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第3章
66.計画と鈍感
「ねぇナタリー。私の婚約破棄計画の内容が纏まったから見てくれないかしら」
あの問題の昼食会から約1週間が経ち、少しづつメドビン嬢と距離を縮めることに成功している私たち(ほぼナタリーのおかげ)。
そんな中、私はどうすれば彼女とヴァリタスをくっつければよいのかを連日考えていたのだが、それがやっと形になったため興奮ぎみにナタリーに相談することにした。
「筋書はこうよ」
メモに書いた計画をナタリーに渡すと、彼女は真剣な顔で読み始めた。
私が考えた計画はと言うと……。
『ある日新たな友人としてメドビン嬢をヴァリタス様に相談する私。(この時はもちろんナタリーも同席)
私がタイミングを見計らってお花を摘みに席を外し、戻ったときにヴァリタス様と仲良く話している彼女の姿を見て、嫉妬を覚える(フリをする)。
魔法も完璧でヴァリタス様と仲良くなっていた彼女の存在に初めて危機感を覚えた私は、嫉妬のあまり彼女に嫌がらせをしてしまう。
その私の異変に気付いたナタリーはメドビン嬢に私の嫌がらせについてヴァリタス様に相談してみようと提案する。
相談していくうちに二人がもっと仲良くなる。嫉妬に狂った私にヴァリタス様が嫌気をさして婚約破棄!私解放!』
「どう⁈ どうかしらこの筋書き!」
「なんだか最初の方が具体的なわりに最後の方が適当なのが気になるところだけど……。まあ、悪くないような気はするわ」
提案した計画は私にとってはとても良い出来だと思っていたが、やはり客観的に見えない分少し不安だった。
けどナタリーがこういうなら自信が持てるわ。
「本当っ? じゃあこの計画に協力してくれたりする?」
「ええ、これぐらいなら別にいいけど」
良かった。これでこの計画に対しての大きな不安要素が無くなったわ。
見てわかる通りこれはナタリーがいなければうまくいかない計画。
彼女の協力なくして成功はありえないと言っても過言ではないくらいだ。ナタリーが協力を了承してくれてすごくありがたい。
しかし自然と笑みをこぼし喜ぶ私とは裏腹に、ナタリーは不安そうに私を見つめていた。
「ねぇエスティ、ずっと思っていたのだけど1つ大事なことを確認しなければならないことがあるでしょう?」
「大事なこと?」
ナタリーの真剣な眼差しに気づき喜びを一時中断する。
しかし彼女の言った”大事な事”が何なのか理解できず困惑する。
なんだろう? 何かあったっけ?
私が答えを導き出せないのに気づきナタリーはさらに眉をひそめたが、観念したのかそっと口を開いた。
「ヴァリタス殿下がどうしてあなたを好きなのかってことよ」
「え? でもそれは……」
ただ私が普通の令嬢と明らかにかけ離れた変人だから、それが面白くて好意を抱いているのではないか……と思うけど。
確かに明確に私のどこが好きなのかを聞いたことはなかった。
いや、好意を抱いたであろう出来事は今でも鮮明に思い出せる。
恐らく彼が私に前世への不安を吐露し、それを私が慰めた、あの10歳の時の出来事が発端であろう。
しかし、それだけで彼がここまで不出来な令嬢に対し強い好意を寄せるほどの理由になるのかまでは、正直わからない。
何か他の理由か出来事があるのかもしれないが……、これだというものが思い出せないし、理由だって思いつかない。
彼がどうして私に好意を寄せるのか、理由がはっきりせずモヤモヤするし気にならないと言えば嘘になる。
だが私は、自分に好意を持つ相手に『私のどこが好きなの?』なんて聞ける程図太い人間ではないのだ。
こうして私はこの6年間、彼がなぜ私に好意を寄せているのか曖昧にしたまま時を過ごしてしまっているのである。
そんな私が彼女の問いに応えられる訳もなく、言葉を詰まらせる私を見て真剣な瞳を向けるナタリーはこのまま答えが出てくることはないと察したのだろう。
淡々とした口調で言い放った。
「明確な理由もなしに人を好きになることはあると思うわ。でも、今ヴァリタス様は確実にあなたに強い好意を持っている。なら、その理由を覆すほどの魅力か、あるいは出来事をヴァリタス様とメドビン嬢には要求する必要があるのよ」
「あっ」
確かに相手の好みも知らずにアピールしても空回りする可能性の方が明らかに高い。
今こうして立てた計画だって、ヴァリタスが好意を持つような行動をメドビン嬢ができない場合、無駄に終わってしまうかもしれない。
でも、メドビン嬢はバートンの婚約者と瓜二つらしいのだ。
だったら、私のような政略的な婚約相手よりも昔の想い人の方に惹かれるのは必然ではないの?
