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第5章
222.時計塔の彼女
10月に入り、益々寒くなってきた。流石に外でお昼を取るには寒すぎて我慢ならなくなった私は、校内で自分の居場所を探すことにした。
といっても、案外どこにでも生徒はいるもので。
トイレで食べるほどプライドが死んでいない私はどうしたものかと考え倦ねていた。
まぁ、最近食欲もないし昼抜いても良いんだけどね。
とも思ったけど、ミリアに食べていないことがバレたらそれはそれで面倒かも。
もう、こうなったら。
辿りついたのは時計塔。
この学院の名物の1つである。
校舎から歩いて5分程の距離にある古びた塔は、普段生徒が寄り付かないことで有名な場所だ。
一見赴きがあり、素朴な美しさを感じる塔ではあるが如何せん古すぎて生徒が入るには危険な場所だと言われてきた。
それもそのはず。
管理する人間が誰一人いないのだ。
昔は用務員の人が管理していたのだが、とある噂をきっかけに誰も寄り付かなくなってしまい、結果管理が行き届かなくなってしまったそうな。
なんでも幽霊が住み着いているのだとか。
「幽霊なんていても、私自身幽霊みたいなものだから関係ないけどね」
幽霊とか精霊とか、どうせ魔法が使える人だけが見える代物。
私にとっては御伽噺の世界と同じようなものだ。
時計塔の前までくると、入口は簡素な看板しか遮るものはなかった。
看板には一言”立ち入り禁止”と書かれているだけ。
こんなもの1つで誰も決まりを守るのだから、如何にこの学院の生徒たちが良い子ちゃんなのかがわかる。
まぁ、多分こっそり入っている人はたくさんいるだろうけど。
その看板を横に押しのけ、扉の取っ手に手を掛けた。
躊躇いがちに取っ手を動かし扉を押すと、ギィーと音を立てながら開いていく。
まさか開くとは思わず、目が点になってしまった。
管理されていないにもほどがあるわ!
鍵も掛けないってどういうこと⁈
王家御用達の学院とは思えないずさんさに頭を抱えそうになりながら、今度は違うことに不安になった。
もしかして、他の人が入り浸っているんじゃないの?
嫌だわ、そうなったらまた場所探しに翻弄する羽目になっちゃう。
とりあえず誰かいないか確認しようと中へと踏み出した。
「うわぁ……」
薄暗く狭い場所ではあるがどこか赴きのある空間がそこに広がっていた。
木造らしく、一面がブラウンで統一されている。
そこに窓から差し込む光が部屋をぼんやりと照らしていた。
どこか懐かし気なその雰囲気に思わず息を飲む。
埃も舞い、決して美しいとはいえない風景のはずなのになぜか見惚れてしまっていた。
ここはすごく良いかもしれない。
埃の量の多さに若干引いたものの、それさえ我慢できれば素敵な隠れ家になりそうだ。
見たところ人もいなさそうだし。
安心――――、と思ったところで隅の方にとあるものを発見した。
怪談だ。
と、いうことは。
上にも部屋があるってことね。
もしかしたらそっちに人がいるかもしれないし、油断ならないというわけだ。
階段を踏みしめると、ギシリと音がなった。
思ったよりも長い階段を登っていく。
一体どこまで続いていくのかと、少し息を切らしたときだった。
やっと階段の終わりが見え、最上段へと足を運ばせる。
と、そこで見えたものは――――。
「時計の、裏側……?」
目の前には大きな丸い影。
それが時計だということに気づくのに、そこまで時間は掛からなかった。
どうやら時計そのものが茶色いステンドグラスで作られていたようで、暖かな光を届けてくれていた。
装飾された針の影も美しい。
下の階で受けた、倉庫のような印象とは大分違う。
小さな教会の礼拝堂のような雰囲気の場所だった。
と、そこで一番確認しなければならないことを思い出し、辺りを見渡す。
やっぱり誰もいない。
はぁ、と息を吐いた。
下もすごかったけど、上はもっとすごい。
ここなら誰も来ないだろうし、発見もされないだろう。
良かった。
これで寒い季節は乗り切れそう。
そう、心が弾んだときだった。
「ごきげんよう」
後ろから思わぬ声が聞こえてきたのだ。
「ふぇっ!」
思わず変な声が出た。
バッと声のした方へ振り返る。
美しい白銀の短い髪に青い海色の瞳。
陶器のような白い肌の美しい女性がそこに立っていた。
姿勢正しくそこに佇む彼女は、まるでお人形のよう。
制服からして高等部の生徒ではあるが、見覚えがない。
おかしいなぁ。
この国の令嬢の事は全員知っているはずなんだけど。
しかもこんなに綺麗な女性がいたら絶対記憶に残るはずなのに。
それにしてもこの顔、どこかで見た覚えがある。
そう、とても身近で……。
「あの……」
彼女の戸惑いがちの声が聞こえ、そこでやっと意識を現実に戻した。
不安そうに眉を顰めた彼女が、私を見つめている。
いけないいけない、考え事に没頭していた。
挨拶されたのに挨拶を返さないなんてルール違反。
「ごきげんよう。ごめんなさい、人がいるとは思わなくて」
そう返すと途端に彼女は笑顔になって答えた。
「いいえ、私も驚かせてしまったようで。申し訳ありません」
そう言って彼女は頭を下げた。
な、なんて優しい子なの!
それにさっき、少しだけ見えた笑顔のなんと可愛らしい子!
