悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

文字の大きさ
135 / 339
第4章

134.運命の血筋

しかし、本当に彼女が聖女候補までの実力を持った人だったならばおばあ様の主張には1つの疑問が生まれる。
それはリヴェリオと契約した、あの黒龍の存在だ。

龍は神聖な存在と言われているが、その中でも黒龍は白龍に並ぶほど神様に近い存在とまで言われている。
俗にいう、神の使いのような存在だ。

そんな黒龍が邪悪な存在と契約を結ぶわけがない。

「でも、皇帝は黒龍と契約していましたよね。
黒龍といえば神様に近いとされる龍の中でもさらに神聖力の高い龍の一種。
そんな龍と契約していたならば、皇帝はそこまで悪い人間ではなかったのではないですか?」

ありのままに疑問に思ったことを口に出してみた。
するとおばあ様は一瞬驚いたように目を見開くと、信じられないものでも見たかのような顔で私を見つめた。

「まさかそんな……。確か龍との契約を皇帝は交わせなかったと聞いています。
今でこそ、即位してから龍と契約を交わしますが、当時では幼少のころより契約を交わすしきたりとなっていました。
幼少期に体の弱かった皇帝は龍を呼び出す力さえなかったと聞いていますよ。一体どこでそんなことを……」

おばあ様は信じられないとでもいうように、顔を青ざめながらそう言った。

確かに、彼の事はどこの文献にも載っていなかった事実だ。
あの時彼と話しをしたときは信じていたが、おばあ様に言われた途端急に不安になった。

しかし、彼を疑いそうになったときふと彼の顔が頭に浮かんだ。

あの時の私に向けた顔は、寂しさと懐かしさ。
そしてふと垣間見えた深い愛情だった。

私を騙そうとして浮かべる表情では決してなかった。
それに、彼を信じられなくなるのはなんだか可哀そうな気がして気が進まない。

ふと、おばあ様の視線が私に向けられていることに気づいた。
それは私を疑っているようでありながら、その反面私を心配しているような、そんな瞳だった。

その表情に私が嘘を付いているのではないかという疑念が見えて、慌てて付け加えた。

「ち、違うんですおばあ様! 私、確かに聞いたんです! 本当なんです」

「聞いたって、一体誰から?」

「えっ、それは……」

王宮にいる、黒龍の事を打ち明けようとしてハッとする。
そもそも王宮に黒龍が住んでいることをおばあ様はご存じなのだろうか。
それにそれを知っていたとして、彼から聞いたと言ってもおばあ様が信じるかどうか。

今まで見てきた文献にはリヴェリオが龍と契約したなんて、どこにも記されていない。
たとえ彼の言っていたことが本当だったとしても、リヴェリオにとって優位になりそうなことを私が言って、おばあ様が本当に信じてくれる訳はなかった。

「話がそれてしまいましたね。
皇帝とその方が結婚してすぐは、皇帝もそこまで悪い方ではないようにも見えたようです。
しかし、彼が即位してから悪夢が始まりました。知っていますよね。皇帝は戦争を起こしたり、国民の飢餓を無視したりと、皇帝としてあるまじき行為を重ねていきました。
それに加え、その方がまだ15歳のとき、先代の皇后様、つまり皇帝にとっての実のお母さまを殺害なさったことが明るみになったのです」

おばあ様は、まるで目の前にいる私がリヴェリオの生まれ変わりなのだと知らないかのように、淡々と史実を語っていく。
もし、それが事実であったとしても、そんなことを本人の目の前でするなんて、正気の沙汰ではないように思えた。

やっぱり、おばあ様もリヴェリオの事が嫌いなのかもしれない。
そう思えてならなかった。

「彼女は聖女候補になるほど心の綺麗な方でした。そのため、皇帝の悪行に日々心を痛めていたそうです。
このままでは良心が蝕まれていくと感じた彼女は王宮から逃げだすことを決意しました。
そうして、何とか彼の監視の隙をみて逃げ出したのです。それが、彼女と皇帝が結婚してから7年後、22の時でした」

