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第4章
158.厄介な友人
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「お嬢様はそんなに器用な人ではないです」
「……へっ?」
いきなり言われた言葉に、ハッと我に返る。
彼女の言った言葉が理解できず、思わず聞き返してしまった。
「だから、お嬢様はそんな風に人を操るなんて器用な真似、できないって言ったんです」
「なっ!」
きっぱり言われてしまい、反論できない。
いやでも、彼女の言っていることは当たっている。
だってどうやって友情を終わらせるのかわからない私が、人をうまく操るなんて芸当、できるはずもないのだ。
おそらく彼女はそれを分かっているのだろう。
まぁ、5年以上もずっと一緒にいたらそんなことわかるわよね。
結構愚痴も溢していたし。
相変わらず自分の今までの行動に苦しめられているのに呆れ果てて、深いため息をついた。
「そうね、ミリアの言う通りだわ。私はそんなに器用な人間じゃない。でも、覚えていて。私は必ず貴方と縁を切ってみせる。だって貴方は私と関わり過ぎているもの。私にとって私に心をよせてくれる人は、もれなく要注意人物なのよ」
そういうと、ミリアはフッと鼻で笑った。
「出来るものなら、やってみてください。そういう意味では、私は結構厄介ですよ」
不敵な笑みを浮かべる彼女に、ばつが悪くなった私は思わず目を逸らした。
とういうか、そういう意味じゃなくても、貴方は相当厄介な人物だと思うけどね。
全く、どうして彼女はいつもいつもこうなのかしら。
人の事、どこか馬鹿にしている言い方してばっかりなんだから。
それでも嫌味に聞こえないというか、悪口に聞こえないのがすごいところよ。
まぁ、そんなことはどうでもいいわ。
どうやら私は、彼女との口喧嘩では勝てる見込みはなさそうだし。
だっていつもうまくあしらわれて終わってしまうもの。
おかしいわね。
私って頭良いはずなのに、どうして勉強嫌いなミリアに口喧嘩で勝てないのかしら。
しかし、これでは彼女に嫌われるようにするのは無理だろう。
だっていつもこうして彼女の言葉に撒かれてしまうもの。
まるで幼子の手を捻るように。
それに加え、私の事を一番理解しているのは間違いなくミリアであるし、前世の事を知っても尚受け入れるところを見ると
私の持っている手札では彼女を遠ざけるのははっきり言って不可能だろう。
そんな彼女とならば一緒にいても良いのかもしれないと、思わなくもない。
彼女と一緒にいて心地よいと感じることだってある。
それでもやはり、私は人の事を心の底から信じることがまだできなかった。
そんな私と一緒にいても、彼女が幸せになれるとは思えない。
しかし、彼女の私に対する強いこだわりは尋常ではないような気もする。
それなら、どうやって彼女と別れればいいのかしら。
う~ん、これはなかなか難しい事かもしれないわね。
おそらくヴァリタスよりももっとずっと厄介だわ。
とはいえ、ヴァリタスと違って時間はたっぷりあるから、彼女との関係はゆっくり破局の道を進めば良い。
***
「えっ? ヴァリタス殿下はまだお帰りになっていないのですか?」
「はい、申し訳ありません。視察先で何かトラブルがあったらしく、まだお戻りになるのに時間が掛かるようなのです」
旅行から帰った2日後、正式にお礼をしようと宮殿に出向くと、通された応接室で騎士様にそう言われてしまった。
確か予定では私がこちらに帰ってきた日と同じ日に戻って来ているはずなのに。
それにトラブルって……。
もしかして、私が魔物に襲われたこと?
いえ、でもあれはあの時で、すでに終わった事、では――――。
と、考えたところでとある重要な事実を思い出した。
そうだ、あの時私があの魔獣を殺さないでと懇願してしまったばっかりに、まだ魔獣が森にいる可能性があるんだ。
もしかして、その討伐か何かでまだ帰ってこられないんじゃっ。
ああああああ!
私ったらなんてことをしてしまったのよ!
本当にバカバカバカっ!
これも全部、私の所為よ。
私が前世の事をちゃんと思い出せていないから。
だからあんな幻想に振り回されるのよ!
自分の不甲斐なさにどうしようもない怒りを覚える。
どうすればこんな自分を傷つけられるのか考え、ふと先ほど用意してもらった紅茶が目に入った。
近くにはティーポットが置かれている。
思わずそれに手を伸ばそうとして、ふと我に返った。
いいえ、落ち着くのよ。
あの魔獣の所為とは限らないのだし。
それにいまはそばに騎士様がいる。
そんな奇行に走った私を見たら、彼が可哀そうだ。
平静に平静に。
胸に手を置き、ふぅっと息を吐くと知らせてくれた騎士様に向き直る。
「そうですか。便りも寄越さず来てしまった私に落ち度がありましたね。教えてくださってありがとうございます」
そういって微笑み掛けると、騎士様は突然頬を赤らめスッと不自然に背筋を伸ばした。
「い、いえっ! とんでもありません!」
声、裏返っているけど大丈夫なのかしら?
