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第4章
161.不気味な倉庫
もしかして黒龍って、本当は先ほどの私のやらかしに怒っているのでは?!
いくら記憶の混濁が起きていたとはいえ、昔の話をポロっと口にだしてしまうなんて、迂闊にもほどがあるわよね。
それに黒龍はリヴェリオの事をすごく大事にしていたみたいだし。
だから、こんな何もない場所に連れてきて、私に意地悪してるんじゃ……。
チラリと彼を見やると、相変わらず倉庫をじっと見つめている。
その横顔は何の感情も感じないように見えるのに、どこか寂しそうにもみえた。
「僕にもね、わからないんだよ」
私の視線に気づいたのだろうか。
倉庫を見つめたまま、ポツリと彼はそう漏らした。
一体何の話なのか、私にはわからなかったがそれは間違いなく私に向けられたもののように感じた。
とはいえ、彼とこのままここに留まる訳にもいかなしなぁ。
しかし、いい加減どういう意図でここに連れてきたのかくらい教えてくれてもいいのに。
少々拗ね始めた私は、この退屈な時間を潰そうと、無意識に倉庫の周りをまわり始めた。
とはいえ、この倉庫、いつからあったのかしら。
ヴァリタスと来たときにあったっけ?
こんなに可愛らしいものがあったなら、気づいてもいいような気がするけど。
そう思いながら歩いていると、いつの間にか黒龍とばったり会ってしまった。
どうやら一周してしまったらしい。
私が周ってきたことに気づいたのか、黒龍は少しだけ視線を私に向けるとポツリと問いかけた。
「在った?」
その短い問いかけに、一瞬何を聞かれたのかわからなかった。
しかし、そこでハッとして後ろを振り返る。
正確には元来た道、倉庫を巡った自分の導線に振り返った。
「ない、どこにも」
そう、ないのだ。
どこにも。
あるはずのあれが。
「でもあるはずだよ、絶対に」
感情の籠らない声で彼は言った。
その淡々とした彼とは裏腹に、私はどこか焦りのようなものを感じていた。
おかしい。
おかしいわ。
いくら庭だとは言っても、ここは宮殿。
しかもこの花畑は、王宮が誇る庭園の1つである。
そんな場所に無意味な建物を建てるはずがない。
それなのに、どうして、どうしてこれには……。
「入口が無いの……?」
始めは庭の道具を入れておくための倉庫か何かかと思っていた。
だからこんな場所にあっても違和感などなかったのだ。
それなのに、機能性が全くない物体があるというだけで、それは不気味な物へと豹変していた。
どうして、誰もこの建物を壊そうとしないのだろう。
一体何なんだ、この建物は。
「主様、もう一度よく観察して、触れてみて。きっとどこかにあるはずだから」
「え、何言って……」
今しがた入口が無い事を確認したばかりである。
それなのに、あるはずとは一体……。
それに加えどう考えても不自然なこの建物に、私は気味悪さを感じて仕方がない。
できればここから離れたいぐらいだ。
それなのに、観察してみてだの、触れてみろだの。
いやいや、そんなこと言われても……。
訴えるように、黒龍を見つめる。
だが彼は先ほどからじっと建物を見つめたまま、全く動く気配がない。
こちらを見ようともしないのだ。
うう、これは私がそのあるかどうかもわからない入口を見つめるまで動かないとかそういう事なのかしら。
なんだか嫌だけど、彼の言った通りにするしかないわね。
恐る恐る触ってみるものの、やはり何かを感じ取ることなどなっかった。
それよりも早くこの不気味な物体から離れたい。
そんな衝動に駆られていた。
もしかして、物語かなんかでよくあるような、どこかのレンガが押せるようになっていてそこを押したら入口が出てくるとかいう仕掛けなのかしら。
そう思って隈なくレンガに触れていく。
とはいえ、そこまで大きな建物ではないにしろ、一つ一つのレンガに触れていくのは一苦労だ。
半分ほど確かめてみたところで、いい加減この行為をしている自分に情けなくなってきたころだった。
ああ、もうなんだか本当にやる気無くなってきた。
気だるげに手を次のレンガへと滑らせる。
ピッ――――。
「っ! いっつ」
一瞬、鋭い痛みが右手の手の内を襲った。
恐る恐る開いてみてみると、どこかのレンガの端で切ったのだろう。
斜めに鋭く切れた線が入っており、そこからジワリと血が滲み始めていた。
うわ~、これ地味に痛いやつじゃない?
