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第3章
116.悪い知らせと情報提供
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家に帰ると、ミリアを呼んだ。
どうやら私よりも早く帰ってきていたようで、すぐにミリアが顔を出した。
「ただいまミリア」
「お帰りなさいませ、お嬢様。お体の具合は大丈夫ですか?」
「ええ、ちょっと皆の対応に体力を使ってしまったけど……。もう本当に大丈夫よ。それよりどうだった? 久しぶりの教会は」
そう質問すると、ミリアは途端に不機嫌な顔になった。
あれ? どうしたんだろう?
何か嫌なことでもあったのかしら?
「どうしたのミリア? 教会で何かあった?」
下から覗き込むようにミリアを見る。
するとそんな私に驚いたのか、サッと避けられてしまった。
「――っ。いいえ、特に何もありませんでしたよ。それより、プアドール様からお返事を頂きました」
そう言ってミリアは私に白い封筒を手渡した。
まさかその日のうちに返事をもらえるとは思っていなかった私は、それを素早く受け取る。
「ありがとうミリア! まさか今日お返事を貰えるなんて」
先ほどまでの疲れが嘘のように吹っ飛んだ。
早く中身を確認したくて自室に急いで戻るとそうそうに手紙の封を切った。
一体どんな返事が書かれているのか。
もしかしたら簡単に前世の記憶が戻ったりして!
そんな希望を胸に中身を確認すると……。
中から出てきたのは、封筒に入るほどの大きさの薄く真っ黒な金属だった。
中心には青色で魔法陣が描かれている。
なんだろうこれ。
若干拍子抜けしつつも、それを観察する。
が何なのかは私ではさっぱりわからない。
金属の招待がわからず不思議に思いながらも、同封されていたメッセージカードを読んだ。
『
親愛なるエスティ・ベルフェリト様
机に置いて、私を強く思い浮かべてください
すぐに繋がります
アレス・プアドール
』
「え、これだけ?」
短い文章に戸惑いながらもとりあえず金属板を机の上に置いてみる。
しかし、”繋がる”ってどういう意味なのかしら。
訳が分からないながらも、魔法使い様を強く思い浮かべる。
すると、金属板に描かれていた魔法陣が急に光だした。
「!」
魔法陣は次第に何かを描くように下から光を集めて何かの形を形成していく。
形成されたその形は紛れもなく……。
「うわぁっ! え、えぇ⁈ プ、プアドール様⁈」
魔法陣の上にはものすごく小さな魔法使い様が浮かび上がっていた。
半透明な小さな彼は向こう側が透けて見えているものの、それでもまるでそこにいるかのように彼そのものだった。
驚いている私に笑いかけるように彼は柔和な笑みを浮かべていた。
『お久しぶりです、エスティ・ベルフェリト様。お手紙いただき、光栄至極に存じます』
「し、しゃべった!!」
『これも一種の魔法なのです。今ベルフェリト様とお話しているのは紛れもなく今現在教会にいる私です』
令嬢らしからぬ、大袈裟なリアクションにも笑って説明してくれる魔法使い様。
私には一切仕組みがわからないが、こういう魔法もあるということなのだろう。
それにしても魔法ってやっぱりすごい。
しかし”繋がる”とはこういうことだったのか。
いやいや、それにしてもすっごく驚いた。
『それで、いただいた手紙の件なのですが……』
あっ、忘れてた。
魔法の技術に圧倒されたため、すっかり本題を忘れた私に彼は申し訳なさそうに笑いながら返事を返してくれた。
『残念ながら、前世の記憶を引き出す魔法はないのです』
「そう、ですか……」
こんなことも容易にできるのに、前世の記憶を思い出させることはできないのか。
そう思うと、やっぱりまだまだ魔法ってできないこともあるのだと思い知らされる。
いやしかし、やっぱりこれは何かに頼らずに自力でどうにかするべき、ということなのかもしれない。
ん? でもそれならばどうしてこのような形を取って連絡してきたのだろうか。
それだけ伝えるためならば、手紙を書けば十分なはずなのに。
そんな私の疑問はそのままに、彼は続いてある情報を提供してくれた。
『もし、ベルフェリト様の前世の事を知りたいのでしたら、王宮にある図書館に行ってみてはいかがでしょうか? あそこならこの国の歴史に関する書物に関してのことならなんでも揃っていると聞いております。それにあの城はクオフォリア帝国時代のものもそのままにしているところがいくつかありますから、書物もそのまま保管しているかもしれません。ヴァリタス殿下の婚約者である貴方様でしたら、お通しいただけるかもしれませんよ』
なるほど。
王宮の図書館か。
それは盲点だった。
それなら確かに私の知りえない情報が載っている書物も見つかるかも。
「ありがとうございます! プアドール様!」
思わぬ情報提供に喜び、思わず大きな声でお礼を伝えた。
すると彼はその言葉に応えるようにニッコリと笑顔を返してくれた。
しかし、すぐにその笑顔を曇らせた。
『ベルフェリト様、くれぐれもお気を付けください。私のように前世を知っていても好意的に接してくださる方は、この国ではあまりいませんから』
彼のその表情は本当に私を案じてのものだと、すぐにわかった。
私を心配してくれる人は少ない。
「……はい」
その言葉に嬉しく思いながらも、肝に銘じるように私は返事をした。
どうやら私よりも早く帰ってきていたようで、すぐにミリアが顔を出した。
「ただいまミリア」
「お帰りなさいませ、お嬢様。お体の具合は大丈夫ですか?」
「ええ、ちょっと皆の対応に体力を使ってしまったけど……。もう本当に大丈夫よ。それよりどうだった? 久しぶりの教会は」
そう質問すると、ミリアは途端に不機嫌な顔になった。
あれ? どうしたんだろう?
