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第5章
226.最上級のお忍び客
「そういえば、シルビア様はお元気? 最近会えなくて、私寂しくて寂しくて」
同情を誘うような声を出す彼女に嫌悪感を覚える。
あの時見たシルビアは本当に怯えていた。
あの子に酷いことをしたくせに、そんな言葉を平気で言える彼女が信じられない。
同じ人間だなんて、全く思えなかった。
「また今度お邪魔いたしますね」
その言葉に、一気に沸点へと達してしまった。
「貴方って本当にっ!」
言いかけて、自分が思った以上に声を出しているのに気が付いた。
机を叩こうとした手を何とかひっこめる。
シャルロットは私を見てニヤニヤしていた。
慌てて口を塞いだものの、応接間一面に届くまで大きな声を出してしまっていたようだった。
一瞬その場に沈黙が訪れると、国王陛下が口を開いた。
「ベルフェリト嬢、どうかしましたか?」
心配そうに見つめる国王陛下が目に入る。
思わず立ち上がり、国王陛下の方へ向き直った。
「いいえ、陛下。なんでもありません。皆様も、お騒がせして申し訳ありません」
頭を下げると、すぐさま席に座る。
下を向いた私に、皆がどんな視線を寄せているのか。
想像するだけで、怖くて顔を上げられなかった。
ただ1人、シャルロットはきっと楽しそうな笑顔をしているのだろうという事だけはわかる。
そうして数分も経たずに、お客様が見えた知らせが届いた。
気持ちを切り替え、パッと顔を正面へと向ける。
私が来たときとは違う、私たちの正面にある絢爛豪華な両扉が開いた。
そこには純白のドレス――――ではなく修道服を着た少女が立っていた。全身を真っ白に染めた彼女はすべて陶器でできたと言われてもおかしくないぐらい完璧な姿でそこに立っている。
隣に構えていた使用人が彼女を紹介した瞬間、私の頭の中は一瞬にして真っ白になった。
「エヒム教聖女、セスフィリア・フォン・セント・バリアフィス様にございます」
せ、聖女!?
な、なんでこんなところに。
「ごきげんよう、皆さま。お会いでき、光栄にございます」
そう言って深々と頭を下げる。
鳥のような、綺麗な声だった。
彼女は案内されるまま、向かいの上座に座る。
その姿をじっと目で追ってしまった。
私の可笑しな視線に気づいたのか、彼女はパッとこちらへ視線を向けた。
そして静かに笑う。
その美しさに見とれてしまった。
彼女が座ったところで国王陛下が挨拶をする。
穏やかなムードの中、聖女様の歓迎会がスタートした。
歓迎会は主に国王陛下と聖女様との会話が流れていた。
昼食の時間と合わせたものだったため、料理を味わいながら会話に耳を澄ませる。
話の内容はエヒム教の普及についてや、最近報告されている魔物の事。
聖女様の活動などを聞いていたものの、どうしても内容が耳に入ってこない。
どうしたんだろう、私。
意識がぼんやりしてしまう。
なんとか料理を口に運ぶものの、味を感じずにただ咀嚼するだけの時間が続いた。
「そういえば、聖女様は息子のヴァリタスとそちらにいるベルフェリト嬢とは同い年だと伺いました」
その言葉はなぜか、はっきりと聞こえた。
まるで夢から覚めたように、視界も意識もはっきりとしてくる。
「そ、そうなのですか?」
私の言葉にまたしてもこちらに顔を向けた聖女様はニコリと笑う。
「そのようですね。以前ヴァリタス殿下とお会いしたときお聞きました。ベルフェリト様と歳が同じと聞いてとても嬉しいです」
そう言われて、なぜだかホッとした。
笑った彼女が普通の少女のように見えたからかもしれない。
それにしても、本当に綺麗な子だ。
パッと見たときは純白の修道服の所為で気づかなかったけど、どうやら髪まで真っ白のようだ。
それに深い青色の瞳。
本当に人の手によって作られたお人形さんみたい。
でもどうしてだろう。
その瞳はどこか濁った瞳に見える。
それにこの顔、どこかで見たことある気がするのよね。
「私も嬉しいです。聖女様と同じ歳だなんて、信じられません」
月並みに返したのに、聖女様は満面の笑みで返してくれる。
それにいたたまれなくなり、また料理へと視線を戻してしまった。
最近は慣れたかなと思ったけど、またしても人見知りが発動してしまっているようね。でも、どうしても聖女様と顔を合わせるのがなんか、こう……。苦手というか、なんというか。
言葉に言い表せない分、胸のあたりにしこりがあるような感覚がして気持ちが悪かった。
そうこうしている間に歓迎会もお開きの時間になった。
国王陛下が締めの挨拶をして歓迎会を終わらせる。
この中で一番位の低い私は、皆様を見送った後に応接間を後にした。
「エスティ嬢」
応接間の扉から出ていこうとしたところで、ヴァリタスに捕まる。
相も変わらず冷たい声。
「どうされました?」
これから真っ直ぐ帰るから引き留めるなという私の気持ちを込めて言ったのだが、どうやらヴァリタスにはわからなかったようだ。
腕を掴まれると、強引に腕を引かれる。
痛いという言葉も出せずに、彼に引っ張られるまま歩くしかなかった。
「で、殿下? どうされたのですか? いつもの貴方らしくないですわ」
「黙って」
「……」
小さな怒りをぶつけられ押し黙る。
どうやらこのまま身を任せるしかなさそうだ。