そこからジンジンと滲む仄かに熱い痛みに、思わず傷口を睨みつけた。
もう、なんなのよ。
この間負った傷からしたら、全くもって大した傷ではない。
それなのに、どうしてか無性に腹が立って仕方ないのだ。
ああ、もうやめよ。
むしゃくしゃした気分に流されるまま、地面に座り込もうと建物へ手をついた時だった。
その壁から強い光が発せられる。
「えっ? なに?!」
その眩い光に気が付いたのか、黒龍が私に駆け寄ってきた。
「ああ、良かった。見つけられたんだね」
「見つけられたって、じゃあもしかしてこれが?」
いまだ強い光を放つその場所を2人して見つめていた。
と、そうしている徐々に光が弱まっていく。
「えっ?」
いや、これ、どう見ても入口じゃない。
そこには、青白く光る、四角い文字盤のようなものが浮かんでいた。
とても薄っぺらいものでできているようで、向こう側が透けている。
いつか”前明の儀”でプアドール様が使っていたものに似ているような気がした。
いくら記憶の混濁が起きていたとはいえ、昔の話をポロっと口にだしてしまうなんて、迂闊にもほどがあるわよね。
それに黒龍はリヴェリオの事をすごく大事にしていたみたいだし。
だから、こんな何もない場所に連れてきて、私に意地悪してるんじゃ……。
チラリと彼を見やると、相変わらず倉庫をじっと見つめている。
その横顔は何の感情も感じないように見えるのに、どこか寂しそうにもみえた。
「僕にもね、わからないんだよ」
私の視線に気づいたのだろうか。
倉庫を見つめたまま、ポツリと彼はそう漏らした。
一体何の話なのか、私にはわからなかったがそれは間違いなく私に向けられたもののように感じた。
とはいえ、彼とこのままここに留まる訳にもいかなしなぁ。
しかし、いい加減どういう意図でここに連れてきたのかくらい教えてくれてもいいのに。
少々拗ね始めた私は、この退屈な時間を潰そうと、無意識に倉庫の周りをまわり始めた。
とはいえ、この倉庫、いつからあったのかしら。
ヴァリタスと来たときにあったっけ?
こんなに可愛らしいものがあったなら、気づいてもいいような気がするけど。
そう思いながら歩いていると、いつの間にか黒龍とばったり会ってしまった。
どうやら一周してしまったらしい。
私が周ってきたことに気づいたのか、黒龍は少しだけ視線を私に向けるとポツリと問いかけた。
「在った?」
その短い問いかけに、一瞬何を聞かれたのかわからなかった。
しかし、そこでハッとして後ろを振り返る。
正確には元来た道、倉庫を巡った自分の導線に振り返った。
「ない、どこにも」
そう、ないのだ。
どこにも。
あるはずのあれが。
「でもあるはずだよ、絶対に」
感情の籠らない声で彼は言った。
その淡々とした彼とは裏腹に、私はどこか焦りのようなものを感じていた。
おかしい。
おかしいわ。
いくら庭だとは言っても、ここは宮殿。
しかもこの花畑は、王宮が誇る庭園の1つである。
そんな場所に無意味な建物を建てるはずがない。
それなのに、どうして、どうしてこれには……。
「入口が無いの……?」
始めは庭の道具を入れておくための倉庫か何かかと思っていた。
だからこんな場所にあっても違和感などなかったのだ。
それなのに、機能性が全くない物体があるというだけで、それは不気味な物へと豹変していた。
どうして、誰もこの建物を壊そうとしないのだろう。
一体何なんだ、この建物は。
「主様、もう一度よく観察して、触れてみて。きっとどこかにあるはずだから」
「え、何言って……」
今しがた入口が無い事を確認したばかりである。
それなのに、あるはずとは一体……。
それに加えどう考えても不自然なこの建物に、私は気味悪さを感じて仕方がない。
できればここから離れたいぐらいだ。
それなのに、観察してみてだの、触れてみろだの。
いやいや、そんなこと言われても……。
訴えるように、黒龍を見つめる。
だが彼は先ほどからじっと建物を見つめたまま、全く動く気配がない。
こちらを見ようともしないのだ。
うう、これは私がそのあるかどうかもわからない入口を見つめるまで動かないとかそういう事なのかしら。
なんだか嫌だけど、彼の言った通りにするしかないわね。
恐る恐る触ってみるものの、やはり何かを感じ取ることなどなっかった。
それよりも早くこの不気味な物体から離れたい。
そんな衝動に駆られていた。
もしかして、物語かなんかでよくあるような、どこかのレンガが押せるようになっていてそこを押したら入口が出てくるとかいう仕掛けなのかしら。
そう思って隈なくレンガに触れていく。
とはいえ、そこまで大きな建物ではないにしろ、一つ一つのレンガに触れていくのは一苦労だ。
半分ほど確かめてみたところで、いい加減この行為をしている自分に情けなくなってきたころだった。
ああ、もうなんだか本当にやる気無くなってきた。
気だるげに手を次のレンガへと滑らせる。
ピッ――――。
「っ! いっつ」
一瞬、鋭い痛みが右手の手の内を襲った。
恐る恐る開いてみてみると、どこかのレンガの端で切ったのだろう。
斜めに鋭く切れた線が入っており、そこからジワリと血が滲み始めていた。
うわ~、これ地味に痛いやつじゃない?
そこからジンジンと滲む仄かに熱い痛みに、思わず傷口を睨みつけた。
もう、なんなのよ。
この間負った傷からしたら、全くもって大した傷ではない。
それなのに、どうしてか無性に腹が立って仕方ないのだ。
ああ、もうやめよ。
むしゃくしゃした気分に流されるまま、地面に座り込もうと建物へ手をついた時だった。
その壁から強い光が発せられる。
「えっ? なに?!」
その眩い光に気が付いたのか、黒龍が私に駆け寄ってきた。
「ああ、良かった。見つけられたんだね」
「見つけられたって、じゃあもしかしてこれが?」
いまだ強い光を放つその場所を2人して見つめていた。
と、そうしている徐々に光が弱まっていく。
「えっ?」
いや、これ、どう見ても入口じゃない。
そこには、青白く光る、四角い文字盤のようなものが浮かんでいた。
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