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第3章
67.癒しの彼女
ナタリーに釘を刺されてから数日経ったが、いまだヴァリタスが私のどこに惹かれているのかを聞けずにいた。
と言うより、彼が私の屋敷に見舞いに来た以来、ほとんど会っていないのだ。
いくらBクラスとSクラスの教室が別棟で離れているからと言っても、彼から私に会いに来そうなものなのに。
あら? もしや私の体調が悪いときに迷惑そうな対応をしたから、来るのを躊躇っているのか?
案外可愛いとこあるじゃない。
しかし、私がわざわざ彼を訪ねて喜ばせるのもなんだか嫌だし……。
どうしよう。このまま放っておいても、またナタリーに冷ややかな目で見られるのもなぁ。
と、このように連日同じことをグルグルグルグル悩んでいるのだ。
自分でもいい加減この優柔不断さに辟易している。
「あの、ベルフェリト様。元気が無いようですけど、 何か悩み事でもあるのですか?」
私がう~ん、う~んと唸っていたのが気になったのか、優しいメドビン嬢が心配そうにしている。
ああ、今は彼女だけが私の癒しだわぁ。
「いいえ、何でもないの。ありがとう、メドビン嬢」
「そんな、お礼なんて……。私は何も……」
急に頬を赤らめ、下を向いてしまう。
何だろう。ものすっごく可愛い生き物が私の目の前に……。
ぎゅぅ。
「きゃっ!! ベ、ベルフェリトさまっ!!」
「お願い、今はこのまま抱き着かせて」
彼女の腰に手をまわし、顔を埋める。
ふふ、今なら変態と罵られてもいい。
この温もりを味わえるなら、何でも来いよ!!
ああ、でもこの安心感、本当に落ち着く……。
『……へ、いか。……陛下、私は陛下が心配です。そんなに自分を削ってまで民を、臣民を思うのは、苦しくないですか?』
『ありがとう。でも大丈夫だよ、私はそのために生きているのだから』
『しかし……。いつか陛下が壊れてしまいそうで、私は、本当に……』
『君は優しいね、だからバートンも君を選んだのだろう』
よかった、君がバートンの婚約者で。彼は優しいから、優しすぎる人だから、きっと……。
まるですりガラスのように曖昧に思い出す記憶の中で、心配そうに優しく笑った彼女の瞳はルビーのように赤く光っており、本当に美しくて……。
バシンっ!
「きゃっ」
誰かに頭をチョップされ、我に返る。
今、何か大事な事を思い出したような……。
っていうか、まだ痛いのだけど。
もう、ナタリーね。全くいくら私がメドビン嬢に抱き着くなんていう変態行為をしていたからといってチョップはないでしょ、チョップは!
抗議をしようと、振り向くとそこに思いもよらない人物が立っており、口を開いたまま声が出ずただ間抜けに口を開いたままになってしまった。
「ヴ、ヴァリタス……様」
ようやく出た声で彼の名前を呼ぶ。
私も大層驚いたが、その横でにいたメドビン嬢は驚きすぎて硬直してしまっている。
「エスティ。あなた令嬢になんてことをしているのですか」
怒ってる。ものすごく怒っている。
ああ、だから見られたくなかったのに。
ムスッと怒った顔をしていてもその顔の美しさは変わることがなく、しかしそれはそれで迫力がある。
しかし怒っていたのも束の間、大きなため息を吐くとそれまで横腹に当てていた両手を下ろした。
何よ、なんか最近私人にため息吐かれるの多くない?
そんなに呆れるようなことしてるかしら。
「申し訳ありません、メドビン嬢。私の婚約者が迷惑を掛けて」
「め、迷惑だなんてそんな……。仲良くさせて頂いて、私はとても嬉しいです」
先ほどと同様に頬を赤らめるメドビン嬢に癒されている私に対しまた冷ややかな視線を送るヴァリタス。
「すみません、こちらに座っても?」
え? 座るの? ここに?
一体何を考えているのよ! 女性しかいないベンチに座るだなんて!