私はもうおばあ様の話を真剣に聞くことをしていなかった。
おばあ様が何を伝えたいのかわからなかったこともあるけれど、それ以前に私の事が嫌いなのだと思わずにはいられなかったのだ。

しかし、私はリヴァリオの奥さんの事など少しも知らなかった。
その人物には少し興味があった。

一体どんな人物だったのか。
どうして私は彼女を忘れていたのか。
どうしても気になっていたのだ。

「彼女が王宮を去った後の消息は不明だと言われています。
しかし、彼女は国外には逃げずこの国のとある街に身を隠し生き延びていました。
そしてそこで子供を生み、子孫を残しました。
その子孫こそが、ベルヘルス家なのです」

「え――――」

思いがけないおばあ様の言葉に驚きが隠せない。
まさか、そんな人の血が流れているなんて。

「彼女を助けた当時の当主である方の日記には、彼女について言及している部分が多々ありました。
そこに書かれていたのは、とても残酷なことだったのです。
彼女をベルヘルス家に迎えたのち、彼女は子供を生みました。
そしてその子が後にベルヘルス家を継いだのです。しかし、その子とベルヘルス家には血の繋がりはありませんでした。
そう、彼女がこの街に逃げてきたときにはすでに彼女が身籠っていたのです。
つまり、我がベルヘルス家は……」

「皇帝の血が流れている、ということですか?」

「ええ、その通りです」
感想 7

あなたにおすすめの小説

亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』

まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」 ​五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。 夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。 生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。 ​冷淡な視線、姉と比較される日々。 「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」 その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。 ​しかし、彼女が消えた翌朝。 カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。 そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。 そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。 ​――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」 ​真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。 だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。 ​これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

『処刑された悪女は、今度こそ誰も愛さない』

なつめ
恋愛
断頭台の上で、自分の終わりを見た。 公爵令嬢セラフィーナ・エーデルベルク。傲慢で冷酷、嫉妬深い悪女として断罪され、婚約者である王太子に見放され、社交界の嘲笑の中で処刑された女。 けれど次に目を開けた時、彼女はまだ十七歳の春に戻っていた。 処刑まで残された時間は、三年。 もう誰も愛さない。 誰にも期待しない。 誰も傷つけず、誰にも傷つけられず、静かに生きる。 そう決めて、彼女は人との距離を置きはじめる。 婚約者にも、原作の“主人公”にも、騎士にも、侍女にも、未来で自分を断罪するはずの人々すべてに。 けれど、少しだけ優しくした。 少しだけ、相手の話を聞いた。 少しだけ、誤解を解く努力をした。 たったそれだけのことで、なぜか彼らのほうが先に彼女へ心を寄せ始める。 「……あなたは、こんな人だったのですか」 「もう少し、私を頼ってください」 「君が誰も愛さないつもりでも、俺は君を放っておけない」 「ずっと、怖かっただけなんでしょう」 悪女として死んだはずの令嬢が、二度目の人生で手に入れるのは名誉か、友情か、それとも恋か。 これは、誤解に殺された少女が、静かに息を吹き返していく物語。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

あなたがすき、だったから……。

友坂 悠
恋愛
 あなたが好きだったから、わたしは身を引いた。  もともと、3年だけの契約婚だった。  恋愛感情なしに、偽装夫婦を演じよう。  そういうあなたに同意をして一緒に暮らし出した日々。  それなのに。  約束の期限の三日前、まさか酔ったあなたとそういう関係になるなんて、思わなかった。  だから。 わたしはそのまま翌朝家を出た。  わたしだけが、どんどんあなたを好きになってしまったことを隠したくて。  こんな気持ちを悟られ、あなたに迷惑がかかるのに、耐えられなくて。    ############# なろうさんで開催されていた、氷雨そら先生、キムラましゅろう先生主催、 シークレットベビー企画参加作品だった、「あなたが好きだったから」という短編に、少し加筆修正して連載化しました。 初めてのシクべ、ちょっと変わったタイプのシクべ作品となりました。 お楽しみいただけると幸いです。