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第4章
157.正しい縁の切り方は?
途轍もないショックを受けたように私を見つめるミリアに、少しばかり躊躇いながらも心の内を明かす。
「ええ、そうよ。ミリアとも縁を切るつもりでいたわ。あなたと出会ったときからずっと、そう考えてた。貴方には私たち家族の事ですごく迷惑を掛けてしまっている手前、申し訳ないとは思っていたけれど」
「なんですかそれ。そんな事、私は認めません!」
明らかにいつものミリアではなかった。
顔は悲痛に歪み、目じりにはわずかに涙が溜まっている。
「私は他の方々とは違います。お嬢様の前世の事なんてどうでもいい。私はどんなお嬢様でも、これから先どんなことがあったってお嬢様を裏切ったりしません! 私はただお嬢様と一緒にいられるならそれで、それだけで幸せなんです。なのになんで分からないんですか? なんで私の事を理解してくれないんですか?」
怒っているような、懇願するような言葉に
「思うのだけど、どうしてミリアは私の事をそんなに好きでいてくれるの? 私、貴方には面倒なことしかしていないのだと思うのだけど」
ただでさえ、出逢った最初の頃は魔法の才能が全くない私に付き合って、徒労をさせてしまっているのだ。
それに加え妹のシルビアやお父様がミリアにした事を思うと、私が彼女に出逢ってから迷惑を掛けてばかりいる。
そんな相手に、渋々仕えているのならば理解できる。
しかしミリアは私に対し、好意的に接してくれているのだ。
それが理解できない。
まるでヴァリタスが向けてくる好意の正体がわからなかった時のような感覚だった。
まぁ、今もそこまで理解できているわけではないけれど。
「ええ、確かにお嬢様と出逢ってから大変な事がいくつもあったように思います。でも、それだって一番大変だったのはお嬢様ではありませんか。そして一番傷ついていたのもお嬢様でした。それなのに、いつも誰かの事を考えてる。人と関わりたくないと言っているのに、いつも誰かを気遣って。そうやって1人で傷ついてる」
なっ。
なんて恥ずかしいことを言うのだこの子は。
それじゃあまるで、私が優しい人間みたいに聞こえるじゃないか。
大体、面倒事が起きたときって、元々私が蒔いた種が原因なことが多いし。
というか、全部そうだし。
だから、私が一番大変なのも、一番傷つくのも当然の報いなのに。
あれ? そう考えたらミリアの方がずっと優しくない?
「ありがとうミリア。そう思ってくれるのはとても嬉しいわ。でも私は、貴方が思っているような綺麗なお嬢様じゃないの。目的を果たせば私は一人で生きていきたい。その願いは本当だし、その目的の為なら人と関わることだっていとわない。それに、人を使った方がスムーズに事が運べるでしょ? だから愛想よくしてうまく動かせるように仕向けているだけよ」
いいえ、嘘です。
たまたまこうなってしまっただけです。
だって、人との縁ってどうやって切ればいいのか分からないのだもの。
とはいえ、いずれここを離れるのならば、絶対に近いうちにきれいさっぱり心おきなく離れていけるようにしなけれなばならない。
しかし、今言う事じゃないような気も……。
ああ、でも。
ミリアがここで離れたとしても、もう大丈夫かもしれない。
だってもともと、彼女から魔法を教えてもらう為に専用のメイドにしたのだし。
結局私には才能がなくて、どんなに教えてもらっても、頑張って練習しても魔法が使えるようになることはない。
ならその役目はとうの昔に終わっている。
ならば、もう彼女を解放するべきなのではないだろうか。
ミリアは3年前のシルビアとのいざこざから、お父様に嫌われている。
この屋敷の主であるお父様に睨まれながら使用人を続けるのは、彼女にはキツイはずだ。
彼女は公爵家に5年以上働いている実績があるし、家令とも仲が良いみたいだから、他の貴族の家へ使用人として斡旋してもらえるだろう。
それに、彼女なら髪や瞳の色なんて魔法を使えばどうとでもなる。
私に対して向ける好意的な感情がなくなれば、この家にこだわる理由なんてないはずだ。
とはいえ、彼女がいなくなって大変なのはミリアではなく私だろう。
ミリアは私の前世を知っていても拒絶しなかった、数少ない人だから。
でも、家にいる間とかは少し精神的にきついかもしれないけど、心を殺して我慢すれば乗りきれないわけじゃない。
ベリエル殿下と密会する機会は減ってしまうのは痛いが、彼女を引き留めてまですることじゃないし。
少し心残りではなるけれど、いずれ1人になるのに心を許す人間がいたって関係ない。
というか、そんな感触を覚えたほうが厄介だ。
離れ離れになれば人はすぐに忘れる。
だって周りにいる人の事を考える時間の方が圧倒的に増えるからだ。
でも、私はそうじゃない。
人と関われないなら、昔を思い出して誰かを思うしかない。
きっと寂しがりな私はそうやって自分を慰めるしかなくなる気がするのだ。
それならば、今ここで友情かなんかを育んじゃいけない。
ずっと誰かを怖がって、人なんて嫌いだって思っていなくちゃいけないんだ。