しかし、ここで彼の願いに私たちが反対することができない事をわかっているのか、有無を言わさずベンチに腰掛けた。
「ち、ちょっとヴァリタスさま? なぜ私とメドビン嬢の間に座るのですか?」
なぜか当たり前のように私とメドビン嬢の横に座った我が婚約者。
ああ、私の癒しと距離ができてしまった。
しかもその間に、この世で一番嫌なものが挟まっているし。
「またエスティがメドビン嬢に良からぬことをしないようにするためです」
「まぁ、でもそれならヴァリタス様は男性なのですから、メドビン嬢にとってはヴァリタス様の方が危険なのではないですか?」
「なっ! 失礼な。私には婚約者がいるのですから、あなたのような不埒な真似はしません」
「はい⁈ それが婚約者に言う言葉ですか⁈」
やいのやいの言う私たちに唖然として見つめるメドビン嬢。
それはそうだろう、一国の王子とその婚約者――しかも公爵令嬢――がこんな陳腐な言い合いをしている場面などだれが想像するだろうか。
きっと大人たちが見たら、貴族らしからぬ言動に頭を抱えるだろう。
しかし、メドビン嬢はそんな大人たちのような人ではなく。
ふいに噴き出すと、可愛らしい声でクスクスと笑った。
「ふふ、お二人ともとても仲が宜しいのですね」
なんなのよ、このほんわかムード。
これからドロドロの恋愛劇を繰り広げる予定の3人とは思えない雰囲気だわ。
私までため息が零れてしまいそうだわ。
そういえば、と先ほどぼんやりと見えた彼女のことを思い出す。
あれは間違いなく前世の記憶。
そして私の認識が正しければ、話していた相手は……おそらくバートンの婚約者、レイリーだろう。
なぜそれが分かったかと言うと。
彼女は本当にメドビン嬢とそっくりだったから。
ぼんやりとしていてはっきり顔が見えたわけではないけれど、声や瞳の色は全く同じだったことはわかった。
確かにあれほど似ていれば、思わず名前を呼んでしまっても仕方ないかも。
しかし、前はレイリーという名前を考えるだけでも頭痛がしたのに今回は思い出しても何の痛みも感じなかった。
なんなのよ、もう。私の記憶とか体とか、一体どうなっているのかしら。
と言うより、彼が私の屋敷に見舞いに来た以来、ほとんど会っていないのだ。
いくらBクラスとSクラスの教室が別棟で離れているからと言っても、彼から私に会いに来そうなものなのに。
あら? もしや私の体調が悪いときに迷惑そうな対応をしたから、来るのを躊躇っているのか?
案外可愛いとこあるじゃない。
しかし、私がわざわざ彼を訪ねて喜ばせるのもなんだか嫌だし……。
どうしよう。このまま放っておいても、またナタリーに冷ややかな目で見られるのもなぁ。
と、このように連日同じことをグルグルグルグル悩んでいるのだ。
自分でもいい加減この優柔不断さに辟易している。
「あの、ベルフェリト様。元気が無いようですけど、 何か悩み事でもあるのですか?」
私がう~ん、う~んと唸っていたのが気になったのか、優しいメドビン嬢が心配そうにしている。
ああ、今は彼女だけが私の癒しだわぁ。
「いいえ、何でもないの。ありがとう、メドビン嬢」
「そんな、お礼なんて……。私は何も……」
急に頬を赤らめ、下を向いてしまう。
何だろう。ものすっごく可愛い生き物が私の目の前に……。
ぎゅぅ。
「きゃっ!! ベ、ベルフェリトさまっ!!」
「お願い、今はこのまま抱き着かせて」
彼女の腰に手をまわし、顔を埋める。
ふふ、今なら変態と罵られてもいい。
この温もりを味わえるなら、何でも来いよ!!
ああ、でもこの安心感、本当に落ち着く……。
『……へ、いか。……陛下、私は陛下が心配です。そんなに自分を削ってまで民を、臣民を思うのは、苦しくないですか?』
『ありがとう。でも大丈夫だよ、私はそのために生きているのだから』
『しかし……。いつか陛下が壊れてしまいそうで、私は、本当に……』
『君は優しいね、だからバートンも君を選んだのだろう』
よかった、君がバートンの婚約者で。彼は優しいから、優しすぎる人だから、きっと……。
まるですりガラスのように曖昧に思い出す記憶の中で、心配そうに優しく笑った彼女の瞳はルビーのように赤く光っており、本当に美しくて……。
バシンっ!
