悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第4章

212.鐘の音

黒龍を慰める言葉も見つからないまま、私はどうすることもできないでいた。
白龍もどうやら彼に言い返すことができないようで黙りこくっている。

しかし、白龍もそのまま黙っているだけではなかった。

「黒龍の言っていることは正しい。私たちは貴方の前世を救えなかった。それは私たちの過ちです」

目を瞑り、申し訳なさそうに告げる白龍。
寂し気なその表情に、昔犯した自分の過ちに向き合っているようにも見えた。

そんな二人を前に私は何も言うことができずただ佇むことしかできない。

『……そう思うなら、もう関わらないでくれ。これ以上誰かの私利私欲のために主様が傷つくところなんて見たくない』

ただ何もできずただそこにいるだけしかできない私とは違い、黒龍は酷く低い声色で白龍に詰め寄った。

しかしそれは今までの怒号とは違い、どこか懇願するような静かで悲しげな声だった。
それは彼がどれほどそれを願っているのかを示しているようで。
どこか悲痛な声に私の胸が締め付けられるように痛くなった。

この声を聞いて、私は平気でいられるだろうか。
ここまで痛む胸を無視して、このまま知らないままで良いのだろうか。

ふと、そんな疑問が私の中で生まれた。
黒龍の悲しい声も白龍が望む答えも私次第で消せるものなのだと思う。

だったらそれらを消すことが、叶えることが。
私の役目なのではないだろうか。

私の大切な前世が残した。
小さな小さな心残り。

それは私が叶えるべきことだ。
だって私は今までずっと。

リーヴェの願いを叶えるために生きているのだから。

「1つだけ聞きたいのだけど」

勇気を振り絞り彼らの間に割って入る。

彼らの隠し事を簡単に私に教えてくれるとは思えない。
もしかしたら白龍なら教えてくれるかもしれないけど、おそらく全てを知っているわけでもないのだろう。

それでも今の黒龍の声を聞いて黙っているわけにはいかない。
私は私の事をちゃんと知らなければらならない。

たとえ彼がそれを望んでいなくても。
それが私の我が儘だとしても。

「その”ある儀式”っていうのは一体何なの? 前世の私と関係あることなんでしょう?」

「……」

『それは……』

私の問いかけに、言葉を詰まらせる白龍と何かを言いかける黒龍。

例え今でなくても、黒龍は答えてくれる。
私がそれを求めていると知れば、黒龍はそれを叶えようとしてくれる。
彼と数回しか会っていないが、どうしてかそれだけは確信していた。

彼を利用しているようで心が痛む。
が、それでも私は知りたい。

白龍が求める、私の秘密を。
黒龍が隠す、真実を。

『主様、あのね――――』

ゴーン
ゴーン
ゴーン

黒龍が口を開いた瞬間、狙っていたかのように学院の鐘が鳴り響いた。

それは授業の終わりを知らせるものであり。
それと同時に昼休みを知らせる鐘の音でもあった。

ま、まずい!!

何にも心の準備をしていない間に昼休みになってしまった。

というかさっきまで朝だったはずなのにどういうことなの?
でも鐘が3回鳴るのは昼休みだけだし。

もしかしたら白龍の魔法の所為で時間の経過がおかしくなってしまったのかもしれない。

どうしよう、早く教室に行かなくちゃ。
ここからだと10分くらいかかるだろうし、ヴァリタスをそこまで待たせてしまうのはなんだか嫌だし。

でも、黒龍の話も気になるし……。

思考がぐるぐるして無意識に右往左往してしまう私。
そんな挙動不審な私に我に返ってしまったのか黒龍が口を開いた。

『主様、やっぱりどうしてもそのことだけは教えるわけにはいかない。きっと教えてしまえば大変な事になる。そんな気がするんだ。ごめんね』

「えっ?」

ああ、私が阿保な事をしている間に黒龍が改めて決心してしまった。
こうなってしまえば聞き出せたとしても相当骨が折れそうだ。

そんな面倒なことをしている時間があるかどうかわからない。
どうにかして今、聞き出すべきだと直感した。

だがどうやって彼を引き留めれば良いのかわからない。

「それでは私もここで失礼いたします」

「え、白龍まで!?」

そんな私をさらに突き放すように、白龍が告げた。

白龍までも答えないという姿勢を表すようにこちらにお尻を向けてしまう。
まさか白龍にまで見捨てられるとは思わなかった私は思わず大きな声で呼んだ。

しかし白龍が私の呼びかけに応えることはなく、ぴょんぴょんと野生の兎のように飛び跳ねながら私から離れてしまう。

だが、2、3歩進んだところで白龍はこちらに振り返った。
何か忘れ物でもあったのかとそちらを見つめると、白龍は小さな口を開いて私に告げた。

「たとえどんなことがあったとしても、私はいつまでも貴方を見守っています」

それだけ言って、白龍は森の中へと消えていった。
またしても黒龍の怒号が飛ぶかと思ったが、今度は何も言い返さなかった。

パッと右手を見てみると、すでに黒龍の刻んだ刻印は消えている。
どうやら逃げられてしまったらしい。

結局私は巻き込まれただけで、今あったことが一体何だったのか知ることすらできなかった。
感想 7

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