そうじゃなきゃ。
そうじゃなきゃ私は。
「ええ、そうよ。ミリアとも縁を切るつもりでいたわ。あなたと出会ったときからずっと、そう考えてた。貴方には私たち家族の事ですごく迷惑を掛けてしまっている手前、申し訳ないとは思っていたけれど」
「なんですかそれ。そんな事、私は認めません!」
明らかにいつものミリアではなかった。
顔は悲痛に歪み、目じりにはわずかに涙が溜まっている。
「私は他の方々とは違います。お嬢様の前世の事なんてどうでもいい。私はどんなお嬢様でも、これから先どんなことがあったってお嬢様を裏切ったりしません! 私はただお嬢様と一緒にいられるならそれで、それだけで幸せなんです。なのになんで分からないんですか? なんで私の事を理解してくれないんですか?」
怒っているような、懇願するような言葉に
「思うのだけど、どうしてミリアは私の事をそんなに好きでいてくれるの? 私、貴方には面倒なことしかしていないのだと思うのだけど」
ただでさえ、出逢った最初の頃は魔法の才能が全くない私に付き合って、徒労をさせてしまっているのだ。
それに加え妹のシルビアやお父様がミリアにした事を思うと、私が彼女に出逢ってから迷惑を掛けてばかりいる。
そんな相手に、渋々仕えているのならば理解できる。
しかしミリアは私に対し、好意的に接してくれているのだ。
それが理解できない。
まるでヴァリタスが向けてくる好意の正体がわからなかった時のような感覚だった。
まぁ、今もそこまで理解できているわけではないけれど。
「ええ、確かにお嬢様と出逢ってから大変な事がいくつもあったように思います。でも、それだって一番大変だったのはお嬢様ではありませんか。そして一番傷ついていたのもお嬢様でした。それなのに、いつも誰かの事を考えてる。人と関わりたくないと言っているのに、いつも誰かを気遣って。そうやって1人で傷ついてる」
なっ。
なんて恥ずかしいことを言うのだこの子は。
それじゃあまるで、私が優しい人間みたいに聞こえるじゃないか。
大体、面倒事が起きたときって、元々私が蒔いた種が原因なことが多いし。
というか、全部そうだし。
だから、私が一番大変なのも、一番傷つくのも当然の報いなのに。
あれ? そう考えたらミリアの方がずっと優しくない?
「ありがとうミリア。そう思ってくれるのはとても嬉しいわ。でも私は、貴方が思っているような綺麗なお嬢様じゃないの。目的を果たせば私は一人で生きていきたい。その願いは本当だし、その目的の為なら人と関わることだっていとわない。それに、人を使った方がスムーズに事が運べるでしょ? だから愛想よくしてうまく動かせるように仕向けているだけよ」
いいえ、嘘です。
たまたまこうなってしまっただけです。
だって、人との縁ってどうやって切ればいいのか分からないのだもの。
とはいえ、いずれここを離れるのならば、絶対に近いうちにきれいさっぱり心おきなく離れていけるようにしなけれなばならない。
しかし、今言う事じゃないような気も……。
ああ、でも。
ミリアがここで離れたとしても、もう大丈夫かもしれない。
だってもともと、彼女から魔法を教えてもらう為に専用のメイドにしたのだし。
結局私には才能がなくて、どんなに教えてもらっても、頑張って練習しても魔法が使えるようになることはない。
ならその役目はとうの昔に終わっている。
ならば、もう彼女を解放するべきなのではないだろうか。
ミリアは3年前のシルビアとのいざこざから、お父様に嫌われている。
この屋敷の主であるお父様に睨まれながら使用人を続けるのは、彼女にはキツイはずだ。
彼女は公爵家に5年以上働いている実績があるし、家令とも仲が良いみたいだから、他の貴族の家へ使用人として斡旋してもらえるだろう。
それに、彼女なら髪や瞳の色なんて魔法を使えばどうとでもなる。
私に対して向ける好意的な感情がなくなれば、この家にこだわる理由なんてないはずだ。
とはいえ、彼女がいなくなって大変なのはミリアではなく私だろう。
ミリアは私の前世を知っていても拒絶しなかった、数少ない人だから。
でも、家にいる間とかは少し精神的にきついかもしれないけど、心を殺して我慢すれば乗りきれないわけじゃない。
ベリエル殿下と密会する機会は減ってしまうのは痛いが、彼女を引き留めてまですることじゃないし。
少し心残りではなるけれど、いずれ1人になるのに心を許す人間がいたって関係ない。
というか、そんな感触を覚えたほうが厄介だ。
離れ離れになれば人はすぐに忘れる。
だって周りにいる人の事を考える時間の方が圧倒的に増えるからだ。
でも、私はそうじゃない。
人と関われないなら、昔を思い出して誰かを思うしかない。
きっと寂しがりな私はそうやって自分を慰めるしかなくなる気がするのだ。
それならば、今ここで友情かなんかを育んじゃいけない。
ずっと誰かを怖がって、人なんて嫌いだって思っていなくちゃいけないんだ。
そうじゃなきゃ。
そうじゃなきゃ私は。
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