悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第3章

125.彼のいる理由

おそらく彼はこの国を大切に思っている。だって人間嫌いの龍が200年も前からずっと守り続けるなんて相当この国に思い入れがあるということだ。
そして200年という時間の事を考える、とおそらくバートンかそれに近い人と契約しているはず。
そんな彼が私の事を良く思っているはずがない。

私は彼への警戒心を一層強めた。

「あなたは200年もこの国を守ってきたって聞いたわ。ということはそれほどこの国が大事なのでしょう? だったら私のことなんて排除したいと思っているのではないの?」

彼は私の言葉に目を細めると、急に顔色が悪くなった。
そして顔を逸らすと、深刻そうに俯いた。

なんだか大きなショックを受けたような彼の反応に戸惑う。

「やっぱり僕の事、思い出せてないみたいだね」

そう言って深くため息を吐くと、小さな声で呟いた。

「……本当に忌々しい。貴方が止めなければ、あいつなんかすぐに殺してやったのに」

寂しそうに眼を細める彼に敵意がない事は明らかだった。
だが、そこから出た物騒な単語に警戒心を解く気にはなれない。

しかし彼の言い方からして、彼は私の前世を知っているのは明らかだ。
それに彼の反応からして私の事をそこまで悪く思っていないようにも見える。
ということは契約者がバートンやその関係者でもなさそうだ。

でも、私には龍と契約なんてした記憶はない。
ならば彼は一体誰と契約したのだろう。
私の身内の誰か?

でも、確か父上の契約龍は黒龍じゃなかったはずだし。

それともやはり、ただ私が思い出せていないだけなのか。
考えたくないけど、その可能性は高い。

「でも良いよ、貴方を守るためなら思い出せないままでも。少しつらいけど、我慢する」

ぱっと顔を上げ、私を見つめながらそう言いったものの、寂しそうな声と表情から彼の悲しみが伝わってくる。
やっぱり、もしかして彼と私って。

「ねぇ、もしかして貴方と契約したのって、私、なの?」

「そうだよ」

私の疑問に何ともないようにそっぽを向いて言う彼の言葉は、私にとっては衝撃だった。
龍との契約なんて大きなことを忘れてしまっていること自体がおかしい。
そんな儀式をしていたなら、一生で一度の忘れられないような経験なはず。

そんなことも忘れているなんて、やっぱり私の記憶はおかしい。
というかどこか破綻しているのかもしれない。

しかし私と契約していたのなら、彼はどうしてまだこの国にいるのだろう。
契約は私が死んだときに解消されているはず。
それならば、彼はもうここにいる必要などないのだ。

それなのに200年もの間この国に留まっている、ということは。
彼はきっとこの国を、特に私が死んだあとの国が好きなのだということになる。
それならば、たとえ私と昔契約していたとしいう事実があったとしても警戒するのが普通なのではないの?

だって、私はこの国に牙をむく人間だと思われてもおかしくないの存在だもの。
そういう偏見の目で見られるような前世を持っているという自覚ぐらいはある。

「でも、200年もここにいるってことは貴方はこの国が大事なのよね? それなのに私の事をどうしてそんなに大事にするの?」

「貴方がそう願ったからだよ」

またしてもそっぽを向きながら答える彼の表情は見ないものの、どうでも良さそうな声だけは伝わってきた。

しかし、彼の答えからまたしても疑問が湧いてくる。
私が願ったってどういうこと?
一体私が彼に何を願ったっていうの。

「貴方はこの国が、人々が大好きだったから。だから僕に願ったんだよ。ずっと守ってほしいって……」

私が疑問を口にする前に、彼がその答えを教えてくれる。

しかし、たったそれだけ?
たかが昔契約した主の願いを叶えるためだけにしては200年という月日は長すぎる。

ただでさえ人間嫌いの龍にとっては、人々の多いこの国に留まること自体酷なことのはずだ。

「でも、それだけでずっとこの国を守っていたわけじゃないでしょう?」

「いいや、それだけだよ。そもそも僕はこの国のことなんて全く、これっぽっちも好きじゃないし。それこそ憎らしいほどだ。いつでも滅んでくれて構わないとさえ思ってるよ」

「じゃあ!」

じゃあなんでそんな事をずっと。
ずっと……。

問いかけるのが残酷な事だって私だってわかってる。
だってそれは彼が先ほど教えてくれていたから。

そうか、彼はずっと叶え続けていたんだ。
前世の私が願った、曖昧で終わりの見えない願いを200年もずっと……。

一体どうしてそんなことができたんだろう。
だってもう私はいないのに……。

ん?

あれ、もしかして。

「もしかして貴方って、私が生まれてくること、知ってたの?」

「知ってたよ。だって、貴方はまだ……」

そう言いかけて、彼は手で口を覆った。
しまったとでも言いそうな表情だった。

しかし、今の言葉から彼は私に関することで何か隠している。
探るように彼を睨み付けると、やっとこっちを向いた彼は焦った様子で笑っていた。

「こ、これ以上はたとえ主様の願いでも叶えられないよ。僕の目的は主様を守ること。主様が危険に晒されるようなことをするわけにはいかない」

一体どうして私が自分の事を知って、危険に晒されるのかはわからないが彼の意志は固そうだった。

仕方なく彼を睨み付けるだけで我慢した。

しかし、彼と話していると疑問ばかり生まれてくる。
私はこんなにまで自分の事を思い出せていないのか。

そう思うと自分が情けなくてしょうがなかった。
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