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第5章
215.悪役令嬢の演じ方
「……。確かに、貴方の言う通りこれらを偽装して罪をなすりつけることはできるかもしれない」
苦しそうに眉を顰めるナタリー。
後ろの方でいじめっ子3人組の誰かが「ナタリー様っ!」と小さな悲鳴を上げていた。
「ですが、証拠ならまだあります」
彼女はそこまで言うと私のロッカーへと近づいていく。
良かった、気づいてくれた。
思わず微笑みそうになって慌てて顔を引き締める。
「一体何をするつもり?」
凄むように彼女に問いかけるがナタリーはそれを止めない。
カタリという音がして私のロッカーが開く音がした。
私のロッカーには鍵など掛けておらず簡単に開いた。
「魔法が使えないって、やっぱり不便よね。鍵さえも掛けられないのだから」
小さく呟いた言葉は憐れむというよりも嘲笑っているように聞こえた。
他の人のロッカーには自分たちで魔法を使って鍵を掛けている。
それは魔法以外で掛けた鍵など、魔法で簡単に開いてしまうからだ。
とはいえ、そんな事は分かっているから大事なものなどそこに入れていない。
そう、大事なものは。
使用頻度が高く、そこまで重要なものでない物がそこに仕舞われているのだ。
例えば参考書とか。
ノートとか。
案の定、彼女が取り出したのは私が使っているノートだった。
「ここに証拠を確証できるものがあるのよ」
ナタリーはノートを開き、皆に見せつける。
「この字を鑑定してもらえばすぐに貴方の筆跡と同じものだと断定されるわ。さぁ、反論できるものならしてみなさい!」
「そ、それは……」
狼狽えるように言葉を詰まらせた。
鑑定士などに見て貰えば私が犯人なのだという事が確証されるだろう。
ここで結果がわかるまで悪あがきするのも1つの手ではあるが、そんな事をしてしまえば誰かしらに考える隙を与えてしまうもの。
特にナタリーにその時間を与えるわけにはいかないのだ。
もしかしたら、私の計画が彼女に気づかれてしまう可能性があるから。
だからこそ、今日で終わりにする。
そう決意してあの手紙を入れたのだから。
今目の前に用意した舞台を自ら台無しにするなど、誰がするか。
「ふふふ……。あはは! 全く。まさかこんなに早く気づかれるなんてね」
頭を抱えるように下を向き、下卑た笑い声を上げる。
すぐさま顔を上げるとその場にいる全ての人に憎悪の籠った顔を向けた。
一瞬、令嬢たちの小さな悲鳴が所々で聞こえた。
どうやら私の悪役は皆を怯えさせるほどの完成度のようだ。
「でも、私は悪くないわよ。その女が全て悪いの。私の大事なヴァリタス様を誘惑するような真似をするから」
「いつ、セイラがヴァリタス殿下を誘惑したっていうのよ」
ナタリーの声が低く響く。
「いつもよ。いつもしていたじゃない! いつもいつもヴァリタス様の隣を陣取って! あまつさえヴァリタス様と親し気に話をして!」
「そんなの、友人なら当たり前でしょう?」
「友人? 笑わせないで。そもそも、下位貴族の癖に私たちと対等に接していること自体がおかしいのよ!」
その言葉を口にした瞬間、信じられないものでも見るようにナタリーは私を見つめた。
セイラはじっと脇の方で私たちの会話を聞いている。
俯いている彼女が今何を思っているのか、私にはわからない。
いいや、本当はただ知りたくなかっただけ。
「本気で、そんな事を思っているの? 彼女は紛れもなく私たちの友人だったじゃない。それなのに……」
我が国では、上位貴族は下位貴族に対してもそれ相応の態度を取ることを要求させられる。
恐らくそれは、国民を大事にするという考え方からきているものなのだと思う。
弱いものを助けるのが強いものの義務。
この国の成り立ちを考えるとそれは至極当たり前の考え方だった。
その考えがあるからこそ、貴族同士であればその地位の高さに関係なく分け隔てなく接することを良しとしているのだ。
最低限の礼儀は必要であるのは当然だけれど、他の貴族制を取り入れている国とは明らかに身分の差に壁がない環境だった。
そして、それを害するものに彼らは容赦がない。
昔の悲劇を考えると、それも当然なのかもしれない。
「この国の貴族の考え方はおかしいと思わない? どうして公爵令嬢である私が成り上がりの男爵令嬢と仲良くできるのよ。明らかに身分に大きな差があるのに」
ベルフェリト家の令嬢がこんな発言をしたなどと公に知られれば、国一番の大スクープ間違いなしだろう。
現当主であるお父様もそうだが、代々ベルフェリト家当主は領民だけではなく国中の憧れの存在だった。
民や家族を大事にするその姿勢は貴族からも国民からも高く評価されている。
だからこそ、その家に生まれたものも同じように人々を大事にするものだと誰しもが思っているのだ。
そんな家の令嬢が下位貴族を軽視する発言をすればどう思われるのか。
想像に難くない。
「エスティ―……?」
そこに、ようやく到着したであろうヴァリタスが教室のドアの前で立っていた。
やっと来た、と思ったけれど。
違う。