ぎこちなく扉の方へ歩いていくと、勢いよくこちらに振り返った。
「それでは、私はこれで! しっ、失礼しました!」
そういうと、ササッと早足で出て行ってしまった。
本当に大丈夫なのかしら、あの人。
「……へっ?」
いきなり言われた言葉に、ハッと我に返る。
彼女の言った言葉が理解できず、思わず聞き返してしまった。
「だから、お嬢様はそんな風に人を操るなんて器用な真似、できないって言ったんです」
「なっ!」
きっぱり言われてしまい、反論できない。
いやでも、彼女の言っていることは当たっている。
だってどうやって友情を終わらせるのかわからない私が、人をうまく操るなんて芸当、できるはずもないのだ。
おそらく彼女はそれを分かっているのだろう。
まぁ、5年以上もずっと一緒にいたらそんなことわかるわよね。
結構愚痴も溢していたし。
相変わらず自分の今までの行動に苦しめられているのに呆れ果てて、深いため息をついた。
「そうね、ミリアの言う通りだわ。私はそんなに器用な人間じゃない。でも、覚えていて。私は必ず貴方と縁を切ってみせる。だって貴方は私と関わり過ぎているもの。私にとって私に心をよせてくれる人は、もれなく要注意人物なのよ」
そういうと、ミリアはフッと鼻で笑った。
「出来るものなら、やってみてください。そういう意味では、私は結構厄介ですよ」
不敵な笑みを浮かべる彼女に、ばつが悪くなった私は思わず目を逸らした。
とういうか、そういう意味じゃなくても、貴方は相当厄介な人物だと思うけどね。
全く、どうして彼女はいつもいつもこうなのかしら。
人の事、どこか馬鹿にしている言い方してばっかりなんだから。
それでも嫌味に聞こえないというか、悪口に聞こえないのがすごいところよ。
まぁ、そんなことはどうでもいいわ。
どうやら私は、彼女との口喧嘩では勝てる見込みはなさそうだし。
だっていつもうまくあしらわれて終わってしまうもの。
おかしいわね。
私って頭良いはずなのに、どうして勉強嫌いなミリアに口喧嘩で勝てないのかしら。
しかし、これでは彼女に嫌われるようにするのは無理だろう。
だっていつもこうして彼女の言葉に撒かれてしまうもの。
まるで幼子の手を捻るように。
それに加え、私の事を一番理解しているのは間違いなくミリアであるし、前世の事を知っても尚受け入れるところを見ると
私の持っている手札では彼女を遠ざけるのははっきり言って不可能だろう。
そんな彼女とならば一緒にいても良いのかもしれないと、思わなくもない。
彼女と一緒にいて心地よいと感じることだってある。
それでもやはり、私は人の事を心の底から信じることがまだできなかった。
そんな私と一緒にいても、彼女が幸せになれるとは思えない。
しかし、彼女の私に対する強いこだわりは尋常ではないような気もする。
それなら、どうやって彼女と別れればいいのかしら。
う~ん、これはなかなか難しい事かもしれないわね。
おそらくヴァリタスよりももっとずっと厄介だわ。
とはいえ、ヴァリタスと違って時間はたっぷりあるから、彼女との関係はゆっくり破局の道を進めば良い。
***
「えっ? ヴァリタス殿下はまだお帰りになっていないのですか?」
「はい、申し訳ありません。視察先で何かトラブルがあったらしく、まだお戻りになるのに時間が掛かるようなのです」
旅行から帰った2日後、正式にお礼をしようと宮殿に出向くと、通された応接室で騎士様にそう言われてしまった。
確か予定では私がこちらに帰ってきた日と同じ日に戻って来ているはずなのに。
それにトラブルって……。
もしかして、私が魔物に襲われたこと?
いえ、でもあれはあの時で、すでに終わった事、では――――。
と、考えたところでとある重要な事実を思い出した。
そうだ、あの時私があの魔獣を殺さないでと懇願してしまったばっかりに、まだ魔獣が森にいる可能性があるんだ。
もしかして、その討伐か何かでまだ帰ってこられないんじゃっ。
ああああああ!
私ったらなんてことをしてしまったのよ!
本当にバカバカバカっ!
これも全部、私の所為よ。
私が前世の事をちゃんと思い出せていないから。
だからあんな幻想に振り回されるのよ!
自分の不甲斐なさにどうしようもない怒りを覚える。
どうすればこんな自分を傷つけられるのか考え、ふと先ほど用意してもらった紅茶が目に入った。
近くにはティーポットが置かれている。
思わずそれに手を伸ばそうとして、ふと我に返った。
いいえ、落ち着くのよ。
あの魔獣の所為とは限らないのだし。
それにいまはそばに騎士様がいる。
そんな奇行に走った私を見たら、彼が可哀そうだ。
平静に平静に。
胸に手を置き、ふぅっと息を吐くと知らせてくれた騎士様に向き直る。
「そうですか。便りも寄越さず来てしまった私に落ち度がありましたね。教えてくださってありがとうございます」
そういって微笑み掛けると、騎士様は突然頬を赤らめスッと不自然に背筋を伸ばした。
「い、いえっ! とんでもありません!」
声、裏返っているけど大丈夫なのかしら?
ぎこちなく扉の方へ歩いていくと、勢いよくこちらに振り返った。
「それでは、私はこれで! しっ、失礼しました!」
そういうと、ササッと早足で出て行ってしまった。
本当に大丈夫なのかしら、あの人。
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