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第4章
140.200年越しの妻からの手紙
「ん? なんか奥に入ってるぞ。手紙か?」
「え?」
日記とペンダントを引き出しへ戻そうとすると、今度はお兄様が何かを発見したようだ。
確かに、奥の方に紙らしきものが入っている。
日記とペンダントを片手に持ち、それを手に取る。
相当色褪せており、完全なセピア色に染まっているそれは確かに便箋に纏められた手紙だった。
ほとんど引き出しの中の色と同化していて気づかなかったみたい。
ずいぶん古そうなそれの宛名を確認し、私は息を飲んだ。
『我が憎き夫へ』
ドキリとする。
どうしてか、自分に言われたような気がしたのだ。
嫌な予感がし、書いた人物を確認しようと裏面を見ると、案の定彼女の名前が記されていた。
これはどう見ても誰かへの恨み辛みを書いた呪いの手紙では。
まさか、ベルヘルス家へのものなのだろうか。
もしそうなら、なんと我の強い女性なんだろう。
あんなに大それた条件を差し出して結婚した相手を恨むなんて。
いやでも、でももしかして。
これって私宛の手紙なんじゃ。
そう思うと、どうしても開ける気になれない。
でも、この中身をどうしても確認しなければという直感を覚えていた。
この中に、何か重要なことが書かれているような、そんな気がしたのだ。
だが、先ほどの日記を読み終えてすぐという事もあり、すぐに中身を確認するほどの勇気が持てなかった。
それに、ほかの人がいる前で読みたくないし。
けれどこれはあまり良い物では無さそうなのは、宛名の書き方からしてなんとなく察していた。
もし、ベルヘルス家に関することが書いてあるのだとしたら、この家の住人であるおばあ様には許可をもらっておいた方が良さそうだ。
そう思っておばあ様を呼んだ。
「あの、おばあ様。これ、私の部屋で読みたいのですけど、持って行ってもよろしいでしょうか? ……あれ? おばあ様?」
私の声に返事は返ってこなかった。
その時ずっとそばにいると思っていたおばあ様の姿がどこにも無い事に気づいた。
「おばあ様ならお前が日記を読み始めてすぐ、席を外したぞ」
代わりに応えたお兄様にそんなことを言われ、急に恥ずかしくなった。
まさかそんな前からおばあ様が居なくなったことに気づかないなんて。
「まぁいいんじゃないか? もしまずいものなら、後でこっそり返せばいいんだし」
と、なんとも悪知恵の働いた提案をしてくる。
いやいや、それは兄としてどうなのよ。
とも思ったが、確かにそうした方がようさそうな気はする。
渋々お兄様の提案にのるような形で、日記とペンダントのみを引き出しに戻し手紙をこっそり手元に隠した。
そのあと、もう日記を見ることもないだろうと引き出しを閉めてもらうため、おばあ様の部屋へ訪れたがおばあ様の姿を見つけることができなかった。
このまま放っておくわけにもいかず、他の部屋も見て回ったものの結局おばあ様を発見できなかった。
仕方なく私の寝室のある部屋へと帰る。
まぁ、昼ももうすぐだし、昼食の時に言えばいいか。
結局その日に手紙を読むことはできなかった。
次の日も、朝目覚めて机の上に置かれた手紙の存在に気づきげんなりしてしまったぐらいだ。
でも、このまま目を背けているわけにもいかない。
昼食が済んで、多少心の準備ができたところで思い切って手紙を手に取った。
表紙に書かれた宛名は、今ではもう私に宛てたものとしか思えなくなっていた。
息が苦しい。
昨日の夢の事もあり、まだ多少彼女の事が怖い。
でも、何が書かれていても逃げずに向き合わなければ記憶を思い出すことができないような、そんな気がした。
既に封は開いていた。
誰かが開けた後なのか、はたまた長年取っておいた所為で脆くなっていたのかはわからない。
慎重に中を取り出す。
二つ折りの手紙が中に入っていた。
こちらも相当焼けている。
ゆっくりとそれを開くと、そこには綺麗な文字が羅列していた。
『
私の大っ嫌いな貴方へ
私は貴方に初めて会った時からずっと、貴方の事が嫌いでした。
だって私は特別なはずなのに、みんな貴方の方が綺麗で特別だなんて言うんだもの。
そんなの、許せるはずないでしょう。
だからずっと思ってたの。
私が感じた屈辱より、もっと苦しいものを貴方にあげたいって。
でもそれって本当に簡単な事だったわね。
私が文句を言えば、突き放せば貴方はすぐに傷ついた。
貴方ってすぐ顔に出るんだから。
それが面白くて堪らなかったわ。
もっと苦しめばいい。もっともっと私を嫌いになればいい。
そう思ってた。
でも、貴方は決して私の事を嫌いにならなかった。
それが腹立たしくて仕方なかった。
だってそれじゃあまるで、貴方が私よりもずっと綺麗なもののように思えるんですもの。
だからね、貴方にプレゼントしたの。
貴方はきっとすぐに死ぬって、私、分かっていたから。
貴方は死んでも、私たちは幸せになるわ。
貴方がいたときよりずっと、私は幸せになる。
だってそれが一番の復讐になるでしょう?
