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第5章
220.最悪の知らせ
「それで? 異常な令嬢に何の用なの?」
さらりという私に少しだけ身じろいだ彼女は、それでも強い瞳で私を見つめていた。
別に魔法なんて使えないのだから安心してほしいのだけどね。
「別に……。今貴方がどう過ごしているのか、偵察しに来ただけよ」
……これが俗にいうツンデレとか言うのもなのかしら。
そっぽを向いた彼女の顔は伺えないが、なんとなく私を心配しているようにも思える。
「偵察ね。なんなら一緒にどう?」
「いいえ、結構よ」
即答かいっ。
どうやらツンデレというのは私の見当違いだったようだ。
まぁ、それなら安心だけど。
「……1つだけ。1つだけ貴方に確かめたいことがあったのよ」
躊躇いがちにそわそわし始めた彼女からそんな言葉を言われた。
ナタリーの性格上、友人をいじめていた相手に対して些細な理由で話しかけるなどあり得ない。
それはつまり、それ相応の理由があって私に話掛けているのだ。
それにしても、確かめたいこと?
全然検討がつかない。
「なに? 大っ嫌いな私に対して貴方の興味を引くようなものなんてあったかしら?」
どうせ答えなど出ないのだから、さっさと聞いてしまう。
すると思いもしない答えが返ってきた。
「貴方の前世のことよ」
「前世?」
てっきりセイラかヴァリタス関係の事を聞かれると思って身構えていたら。
まだ私の前世に興味があったのか。
でも図書館で話したときにはもう二度と聞いてこないような勢いだったのに今更どうしたのだろう。
「貴方がこの世界に執着する理由はなに? 黒魔術を使ってまで生き返った理由は一体何なの?」
え?
もしかしてわざわざこんなところまで来て確かめたい事がそのことだっていうの?
なんだそれは。
もしかして正義の味方のつもり?
黒魔術で生き返った悪役を問い詰めるヒロインだとでも言うのだろうか。
でもナタリーはそんな性格ではないし。
やっぱり他の理由があるような気がする。
しかし、生き返った理由ねぇ。
そもそも私は黒魔術で生き返ったなど一言も言っていない。
というか黒魔術で転生できるなんて、彼女から聞いて初めて知ったくらいだ。
つまり私には彼女の求めるものなど、何一つ提供できないということ。
でもきっと正直に言っても彼女は満足しないだろうし……。
どうにかナタリーを撒く理由はないかしら。
理由。
私が生き返った理由……。
「私の生きる意味なんて……」
ポトリ。
膝に乗せていた手に雫が落ちる。
零れた意味など私にはわからない。
でも、それは多分私にとって大事なものだった。
「エスティ?」
急に涙をこぼした私に動揺した彼女が声を掛ける。
そちらの方へ顔を向けるも、どう言葉を返せばよいのかわからずただ彼女を見つめた。
私の生れた理由なんて、ずっとずっと探している。
リヴェリオが前世だと知ったときからずっと。
でも、何もわからない。
黒龍や白龍はきっと何かを知っているだろうけど、私には教えてくれない。
そう、誰も私に教えてくれない。
それなら、私は自分で答えを探すしかない。
そうしてやっと、平穏無事に暮らすという願いを見つけたのに。
今更どうして生きているなんて聞かれたって、どう答えれば良いのよ。
どうしてそんな残酷な事を私に聞くの?
俯き答えを出さない私に、 ナタリーがさらなる疑問を口にする。
「ねぇ、ずっと思っていたことがあったのだけど。もしかして、ヴァリタス殿下と前世とも関係があったりしたの?」
「ヴァリタス、様?」
今、どうして彼が話に出てくるのだろう。
それに彼の前世と関係があったか、ですって?
なんでそんなこと、彼女が聞いてくるの?
