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第4章
137.寒気のする妻
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その日の目覚めは最悪だった。
夜中に悪夢を見た私は、それから夢を見るのが怖くてまともに眠ることができなかったのだ。
こんな感覚は8歳の時、前世の記憶が断片的に思い出されていた時以来だ。
あの時も苦しかったが、大きくなったいまでもその感覚はあまり変わらない。
おそらく夜中に見た夢は昨日、おばあ様から話を聞いたのが原因だろう。
それにしても最悪な夢である。
なんでリヴェリオの記憶って思い出すたびに嫌な思いをすることが多いのだろうか。
それほど、彼の人生に辛いことが多かった証拠なのだろうけど。
しかし、あの夢で分かったことがある。
それは彼女の身籠っていた子供がリヴェリオの子供ではないという衝撃的な事実だった。
つまりこのベルヘルス家に流れている血がリヴェリオの子供のものではないということ。
だが、リヴェリオの子供ではないのならば、一体誰の子供なのだろうか。
リヴェリオもそれがわからず、困惑していた。
しかし、思い浮かぶ親類なんていただろうか。
おそらく彼女の身籠った年の事を考えると、父上でないことは明白だ。
それなら、父上か母上の血縁の誰かなのだろうか。
う~ん、わからない。
彼女が接触していた人物に心辺りがなさ過ぎて思い浮かぶこともできなかった。
これも記憶が戻ればわかる事なのだろうか。
いや、こと彼女に関してはきっと思い出してもわからないだろう。
あんなにリヴェリオと接するのを拒否していた彼女の交友関係などわかるはずもない。
その証拠に、リヴェリオも誰なのか心当たりがなかった様子だったし。
はぁ~、と久しぶりに深いため息が出てしまう。
全く、思い出すたびに問題を落としていくわね、この記憶。
まぁ思い出せなくても厄介な代物ではあるのだけれど。
とはいえ、あの人、相当性格悪い。
あの短い夢の中でもわかるくらい、我がままで如何にも傲慢そうなお嬢様のような感じだった。
おばあ様から聞いた話とずいぶん印象が違う。
本当に彼女は聖女候補になるほどの人物だったのだろうか。
それとも、神聖力の強さが重要なのであって、性格とかはそこまで関係ないのかしら。
まぁそんな事はどうでも良いか。
それにしても、彼女を見たときに思い浮かんだのがお母さまだったなんて、一体どんな皮肉なのだろう。
だがこれで、ベルヘルス家と彼女との間に血縁関係があったことを確信できた。
とはいえ、これは中々に厄介だ。
だって私、多少とはいえお母さまに似ているんだもの。
おかげで今朝から鏡が見れないわ。
今日は誰かと話す気分にもなれず、朝食を寝室に持ってきてもらった。
だが、結局何かを食べる気分にもなれず、ホットミルクだけ飲んだだけで済ませた。
それでも胃がもたれた感じがした。
これは自分で思っているよりも相当ダメージを負っているようだ。
とはいえ、じっとしているわけにもいかない。
あの夢を見た今、どうにか彼女についての事が知りたかった。
しばらく休んだ後、多少調子が良くなった私は早速行動に移していた。
まずはおばあ様の私室に訪れ、当時のベルヘルス家当主の日記なるものを見せてもらうことにした。
コンコンと扉を叩くと、中からおばあ様の返事が聞こえ中へ入った。
「ごきげんよう、おばあ様」
「あら。ごきげんよう、エスティ。今朝は体調が悪いと伺ったけれど、もう大丈夫なの?」
「ええ、もう大丈夫です」
柔和な笑みを浮かべ、私を部屋の中へと促してくれる。
どうやら本当におばあ様は私を嫌ってはいないようだ。
昨日の今日で心配していたけれど、余計な気苦労だったようで安心した。
「ねぇ、おばあ様。昨日の事で気になったことがあるのだけど」
「あら、なぁに?」
部屋の中心に置かれていたソファに腰かけ、さっそくおばあ様に頼んでみる。
「その、当時の当主の日記ってどこにあるの? 私、どうしても気になって。その日記、どうしても読んでみたいの」
おばあ様は私の顔をチラリと見やっただけで、特に何かを言うこともなかった。
「そう、わかったわ。あの日記は書斎に保管してあるの。案内するわね」
おばあ様が立ち上がったのに促される形で私も立ち上がる。
この屋敷に詳しくない私には書斎がどこにあるのかもわからなかった。
案内されるように後ろを歩くと、長い廊下の先、屋敷の奥に書斎はあった。
20帖ほどの広さに本棚が壁側と導線を作るように置かれているが、腰掛けるためのソファが2脚、点在するように置かれている。
コンパクトサイズの図書館といったような感じだった。
「あら、お兄様」
「なんだエスティ。お前ならもっと早くここに来ると思っていたが、ずいぶんと遅かったな」
奥のソファに座っているお兄様を発見した。
偉そうに肘置きを使い、顔を腕で支えながら本を嗜んでいた。
あまり姿を見ないと思っていたが、こんなところにいたのか。
しかし、もっと早く来るかもって、私はお兄様ほど本の虫ではないのだけれど。
とはいえ、確かに何もすることがなければ書斎に籠るのは我が兄弟の特徴みたいなものだと言えなくもない。