貴方がいない方が、この世界は平和で幸せなんだと、思い知らせてあげるから。
だからあの世でずっと待っていて。
私が貴方の生まれた意味全部、否定して持って行ってあげるから。
貴方を憎んだ全ての人々の思いと一緒に。
地獄まで運んできてあげるから。
楽しみに待っていてね。
メイリアス・ヘルリスキー
』
「え?」
日記とペンダントを引き出しへ戻そうとすると、今度はお兄様が何かを発見したようだ。
確かに、奥の方に紙らしきものが入っている。
日記とペンダントを片手に持ち、それを手に取る。
相当色褪せており、完全なセピア色に染まっているそれは確かに便箋に纏められた手紙だった。
ほとんど引き出しの中の色と同化していて気づかなかったみたい。
ずいぶん古そうなそれの宛名を確認し、私は息を飲んだ。
『我が憎き夫へ』
ドキリとする。
どうしてか、自分に言われたような気がしたのだ。
嫌な予感がし、書いた人物を確認しようと裏面を見ると、案の定彼女の名前が記されていた。
これはどう見ても誰かへの恨み辛みを書いた呪いの手紙では。
まさか、ベルヘルス家へのものなのだろうか。
もしそうなら、なんと我の強い女性なんだろう。
あんなに大それた条件を差し出して結婚した相手を恨むなんて。
いやでも、でももしかして。
これって私宛の手紙なんじゃ。
そう思うと、どうしても開ける気になれない。
でも、この中身をどうしても確認しなければという直感を覚えていた。
この中に、何か重要なことが書かれているような、そんな気がしたのだ。
だが、先ほどの日記を読み終えてすぐという事もあり、すぐに中身を確認するほどの勇気が持てなかった。
それに、ほかの人がいる前で読みたくないし。
けれどこれはあまり良い物では無さそうなのは、宛名の書き方からしてなんとなく察していた。
もし、ベルヘルス家に関することが書いてあるのだとしたら、この家の住人であるおばあ様には許可をもらっておいた方が良さそうだ。
そう思っておばあ様を呼んだ。
「あの、おばあ様。これ、私の部屋で読みたいのですけど、持って行ってもよろしいでしょうか? ……あれ? おばあ様?」
私の声に返事は返ってこなかった。
その時ずっとそばにいると思っていたおばあ様の姿がどこにも無い事に気づいた。
「おばあ様ならお前が日記を読み始めてすぐ、席を外したぞ」
代わりに応えたお兄様にそんなことを言われ、急に恥ずかしくなった。
まさかそんな前からおばあ様が居なくなったことに気づかないなんて。
「まぁいいんじゃないか? もしまずいものなら、後でこっそり返せばいいんだし」
と、なんとも悪知恵の働いた提案をしてくる。
いやいや、それは兄としてどうなのよ。
とも思ったが、確かにそうした方がようさそうな気はする。
渋々お兄様の提案にのるような形で、日記とペンダントのみを引き出しに戻し手紙をこっそり手元に隠した。
そのあと、もう日記を見ることもないだろうと引き出しを閉めてもらうため、おばあ様の部屋へ訪れたがおばあ様の姿を見つけることができなかった。
このまま放っておくわけにもいかず、他の部屋も見て回ったものの結局おばあ様を発見できなかった。
仕方なく私の寝室のある部屋へと帰る。
まぁ、昼ももうすぐだし、昼食の時に言えばいいか。
結局その日に手紙を読むことはできなかった。
次の日も、朝目覚めて机の上に置かれた手紙の存在に気づきげんなりしてしまったぐらいだ。
でも、このまま目を背けているわけにもいかない。
昼食が済んで、多少心の準備ができたところで思い切って手紙を手に取った。
表紙に書かれた宛名は、今ではもう私に宛てたものとしか思えなくなっていた。
息が苦しい。
昨日の夢の事もあり、まだ多少彼女の事が怖い。
でも、何が書かれていても逃げずに向き合わなければ記憶を思い出すことができないような、そんな気がした。
既に封は開いていた。
誰かが開けた後なのか、はたまた長年取っておいた所為で脆くなっていたのかはわからない。
慎重に中を取り出す。
二つ折りの手紙が中に入っていた。
こちらも相当焼けている。
ゆっくりとそれを開くと、そこには綺麗な文字が羅列していた。
『
私の大っ嫌いな貴方へ
私は貴方に初めて会った時からずっと、貴方の事が嫌いでした。
だって私は特別なはずなのに、みんな貴方の方が綺麗で特別だなんて言うんだもの。
そんなの、許せるはずないでしょう。
だからずっと思ってたの。
私が感じた屈辱より、もっと苦しいものを貴方にあげたいって。
でもそれって本当に簡単な事だったわね。
私が文句を言えば、突き放せば貴方はすぐに傷ついた。
貴方ってすぐ顔に出るんだから。
それが面白くて堪らなかったわ。
もっと苦しめばいい。もっともっと私を嫌いになればいい。
そう思ってた。
でも、貴方は決して私の事を嫌いにならなかった。
それが腹立たしくて仕方なかった。
だってそれじゃあまるで、貴方が私よりもずっと綺麗なもののように思えるんですもの。
だからね、貴方にプレゼントしたの。
貴方はきっとすぐに死ぬって、私、分かっていたから。
貴方は死んでも、私たちは幸せになるわ。
貴方がいたときよりずっと、私は幸せになる。
だってそれが一番の復讐になるでしょう?
貴方がいない方が、この世界は平和で幸せなんだと、思い知らせてあげるから。
だからあの世でずっと待っていて。
私が貴方の生まれた意味全部、否定して持って行ってあげるから。
貴方を憎んだ全ての人々の思いと一緒に。
地獄まで運んできてあげるから。
楽しみに待っていてね。
メイリアス・ヘルリスキー
』
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