「どうしてヴァリタス様の話が出てくるの?」
まだ半分ぼうっとしていたが、どうしても聞きたくて彼女の顔を見上げた。
ナタリーはばつが悪そうな顔をしながら答える。
「最近のヴァリタス殿下は心ここにあらずな感じで。お昼はまだご一緒させていただいているけど、魂がどこか違うところにあるような気がするの」
ヴァリタスがそんな腑抜けな姿を人に見せるなんて考えられない。
私の前では結構気を抜いた姿を見せていたとはいえ、どこか線を引いていたような感じがしていたし。
それにしても、さっきはセイラと楽しくお昼を取っていると言っていた癖に。
どうやら私に を見せたかったのだろうけど。
そう考えるとナタリーもまだまだ子供みたいなところがあるってことね。
「表面上は装っているように見えるけど、やっぱりどこかおかしい気がして」
不安そうな表情のナタリーが躊躇いがちに口にする。
「1つ、気になっていたことがあったの。あの日、貴方が教室を後にしたとき、ヴァリタス殿下の表情がなんだか……」
「親の仇でも見ているような、すごく恐ろしい表情をしていたの」
なに、それ。
あの人がそんな表情をするなんて考えられない。
確かにいじめをしていたから、怒りを抱くのはわかる。
けれどナタリーの言い方からして、相当恐ろしい顔をしていたことはわかる。
人を殺したとかそういうのならまだしも、親の仇なんて。
それじゃあまるで、ヴァリタスが私の前世に気づいているような。
そんな感じが……。
「ねぇ待って。もしかして、ヴァリタス殿下にも黒魔術の話をしたの? 私の時みたいに」
「ええ、したわ。貴方がもしかしたら黒魔術で生き返った人かもしれないって」
「そ、そんな」
今までの数々の失態を思い出し苦悶する。
あのヒントと黒魔術で生き返れるという条件が揃えば、あのヴァリタスが気づかないわけがない。
私の前世が誰なのか。
でも、まだ確定するには早すぎる。
もしかしたら変なフィルターが掛かって気づいていないかもしれないじゃない。
あんなに私に執着していた彼ならば……。
「あ……」
でも、そのフィルターさえも私は自ら壊した。
さらりという私に少しだけ身じろいだ彼女は、それでも強い瞳で私を見つめていた。
別に魔法なんて使えないのだから安心してほしいのだけどね。
「別に……。今貴方がどう過ごしているのか、偵察しに来ただけよ」
……これが俗にいうツンデレとか言うのもなのかしら。
そっぽを向いた彼女の顔は伺えないが、なんとなく私を心配しているようにも思える。
「偵察ね。なんなら一緒にどう?」
「いいえ、結構よ」
即答かいっ。
どうやらツンデレというのは私の見当違いだったようだ。
まぁ、それなら安心だけど。
「……1つだけ。1つだけ貴方に確かめたいことがあったのよ」
躊躇いがちにそわそわし始めた彼女からそんな言葉を言われた。
ナタリーの性格上、友人をいじめていた相手に対して些細な理由で話しかけるなどあり得ない。
それはつまり、それ相応の理由があって私に話掛けているのだ。
それにしても、確かめたいこと?
全然検討がつかない。
「なに? 大っ嫌いな私に対して貴方の興味を引くようなものなんてあったかしら?」
どうせ答えなど出ないのだから、さっさと聞いてしまう。
すると思いもしない答えが返ってきた。
「貴方の前世のことよ」
「前世?」
てっきりセイラかヴァリタス関係の事を聞かれると思って身構えていたら。
まだ私の前世に興味があったのか。
でも図書館で話したときにはもう二度と聞いてこないような勢いだったのに今更どうしたのだろう。
「貴方がこの世界に執着する理由はなに? 黒魔術を使ってまで生き返った理由は一体何なの?」
え?
もしかしてわざわざこんなところまで来て確かめたい事がそのことだっていうの?
なんだそれは。
もしかして正義の味方のつもり?
