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第4章
160.いつかのお花畑
黒龍は今、怪我が大丈夫かと聞いてきた。
彼はあの場にいなかったのに、どうしてそのことを知っているのだろうか。
怪我だってもう完全に治っているし、そのことについて知っている人間なんてものすごく限られているのに。
「ふふっ。主様の事はそれを通して見てるからね」
そういうと先ほど私が発動させようとした魔法が刻まれた右手に視線を落とした。
何それ?
私に掛けた魔法って、ただの護身術か何かの類じゃないの?
なんだか急に不穏な魔法をかけられたんじゃないかと思えてきた。
「それで? 主様はどうして前世の事をそんなに知りたいの?」
改めて聞き返してきた彼に、どうやら私が口走ってしまったあたりは知らないようだ。
一体どういう仕組みなのか、ますます気になる。
声は聞こえないとかそういうものなのかな?
まぁ、いまはそんなことはいい。
一番大事な話を優先しよう。
「前も言ったと思うけど、私、全然思い出せていないの。だから思い出したいのよ。それに支障が出てきているし」
「支障?」
ここにきてやっと、この間旅行であった出来事を彼に打ち明けた。
私が話をしている間、黒龍は始終無言で腕を組みながら話を聞いていた。
その様相が少し怒っているようにも見え、内心ビクビクしていたのは言うまでもない。
話終えた後、彼が開口一番に言った言葉は。
「その魔獣、地獄に落ちてしまえばいいのに」
小さく上手く聞き取れないほどの大きさだったが、私の耳にはしっかりと届いていた。
怖い怖いよ。
何より目が怖いよ。
「ゴホンッ。それは確かに困ったね。まさか思い出せないことでそんなまずい展開になるなんて。僕も予想してなかったよ」
申し訳なさそうに言う彼に、後ろめたさを感じてしまう。
いや、誰でも予想なんかできないだろうよ、こんな展開。
それに私の落ち度だし。
だからそんな傷ついた顔しないでほしい。
私がそう思ってしまっていたからだろうか。
黒龍は私の顔を見て、ハッとしたように表情を変えると一瞬目を瞑った。
そしてその瞳が開かれたときには、もういつもの飄々とした彼に戻っていた。
「わかったよ。この間、主様のお願い事は叶えるって言っちゃったしね。全然気は進まないけど、教えてあげる」
「ほっ、本当に!」
思わず彼の手を両手で包むように握ってしまう。
以前話したときも、教えてくれるとは言っていたが、あまり乗り気ではなかった。
あの時から今日までそんなに時間は経ってないし、正直断られる可能性の方が大きいとも踏んでいたのだ。
まぁ、一回や二回で諦める気はさらさらなかったけれど。
でもまさか事情を話しただけですんなり承諾してもらえるなんて!
「ありがとう! すごく嬉しいわ」
舞い上がる気持ちを抑え込む事もなく、満面の笑みで彼にお礼を言った。
すると、急に頬を赤らめ照れたようにそっぽを向いてしまう。
な、なんですか今の反応は!
正直いってすごく可愛い。
そういう反応見ると、なんだか彼がそこいらにいる普通の男の子みたい。
ま、実際はこの国のどんな人たちよりも長生きのおじいさんなのだけど。
「もう、主様ったら。そういう顔、誰にでもしてるんじゃないだろうね?」
「へっ? どういう意味?」
「別になんでもないですけど……」
すねたようにそっぽを向き、クルリと体を翻すと、私が向かっていた方向へと歩き出した。
数歩先を歩いたところでチラリとこちらを振り返る。
「こっちだよ主様。貴方の秘密に案内してあげる」
そういうと、前に向き直って歩きだした。
私は彼を追いかけるように2、3歩後をついていきながら、廊下の先へと向かった。
「うわぁ、すごい綺麗ね」
彼が向かった先は昔ヴァリタスが私に見せてくれたお花畑だった。
相変わらず、色とりどりの花が咲き乱れており、丁寧に手入れされているであろう花たちはどれも美しい。
そんな浮かれた私とは正反対に、黒龍はお花畑に見向きもせずにそそくさと横切っていく。
景色に見とれながらも、彼の姿を目で追いつつ付いて行った先には。
「なにこれ? 倉庫?」
お花畑の端の方に、ぽつんと建てられた小さな倉庫のような建物だった。
いや、建物と形容して良いものかもわからないような質素なものだったけれど。
とはいえ、円柱型に立てられたそれはオレンジや白などのレンガをまばらに積み上げて作られており、濃いオレンジ屋根が可愛らしい倉庫(?)だった。
流石は宮殿のお庭。
倉庫でさえも、外観にこだわって作られているのだろう。
しかし、この倉庫に一体何の用なのだろうか。
「ねぇ、主様。何か感じない?」
「何かって?」
問いかけたものの、私の返事が予想とは違ったのにがっかりしたのだろうか。
倉庫に視線を戻すと、私の問いかけには返事が返ってくる気配は全くなかった。
ええぇ。
この倉庫になにかあるってこと?
でも、何か感じると言われても……。
ひょこひょこと顔を動かし、それを観察してみるものの特別何かを思うこともない。
それなら、と倉庫の壁に触れてみても、なにも起こらない。
いや、私、今何をさせられているのかしら?