それとも私が知らないだけで、前世の婚約者を好きにならない決定的な理由があったりするってこと?
いや、でも、そんなはずない。だってあの2人は……。
「エスティったら……。まだ、ヴェリタス様がどれほどあなたに執着しているのか、わかっていないのね」
「あの方が私に執着……?」
彼女の呟きが思いもよらない事だったばかりに、つい思考が止まってしまった。
しかしあのヴァリタスが執着……? ただの面白珍獣に夢中になっているだけでなく?
いくら幼いころ慰めてもらったとはいえ、聡明で賢いあのヴァリタスがこんな変人に執着するはずはない。
ナタリーの見えているヴァリタスが私の見えている彼とかけ離れていて、本当に同じ人の事を言っているのかわからなくなる。
さらに頭が困惑してきて、訳がわからなくなってきた。
頭を抱える私を後目に、ナタリーは深い深いため息を漏らすと呆れたように呟いた。
「まったく……。エスティも厄介な人に付き纏われているとは思うけど、これじゃあどっちもどっちじゃない」
その小さな呟きは、彼女の使用人には届いても当の本人に届くことはなかった。
あの問題の昼食会から約1週間が経ち、少しづつメドビン嬢と距離を縮めることに成功している私たち(ほぼナタリーのおかげ)。
そんな中、私はどうすれば彼女とヴァリタスをくっつければよいのかを連日考えていたのだが、それがやっと形になったため興奮ぎみにナタリーに相談することにした。
「筋書はこうよ」
メモに書いた計画をナタリーに渡すと、彼女は真剣な顔で読み始めた。
私が考えた計画はと言うと……。
『ある日新たな友人としてメドビン嬢をヴァリタス様に相談する私。(この時はもちろんナタリーも同席)
私がタイミングを見計らってお花を摘みに席を外し、戻ったときにヴァリタス様と仲良く話している彼女の姿を見て、嫉妬を覚える(フリをする)。
魔法も完璧でヴァリタス様と仲良くなっていた彼女の存在に初めて危機感を覚えた私は、嫉妬のあまり彼女に嫌がらせをしてしまう。
その私の異変に気付いたナタリーはメドビン嬢に私の嫌がらせについてヴァリタス様に相談してみようと提案する。
相談していくうちに二人がもっと仲良くなる。嫉妬に狂った私にヴァリタス様が嫌気をさして婚約破棄!私解放!』
「どう⁈ どうかしらこの筋書き!」
「なんだか最初の方が具体的なわりに最後の方が適当なのが気になるところだけど……。まあ、悪くないような気はするわ」
提案した計画は私にとってはとても良い出来だと思っていたが、やはり客観的に見えない分少し不安だった。
けどナタリーがこういうなら自信が持てるわ。
「本当っ? じゃあこの計画に協力してくれたりする?」
「ええ、これぐらいなら別にいいけど」
良かった。これでこの計画に対しての大きな不安要素が無くなったわ。
見てわかる通りこれはナタリーがいなければうまくいかない計画。
彼女の協力なくして成功はありえないと言っても過言ではないくらいだ。ナタリーが協力を了承してくれてすごくありがたい。
しかし自然と笑みをこぼし喜ぶ私とは裏腹に、ナタリーは不安そうに私を見つめていた。
「ねぇエスティ、ずっと思っていたのだけど1つ大事なことを確認しなければならないことがあるでしょう?」
「大事なこと?」
ナタリーの真剣な眼差しに気づき喜びを一時中断する。
しかし彼女の言った”大事な事”が何なのか理解できず困惑する。
なんだろう? 何かあったっけ?
