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第4章
145.迷った森の中で
痛みは感じなくとも、足は動かせるような状態ではないことは今のでよくわかった。
それに、いまだぼんやりとした意識の中でするには些か無理があったようだ。
さらに彼を心配させてしまうなんて、なんて私は馬鹿なんだろう。
今度は先ほどとは違う涙が流れそうで、必死に彼の胸に顔を押し付ける。
こんなことで泣いてしまうなんて、なんて私はどうしようもないのだろう。
ヴェリタスはそんな私に気づいたのか、抱きとめる手に力を入れ強く私を抱きしめてくれた。
しかし、それもすぐに引きはがすと戸惑うように目を泳がせた。
頬が赤くなっているのを見ると、どうやらあの状態に耐えられなくなったらしい。
目を逸らす様に何か考える仕草をした後、この空気を紛らわせるように口を開いた。
「と、とにかくどこか休めるところを探さなくては」
「それなら……」
言おうとして口を噤んだ。
おそらくおじい様の屋敷までそんなに距離はないだろう。
しかし、どの方向に屋敷があるのか土地勘のない私にはわからない。
指を指そうとして挙げた手をゆっくり降ろした。
私、何の役にも立ててない。
さっきの魔物だって私が止めなければきっとヴァリタスは仕留めることが出来ていただろう。
それに私が足を怪我した所為で彼に余計な心配をかけてしまっている。
おそらく私へ使った治癒魔法が無ければ、魔法を使ってお兄様辺りにコンタクトを取ることだってできたのではないだろうか。
お兄様の言った通り私は魔法について疎いけれど、ヴァリタス程の才能があればそれも可能なんじゃないかな。
それなのに、私のせいで……。
落ち込んだ心は表情を曇らせ、無意識に俯いてしまう。
「そういえば、エスティはどうしてここに?」
落ち込む私に気づいたのか、ヴァリタスが話題を変えてくれた。
「母の生家がこの近くなんです。退屈そうにしていたら、久ぶりに遊びに行こうとお兄様が」
「そうでしたか。夫人の生家がこちらの方とは、知りませんでした。それにしても偶然なんてあるんですね」
おそらく私を元気づけようとして笑ってくれているのだろう。
だけど、今の私には彼の笑顔が眩しくて直視できない。
自分のしたことを考えると、申し訳なくて堪らなかった。
「この近くに屋敷があるとは思うのですが、どちらに向かえば良いのか、私、わからなくて」
どうにか打開策を出そうと思ったのだが、口から出た言葉はそんな解決には程遠いものだった。
自分の不甲斐なさに情けなくなる。
本当に私、役立たずだ。
「と、とにかく歩きましょう。近くなら歩いているうちに見つかるかもしれません」
「で、でも、どこなのか全く見当がつかないのです。私も歩けませんし、負ぶっていただくのも申し訳ありませんし……」
それにそんなことをしていては、彼の体力が尽きてしまうだろう。
私も今はまだ、彼のしてくれた応急処置のおかげでこうして元気に話していられるが、それがいつまでもつかわからない。
だが、このままでいるのも危険なことは私もわかっていた。
おそらくヴァリタスもそれは理解しているだろう。
そうだ、それなら。
1つ良い案がある。
「あの、ヴァリタス様」
「何? エスティ。何か良い案でも浮かびましたか?」
こんな状況でも明るく笑うヴァリタス。
それはきっと私を不安にさせないためのものなのかもしれない。
そんな彼だから、私は彼をこのままでいさせたくなかった。
「私をここへ置いて行ってください」
驚いたような、絶句したような。
おそらく両方なのだと思うが、私が放った一言で彼は張り付けたような笑顔から一変。
目を見開き、信じられないものでもみるような顔になるとしばらく固まってしまった。
「何を言っているのですか。貴方を置いて、僕はどこへ行けば良いのですか?」
「私はこんな状態です。ヴァリタス様に負ぶっていただけなければここから動くこともままなりません。そんな足手まといを連れて歩くなんて危険です」
「しかしっ」
食い下がるヴァリタスに私は彼が納得しそうな理由を思い浮かべた。
別に私だって本当はこのままここで息絶えることを望んでいるわけではない。
「安心してくださいヴァリタス様。私を見捨てろと言っている訳ではないのです。こういう森で迷ったとき、その場から動かずにいる方が安全だという考え方もあるんですよ。
しかし今は一刻を争う緊急事態。それならヴァリタス様のその魔法でどうにかして助けを呼んでもらいたいと思っているだけです」
そう、本来ならばここに留まる方が安全なのだ。
なぜなら体力の消耗をなるべく防ぐにはそれが一番だから。
だが、私が怪我をしてしまっている所為でそんな悠長なことをしている場合ではなくなってしまった。
それならば、彼にはちょっと危険を強いることになるが助けを呼んできてもらう方が賢明なのではないかと思って提案したのである。
しかし、そう思って告げた私の言葉を聞いても尚、ヴァリタスの表情は険しいままだった。
これは背中を押すような一言が必要なのかも。
そう思い、さらに言葉を重ねた。
「大丈夫ですよヴァリタス様。先ほど貴方が治療してくださったじゃないですか」
「言ったでしょう! 僕は治癒魔法が得意ではないと。あれは本当に応急処置なんです。本当だったら、いますぐにでもお医者様に見せなくてはいけないような怪我なのに」
ヴァリタスを決断させるために放った言葉だったが、どうやら逆効果だったらしい。
さらに彼を足踏みさせてしまった。
それに、いまだぼんやりとした意識の中でするには些か無理があったようだ。
さらに彼を心配させてしまうなんて、なんて私は馬鹿なんだろう。
今度は先ほどとは違う涙が流れそうで、必死に彼の胸に顔を押し付ける。
こんなことで泣いてしまうなんて、なんて私はどうしようもないのだろう。
ヴェリタスはそんな私に気づいたのか、抱きとめる手に力を入れ強く私を抱きしめてくれた。
しかし、それもすぐに引きはがすと戸惑うように目を泳がせた。
頬が赤くなっているのを見ると、どうやらあの状態に耐えられなくなったらしい。
目を逸らす様に何か考える仕草をした後、この空気を紛らわせるように口を開いた。
「と、とにかくどこか休めるところを探さなくては」
「それなら……」
言おうとして口を噤んだ。
おそらくおじい様の屋敷までそんなに距離はないだろう。
しかし、どの方向に屋敷があるのか土地勘のない私にはわからない。
指を指そうとして挙げた手をゆっくり降ろした。
私、何の役にも立ててない。
さっきの魔物だって私が止めなければきっとヴァリタスは仕留めることが出来ていただろう。
それに私が足を怪我した所為で彼に余計な心配をかけてしまっている。
おそらく私へ使った治癒魔法が無ければ、魔法を使ってお兄様辺りにコンタクトを取ることだってできたのではないだろうか。
お兄様の言った通り私は魔法について疎いけれど、ヴァリタス程の才能があればそれも可能なんじゃないかな。
それなのに、私のせいで……。
落ち込んだ心は表情を曇らせ、無意識に俯いてしまう。
「そういえば、エスティはどうしてここに?」
落ち込む私に気づいたのか、ヴァリタスが話題を変えてくれた。
「母の生家がこの近くなんです。退屈そうにしていたら、久ぶりに遊びに行こうとお兄様が」
「そうでしたか。夫人の生家がこちらの方とは、知りませんでした。それにしても偶然なんてあるんですね」
おそらく私を元気づけようとして笑ってくれているのだろう。
だけど、今の私には彼の笑顔が眩しくて直視できない。
自分のしたことを考えると、申し訳なくて堪らなかった。
「この近くに屋敷があるとは思うのですが、どちらに向かえば良いのか、私、わからなくて」
どうにか打開策を出そうと思ったのだが、口から出た言葉はそんな解決には程遠いものだった。
自分の不甲斐なさに情けなくなる。
本当に私、役立たずだ。
「と、とにかく歩きましょう。近くなら歩いているうちに見つかるかもしれません」
「で、でも、どこなのか全く見当がつかないのです。私も歩けませんし、負ぶっていただくのも申し訳ありませんし……」
それにそんなことをしていては、彼の体力が尽きてしまうだろう。
私も今はまだ、彼のしてくれた応急処置のおかげでこうして元気に話していられるが、それがいつまでもつかわからない。
だが、このままでいるのも危険なことは私もわかっていた。
おそらくヴァリタスもそれは理解しているだろう。
そうだ、それなら。
1つ良い案がある。
「あの、ヴァリタス様」
「何? エスティ。何か良い案でも浮かびましたか?」
こんな状況でも明るく笑うヴァリタス。
それはきっと私を不安にさせないためのものなのかもしれない。
そんな彼だから、私は彼をこのままでいさせたくなかった。
「私をここへ置いて行ってください」
驚いたような、絶句したような。
おそらく両方なのだと思うが、私が放った一言で彼は張り付けたような笑顔から一変。
目を見開き、信じられないものでもみるような顔になるとしばらく固まってしまった。
「何を言っているのですか。貴方を置いて、僕はどこへ行けば良いのですか?」
「私はこんな状態です。ヴァリタス様に負ぶっていただけなければここから動くこともままなりません。そんな足手まといを連れて歩くなんて危険です」
「しかしっ」
食い下がるヴァリタスに私は彼が納得しそうな理由を思い浮かべた。
別に私だって本当はこのままここで息絶えることを望んでいるわけではない。
「安心してくださいヴァリタス様。私を見捨てろと言っている訳ではないのです。こういう森で迷ったとき、その場から動かずにいる方が安全だという考え方もあるんですよ。
しかし今は一刻を争う緊急事態。それならヴァリタス様のその魔法でどうにかして助けを呼んでもらいたいと思っているだけです」
そう、本来ならばここに留まる方が安全なのだ。
なぜなら体力の消耗をなるべく防ぐにはそれが一番だから。
だが、私が怪我をしてしまっている所為でそんな悠長なことをしている場合ではなくなってしまった。
それならば、彼にはちょっと危険を強いることになるが助けを呼んできてもらう方が賢明なのではないかと思って提案したのである。
しかし、そう思って告げた私の言葉を聞いても尚、ヴァリタスの表情は険しいままだった。
これは背中を押すような一言が必要なのかも。
そう思い、さらに言葉を重ねた。
「大丈夫ですよヴァリタス様。先ほど貴方が治療してくださったじゃないですか」
「言ったでしょう! 僕は治癒魔法が得意ではないと。あれは本当に応急処置なんです。本当だったら、いますぐにでもお医者様に見せなくてはいけないような怪我なのに」
ヴァリタスを決断させるために放った言葉だったが、どうやら逆効果だったらしい。
さらに彼を足踏みさせてしまった。
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