黒魔術で生き返った悪役を問い詰めるヒロインだとでも言うのだろうか。
でもナタリーはそんな性格ではないし。
やっぱり他の理由があるような気がする。
しかし、生き返った理由ねぇ。
そもそも私は黒魔術で生き返ったなど一言も言っていない。
というか黒魔術で転生できるなんて、彼女から聞いて初めて知ったくらいだ。
つまり私には彼女の求めるものなど、何一つ提供できないということ。
でもきっと正直に言っても彼女は満足しないだろうし……。
どうにかナタリーを撒く理由はないかしら。
理由。
私が生き返った理由……。
「私の生きる意味なんて……」
ポトリ。
膝に乗せていた手に雫が落ちる。
零れた意味など私にはわからない。
でも、それは多分私にとって大事なものだった。
「エスティ?」
急に涙をこぼした私に動揺した彼女が声を掛ける。
そちらの方へ顔を向けるも、どう言葉を返せばよいのかわからずただ彼女を見つめた。
私の生れた理由なんて、ずっとずっと探している。
リヴェリオが前世だと知ったときからずっと。
でも、何もわからない。
黒龍や白龍はきっと何かを知っているだろうけど、私には教えてくれない。
そう、誰も私に教えてくれない。
それなら、私は自分で答えを探すしかない。
そうしてやっと、平穏無事に暮らすという願いを見つけたのに。
今更どうして生きているなんて聞かれたって、どう答えれば良いのよ。
どうしてそんな残酷な事を私に聞くの?
俯き答えを出さない私に、 ナタリーがさらなる疑問を口にする。
「ねぇ、ずっと思っていたことがあったのだけど。もしかして、ヴァリタス殿下と前世とも関係があったりしたの?」
「ヴァリタス、様?」
今、どうして彼が話に出てくるのだろう。
それに彼の前世と関係があったか、ですって?
なんでそんなこと、彼女が聞いてくるの?
「どうしてヴァリタス様の話が出てくるの?」
まだ半分ぼうっとしていたが、どうしても聞きたくて彼女の顔を見上げた。
ナタリーはばつが悪そうな顔をしながら答える。
「最近のヴァリタス殿下は心ここにあらずな感じで。お昼はまだご一緒させていただいているけど、魂がどこか違うところにあるような気がするの」
ヴァリタスがそんな腑抜けな姿を人に見せるなんて考えられない。
私の前では結構気を抜いた姿を見せていたとはいえ、どこか線を引いていたような感じがしていたし。
それにしても、さっきはセイラと楽しくお昼を取っていると言っていた癖に。
どうやら私に を見せたかったのだろうけど。
そう考えるとナタリーもまだまだ子供みたいなところがあるってことね。
「表面上は装っているように見えるけど、やっぱりどこかおかしい気がして」
不安そうな表情のナタリーが躊躇いがちに口にする。
「1つ、気になっていたことがあったの。あの日、貴方が教室を後にしたとき、ヴァリタス殿下の表情がなんだか……」
「親の仇でも見ているような、すごく恐ろしい表情をしていたの」
なに、それ。
あの人がそんな表情をするなんて考えられない。
確かにいじめをしていたから、怒りを抱くのはわかる。
けれどナタリーの言い方からして、相当恐ろしい顔をしていたことはわかる。
人を殺したとかそういうのならまだしも、親の仇なんて。
それじゃあまるで、ヴァリタスが私の前世に気づいているような。
そんな感じが……。
「ねぇ待って。もしかして、ヴァリタス殿下にも黒魔術の話をしたの? 私の時みたいに」
「ええ、したわ。貴方がもしかしたら黒魔術で生き返った人かもしれないって」
「そ、そんな」
今までの数々の失態を思い出し苦悶する。
あのヒントと黒魔術で生き返れるという条件が揃えば、あのヴァリタスが気づかないわけがない。
私の前世が誰なのか。
でも、まだ確定するには早すぎる。
もしかしたら変なフィルターが掛かって気づいていないかもしれないじゃない。
あんなに私に執着していた彼ならば……。
「あ……」
でも、そのフィルターさえも私は自ら壊した。
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