悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

文字の大きさ
141 / 339
第4章

140.200年越しの妻からの手紙

「ん? なんか奥に入ってるぞ。手紙か?」

「え?」

日記とペンダントを引き出しへ戻そうとすると、今度はお兄様が何かを発見したようだ。

確かに、奥の方に紙らしきものが入っている。
日記とペンダントを片手に持ち、それを手に取る。

相当色褪せており、完全なセピア色に染まっているそれは確かに便箋に纏められた手紙だった。
ほとんど引き出しの中の色と同化していて気づかなかったみたい。

ずいぶん古そうなそれの宛名を確認し、私は息を飲んだ。

『我が憎き夫へ』

ドキリとする。
どうしてか、自分に言われたような気がしたのだ。

嫌な予感がし、書いた人物を確認しようと裏面を見ると、案の定彼女の名前が記されていた。
これはどう見ても誰かへの恨み辛みを書いた呪いの手紙では。

まさか、ベルヘルス家へのものなのだろうか。
もしそうなら、なんと我の強い女性なんだろう。

あんなに大それた条件を差し出して結婚した相手を恨むなんて。

いやでも、でももしかして。
これって私宛の手紙なんじゃ。

そう思うと、どうしても開ける気になれない。
でも、この中身をどうしても確認しなければという直感を覚えていた。
この中に、何か重要なことが書かれているような、そんな気がしたのだ。

だが、先ほどの日記を読み終えてすぐという事もあり、すぐに中身を確認するほどの勇気が持てなかった。
それに、ほかの人がいる前で読みたくないし。

けれどこれはあまり良い物では無さそうなのは、宛名の書き方からしてなんとなく察していた。
もし、ベルヘルス家に関することが書いてあるのだとしたら、この家の住人であるおばあ様には許可をもらっておいた方が良さそうだ。
そう思っておばあ様を呼んだ。

「あの、おばあ様。これ、私の部屋で読みたいのですけど、持って行ってもよろしいでしょうか? ……あれ? おばあ様?」

私の声に返事は返ってこなかった。
その時ずっとそばにいると思っていたおばあ様の姿がどこにも無い事に気づいた。

「おばあ様ならお前が日記を読み始めてすぐ、席を外したぞ」

代わりに応えたお兄様にそんなことを言われ、急に恥ずかしくなった。
まさかそんな前からおばあ様が居なくなったことに気づかないなんて。

「まぁいいんじゃないか? もしまずいものなら、後でこっそり返せばいいんだし」

と、なんとも悪知恵の働いた提案をしてくる。
いやいや、それは兄としてどうなのよ。
とも思ったが、確かにそうした方がようさそうな気はする。

渋々お兄様の提案にのるような形で、日記とペンダントのみを引き出しに戻し手紙をこっそり手元に隠した。

そのあと、もう日記を見ることもないだろうと引き出しを閉めてもらうため、おばあ様の部屋へ訪れたがおばあ様の姿を見つけることができなかった。
このまま放っておくわけにもいかず、他の部屋も見て回ったものの結局おばあ様を発見できなかった。
仕方なく私の寝室のある部屋へと帰る。

まぁ、昼ももうすぐだし、昼食の時に言えばいいか。



結局その日に手紙を読むことはできなかった。
次の日も、朝目覚めて机の上に置かれた手紙の存在に気づきげんなりしてしまったぐらいだ。

でも、このまま目を背けているわけにもいかない。
昼食が済んで、多少心の準備ができたところで思い切って手紙を手に取った。

表紙に書かれた宛名は、今ではもう私に宛てたものとしか思えなくなっていた。
息が苦しい。
昨日の夢の事もあり、まだ多少彼女の事が怖い。
でも、何が書かれていても逃げずに向き合わなければ記憶を思い出すことができないような、そんな気がした。

既に封は開いていた。
誰かが開けた後なのか、はたまた長年取っておいた所為で脆くなっていたのかはわからない。

慎重に中を取り出す。
二つ折りの手紙が中に入っていた。
こちらも相当焼けている。

ゆっくりとそれを開くと、そこには綺麗な文字が羅列していた。




私の大っ嫌いな貴方へ


私は貴方に初めて会った時からずっと、貴方の事が嫌いでした。
だって私は特別なはずなのに、みんな貴方の方が綺麗で特別だなんて言うんだもの。
そんなの、許せるはずないでしょう。