彼はあの場にいなかったのに、どうしてそのことを知っているのだろうか。
怪我だってもう完全に治っているし、そのことについて知っている人間なんてものすごく限られているのに。
「ふふっ。主様の事はそれを通して見てるからね」
そういうと先ほど私が発動させようとした魔法が刻まれた右手に視線を落とした。
何それ?
私に掛けた魔法って、ただの護身術か何かの類じゃないの?
なんだか急に不穏な魔法をかけられたんじゃないかと思えてきた。
「それで? 主様はどうして前世の事をそんなに知りたいの?」
改めて聞き返してきた彼に、どうやら私が口走ってしまったあたりは知らないようだ。
一体どういう仕組みなのか、ますます気になる。
声は聞こえないとかそういうものなのかな?
まぁ、いまはそんなことはいい。
一番大事な話を優先しよう。
「前も言ったと思うけど、私、全然思い出せていないの。だから思い出したいのよ。それに支障が出てきているし」
「支障?」
ここにきてやっと、この間旅行であった出来事を彼に打ち明けた。
私が話をしている間、黒龍は始終無言で腕を組みながら話を聞いていた。
その様相が少し怒っているようにも見え、内心ビクビクしていたのは言うまでもない。
話終えた後、彼が開口一番に言った言葉は。
「その魔獣、地獄に落ちてしまえばいいのに」
小さく上手く聞き取れないほどの大きさだったが、私の耳にはしっかりと届いていた。
怖い怖いよ。
何より目が怖いよ。
「ゴホンッ。それは確かに困ったね。まさか思い出せないことでそんなまずい展開になるなんて。僕も予想してなかったよ」
申し訳なさそうに言う彼に、後ろめたさを感じてしまう。
いや、誰でも予想なんかできないだろうよ、こんな展開。
それに私の落ち度だし。
だからそんな傷ついた顔しないでほしい。
私がそう思ってしまっていたからだろうか。
黒龍は私の顔を見て、ハッとしたように表情を変えると一瞬目を瞑った。
そしてその瞳が開かれたときには、もういつもの飄々とした彼に戻っていた。
「わかったよ。この間、主様のお願い事は叶えるって言っちゃったしね。全然気は進まないけど、教えてあげる」
「ほっ、本当に!」
思わず彼の手を両手で包むように握ってしまう。
以前話したときも、教えてくれるとは言っていたが、あまり乗り気ではなかった。
あの時から今日までそんなに時間は経ってないし、正直断られる可能性の方が大きいとも踏んでいたのだ。
まぁ、一回や二回で諦める気はさらさらなかったけれど。
でもまさか事情を話しただけですんなり承諾してもらえるなんて!
「ありがとう! すごく嬉しいわ」
舞い上がる気持ちを抑え込む事もなく、満面の笑みで彼にお礼を言った。
すると、急に頬を赤らめ照れたようにそっぽを向いてしまう。
な、なんですか今の反応は!
正直いってすごく可愛い。
そういう反応見ると、なんだか彼がそこいらにいる普通の男の子みたい。
ま、実際はこの国のどんな人たちよりも長生きのおじいさんなのだけど。
「もう、主様ったら。そういう顔、誰にでもしてるんじゃないだろうね?」
「へっ? どういう意味?」
「別になんでもないですけど……」
すねたようにそっぽを向き、クルリと体を翻すと、私が向かっていた方向へと歩き出した。
数歩先を歩いたところでチラリとこちらを振り返る。
「こっちだよ主様。貴方の秘密に案内してあげる」
そういうと、前に向き直って歩きだした。
私は彼を追いかけるように2、3歩後をついていきながら、廊下の先へと向かった。
「うわぁ、すごい綺麗ね」
彼が向かった先は昔ヴァリタスが私に見せてくれたお花畑だった。
相変わらず、色とりどりの花が咲き乱れており、丁寧に手入れされているであろう花たちはどれも美しい。
そんな浮かれた私とは正反対に、黒龍はお花畑に見向きもせずにそそくさと横切っていく。
景色に見とれながらも、彼の姿を目で追いつつ付いて行った先には。
「なにこれ? 倉庫?」
お花畑の端の方に、ぽつんと建てられた小さな倉庫のような建物だった。
いや、建物と形容して良いものかもわからないような質素なものだったけれど。
とはいえ、円柱型に立てられたそれはオレンジや白などのレンガをまばらに積み上げて作られており、濃いオレンジ屋根が可愛らしい倉庫(?)だった。
流石は宮殿のお庭。
倉庫でさえも、外観にこだわって作られているのだろう。
しかし、この倉庫に一体何の用なのだろうか。
「ねぇ、主様。何か感じない?」
「何かって?」
問いかけたものの、私の返事が予想とは違ったのにがっかりしたのだろうか。
倉庫に視線を戻すと、私の問いかけには返事が返ってくる気配は全くなかった。
ええぇ。
この倉庫になにかあるってこと?
でも、何か感じると言われても……。
ひょこひょこと顔を動かし、それを観察してみるものの特別何かを思うこともない。
それなら、と倉庫の壁に触れてみても、なにも起こらない。
いや、私、今何をさせられているのかしら?
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