「きゃっ」
誰かに頭をチョップされ、我に返る。
今、何か大事な事を思い出したような……。
っていうか、まだ痛いのだけど。
もう、ナタリーね。全くいくら私がメドビン嬢に抱き着くなんていう変態行為をしていたからといってチョップはないでしょ、チョップは!
抗議をしようと、振り向くとそこに思いもよらない人物が立っており、口を開いたまま声が出ずただ間抜けに口を開いたままになってしまった。
「ヴ、ヴァリタス……様」
ようやく出た声で彼の名前を呼ぶ。
私も大層驚いたが、その横でにいたメドビン嬢は驚きすぎて硬直してしまっている。
「エスティ。あなた令嬢になんてことをしているのですか」
怒ってる。ものすごく怒っている。
ああ、だから見られたくなかったのに。
ムスッと怒った顔をしていてもその顔の美しさは変わることがなく、しかしそれはそれで迫力がある。
しかし怒っていたのも束の間、大きなため息を吐くとそれまで横腹に当てていた両手を下ろした。
何よ、なんか最近私人にため息吐かれるの多くない?
そんなに呆れるようなことしてるかしら。
「申し訳ありません、メドビン嬢。私の婚約者が迷惑を掛けて」
「め、迷惑だなんてそんな……。仲良くさせて頂いて、私はとても嬉しいです」
先ほどと同様に頬を赤らめるメドビン嬢に癒されている私に対しまた冷ややかな視線を送るヴァリタス。
「すみません、こちらに座っても?」
え? 座るの? ここに?
一体何を考えているのよ! 女性しかいないベンチに座るだなんて!
しかし、ここで彼の願いに私たちが反対することができない事をわかっているのか、有無を言わさずベンチに腰掛けた。
「ち、ちょっとヴァリタスさま? なぜ私とメドビン嬢の間に座るのですか?」
なぜか当たり前のように私とメドビン嬢の横に座った我が婚約者。
ああ、私の癒しと距離ができてしまった。
しかもその間に、この世で一番嫌なものが挟まっているし。
「またエスティがメドビン嬢に良からぬことをしないようにするためです」
「まぁ、でもそれならヴァリタス様は男性なのですから、メドビン嬢にとってはヴァリタス様の方が危険なのではないですか?」
「なっ! 失礼な。私には婚約者がいるのですから、あなたのような不埒な真似はしません」
「はい⁈ それが婚約者に言う言葉ですか⁈」
やいのやいの言う私たちに唖然として見つめるメドビン嬢。
それはそうだろう、一国の王子とその婚約者――しかも公爵令嬢――がこんな陳腐な言い合いをしている場面などだれが想像するだろうか。
きっと大人たちが見たら、貴族らしからぬ言動に頭を抱えるだろう。
しかし、メドビン嬢はそんな大人たちのような人ではなく。
ふいに噴き出すと、可愛らしい声でクスクスと笑った。
「ふふ、お二人ともとても仲が宜しいのですね」
なんなのよ、このほんわかムード。
これからドロドロの恋愛劇を繰り広げる予定の3人とは思えない雰囲気だわ。
私までため息が零れてしまいそうだわ。
そういえば、と先ほどぼんやりと見えた彼女のことを思い出す。
あれは間違いなく前世の記憶。
そして私の認識が正しければ、話していた相手は……おそらくバートンの婚約者、レイリーだろう。
なぜそれが分かったかと言うと。
彼女は本当にメドビン嬢とそっくりだったから。
ぼんやりとしていてはっきり顔が見えたわけではないけれど、声や瞳の色は全く同じだったことはわかった。
確かにあれほど似ていれば、思わず名前を呼んでしまっても仕方ないかも。
しかし、前はレイリーという名前を考えるだけでも頭痛がしたのに今回は思い出しても何の痛みも感じなかった。
なんなのよ、もう。私の記憶とか体とか、一体どうなっているのかしら。
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お楽しみいただけると幸いです。