だからずっと思ってたの。
私が感じた屈辱より、もっと苦しいものを貴方にあげたいって。

でもそれって本当に簡単な事だったわね。
私が文句を言えば、突き放せば貴方はすぐに傷ついた。
貴方ってすぐ顔に出るんだから。
それが面白くて堪らなかったわ。

もっと苦しめばいい。もっともっと私を嫌いになればいい。
そう思ってた。
でも、貴方は決して私の事を嫌いにならなかった。
それが腹立たしくて仕方なかった。
だってそれじゃあまるで、貴方が私よりもずっと綺麗なもののように思えるんですもの。

だからね、貴方にプレゼントしたの。
貴方はきっとすぐに死ぬって、私、分かっていたから。
貴方は死んでも、私たちは幸せになるわ。
貴方がいたときよりずっと、私は幸せになる。
だってそれが一番の復讐になるでしょう?

貴方がいない方が、この世界は平和で幸せなんだと、思い知らせてあげるから。
だからあの世でずっと待っていて。

私が貴方の生まれた意味全部、否定して持って行ってあげるから。
貴方を憎んだ全ての人々の思いと一緒に。

地獄まで運んできてあげるから。

楽しみに待っていてね。


メイリアス・ヘルリスキー

感想 7

あなたにおすすめの小説

亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』

まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」 ​五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。 夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。 生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。 ​冷淡な視線、姉と比較される日々。 「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」 その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。 ​しかし、彼女が消えた翌朝。 カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。 そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。 そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。 ​――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」 ​真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。 だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。 ​これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

『処刑された悪女は、今度こそ誰も愛さない』

なつめ
恋愛
断頭台の上で、自分の終わりを見た。 公爵令嬢セラフィーナ・エーデルベルク。傲慢で冷酷、嫉妬深い悪女として断罪され、婚約者である王太子に見放され、社交界の嘲笑の中で処刑された女。 けれど次に目を開けた時、彼女はまだ十七歳の春に戻っていた。 処刑まで残された時間は、三年。 もう誰も愛さない。 誰にも期待しない。 誰も傷つけず、誰にも傷つけられず、静かに生きる。 そう決めて、彼女は人との距離を置きはじめる。 婚約者にも、原作の“主人公”にも、騎士にも、侍女にも、未来で自分を断罪するはずの人々すべてに。 けれど、少しだけ優しくした。 少しだけ、相手の話を聞いた。 少しだけ、誤解を解く努力をした。 たったそれだけのことで、なぜか彼らのほうが先に彼女へ心を寄せ始める。 「……あなたは、こんな人だったのですか」 「もう少し、私を頼ってください」 「君が誰も愛さないつもりでも、俺は君を放っておけない」 「ずっと、怖かっただけなんでしょう」 悪女として死んだはずの令嬢が、二度目の人生で手に入れるのは名誉か、友情か、それとも恋か。 これは、誤解に殺された少女が、静かに息を吹き返していく物語。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

あなたがすき、だったから……。

友坂 悠
恋愛
 あなたが好きだったから、わたしは身を引いた。  もともと、3年だけの契約婚だった。  恋愛感情なしに、偽装夫婦を演じよう。  そういうあなたに同意をして一緒に暮らし出した日々。  それなのに。  約束の期限の三日前、まさか酔ったあなたとそういう関係になるなんて、思わなかった。  だから。 わたしはそのまま翌朝家を出た。  わたしだけが、どんどんあなたを好きになってしまったことを隠したくて。  こんな気持ちを悟られ、あなたに迷惑がかかるのに、耐えられなくて。    ############# なろうさんで開催されていた、氷雨そら先生、キムラましゅろう先生主催、 シークレットベビー企画参加作品だった、「あなたが好きだったから」という短編に、少し加筆修正して連載化しました。 初めてのシクべ、ちょっと変わったタイプのシクべ作品となりました。 お楽しみいただけると幸いです。