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第5章
218a.白いカラス
ある日、しろいカラスがわたしのへやにきて、まどを3かいノックした
わたしはそれがとくべつなカラスだとしっていたから、まどをあけてかれをでむかえた
へやにはいるなり、カラスがつげる
君は偽物 なのだと
わたしはそのことを、ずっとむかしにしっていた
だからかれにといかけた
なぜ、わたしはここにいるの? と
カラスはこたえる
もう一度、彼を好きになるためだ と
そんなことあたりまえだ
でも、わたしがいまいきているりゆうにはならない
わたしがうまれかわることなど、けっしてないこと
だってわたしはかれをきずつけた
ならばわたしがいきるいみなどない
とめどなくあふれるそれをぬぐいながらわたしはカラスにうったえる
するとカラスはまたつげた
それが君の運命なのだ と
わたしはうまれてきたことがくやしかった
また、わたしはかれをきずつける
あんなにあいしていたのに
だれよりもしあわせになってほしかったのに
わたしもあのひともかれをしあわせにはできない
だれもかれをまもれない
それなのにどうしてうまれることなどできるだろう
わたしはいったいなにものなの?
わたしはなきながらカラスにといかけた
カラスはいちどまばたきをしてこたえた
君は模造品さ
彼を守れなかった彼女のね
「残酷なカラスは、貴方を贄にして願いを叶える……」
わたしはあの方が大好きだった。
それは今も変わらない。
でも、今も昔も私はあの方を守ることはできない。
わたしはあの方を傷つけるための贄にしか成れない。
ただ傍にいられたら幸せだった。
ただあの方の心の隅にでも存在していたかった。
だからあの騎士と婚約した。
小さくて儚い縁だとしても、あの方と関わっていたかった。
全てはあの方と繋がり続けるため。
本当はお嫁さんにだってなりたかった。
あの方の傍で寄り添って、支えてあげたかった。
でも、そんなことを望んでも私には遠すぎて手の届かない夢物語。
ならばそんなものは夢の中に捨ててしまえば良い。
たとえ儚いものでも、わたしは手に入れたかった。
大事な大事な、あの方との縁を。
あの日、どうして彼と関係を持ってしまったのか、私にはわからない。
それは彼の見た目がどうしようもなく、あの方に似ていたからなのかもしれない。
でも、わたしが好きになったのは彼の魂であって見た目じゃない。
ならどうして。
どうして股を開くような事を、わたしはしたのだろう。
今振り返ってみると、すでにあの時からわたしは操られていたのかもしれない。
それほどまでにあの日の私はどこかおかしかった。
そしてそれが、わたしの人生において一番の間違いだった。
わたしの婚約者はとても誠実な人。
そんな人を裏切るような真実を告げることなどわたしにはできなかった。
たとえ婚約者がわたしに興味がなくとも。
わたしが婚約者に興味がなくとも。
しかし、婚約者に隠し通して安堵していたわたしに残酷な運命が待ち受けていた。
私の最悪の裏切りが、あろうことかあの方に伝わってしまった。
彼が話したのだ。
絶望した。
軽率な女だと思われた。
醜い女だと思われた。
そう思われてしまったのなら、もうあの方はわたしを見てくれない。
わたしを認識すらしてくれない。
それはわたしにとって生きる意味などなくなるほどのものだった。
死にたい。
何度そう思ったかわからない。
部屋に籠り、死ぬことばかりを考えた。
どうすれば楽になれるのか。
どうすればあの方の耳に入らずに事を済ませられるのか。
そればかりを考えていた。
ある日、あの方がわたしを訪ねてきた。
本当はあの方に会いたくなどなかった。
こんな醜いわたしをあの方の瞳に映すことすら苦痛だった。
それでも部屋に入れてほしいと願うあの方の言葉を断れるわけがない。
滅多に人にお願いなどしない方だから。
部屋に入るなり、その方はわたしに言った。
ここを離れたほうが良いと。
わたしは何を言われているのかわからなかった。
もう、傍にいることすらできない。
完全に嫌われたのだと。
わたしは泣きそうになった。
しかし、その方はわたしを酷く心配していた。
わたしの肩を掴むと、その方は苦しそうな顔でわたしに告げた。
『彼がもうすぐ君を訪ねてくる。
きっと君と君のお腹に宿る子供を自分の計画の贄にしようとしているのだと思う。
だから君は逃げてほしい。
お願い、わかってほしい。
彼にはわたしが君に手を出したと伝えるよ。
ごめんね、君にこんな酷い仕打ちをしてしまって……』
手が震えていた。
そういえば、この方は酷く体が弱い事に気づいた。
城下町に出るだけでも体を崩してしまうような方なのに、わたしを心配していると思うと自分が恥ずかしくて仕方なかった。
おそらく、その方は泣いていた。
涙は見せていなけれど、泣いているように見えた。
どうして。
どうしてよ。
このお方は強い人だったはずなのに。
ずっとずっと光の中で輝いて、皆を照らすはずだったのに。
どうして今、この方は泣いているの?
どうしてわたしなんかのために心を痛めてらっしゃるの?