今ここで怒りを買う方がリスクが高そうだしね。
同情を誘うような声を出す彼女に嫌悪感を覚える。
あの時見たシルビアは本当に怯えていた。
あの子に酷いことをしたくせに、そんな言葉を平気で言える彼女が信じられない。
同じ人間だなんて、全く思えなかった。
「また今度お邪魔いたしますね」
その言葉に、一気に沸点へと達してしまった。
「貴方って本当にっ!」
言いかけて、自分が思った以上に声を出しているのに気が付いた。
机を叩こうとした手を何とかひっこめる。
シャルロットは私を見てニヤニヤしていた。
慌てて口を塞いだものの、応接間一面に届くまで大きな声を出してしまっていたようだった。
一瞬その場に沈黙が訪れると、国王陛下が口を開いた。
「ベルフェリト嬢、どうかしましたか?」
心配そうに見つめる国王陛下が目に入る。
思わず立ち上がり、国王陛下の方へ向き直った。
「いいえ、陛下。なんでもありません。皆様も、お騒がせして申し訳ありません」
頭を下げると、すぐさま席に座る。
下を向いた私に、皆がどんな視線を寄せているのか。
想像するだけで、怖くて顔を上げられなかった。
ただ1人、シャルロットはきっと楽しそうな笑顔をしているのだろうという事だけはわかる。
そうして数分も経たずに、お客様が見えた知らせが届いた。
気持ちを切り替え、パッと顔を正面へと向ける。
私が来たときとは違う、私たちの正面にある絢爛豪華な両扉が開いた。
そこには純白のドレス――――ではなく修道服を着た少女が立っていた。全身を真っ白に染めた彼女はすべて陶器でできたと言われてもおかしくないぐらい完璧な姿でそこに立っている。
隣に構えていた使用人が彼女を紹介した瞬間、私の頭の中は一瞬にして真っ白になった。
「エヒム教聖女、セスフィリア・フォン・セント・バリアフィス様にございます」
せ、聖女!?
な、なんでこんなところに。
「ごきげんよう、皆さま。お会いでき、光栄にございます」
そう言って深々と頭を下げる。
鳥のような、綺麗な声だった。
彼女は案内されるまま、向かいの上座に座る。
その姿をじっと目で追ってしまった。
私の可笑しな視線に気づいたのか、彼女はパッとこちらへ視線を向けた。
そして静かに笑う。
その美しさに見とれてしまった。
彼女が座ったところで国王陛下が挨拶をする。
穏やかなムードの中、聖女様の歓迎会がスタートした。
歓迎会は主に国王陛下と聖女様との会話が流れていた。
昼食の時間と合わせたものだったため、料理を味わいながら会話に耳を澄ませる。
話の内容はエヒム教の普及についてや、最近報告されている魔物の事。
聖女様の活動などを聞いていたものの、どうしても内容が耳に入ってこない。
どうしたんだろう、私。
意識がぼんやりしてしまう。
なんとか料理を口に運ぶものの、味を感じずにただ咀嚼するだけの時間が続いた。
「そういえば、聖女様は息子のヴァリタスとそちらにいるベルフェリト嬢とは同い年だと伺いました」
その言葉はなぜか、はっきりと聞こえた。
まるで夢から覚めたように、視界も意識もはっきりとしてくる。
「そ、そうなのですか?」
私の言葉にまたしてもこちらに顔を向けた聖女様はニコリと笑う。
「そのようですね。以前ヴァリタス殿下とお会いしたときお聞きました。ベルフェリト様と歳が同じと聞いてとても嬉しいです」
そう言われて、なぜだかホッとした。
笑った彼女が普通の少女のように見えたからかもしれない。
それにしても、本当に綺麗な子だ。
パッと見たときは純白の修道服の所為で気づかなかったけど、どうやら髪まで真っ白のようだ。
それに深い青色の瞳。
本当に人の手によって作られたお人形さんみたい。
でもどうしてだろう。
その瞳はどこか濁った瞳に見える。
それにこの顔、どこかで見たことある気がするのよね。
「私も嬉しいです。聖女様と同じ歳だなんて、信じられません」
月並みに返したのに、聖女様は満面の笑みで返してくれる。
それにいたたまれなくなり、また料理へと視線を戻してしまった。
最近は慣れたかなと思ったけど、またしても人見知りが発動してしまっているようね。でも、どうしても聖女様と顔を合わせるのがなんか、こう……。苦手というか、なんというか。
言葉に言い表せない分、胸のあたりにしこりがあるような感覚がして気持ちが悪かった。
そうこうしている間に歓迎会もお開きの時間になった。
国王陛下が締めの挨拶をして歓迎会を終わらせる。
この中で一番位の低い私は、皆様を見送った後に応接間を後にした。
「エスティ嬢」
応接間の扉から出ていこうとしたところで、ヴァリタスに捕まる。
相も変わらず冷たい声。
「どうされました?」
これから真っ直ぐ帰るから引き留めるなという私の気持ちを込めて言ったのだが、どうやらヴァリタスにはわからなかったようだ。
腕を掴まれると、強引に腕を引かれる。
痛いという言葉も出せずに、彼に引っ張られるまま歩くしかなかった。
「で、殿下? どうされたのですか? いつもの貴方らしくないですわ」
「黙って」
「……」
小さな怒りをぶつけられ押し黙る。
どうやらこのまま身を任せるしかなさそうだ。
今ここで怒りを買う方がリスクが高そうだしね。
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