これはセイラにも匹敵する、いえ、もしかしたら超えるほどの美少女だわ。
といっても、案外どこにでも生徒はいるもので。
トイレで食べるほどプライドが死んでいない私はどうしたものかと考え倦ねていた。
まぁ、最近食欲もないし昼抜いても良いんだけどね。
とも思ったけど、ミリアに食べていないことがバレたらそれはそれで面倒かも。
もう、こうなったら。
辿りついたのは時計塔。
この学院の名物の1つである。
校舎から歩いて5分程の距離にある古びた塔は、普段生徒が寄り付かないことで有名な場所だ。
一見赴きがあり、素朴な美しさを感じる塔ではあるが如何せん古すぎて生徒が入るには危険な場所だと言われてきた。
それもそのはず。
管理する人間が誰一人いないのだ。
昔は用務員の人が管理していたのだが、とある噂をきっかけに誰も寄り付かなくなってしまい、結果管理が行き届かなくなってしまったそうな。
なんでも幽霊が住み着いているのだとか。
「幽霊なんていても、私自身幽霊みたいなものだから関係ないけどね」
幽霊とか精霊とか、どうせ魔法が使える人だけが見える代物。
私にとっては御伽噺の世界と同じようなものだ。
時計塔の前までくると、入口は簡素な看板しか遮るものはなかった。
看板には一言”立ち入り禁止”と書かれているだけ。
こんなもの1つで誰も決まりを守るのだから、如何にこの学院の生徒たちが良い子ちゃんなのかがわかる。
まぁ、多分こっそり入っている人はたくさんいるだろうけど。
その看板を横に押しのけ、扉の取っ手に手を掛けた。
躊躇いがちに取っ手を動かし扉を押すと、ギィーと音を立てながら開いていく。
まさか開くとは思わず、目が点になってしまった。
管理されていないにもほどがあるわ!
鍵も掛けないってどういうこと⁈
王家御用達の学院とは思えないずさんさに頭を抱えそうになりながら、今度は違うことに不安になった。
もしかして、他の人が入り浸っているんじゃないの?
嫌だわ、そうなったらまた場所探しに翻弄する羽目になっちゃう。
とりあえず誰かいないか確認しようと中へと踏み出した。
「うわぁ……」
薄暗く狭い場所ではあるがどこか赴きのある空間がそこに広がっていた。
木造らしく、一面がブラウンで統一されている。
そこに窓から差し込む光が部屋をぼんやりと照らしていた。
どこか懐かし気なその雰囲気に思わず息を飲む。
埃も舞い、決して美しいとはいえない風景のはずなのになぜか見惚れてしまっていた。
ここはすごく良いかもしれない。
埃の量の多さに若干引いたものの、それさえ我慢できれば素敵な隠れ家になりそうだ。
見たところ人もいなさそうだし。
安心――――、と思ったところで隅の方にとあるものを発見した。
怪談だ。
と、いうことは。
上にも部屋があるってことね。
もしかしたらそっちに人がいるかもしれないし、油断ならないというわけだ。
階段を踏みしめると、ギシリと音がなった。
思ったよりも長い階段を登っていく。
一体どこまで続いていくのかと、少し息を切らしたときだった。
やっと階段の終わりが見え、最上段へと足を運ばせる。
と、そこで見えたものは――――。
「時計の、裏側……?」
目の前には大きな丸い影。
それが時計だということに気づくのに、そこまで時間は掛からなかった。
どうやら時計そのものが茶色いステンドグラスで作られていたようで、暖かな光を届けてくれていた。
装飾された針の影も美しい。
下の階で受けた、倉庫のような印象とは大分違う。
小さな教会の礼拝堂のような雰囲気の場所だった。
と、そこで一番確認しなければならないことを思い出し、辺りを見渡す。
やっぱり誰もいない。
はぁ、と息を吐いた。
下もすごかったけど、上はもっとすごい。
ここなら誰も来ないだろうし、発見もされないだろう。
良かった。
これで寒い季節は乗り切れそう。
そう、心が弾んだときだった。
「ごきげんよう」
後ろから思わぬ声が聞こえてきたのだ。
「ふぇっ!」
思わず変な声が出た。
バッと声のした方へ振り返る。
美しい白銀の短い髪に青い海色の瞳。
陶器のような白い肌の美しい女性がそこに立っていた。
姿勢正しくそこに佇む彼女は、まるでお人形のよう。
制服からして高等部の生徒ではあるが、見覚えがない。
おかしいなぁ。
この国の令嬢の事は全員知っているはずなんだけど。
しかもこんなに綺麗な女性がいたら絶対記憶に残るはずなのに。
それにしてもこの顔、どこかで見た覚えがある。
そう、とても身近で……。
「あの……」
彼女の戸惑いがちの声が聞こえ、そこでやっと意識を現実に戻した。
不安そうに眉を顰めた彼女が、私を見つめている。
いけないいけない、考え事に没頭していた。
挨拶されたのに挨拶を返さないなんてルール違反。
「ごきげんよう。ごめんなさい、人がいるとは思わなくて」
そう返すと途端に彼女は笑顔になって答えた。
「いいえ、私も驚かせてしまったようで。申し訳ありません」
そう言って彼女は頭を下げた。
な、なんて優しい子なの!
それにさっき、少しだけ見えた笑顔のなんと可愛らしい子!
これはセイラにも匹敵する、いえ、もしかしたら超えるほどの美少女だわ。
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