だめ。
駄目なの。
この方は悲しんだりしない。
いつまでも、悲しみも苦しみも穢れも、何も知らない、何も知らないまま。
純白のままで生きて行かなくちゃ駄目な人なのに。
こんな経験をこの方にさせてはいけなかったのに……。
わたしはそれがとくべつなカラスだとしっていたから、まどをあけてかれをでむかえた
へやにはいるなり、カラスがつげる
君は偽物 なのだと
わたしはそのことを、ずっとむかしにしっていた
だからかれにといかけた
なぜ、わたしはここにいるの? と
カラスはこたえる
もう一度、彼を好きになるためだ と
そんなことあたりまえだ
でも、わたしがいまいきているりゆうにはならない
わたしがうまれかわることなど、けっしてないこと
だってわたしはかれをきずつけた
ならばわたしがいきるいみなどない
とめどなくあふれるそれをぬぐいながらわたしはカラスにうったえる
するとカラスはまたつげた
それが君の運命なのだ と
わたしはうまれてきたことがくやしかった
また、わたしはかれをきずつける
あんなにあいしていたのに
だれよりもしあわせになってほしかったのに
わたしもあのひともかれをしあわせにはできない
だれもかれをまもれない
それなのにどうしてうまれることなどできるだろう
わたしはいったいなにものなの?
わたしはなきながらカラスにといかけた
カラスはいちどまばたきをしてこたえた
君は模造品さ
彼を守れなかった彼女のね
「残酷なカラスは、貴方を贄にして願いを叶える……」
わたしはあの方が大好きだった。
それは今も変わらない。
でも、今も昔も私はあの方を守ることはできない。
わたしはあの方を傷つけるための贄にしか成れない。
ただ傍にいられたら幸せだった。
ただあの方の心の隅にでも存在していたかった。
だからあの騎士と婚約した。
小さくて儚い縁だとしても、あの方と関わっていたかった。
全てはあの方と繋がり続けるため。
本当はお嫁さんにだってなりたかった。
あの方の傍で寄り添って、支えてあげたかった。
でも、そんなことを望んでも私には遠すぎて手の届かない夢物語。
ならばそんなものは夢の中に捨ててしまえば良い。
たとえ儚いものでも、わたしは手に入れたかった。
大事な大事な、あの方との縁を。
あの日、どうして彼と関係を持ってしまったのか、私にはわからない。
それは彼の見た目がどうしようもなく、あの方に似ていたからなのかもしれない。
でも、わたしが好きになったのは彼の魂であって見た目じゃない。
ならどうして。
どうして股を開くような事を、わたしはしたのだろう。
今振り返ってみると、すでにあの時からわたしは操られていたのかもしれない。
それほどまでにあの日の私はどこかおかしかった。
そしてそれが、わたしの人生において一番の間違いだった。
わたしの婚約者はとても誠実な人。
そんな人を裏切るような真実を告げることなどわたしにはできなかった。
たとえ婚約者がわたしに興味がなくとも。
わたしが婚約者に興味がなくとも。
しかし、婚約者に隠し通して安堵していたわたしに残酷な運命が待ち受けていた。
私の最悪の裏切りが、あろうことかあの方に伝わってしまった。
彼が話したのだ。
絶望した。
軽率な女だと思われた。
醜い女だと思われた。
そう思われてしまったのなら、もうあの方はわたしを見てくれない。
わたしを認識すらしてくれない。
それはわたしにとって生きる意味などなくなるほどのものだった。
死にたい。
何度そう思ったかわからない。
部屋に籠り、死ぬことばかりを考えた。
どうすれば楽になれるのか。
どうすればあの方の耳に入らずに事を済ませられるのか。
そればかりを考えていた。
ある日、あの方がわたしを訪ねてきた。
本当はあの方に会いたくなどなかった。
こんな醜いわたしをあの方の瞳に映すことすら苦痛だった。
それでも部屋に入れてほしいと願うあの方の言葉を断れるわけがない。
滅多に人にお願いなどしない方だから。
部屋に入るなり、その方はわたしに言った。
ここを離れたほうが良いと。
わたしは何を言われているのかわからなかった。
もう、傍にいることすらできない。
完全に嫌われたのだと。
わたしは泣きそうになった。
しかし、その方はわたしを酷く心配していた。
わたしの肩を掴むと、その方は苦しそうな顔でわたしに告げた。
『彼がもうすぐ君を訪ねてくる。
きっと君と君のお腹に宿る子供を自分の計画の贄にしようとしているのだと思う。
だから君は逃げてほしい。
お願い、わかってほしい。
彼にはわたしが君に手を出したと伝えるよ。
ごめんね、君にこんな酷い仕打ちをしてしまって……』
手が震えていた。
そういえば、この方は酷く体が弱い事に気づいた。
城下町に出るだけでも体を崩してしまうような方なのに、わたしを心配していると思うと自分が恥ずかしくて仕方なかった。
おそらく、その方は泣いていた。
涙は見せていなけれど、泣いているように見えた。
どうして。
どうしてよ。
このお方は強い人だったはずなのに。
ずっとずっと光の中で輝いて、皆を照らすはずだったのに。
どうして今、この方は泣いているの?
どうしてわたしなんかのために心を痛めてらっしゃるの?
だめ。
駄目なの。
この方は悲しんだりしない。
いつまでも、悲しみも苦しみも穢れも、何も知らない、何も知らないまま。
純白のままで生きて行かなくちゃ駄目な人なのに。
こんな経験をこの方にさせてはいけなかったのに……。
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