彼の表情を見るに、どうやら私たちの話を聞いていたような。
何か信じられないものでも見るような顔を私に向けていた。
苦しそうに眉を顰めるナタリー。
後ろの方でいじめっ子3人組の誰かが「ナタリー様っ!」と小さな悲鳴を上げていた。
「ですが、証拠ならまだあります」
彼女はそこまで言うと私のロッカーへと近づいていく。
良かった、気づいてくれた。
思わず微笑みそうになって慌てて顔を引き締める。
「一体何をするつもり?」
凄むように彼女に問いかけるがナタリーはそれを止めない。
カタリという音がして私のロッカーが開く音がした。
私のロッカーには鍵など掛けておらず簡単に開いた。
「魔法が使えないって、やっぱり不便よね。鍵さえも掛けられないのだから」
小さく呟いた言葉は憐れむというよりも嘲笑っているように聞こえた。
他の人のロッカーには自分たちで魔法を使って鍵を掛けている。
それは魔法以外で掛けた鍵など、魔法で簡単に開いてしまうからだ。
とはいえ、そんな事は分かっているから大事なものなどそこに入れていない。
そう、大事なものは。
使用頻度が高く、そこまで重要なものでない物がそこに仕舞われているのだ。
例えば参考書とか。
ノートとか。
案の定、彼女が取り出したのは私が使っているノートだった。
「ここに証拠を確証できるものがあるのよ」
ナタリーはノートを開き、皆に見せつける。
「この字を鑑定してもらえばすぐに貴方の筆跡と同じものだと断定されるわ。さぁ、反論できるものならしてみなさい!」
「そ、それは……」
狼狽えるように言葉を詰まらせた。
鑑定士などに見て貰えば私が犯人なのだという事が確証されるだろう。
ここで結果がわかるまで悪あがきするのも1つの手ではあるが、そんな事をしてしまえば誰かしらに考える隙を与えてしまうもの。
特にナタリーにその時間を与えるわけにはいかないのだ。
もしかしたら、私の計画が彼女に気づかれてしまう可能性があるから。
だからこそ、今日で終わりにする。
そう決意してあの手紙を入れたのだから。
今目の前に用意した舞台を自ら台無しにするなど、誰がするか。
「ふふふ……。あはは! 全く。まさかこんなに早く気づかれるなんてね」
頭を抱えるように下を向き、下卑た笑い声を上げる。
すぐさま顔を上げるとその場にいる全ての人に憎悪の籠った顔を向けた。
一瞬、令嬢たちの小さな悲鳴が所々で聞こえた。
どうやら私の悪役は皆を怯えさせるほどの完成度のようだ。
「でも、私は悪くないわよ。その女が全て悪いの。私の大事なヴァリタス様を誘惑するような真似をするから」
「いつ、セイラがヴァリタス殿下を誘惑したっていうのよ」
ナタリーの声が低く響く。
「いつもよ。いつもしていたじゃない! いつもいつもヴァリタス様の隣を陣取って! あまつさえヴァリタス様と親し気に話をして!」
「そんなの、友人なら当たり前でしょう?」
「友人? 笑わせないで。そもそも、下位貴族の癖に私たちと対等に接していること自体がおかしいのよ!」
その言葉を口にした瞬間、信じられないものでも見るようにナタリーは私を見つめた。
セイラはじっと脇の方で私たちの会話を聞いている。
俯いている彼女が今何を思っているのか、私にはわからない。
いいや、本当はただ知りたくなかっただけ。
「本気で、そんな事を思っているの? 彼女は紛れもなく私たちの友人だったじゃない。それなのに……」
我が国では、上位貴族は下位貴族に対してもそれ相応の態度を取ることを要求させられる。
恐らくそれは、国民を大事にするという考え方からきているものなのだと思う。
弱いものを助けるのが強いものの義務。
この国の成り立ちを考えるとそれは至極当たり前の考え方だった。
その考えがあるからこそ、貴族同士であればその地位の高さに関係なく分け隔てなく接することを良しとしているのだ。
最低限の礼儀は必要であるのは当然だけれど、他の貴族制を取り入れている国とは明らかに身分の差に壁がない環境だった。
そして、それを害するものに彼らは容赦がない。
昔の悲劇を考えると、それも当然なのかもしれない。
「この国の貴族の考え方はおかしいと思わない? どうして公爵令嬢である私が成り上がりの男爵令嬢と仲良くできるのよ。明らかに身分に大きな差があるのに」
ベルフェリト家の令嬢がこんな発言をしたなどと公に知られれば、国一番の大スクープ間違いなしだろう。
現当主であるお父様もそうだが、代々ベルフェリト家当主は領民だけではなく国中の憧れの存在だった。
民や家族を大事にするその姿勢は貴族からも国民からも高く評価されている。
だからこそ、その家に生まれたものも同じように人々を大事にするものだと誰しもが思っているのだ。
そんな家の令嬢が下位貴族を軽視する発言をすればどう思われるのか。
想像に難くない。
「エスティ―……?」
そこに、ようやく到着したであろうヴァリタスが教室のドアの前で立っていた。
やっと来た、と思ったけれど。
違う。
彼の表情を見るに、どうやら私たちの話を聞いていたような。
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