184 / 339
第4章
180.いじめの協力相手
しおりを挟む
まぁいいわ。
私にはこの状況、結構都合が良いし。
セイラの靴箱を開けると、中には決して口には出せないような言葉が書かれた張り紙や手紙なんかが押し込まれている。
履き替えるための靴は持ち帰っているため存在しないため、被害に遭う事はなかったようだ。
しかしこれを新学期の朝お見舞いされるのはどんな気分であろうとも心が沈みそうだ。
「あ、あのベルフェリト様。これは違いましてよ。私たちがしたのではないですわ!」
ライリは無実を訴えるが、声が上擦っているのを押さえることはできなかったようだ。
そんなんじゃ、本当に自分がしていなかったとしても疑われてしまうわよ。
しかし、こんな茶番も面白いかもしれない。
少し付き合ってあげるか。
「あら、あなた方ではないですか? では犯人をご存じ?」
ニヤリと笑いながら彼女たちを横目に問いかける。
静かに問いかける私に、意図を計りかねて互いに見つめあう姿はまるで幼い少女みたい。
「最近、私もメドビン様には少々釘を刺しておいたほうが良いのではないかと考えていたの。折角ですから、お近づきになりたかったのですが」
「ほ、本当ですか⁉」
彼女たちの疑念を払拭するように、付け加えて理由を述べるとライリは前のめりになって驚いた。
こちらに向ける目がキラキラしている。
食いつきすごいわね。
そんなに嬉しかったの?
先ほどまでの怯えた彼女はどこかに消えてしまったようだ。
「じ、実は私たちもそう思っていたところなのです! ベルフェリト様はメドビン様と仲がよろしいと思っておりましたが、まさかそのようにお思いとはっ!」
私という味方を見つけて嬉しいのか彼女は頬を紅潮させて早口で捲し立てる。
あらあら、そんなに簡単に心を開いてしまって。
そんなんじゃ、意地悪な人に利用されてしまうわよ。
そう、私のような人に。
しかし、これは新学期そうそう良いところを見つけた。
それなら思っていたより早く計画を進められそうだ。
ニヤリと笑うと、先ほどまで期待の眼差しを向けていた彼女たちの顔は一瞬にして青ざめた。
使えるものは使う。
それに、彼女たちなら使い捨てにしてもそこまで心を痛めることがなさそうだし。
本当に、丁度良いかも。
「ねぇ、私もその悪戯に混ぜてもらっても良いからしら?」
やんわり言ったつもりだったが、なぜかライリに悲鳴を上げられてしまった。
とりあえず、今までセイラに何を行ってきたのかを聞くとものすごく饒舌になって丸ごと全部教えてくれた。
彼女たちが行っていたのは、教科書を隠す、ノートなどへの落書き、靴や体操服などの小物を隠すまたは汚すなどなど。
おそらくナタリーが夏休みに入る前にいじめがどうのこうの言っていたのはこれのことだろう。
しかしこれは、何というか。
それ、例の恋愛小説で読んだ悪役令嬢がやるようないじめそのものじゃない。
すっごく聞いたことあるような気がすると思ったら。
多分この子たちもあの手の小説が好きなのだろう。
それなら、セイラと仲良くなれそうな気がするのに。
しかし、身分というのはその機会さえも奪ってしまうのでしょうね。
とはいえ、小説と違うのはそこまで過激な事はしていないという点だろう。
しかし、現実にやられたら相当精神にきそうね。
ただ、ここで1つ疑問が出てくる。
そもそも、彼女たちはCクラス。
標的であるセイラはBクラスと、クラスが違うのにどうやってそんなにいじめ行為を実行できたのかしら。
「これ、すべてあなた方が行ったことなの?」
そう聞くと、彼女は少し罰の悪そうな顔になった。
回りを見渡しながら、私の耳元へと口を近づける。
「実は、私たち以外の方も彼女へ嫌がらせを行っているのです。その方々と少しだけ協力したというか……」
なるほど。
彼女を良く思わない人も多ければ、それを実行する人も多いというわけね。
けれど、それでは私の計画になにか支障をきたす可能性があるわね。
出来れば、セイラのいじめは全て私の手の内で把握しておきたい。
「ねぇ、今後は他の方々と協力するのはやめておきましょう」
「えっ? なぜです? 味方は多い方がよろしいではないですか」
当然の疑問に、ライリは驚きながら聞いてきた。
まぁ普通はそう思うのだろう。
「こういうことはあまり大ごとになっては大変なのよ。もし誰がやっていたのかバレたら社交界で生きていけなくなるわ。それに人が多ければ、その分尻尾を掴まれるリスクが高くなるし」
それにね。と付け足すように彼女たちに告げる。
彼女たちによく、理解してもらえるように。
「あの子、ヴァリタス殿下に相当気に入られているのよ。もしこの事が殿下に知られたら、私だってただじゃ済まないわ」
「な、なるほど」
なんだかすごく小物臭のする会話だけど、これも仕方ないことなのだろう。
できれば、もう少し頭の働く子が良いのだけど。
まぁ、良いか。
私も同じようなものだし。
「できれば、ほかにいじめをしている方々にはそれを止めていただきたいのだけど。マイリエス嬢、知っている方だけでも良いから、声を掛けてくれないかしら」
私の名前を出しても良いと告げると、彼女は二つ返事で了承してくれた。
それに満足し、そろそろ人もまばらに登校してくる時間帯になってきたため、私たちはそれぞれのクラスに向かうことにした。
彼女に教えてもらった数々のいじめを頭の中で思い起こしながら。
私にはこの状況、結構都合が良いし。
セイラの靴箱を開けると、中には決して口には出せないような言葉が書かれた張り紙や手紙なんかが押し込まれている。
履き替えるための靴は持ち帰っているため存在しないため、被害に遭う事はなかったようだ。
しかしこれを新学期の朝お見舞いされるのはどんな気分であろうとも心が沈みそうだ。
「あ、あのベルフェリト様。これは違いましてよ。私たちがしたのではないですわ!」
ライリは無実を訴えるが、声が上擦っているのを押さえることはできなかったようだ。
そんなんじゃ、本当に自分がしていなかったとしても疑われてしまうわよ。
しかし、こんな茶番も面白いかもしれない。
少し付き合ってあげるか。
「あら、あなた方ではないですか? では犯人をご存じ?」
ニヤリと笑いながら彼女たちを横目に問いかける。
静かに問いかける私に、意図を計りかねて互いに見つめあう姿はまるで幼い少女みたい。
「最近、私もメドビン様には少々釘を刺しておいたほうが良いのではないかと考えていたの。折角ですから、お近づきになりたかったのですが」
「ほ、本当ですか⁉」
彼女たちの疑念を払拭するように、付け加えて理由を述べるとライリは前のめりになって驚いた。
こちらに向ける目がキラキラしている。
食いつきすごいわね。
そんなに嬉しかったの?