何か嫌なことでもあったのかしら?
「どうしたのミリア? 教会で何かあった?」
下から覗き込むようにミリアを見る。
するとそんな私に驚いたのか、サッと避けられてしまった。
「――っ。いいえ、特に何もありませんでしたよ。それより、プアドール様からお返事を頂きました」
そう言ってミリアは私に白い封筒を手渡した。
まさかその日のうちに返事をもらえるとは思っていなかった私は、それを素早く受け取る。
「ありがとうミリア! まさか今日お返事を貰えるなんて」
先ほどまでの疲れが嘘のように吹っ飛んだ。
早く中身を確認したくて自室に急いで戻るとそうそうに手紙の封を切った。
一体どんな返事が書かれているのか。
もしかしたら簡単に前世の記憶が戻ったりして!
そんな希望を胸に中身を確認すると……。
中から出てきたのは、封筒に入るほどの大きさの薄く真っ黒な金属だった。
中心には青色で魔法陣が描かれている。
なんだろうこれ。
若干拍子抜けしつつも、それを観察する。
が何なのかは私ではさっぱりわからない。
金属の招待がわからず不思議に思いながらも、同封されていたメッセージカードを読んだ。
『
親愛なるエスティ・ベルフェリト様
机に置いて、私を強く思い浮かべてください
すぐに繋がります
アレス・プアドール
』
「え、これだけ?」
短い文章に戸惑いながらもとりあえず金属板を机の上に置いてみる。
しかし、”繋がる”ってどういう意味なのかしら。
訳が分からないながらも、魔法使い様を強く思い浮かべる。
すると、金属板に描かれていた魔法陣が急に光だした。
「!」
魔法陣は次第に何かを描くように下から光を集めて何かの形を形成していく。
形成されたその形は紛れもなく……。
「うわぁっ! え、えぇ⁈ プ、プアドール様⁈」
魔法陣の上にはものすごく小さな魔法使い様が浮かび上がっていた。
半透明な小さな彼は向こう側が透けて見えているものの、それでもまるでそこにいるかのように彼そのものだった。
驚いている私に笑いかけるように彼は柔和な笑みを浮かべていた。
『お久しぶりです、エスティ・ベルフェリト様。お手紙いただき、光栄至極に存じます』
「し、しゃべった!!」
『これも一種の魔法なのです。今ベルフェリト様とお話しているのは紛れもなく今現在教会にいる私です』
令嬢らしからぬ、大袈裟なリアクションにも笑って説明してくれる魔法使い様。
私には一切仕組みがわからないが、こういう魔法もあるということなのだろう。
それにしても魔法ってやっぱりすごい。
しかし”繋がる”とはこういうことだったのか。
いやいや、それにしてもすっごく驚いた。
『それで、いただいた手紙の件なのですが……』
あっ、忘れてた。
魔法の技術に圧倒されたため、すっかり本題を忘れた私に彼は申し訳なさそうに笑いながら返事を返してくれた。
『残念ながら、前世の記憶を引き出す魔法はないのです』
「そう、ですか……」
こんなことも容易にできるのに、前世の記憶を思い出させることはできないのか。
そう思うと、やっぱりまだまだ魔法ってできないこともあるのだと思い知らされる。
いやしかし、やっぱりこれは何かに頼らずに自力でどうにかするべき、ということなのかもしれない。
ん? でもそれならばどうしてこのような形を取って連絡してきたのだろうか。
それだけ伝えるためならば、手紙を書けば十分なはずなのに。
そんな私の疑問はそのままに、彼は続いてある情報を提供してくれた。
『もし、ベルフェリト様の前世の事を知りたいのでしたら、王宮にある図書館に行ってみてはいかがでしょうか? あそこならこの国の歴史に関する書物に関してのことならなんでも揃っていると聞いております。それにあの城はクオフォリア帝国時代のものもそのままにしているところがいくつかありますから、書物もそのまま保管しているかもしれません。ヴァリタス殿下の婚約者である貴方様でしたら、お通しいただけるかもしれませんよ』
なるほど。
王宮の図書館か。
それは盲点だった。
それなら確かに私の知りえない情報が載っている書物も見つかるかも。
「ありがとうございます! プアドール様!」
思わぬ情報提供に喜び、思わず大きな声でお礼を伝えた。
すると彼はその言葉に応えるようにニッコリと笑顔を返してくれた。
しかし、すぐにその笑顔を曇らせた。
『ベルフェリト様、くれぐれもお気を付けください。私のように前世を知っていても好意的に接してくださる方は、この国ではあまりいませんから』
彼のその表情は本当に私を案じてのものだと、すぐにわかった。
私を心配してくれる人は少ない。
「……はい」
その言葉に嬉しく思いながらも、肝に銘じるように私は返事をした。
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