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第4章
211.白い兎の正体
『全く、最悪だよ。まさかこんなところまで追ってくるなんて』
あ、あれ?
黒龍の声ってこんなに低かったっけ?
どこか不機嫌に吐き捨てる彼の声に違和感を覚える。
今まで2回しか会っていないからわからないけれど、いつも彼は物腰柔らかな印象を受けていたから。
『それで? 主様にあんな幻覚まで見せて一体何が目的なんだよ。理由によっては容赦しないぞ』
「キュイっ」
黒龍の言葉にそっぽを向くとまるで拗ねたように鳴く。
いや、もう本当にかわいいんですけど。
『お前っ! いい加減にしろよ! いつまでそんな阿保みたいな姿でいるつもりだ!』
しかし、黒龍にはその愛らしさなど通用しなかったらしい。
というより、さらに怒りを買っている。
それにしても、一体黒龍はこの兎をなんだと思っているのだろう。
「全く、本当にうるさい黒龍なのです。私がわざわざこの姿をとっているというのに簡単にバラすなど」
「えっ?」
突然目の前で兎が口を開けたと思ったら人の言葉を話しはじめた。
幼い少女のような声ではあるが、口調がまるで大人だ。
その二つの衝撃に思わず声が出てしまった。
『西の森で主様があんな目にあったのだって、もとを糺せばお前の所為じゃないか。それなのに懲りもせずまた姿を見せるなんて』
「あれはたまたま運が悪かっただけで……」
「じゃあ貴方やっぱり、あの時の兎だったのね」
私の言葉を聞き、やっと兎がこちらに顔を向けた。
普通の兎ではないと知ると、言葉遣いもどこか威厳を感じるもの相まってなんだかちょっとかわいいと思えなくなってきちゃったかも。
「あの時は申し訳ありませんでした。あれは私の失態です」
その兎は黒龍に対するそれとは違い、私に丁寧にお辞儀をすると申し訳なさそうに口を溢した。
「言い訳と思われるかもしれませんが、まさか魔物がいるとは思わずてっきり貴方様と親しい何者かと思ったのです」
『本当にただの言い訳だな』
潮らしく言う兎に対し容赦ない黒龍。
彼を睨みつけるようにその兎は私の右手にガンを飛ばした。
本当に仲良くなさそうね、この子たち。
お互いもう少しマシな言い方すれば良いのに。
「それで? 貴方は一体何者なの?」
話題を変えたいのと、さっきから気になっていたことを兎に問いかけた。
兎はどこか自慢げな表情を作る。
もったいぶった態度の兎の言葉を待つ私。
しかし、答えたのは兎ではなかった。
『白龍だよ』
「へっ? え⁈ は、白龍⁈」
聞こえてきた黒龍の声に驚きの声を上げてしまう。
兎はまたしても右手を睨み付けている。
しかし、私には彼らの掛け合いなどどうでもよいものになっていた。
目の前にいるのがあの伝説の白龍だということが信じられない。
白龍は龍の中で一番神聖なものとされている。
それが理由かはわからないが、白龍はとても数が少なく希少な生物だと言われているのだ。
白龍を見るだけで幸運だと言われるほどに。
そんな珍しい白龍を見ることができるだけでなく、話までできるなんて。
思わず兎をじっと見つめてしまう。
しかし、まじまじと姿を観察するも白龍である片鱗さえも伺うことはできなかった。
だってどこをどう見ても兎なんだもの。
「白龍なんて……、どうしてこんなところに」
「それは決まっています」
白龍だと思われる兎は私をじっと見据えて答えた。
「貴方に出逢うためです」
「私、に?」
白龍なんて人と交わることを避けて生きている生物が私に会うためにわざわざこんな人の多い都会まで降りてくるなんて。
普通であれば考えられない。
そんな白龍が私に会う為にこんなところに来ているなんて。
一体どういうことなのだろう。
『やっぱりな』
私とは違い黒龍には心当たりがあるようだ。
その声色は怒ったような呆れたようなものに聞こえた。
『さっきの魔法も、どうせ主様から”あの儀式”の事を無理やり思い出させるために掛けたんだろ。本当は初めて会った時にも同じような事をしようとしていたんだ。俺の魔力が届かないほど遠くなら邪魔されないと踏んで』
な、なに?
どういうこと?
恐らく黒龍は何かを知っている。
しかし、彼からそのことを聞き出すことは難しいだろう。
まだ私が前世のことを思い出すことを阻止しようとしていることは知っているから。
そしてそれは、白龍も同じなような気がした。
だからただ彼らの言葉を聞いて推測することしか私にはできない。
とはいえ、1つだけわかることがある。
黒龍がなんだかすごく怒ってるということだ。
白龍を睨みつけている彼の姿が頭に浮かんだ。
「この国を守るためには”あの儀式”は無くてはならないものです。知ろうとするのは当たり前ではありませんか」
どこか誇らしげに言う白龍。
しかしその言葉を聞き、またしても黒龍の沸点に達してしまったようだ。
『そんなこと俺が許すわけないだろ! あの時お前らは何をした? 何もせずただ成り行きを見ていただけだったじゃないか。そんなの、主様を見殺しにしたのと同じことだろ』
「あれは仕方のないことなのです。そもそも龍が人々がすることに干渉するなど――――」
『だったら今度も主様に干渉なんかするな!』
感情の籠った黒龍の言葉に白龍はまたしても言葉を詰まらせる。
『あの時俺が口から手が出るほどほしかった力を、主様を守る力をお前たちは持っていた。持っていたのに、主様を守ろうともしなかったじゃないか。それなのに自分たちが不利になった途端、主様に何かを求めるなんて……』
黒龍の声は震えていた。
もしかしたら泣いているのかもしれない。
あ、あれ?