先ほどまでの怯えた彼女はどこかに消えてしまったようだ。
「じ、実は私たちもそう思っていたところなのです! ベルフェリト様はメドビン様と仲がよろしいと思っておりましたが、まさかそのようにお思いとはっ!」
私という味方を見つけて嬉しいのか彼女は頬を紅潮させて早口で捲し立てる。
あらあら、そんなに簡単に心を開いてしまって。
そんなんじゃ、意地悪な人に利用されてしまうわよ。
そう、私のような人に。
しかし、これは新学期そうそう良いところを見つけた。
それなら思っていたより早く計画を進められそうだ。
ニヤリと笑うと、先ほどまで期待の眼差しを向けていた彼女たちの顔は一瞬にして青ざめた。
使えるものは使う。
それに、彼女たちなら使い捨てにしてもそこまで心を痛めることがなさそうだし。
本当に、丁度良いかも。
「ねぇ、私もその悪戯に混ぜてもらっても良いからしら?」
やんわり言ったつもりだったが、なぜかライリに悲鳴を上げられてしまった。
とりあえず、今までセイラに何を行ってきたのかを聞くとものすごく饒舌になって丸ごと全部教えてくれた。
彼女たちが行っていたのは、教科書を隠す、ノートなどへの落書き、靴や体操服などの小物を隠すまたは汚すなどなど。
おそらくナタリーが夏休みに入る前にいじめがどうのこうの言っていたのはこれのことだろう。
しかしこれは、何というか。
それ、例の恋愛小説で読んだ悪役令嬢がやるようないじめそのものじゃない。
すっごく聞いたことあるような気がすると思ったら。
多分この子たちもあの手の小説が好きなのだろう。
それなら、セイラと仲良くなれそうな気がするのに。
しかし、身分というのはその機会さえも奪ってしまうのでしょうね。
とはいえ、小説と違うのはそこまで過激な事はしていないという点だろう。
しかし、現実にやられたら相当精神にきそうね。
ただ、ここで1つ疑問が出てくる。
そもそも、彼女たちはCクラス。
標的であるセイラはBクラスと、クラスが違うのにどうやってそんなにいじめ行為を実行できたのかしら。
「これ、すべてあなた方が行ったことなの?」
そう聞くと、彼女は少し罰の悪そうな顔になった。
回りを見渡しながら、私の耳元へと口を近づける。
「実は、私たち以外の方も彼女へ嫌がらせを行っているのです。その方々と少しだけ協力したというか……」
なるほど。
彼女を良く思わない人も多ければ、それを実行する人も多いというわけね。
けれど、それでは私の計画になにか支障をきたす可能性があるわね。
出来れば、セイラのいじめは全て私の手の内で把握しておきたい。
「ねぇ、今後は他の方々と協力するのはやめておきましょう」
「えっ? なぜです? 味方は多い方がよろしいではないですか」
当然の疑問に、ライリは驚きながら聞いてきた。
まぁ普通はそう思うのだろう。
「こういうことはあまり大ごとになっては大変なのよ。もし誰がやっていたのかバレたら社交界で生きていけなくなるわ。それに人が多ければ、その分尻尾を掴まれるリスクが高くなるし」
それにね。と付け足すように彼女たちに告げる。
彼女たちによく、理解してもらえるように。
「あの子、ヴァリタス殿下に相当気に入られているのよ。もしこの事が殿下に知られたら、私だってただじゃ済まないわ」
「な、なるほど」
なんだかすごく小物臭のする会話だけど、これも仕方ないことなのだろう。
できれば、もう少し頭の働く子が良いのだけど。
まぁ、良いか。
私も同じようなものだし。
「できれば、ほかにいじめをしている方々にはそれを止めていただきたいのだけど。マイリエス嬢、知っている方だけでも良いから、声を掛けてくれないかしら」
私の名前を出しても良いと告げると、彼女は二つ返事で了承してくれた。
それに満足し、そろそろ人もまばらに登校してくる時間帯になってきたため、私たちはそれぞれのクラスに向かうことにした。
彼女に教えてもらった数々のいじめを頭の中で思い起こしながら。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる