこの反応を見るに、もしかしたらあの計画が実行できるかも……。
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私はつい先日の、高等科進学前の春休みの時のことを思い出していた。
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お楽しみいただけると幸いです。