反論できず、無言で意地悪なお兄様を睨むことしか私にはできなかった。
夜中に悪夢を見た私は、それから夢を見るのが怖くてまともに眠ることができなかったのだ。
こんな感覚は8歳の時、前世の記憶が断片的に思い出されていた時以来だ。
あの時も苦しかったが、大きくなったいまでもその感覚はあまり変わらない。
おそらく夜中に見た夢は昨日、おばあ様から話を聞いたのが原因だろう。
それにしても最悪な夢である。
なんでリヴェリオの記憶って思い出すたびに嫌な思いをすることが多いのだろうか。
それほど、彼の人生に辛いことが多かった証拠なのだろうけど。
しかし、あの夢で分かったことがある。
それは彼女の身籠っていた子供がリヴェリオの子供ではないという衝撃的な事実だった。
つまりこのベルヘルス家に流れている血がリヴェリオの子供のものではないということ。
だが、リヴェリオの子供ではないのならば、一体誰の子供なのだろうか。
リヴェリオもそれがわからず、困惑していた。
しかし、思い浮かぶ親類なんていただろうか。
おそらく彼女の身籠った年の事を考えると、父上でないことは明白だ。
それなら、父上か母上の血縁の誰かなのだろうか。
う~ん、わからない。
彼女が接触していた人物に心辺りがなさ過ぎて思い浮かぶこともできなかった。
これも記憶が戻ればわかる事なのだろうか。
いや、こと彼女に関してはきっと思い出してもわからないだろう。
あんなにリヴェリオと接するのを拒否していた彼女の交友関係などわかるはずもない。
その証拠に、リヴェリオも誰なのか心当たりがなかった様子だったし。
はぁ~、と久しぶりに深いため息が出てしまう。
全く、思い出すたびに問題を落としていくわね、この記憶。
まぁ思い出せなくても厄介な代物ではあるのだけれど。
とはいえ、あの人、相当性格悪い。
あの短い夢の中でもわかるくらい、我がままで如何にも傲慢そうなお嬢様のような感じだった。
おばあ様から聞いた話とずいぶん印象が違う。
本当に彼女は聖女候補になるほどの人物だったのだろうか。
それとも、神聖力の強さが重要なのであって、性格とかはそこまで関係ないのかしら。
まぁそんな事はどうでも良いか。
それにしても、彼女を見たときに思い浮かんだのがお母さまだったなんて、一体どんな皮肉なのだろう。
だがこれで、ベルヘルス家と彼女との間に血縁関係があったことを確信できた。
とはいえ、これは中々に厄介だ。
だって私、多少とはいえお母さまに似ているんだもの。
おかげで今朝から鏡が見れないわ。
今日は誰かと話す気分にもなれず、朝食を寝室に持ってきてもらった。
だが、結局何かを食べる気分にもなれず、ホットミルクだけ飲んだだけで済ませた。
それでも胃がもたれた感じがした。
これは自分で思っているよりも相当ダメージを負っているようだ。
とはいえ、じっとしているわけにもいかない。
あの夢を見た今、どうにか彼女についての事が知りたかった。
しばらく休んだ後、多少調子が良くなった私は早速行動に移していた。
まずはおばあ様の私室に訪れ、当時のベルヘルス家当主の日記なるものを見せてもらうことにした。
コンコンと扉を叩くと、中からおばあ様の返事が聞こえ中へ入った。
「ごきげんよう、おばあ様」
「あら。ごきげんよう、エスティ。今朝は体調が悪いと伺ったけれど、もう大丈夫なの?」
「ええ、もう大丈夫です」
柔和な笑みを浮かべ、私を部屋の中へと促してくれる。
どうやら本当におばあ様は私を嫌ってはいないようだ。
昨日の今日で心配していたけれど、余計な気苦労だったようで安心した。
「ねぇ、おばあ様。昨日の事で気になったことがあるのだけど」
「あら、なぁに?」
部屋の中心に置かれていたソファに腰かけ、さっそくおばあ様に頼んでみる。
「その、当時の当主の日記ってどこにあるの? 私、どうしても気になって。その日記、どうしても読んでみたいの」
おばあ様は私の顔をチラリと見やっただけで、特に何かを言うこともなかった。
「そう、わかったわ。あの日記は書斎に保管してあるの。案内するわね」
おばあ様が立ち上がったのに促される形で私も立ち上がる。
この屋敷に詳しくない私には書斎がどこにあるのかもわからなかった。
案内されるように後ろを歩くと、長い廊下の先、屋敷の奥に書斎はあった。
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コンパクトサイズの図書館といったような感じだった。
「あら、お兄様」
「なんだエスティ。お前ならもっと早くここに来ると思っていたが、ずいぶんと遅かったな」
奥のソファに座っているお兄様を発見した。
偉そうに肘置きを使い、顔を腕で支えながら本を嗜んでいた。
あまり姿を見ないと思っていたが、こんなところにいたのか。
しかし、もっと早く来るかもって、私はお兄様ほど本の虫ではないのだけれど。
とはいえ、確かに何もすることがなければ書斎に籠るのは我が兄弟の特徴みたいなものだと言えなくもない。
反論できず、無言で意地悪なお兄様を睨むことしか私にはできなかった。
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