悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第4章

180.いじめの協力相手

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まぁいいわ。
私にはこの状況、結構都合が良いし。

セイラの靴箱を開けると、中には決して口には出せないような言葉が書かれた張り紙や手紙なんかが押し込まれている。
履き替えるための靴は持ち帰っているため存在しないため、被害に遭う事はなかったようだ。
しかしこれを新学期の朝お見舞いされるのはどんな気分であろうとも心が沈みそうだ。

「あ、あのベルフェリト様。これは違いましてよ。私たちがしたのではないですわ!」

ライリは無実を訴えるが、声が上擦っているのを押さえることはできなかったようだ。
そんなんじゃ、本当に自分がしていなかったとしても疑われてしまうわよ。

しかし、こんな茶番も面白いかもしれない。
少し付き合ってあげるか。

「あら、あなた方ではないですか? では犯人をご存じ?」

ニヤリと笑いながら彼女たちを横目に問いかける。
静かに問いかける私に、意図を計りかねて互いに見つめあう姿はまるで幼い少女みたい。

「最近、私もメドビン様には少々釘を刺しておいたほうが良いのではないかと考えていたの。折角ですから、お近づきになりたかったのですが」

「ほ、本当ですか⁉」

彼女たちの疑念を払拭するように、付け加えて理由を述べるとライリは前のめりになって驚いた。
こちらに向ける目がキラキラしている。
食いつきすごいわね。
そんなに嬉しかったの?

先ほどまでの怯えた彼女はどこかに消えてしまったようだ。

「じ、実は私たちもそう思っていたところなのです! ベルフェリト様はメドビン様と仲がよろしいと思っておりましたが、まさかそのようにお思いとはっ!」

私という味方を見つけて嬉しいのか彼女は頬を紅潮させて早口で捲し立てる。

あらあら、そんなに簡単に心を開いてしまって。
そんなんじゃ、意地悪な人に利用されてしまうわよ。

そう、私のような人に。

しかし、これは新学期そうそう良いところを見つけた。
それなら思っていたより早く計画を進められそうだ。
ニヤリと笑うと、先ほどまで期待の眼差しを向けていた彼女たちの顔は一瞬にして青ざめた。

使えるものは使う。

それに、彼女たちなら使い捨てにしてもそこまで心を痛めることがなさそうだし。
本当に、丁度良いかも。

「ねぇ、私もその悪戯に混ぜてもらっても良いからしら?」

やんわり言ったつもりだったが、なぜかライリに悲鳴を上げられてしまった。



とりあえず、今までセイラに何を行ってきたのかを聞くとものすごく饒舌になって丸ごと全部教えてくれた。

彼女たちが行っていたのは、教科書を隠す、ノートなどへの落書き、靴や体操服などの小物を隠すまたは汚すなどなど。
おそらくナタリーが夏休みに入る前にいじめがどうのこうの言っていたのはこれのことだろう。

しかしこれは、何というか。

それ、例の恋愛小説で読んだ悪役令嬢がやるようないじめそのものじゃない。
すっごく聞いたことあるような気がすると思ったら。
多分この子たちもあの手の小説が好きなのだろう。
それなら、セイラと仲良くなれそうな気がするのに。

しかし、身分というのはその機会さえも奪ってしまうのでしょうね。

とはいえ、小説と違うのはそこまで過激な事はしていないという点だろう。
しかし、現実にやられたら相当精神にきそうね。

ただ、ここで1つ疑問が出てくる。
そもそも、彼女たちはCクラス。
標的であるセイラはBクラスと、クラスが違うのにどうやってそんなにいじめ行為を実行できたのかしら。

「これ、すべてあなた方が行ったことなの?」

そう聞くと、彼女は少し罰の悪そうな顔になった。
回りを見渡しながら、私の耳元へと口を近づける。

「実は、私たち以外の方も彼女へ嫌がらせを行っているのです。その方々と少しだけ協力したというか……」

なるほど。
彼女を良く思わない人も多ければ、それを実行する人も多いというわけね。

けれど、それでは私の計画になにか支障をきたす可能性があるわね。
出来れば、セイラのいじめは全て私の手の内で把握しておきたい。

「ねぇ、今後は他の方々と協力するのはやめておきましょう」

「えっ? なぜです? 味方は多い方がよろしいではないですか」

当然の疑問に、ライリは驚きながら聞いてきた。
まぁ普通はそう思うのだろう。

「こういうことはあまり大ごとになっては大変なのよ。もし誰がやっていたのかバレたら社交界で生きていけなくなるわ。それに人が多ければ、その分尻尾を掴まれるリスクが高くなるし」

それにね。と付け足すように彼女たちに告げる。
彼女たちによく、理解してもらえるように。

「あの子、ヴァリタス殿下に相当気に入られているのよ。もしこの事が殿下に知られたら、私だってただじゃ済まないわ」

「な、なるほど」

なんだかすごく小物臭のする会話だけど、これも仕方ないことなのだろう。
できれば、もう少し頭の働く子が良いのだけど。
まぁ、良いか。
私も同じようなものだし。

「できれば、ほかにいじめをしている方々にはそれを止めていただきたいのだけど。マイリエス嬢、知っている方だけでも良いから、声を掛けてくれないかしら」

私の名前を出しても良いと告げると、彼女は二つ返事で了承してくれた。
それに満足し、そろそろ人もまばらに登校してくる時間帯になってきたため、私たちはそれぞれのクラスに向かうことにした。

彼女に教えてもらった数々のいじめを頭の中で思い起こしながら。
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