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第4章
150.失態と哀れな前世
「教えて、本当は僕の近くに君はいたんじゃないの? エスティと僕はずっと昔に、前世で出逢っていたんじゃないの?」
ひゅっと息を吸う音がした。
しかし、恐怖と不安で息がうまく吸えない。
一体どうしてそんなことを彼は言うのだろうか。
まさか、リヴェリオの事に気づかれた?
いや、しかしもし私の前世の正体に気づいたのなら彼ならもっと取り乱すはず。
とはいえ、前世の事に勘づかれてしまっただけでも結構な痛手だ。
それにどうやら私の前世について相当気になっているみたいだし。
本腰を入れた彼に、私の誤魔化しがどれほど利くかわからない。
それにしたって、私は一体魔物に襲われたとき何をしたのだろうか。
今まで気付いていながら前世について聞いてこなかったということは、それほどまでに私の前世に興味が無かったといこと。
逆を言えば、魔物に襲われたとき、私はそのきっかけとなる何かを私が作ってしまったということだ。
ぼんやりとしが思い出せない記憶のでは、それが何なのか見当もつかない。
できれば、致命的なことをしていなければよいのだが。
自分の失態が気になり、話を逸らせないかと思いつつ、彼に問いかけた。
「私の嘘に気づいていたというのなら、どうして今更前世の事を聞くのですか? 魔物に襲われたとき、私は一体貴方になにを」
「言っただろう、名前を呼んだって」
間髪入れずに答える彼の言葉は先ほど貰ったものと何も変わらない。
「でもっ!」
でも、それだけで私と彼に前世の繋がりがあるって、わかるわけが……。
そこで、彼の言葉に違和感を覚えた。
そういえば、彼は名前を呼んだといった。
しかし、「ヴァリタス」と呼んだとは言っていない。
そして、前世についての言及。
まさか。
まさか、私が呼んだ名前って。
「君が呼んだのは、今の僕の名前じゃない。僕の前世の名前を、君は呼んだんだよ」
「なっ」
なんてことを。
どうして、よりによって彼の名前を呼ぶようなことをしたのだ。
しかも、魔物に襲われたときに。
あろうことか、自分を裏切った人間の名前を呼んだのか。
なんて滑稽で哀れな人間なのだ、私は。
つくづく自分が情けなくなる。
いやしかし、今はそんなことを考えている場合じゃない。
彼の名前を呼んだということは、一歩間違えれば取り返しのつかない事態になりかねない。
しかし、私の前世が彼と関わりのある人物だと知って、彼はどうしたいのだろうか。
前世の事を語りあったりなどする気なのだろうか。
いや、彼の性格からして、それは考えにくい。
思い返せば、10歳の出来事があった後も、彼は自分の前世について自ら話をしたことがなかった。
だから私は、自分の記憶の中のバートンのことは知っているけれど、彼から聞かされたバートンの存在は知らない。
そもそも、彼からバートンの気配すらも感じたことがないのだ。
そんな彼が、今更前世の事に興味を持つとは思えない。
「知って、どうするの?」
思っていただけの事だったのに、知らない内に口から零れていた。
それでも後悔しなかったのは、きっと心の底から気になっていたことだったからかもしれない。
ヴァリタスは少しの沈黙の後、口を開いた。
「僕は自分の前世が嫌いです。貴方には昔、あんな風に励ましてもらったのに、それでも私は前世の自分が好きになれないのです。
だから、貴方には知られたくなかった。私の前世がどんな人物だったのかを」
嫌い? バートンの事を?
なんだそれは。
そんなバートン、私は知らない。
私が知っている彼は、確かに家族に愛してもらえなくて寂しい幼少期を過ごした少年だった。
しかし、私と出会って、私が皇帝になるまで、彼はとても幸せだと言ってくれていた。
いつも私を一番傍で優しく守ってくれていたのに。
それなのに、どうしてそんな風に自分を貶めるような感情を持ってしまうようになってしまったのか。
やはりそれも私の所為なのか?
私が彼を失望させ、深く傷つけるようなことをしたから、彼は自分が嫌いになったのか?
それなら、なおさら前世の事など打ち明けるわけにいかないじゃないか。
「なら、なら前世の事などずっと黙っていればよかったではないですか」
思っていた事だったのに、つい口に出してしまった。
一瞬後悔はしたものの、どうせならはっきりさせたいという気持ちの方が勝ってしまい、彼を見つめたまま答えを待った。
「確かに、目を逸らしていれば楽だと思いました。それでも、このまま前世の事を放っておいて、貴方に失望されるよりも、自分から話してしまった方が良いと思ったのです。
私の前世がどれほど醜く、哀れだったのかを」
どうやら、どうあっても私の前世について問いただしたいようだ。
それにしても、バートンの前世が哀れで醜いとは。
では、私はどうなるのだろうか。
信じた者は離れていき、守りたかったものにも恨まれて。
愛した者たちは私の死を切に願い、私のいない未来を夢見た。
そんな私の前世は哀れではないのか。
醜くはないのか。
バートンのような前世とは比べ物にならないほどに。
ひゅっと息を吸う音がした。
しかし、恐怖と不安で息がうまく吸えない。
一体どうしてそんなことを彼は言うのだろうか。
まさか、リヴェリオの事に気づかれた?
