悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第4章

185.悪魔のような方法

重苦しい空気が流れる。

私だって彼女が悪人だとは思わない。
しかし、彼女が殿下と結婚したくないのはやはり前世の事があるからだと思う。

それがもし、彼女の正義感からくるものだとしたら望みどおりにしてあげたい。
何より、彼女に正義感があるのだと信じたい私がいるからそう思うのだと思う。

「方法ははっきりと載っているわけではありませんでした。しかし、相当魔力を使うのだとか。……誰かを、生贄にするほど」

一瞬言い淀んだが、それを言うべきだと判断した。
その悍ましい方法は、詳しく載っていたわけではないため詳細はわからない。
だが、酷く残酷なものだというのは理解できた。

そこまでして、生まれ変わりたい人間がいるというのが私には全く理解できなかったけれど。

その方法が載っているというということは、存在するのだろう。
誰かを犠牲にしてまでも生まれ変わりたいと願う者が。

そしてもし、彼女の前世がそういう人間だったとしたら。
考えすぎなのは分かっている。

しかし、彼女が前世を話さないこと、両親から酷い扱いを受けていること。
そして彼女が全く魔法を使えないこと。
その全ての理由に納得できてしまう。

相当な魔力を使って生まれ変わっているのだとしたら生まれ変わったとき、魔法が使えなくなるのはおかしいことじゃない。
魔力は魂から生まれるもの。

他人の魔力を頼りにするほどの魔法を使えば、扱えなくなるのも当然といえば当然だ。
それに加えて人智を超えた魔法を使えばそれは業となる。
そんな魂に傷をつけるような行為をしていたのならば、魔法を扱えなくなっていたとしても不思議じゃないのだ。

その全てを思うと、彼女がその方法で生まれ変わった可能性が高いのではないかと思ってしまう。

だが、私が前世と違うように彼女も前世とは違う人間だ。

今の私は前世の自分と違い、大いに自分の欲のままに生きている。
好きな小説を読みふけり、好きな人の事を考える。

前世と違い、知識を増やすことなど興味の欠片も持てない。
聖女の真似事のような事をしていた前世とはかけ離れた性格だ。

でも、それが私のなのだ。
前世とは全く違う私が。

だから、彼女もきっと……。

そう考えてしまうのは、ただの私の願望なのだろうか。

「でも、もしその魔法を発動するほどの魔力があれば……」

先ほどまで黙りこくっていた彼が、口を開いた。
その拍子にふと彼を見やる。

私からでは横顔しか見えないが、目を見開き驚いているような彼の顔はどこか恐ろしさを孕んでいるように見えた。
まるで何かに酷く怯えているような、そんな表情に。

どうして、こんなに怯えているのだろう。

「できる、らしいのです……。どんな人間でも、生き返る方法が。本当にその理論が正しければ」

彼の姿を見ていられなくて目を伏せたまま答えた。
顔色が悪い。

やはり、いくら王族といっても自分の婚約者が恐ろしい術を使って生まれ変わっている人物だとしたら耐えられないのかもしれない。
いや、王族だからこそなのか。

けれど、王族とはそこまで精神の脆い人たちなのだろうか。
普段の彼らを見ていると、そこまで軟じゃないように思うだけど。

だが、彼を気遣って現実から目を背けるわけにはいかない。
彼女が私たちに本当の事を話さずとも、私たちは彼女と向き合うべきなのだ。

私たちは、彼女の親友と婚約者なのだから。
いつまでも、彼女に重いモノを1人で背負わせるにはいかない。

だってあの子は、いつも脆く儚い空気を纏っている。
いつも寂しそうに泣いているような印象を私に植え付ける。

それがもし、前世の所為ならば。
私も一緒に背負いたいのだ。

そしておそらく、それは彼にも協力してもらわなければならないもの。
この先、彼女の一番近くにいられるのはいつだって彼なのだから。

だから彼には、しっかりしてもらわねば。

「私は彼女の前世が善人だったと信じています。しかし、最近の彼女の様子のおかしさ、今朝私に向けた鋭い悪意、それに生き返りの方法」

しっかりと彼を見据え告げた。
相変わらず、彼は俯きがちに横を向いていたが、それでもかまわない。
これは、私の決意の表れなのだ。

彼にはそれをしっかりと受け止めて貰わねば。

「ヴァリタス殿下、彼女はもしかしたら罪人だったのかもしれません」

この現実を、受け入れてもらわねばならない。

そして、彼女を救ってもらわなければならないのだ。

「そんなはずはないっ!」

拳を勢いよく振り上げ、テーブルに思いきり叩きつけた。
バンっ!! と大きな音が食堂中に響き渡った。

彼のその行動に、体が硬直してしばらく動けなくなってしまった。
17にもなる男が振り上げた拳の威力がこんなに強いものだったなんて……。

目の前にいる彼が、とても恐ろしくなった。

しかし、そんな感情も束の間。
私はすぐさま周りに目を光らせた。

きょろきょろと辺りを見渡すとまだ食堂に残っていた数少ない生徒たちが、その音の出所を探し正体が分かったところで顔を青ざめている。

第2王子がこんな醜態を晒すなど、一体なにを考えているのか。
世間体は貴族や王族にとってはとても重要なもの。

それを人があまりいないとはいえ、公衆の面前であんな暴力行為をみせるなど。
しかも目の前にいるのが、友人関係とはいえ令嬢とくれば。
第2王子はどこか性格に問題があるのではないかと思われても仕方ない。

ここは、彼をなだめて落ち着かせなければ。

そう思ったが、彼の表情を見て絶句した。

彼の顔は憎悪で歪み、なにか恐ろしいものを必死に抑え込んでいるような。
そんな苦しみの表情だった。

なんて、なんて恐ろしい。

それは、大切な人を目の前で殺されたような。

絶望と憎悪を孕んだものだった。
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