黒龍の声ってこんなに低かったっけ?
どこか不機嫌に吐き捨てる彼の声に違和感を覚える。
今まで2回しか会っていないからわからないけれど、いつも彼は物腰柔らかな印象を受けていたから。
『それで? 主様にあんな幻覚まで見せて一体何が目的なんだよ。理由によっては容赦しないぞ』
「キュイっ」
黒龍の言葉にそっぽを向くとまるで拗ねたように鳴く。
いや、もう本当にかわいいんですけど。
『お前っ! いい加減にしろよ! いつまでそんな阿保みたいな姿でいるつもりだ!』
しかし、黒龍にはその愛らしさなど通用しなかったらしい。
というより、さらに怒りを買っている。
それにしても、一体黒龍はこの兎をなんだと思っているのだろう。
「全く、本当にうるさい黒龍なのです。私がわざわざこの姿をとっているというのに簡単にバラすなど」
「えっ?」
突然目の前で兎が口を開けたと思ったら人の言葉を話しはじめた。
幼い少女のような声ではあるが、口調がまるで大人だ。
その二つの衝撃に思わず声が出てしまった。
『西の森で主様があんな目にあったのだって、もとを糺せばお前の所為じゃないか。それなのに懲りもせずまた姿を見せるなんて』
「あれはたまたま運が悪かっただけで……」
「じゃあ貴方やっぱり、あの時の兎だったのね」
私の言葉を聞き、やっと兎がこちらに顔を向けた。
普通の兎ではないと知ると、言葉遣いもどこか威厳を感じるもの相まってなんだかちょっとかわいいと思えなくなってきちゃったかも。
「あの時は申し訳ありませんでした。あれは私の失態です」
その兎は黒龍に対するそれとは違い、私に丁寧にお辞儀をすると申し訳なさそうに口を溢した。
「言い訳と思われるかもしれませんが、まさか魔物がいるとは思わずてっきり貴方様と親しい何者かと思ったのです」
『本当にただの言い訳だな』
潮らしく言う兎に対し容赦ない黒龍。
彼を睨みつけるようにその兎は私の右手にガンを飛ばした。
本当に仲良くなさそうね、この子たち。
お互いもう少しマシな言い方すれば良いのに。
「それで? 貴方は一体何者なの?」
話題を変えたいのと、さっきから気になっていたことを兎に問いかけた。
兎はどこか自慢げな表情を作る。
もったいぶった態度の兎の言葉を待つ私。
しかし、答えたのは兎ではなかった。
『白龍だよ』
「へっ? え⁈ は、白龍⁈」
聞こえてきた黒龍の声に驚きの声を上げてしまう。
兎はまたしても右手を睨み付けている。
しかし、私には彼らの掛け合いなどどうでもよいものになっていた。
目の前にいるのがあの伝説の白龍だということが信じられない。
白龍は龍の中で一番神聖なものとされている。
それが理由かはわからないが、白龍はとても数が少なく希少な生物だと言われているのだ。
白龍を見るだけで幸運だと言われるほどに。
そんな珍しい白龍を見ることができるだけでなく、話までできるなんて。
思わず兎をじっと見つめてしまう。
しかし、まじまじと姿を観察するも白龍である片鱗さえも伺うことはできなかった。
だってどこをどう見ても兎なんだもの。
「白龍なんて……、どうしてこんなところに」
「それは決まっています」
白龍だと思われる兎は私をじっと見据えて答えた。
「貴方に出逢うためです」
「私、に?」
白龍なんて人と交わることを避けて生きている生物が私に会うためにわざわざこんな人の多い都会まで降りてくるなんて。
普通であれば考えられない。
そんな白龍が私に会う為にこんなところに来ているなんて。
一体どういうことなのだろう。
『やっぱりな』
私とは違い黒龍には心当たりがあるようだ。
その声色は怒ったような呆れたようなものに聞こえた。
『さっきの魔法も、どうせ主様から”あの儀式”の事を無理やり思い出させるために掛けたんだろ。本当は初めて会った時にも同じような事をしようとしていたんだ。俺の魔力が届かないほど遠くなら邪魔されないと踏んで』
な、なに?
どういうこと?
恐らく黒龍は何かを知っている。
しかし、彼からそのことを聞き出すことは難しいだろう。
まだ私が前世のことを思い出すことを阻止しようとしていることは知っているから。
そしてそれは、白龍も同じなような気がした。
だからただ彼らの言葉を聞いて推測することしか私にはできない。
とはいえ、1つだけわかることがある。
黒龍がなんだかすごく怒ってるということだ。
白龍を睨みつけている彼の姿が頭に浮かんだ。
「この国を守るためには”あの儀式”は無くてはならないものです。知ろうとするのは当たり前ではありませんか」
どこか誇らしげに言う白龍。
しかしその言葉を聞き、またしても黒龍の沸点に達してしまったようだ。
『そんなこと俺が許すわけないだろ! あの時お前らは何をした? 何もせずただ成り行きを見ていただけだったじゃないか。そんなの、主様を見殺しにしたのと同じことだろ』
「あれは仕方のないことなのです。そもそも龍が人々がすることに干渉するなど――――」
『だったら今度も主様に干渉なんかするな!』
感情の籠った黒龍の言葉に白龍はまたしても言葉を詰まらせる。
『あの時俺が口から手が出るほどほしかった力を、主様を守る力をお前たちは持っていた。持っていたのに、主様を守ろうともしなかったじゃないか。それなのに自分たちが不利になった途端、主様に何かを求めるなんて……』
黒龍の声は震えていた。
もしかしたら泣いているのかもしれない。
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お楽しみいただけると幸いです。