いや、しかしもし私の前世の正体に気づいたのなら彼ならもっと取り乱すはず。
とはいえ、前世の事に勘づかれてしまっただけでも結構な痛手だ。
それにどうやら私の前世について相当気になっているみたいだし。
本腰を入れた彼に、私の誤魔化しがどれほど利くかわからない。
それにしたって、私は一体魔物に襲われたとき何をしたのだろうか。
今まで気付いていながら前世について聞いてこなかったということは、それほどまでに私の前世に興味が無かったといこと。
逆を言えば、魔物に襲われたとき、私はそのきっかけとなる何かを私が作ってしまったということだ。
ぼんやりとしが思い出せない記憶のでは、それが何なのか見当もつかない。
できれば、致命的なことをしていなければよいのだが。
自分の失態が気になり、話を逸らせないかと思いつつ、彼に問いかけた。
「私の嘘に気づいていたというのなら、どうして今更前世の事を聞くのですか? 魔物に襲われたとき、私は一体貴方になにを」
「言っただろう、名前を呼んだって」
間髪入れずに答える彼の言葉は先ほど貰ったものと何も変わらない。
「でもっ!」
でも、それだけで私と彼に前世の繋がりがあるって、わかるわけが……。
そこで、彼の言葉に違和感を覚えた。
そういえば、彼は名前を呼んだといった。
しかし、「ヴァリタス」と呼んだとは言っていない。
そして、前世についての言及。
まさか。
まさか、私が呼んだ名前って。
「君が呼んだのは、今の僕の名前じゃない。僕の前世の名前を、君は呼んだんだよ」
「なっ」
なんてことを。
どうして、よりによって彼の名前を呼ぶようなことをしたのだ。
しかも、魔物に襲われたときに。
あろうことか、自分を裏切った人間の名前を呼んだのか。
なんて滑稽で哀れな人間なのだ、私は。
つくづく自分が情けなくなる。
いやしかし、今はそんなことを考えている場合じゃない。
彼の名前を呼んだということは、一歩間違えれば取り返しのつかない事態になりかねない。
しかし、私の前世が彼と関わりのある人物だと知って、彼はどうしたいのだろうか。
前世の事を語りあったりなどする気なのだろうか。
いや、彼の性格からして、それは考えにくい。
思い返せば、10歳の出来事があった後も、彼は自分の前世について自ら話をしたことがなかった。
だから私は、自分の記憶の中のバートンのことは知っているけれど、彼から聞かされたバートンの存在は知らない。
そもそも、彼からバートンの気配すらも感じたことがないのだ。
そんな彼が、今更前世の事に興味を持つとは思えない。
「知って、どうするの?」
思っていただけの事だったのに、知らない内に口から零れていた。
それでも後悔しなかったのは、きっと心の底から気になっていたことだったからかもしれない。
ヴァリタスは少しの沈黙の後、口を開いた。
「僕は自分の前世が嫌いです。貴方には昔、あんな風に励ましてもらったのに、それでも私は前世の自分が好きになれないのです。
だから、貴方には知られたくなかった。私の前世がどんな人物だったのかを」
嫌い? バートンの事を?
なんだそれは。
そんなバートン、私は知らない。
私が知っている彼は、確かに家族に愛してもらえなくて寂しい幼少期を過ごした少年だった。
しかし、私と出会って、私が皇帝になるまで、彼はとても幸せだと言ってくれていた。
いつも私を一番傍で優しく守ってくれていたのに。
それなのに、どうしてそんな風に自分を貶めるような感情を持ってしまうようになってしまったのか。
やはりそれも私の所為なのか?
私が彼を失望させ、深く傷つけるようなことをしたから、彼は自分が嫌いになったのか?
それなら、なおさら前世の事など打ち明けるわけにいかないじゃないか。
「なら、なら前世の事などずっと黙っていればよかったではないですか」
思っていた事だったのに、つい口に出してしまった。
一瞬後悔はしたものの、どうせならはっきりさせたいという気持ちの方が勝ってしまい、彼を見つめたまま答えを待った。
「確かに、目を逸らしていれば楽だと思いました。それでも、このまま前世の事を放っておいて、貴方に失望されるよりも、自分から話してしまった方が良いと思ったのです。
私の前世がどれほど醜く、哀れだったのかを」
どうやら、どうあっても私の前世について問いただしたいようだ。
それにしても、バートンの前世が哀れで醜いとは。
では、私はどうなるのだろうか。
信じた者は離れていき、守りたかったものにも恨まれて。
愛した者たちは私の死を切に願い、私のいない未来を夢見た。
そんな私の前世は哀れではないのか。
醜くはないのか。
バートンのような前世とは比べ物にならないほどに。
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