私が答えを導き出せないのに気づきナタリーはさらに眉をひそめたが、観念したのかそっと口を開いた。
「ヴァリタス殿下がどうしてあなたを好きなのかってことよ」
「え? でもそれは……」
ただ私が普通の令嬢と明らかにかけ離れた変人だから、それが面白くて好意を抱いているのではないか……と思うけど。
確かに明確に私のどこが好きなのかを聞いたことはなかった。
いや、好意を抱いたであろう出来事は今でも鮮明に思い出せる。
恐らく彼が私に前世への不安を吐露し、それを私が慰めた、あの10歳の時の出来事が発端であろう。
しかし、それだけで彼がここまで不出来な令嬢に対し強い好意を寄せるほどの理由になるのかまでは、正直わからない。
何か他の理由か出来事があるのかもしれないが……、これだというものが思い出せないし、理由だって思いつかない。
彼がどうして私に好意を寄せるのか、理由がはっきりせずモヤモヤするし気にならないと言えば嘘になる。
だが私は、自分に好意を持つ相手に『私のどこが好きなの?』なんて聞ける程図太い人間ではないのだ。
こうして私はこの6年間、彼がなぜ私に好意を寄せているのか曖昧にしたまま時を過ごしてしまっているのである。
そんな私が彼女の問いに応えられる訳もなく、言葉を詰まらせる私を見て真剣な瞳を向けるナタリーはこのまま答えが出てくることはないと察したのだろう。
淡々とした口調で言い放った。
「明確な理由もなしに人を好きになることはあると思うわ。でも、今ヴァリタス様は確実にあなたに強い好意を持っている。なら、その理由を覆すほどの魅力か、あるいは出来事をヴァリタス様とメドビン嬢には要求する必要があるのよ」
「あっ」
確かに相手の好みも知らずにアピールしても空回りする可能性の方が明らかに高い。
今こうして立てた計画だって、ヴァリタスが好意を持つような行動をメドビン嬢ができない場合、無駄に終わってしまうかもしれない。
でも、メドビン嬢はバートンの婚約者と瓜二つらしいのだ。
だったら、私のような政略的な婚約相手よりも昔の想い人の方に惹かれるのは必然ではないの?
それとも私が知らないだけで、前世の婚約者を好きにならない決定的な理由があったりするってこと?
いや、でも、そんなはずない。だってあの2人は……。
「エスティったら……。まだ、ヴェリタス様がどれほどあなたに執着しているのか、わかっていないのね」
「あの方が私に執着……?」
彼女の呟きが思いもよらない事だったばかりに、つい思考が止まってしまった。
しかしあのヴァリタスが執着……? ただの面白珍獣に夢中になっているだけでなく?
いくら幼いころ慰めてもらったとはいえ、聡明で賢いあのヴァリタスがこんな変人に執着するはずはない。
ナタリーの見えているヴァリタスが私の見えている彼とかけ離れていて、本当に同じ人の事を言っているのかわからなくなる。
さらに頭が困惑してきて、訳がわからなくなってきた。
頭を抱える私を後目に、ナタリーは深い深いため息を漏らすと呆れたように呟いた。
「まったく……。エスティも厄介な人に付き纏われているとは思うけど、これじゃあどっちもどっちじゃない」
その小さな呟きは、彼女の使用人には届いても当の本人に届くことはなかった。
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お楽しみいただけると幸いです。