悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第4章

156.余生の過ごし方候補

「ただいま! ミリアっ」

「っ! お帰りなさいませ、お嬢様」

馬車に降りるとミリアの姿を見つけ、思いっきり飛びついた。
勢いが良すぎたせいか、少し苦痛に顔を歪めながらも何とか私を受け止めてくれる。

なんだか久しぶりな彼女に、すごく興奮しているのがわかった。

「まったく。暑苦しいことをするな」

「ふぎゅ」

お兄様に首根っこを掴まれ引きはがされる。
首が締まった所為か変な声が出てしまった。

ここにはお兄様と私とミリア、そして数人のメイドしかいなかったためそんなに一目を気にすることもないのだが。
しかし、誰かが見ていないとも限らない。
そしてそれがもしお父様だったりした日には……。

今度こそ、令嬢らしからぬ行動が多いと体の良い言い訳を使われて幽閉されてしまうかもしれない。

そう思うとぞっとする。
もしかしたら、お兄様はそれも考慮して私の行動を注意してくれたのかも。

と、考えたがこのお兄様がそんなことを本当に考えているかどうかはわからない。
今は真夏だし、言った通りただ単に目に見えて暑苦しい私をどうにかしたかっただけかもしれない。

だから、お兄様には感謝などしないんだからね。

自室に戻ると、旅行先であったことの顛末をミリアにざっと話した。
一週間分の思い出とはいえ、2日間は完全に寝ていたし、魔物に襲われたこと以外は特に驚くべき思い出など無かった。

まぁ、魔獣の事を話したときはさすがに食いつきが半端じゃなかったけどね。

足を怪我した程度にしていたものの、ものすごい勢いで私の心配をしたものだから、もし骨折して2日間ずっと寝続けていたなんて話をしたら卒倒するんじゃないかしら。
それは彼女のためにも辞めた方がいいわよね。

と、いうことでヴァリタスに会ったことは話したものの、それ以外は何もなく穏やかに過ごしたと彼女には話した。
とはいえ、私にとってはそれが一番重要だったりするわけで。

「やっぱり何もかも終わった後は、あんな風に田舎で暮らすのが理想よねぇ」

「はぁ、本当にお嬢様は物好きですね」

じとっとした目で見られる。
な、なによ。
別に良いじゃない。

だって権力なんかあっても何にもならないって前世で散々教わったし。
お金だってそんなにいらないし。
皇帝と公爵令嬢を経験した身から言わせてもらえば、地位だってそんなに魅力的なものじゃない。

地位も名誉も私には全く魅力のないものなんだもの。

あ!
でももう一つ余生を過ごすのに良い案があったんだわ。

「それか旅をしながら生活するのはどう? 私前世の頃から外に全く出れない身だったからわからなかったのだけど、旅行とかすごく好きみたいなの!」

ルンルン気分で話す私に黙ってミリアは話を聞いていた。

「移動だけでもすごく楽しかったのよ。あんな風に景色をぼうっと見つめながら過ごすのって、どんなに楽しいのかしら……」

生き帰りでのった汽車を思い出し、思いを馳せる。
確かに早く過ぎ去る汽車も良いけれど、別に馬車の移動も嫌いじゃないしゆっくり旅をするのもいいかも。

なんて思って提案してみたのだが、ミリアは全く表情を変えずにこちらを見つめるばかりだった。

何か言いたげなその瞳に少しばかり変な勘繰りをしてしまう。

「な、なによ。別に変だってわかっているわよ。でも、私だって」

「いえ、別に。お嬢様がそれで良いのならいいのですが」

なんだか含みのある言葉に引っかかる。

「なによ、言いたいことがあるなら言ってもいいのよ」

「いえ、ただ……」

少し考えた後、彼女は小さく口を開いた。

「なんだか毎日が大変そうだな、と。私はもう少し将来を約束された生活をしたいです。何もなく平凡なのは構いませんが、旅なんてしたらいつ暴漢に襲われるかわからないじゃないですか。
私はそんな生活御免です」

「ふーん、そうなんだ。ミリアはそんな風に考えているのね。だったら私が居なくなった後は違うお屋敷で働くのが良いんじゃないかしら」

「へっ?」

「んっ?」

ミリアは突然目を見開き可笑しな顔のまま固まってしまった。
な、なによ。私変な事言った?

「どうしたのよ、変な顔して固まって」

そう言ってミリアを見てみると、なぜか体が小刻みに揺れている。

「お、お嬢様は……。お嬢様は、婚約破棄をした後、本当にお1人で生きていくおつもりなのですか?」

「え、ええ。昔からそういっているじゃない」

いつもと違う雰囲気を醸し出す彼女に、少しばかり狼狽える。
しかし、今の会話の中に彼女がこんな風になってしまう要素などどこにあったのだろうか。

「まさかそれって本当にお1人の事だったなんて……」

「えっ? それだってずっと言ってきたでしょう? 私は一人で生きていくって」

「でもそれはっ!」

いきなりの大声に体がビクンと跳ねた。

あまり大声の出さない彼女の久ぶりの怒号に完全に体が硬直してしまう。

わなわなと震えながら言葉を振絞る彼女をただただ見つめていた。

「私は、そうは言っていても連れて行ってくださるものとばかり思っていました。それなのに、一人でなんて……。ま、まさか婚約破棄をした後は他の方たちと同様私との縁も切るおつもりで、最初から……?」

ああ、バレちゃったか。
それならしょうがないわね。
そこまで見破られてしまったなら、ミリアにはちゃんと言っておかなくちゃ。
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