悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第5章

236.白い彼女の正体

「安心してください。私たちは貴方の味方です」

私の不安を察したのか、はたまた顔に出てしまっていたのか。

聖女様は優し気な声でそう答えた。

パッと顔を上げると、ふわりと微笑む彼女がいた。

敵意など、全く感じなかった。

「ずっと貴方を心配していました。この国は貴方にとって、さぞ生きにくかったことでしょう。でも、もう大丈夫です」

彼女の微笑みに見惚れている私がいた。
こんなきれいな優しさを受け取ったことなどほとんどない。

それなのに、心はどこか冷めていたことが不思議だった。

そっと、膝の上に置いてあった私の両手が白い手に包まれる。
その手は聖女様のものではなかった。

はっとしてそちらを振り向くとそこにいたのは――――

「シリ、ウス?」

時計塔でしか会えない彼女が立っていた。
美しく整った顔が私を覗き込んでいる。

どうして?

思考が上手く働かず、どこか離れたところでその光景を見ているような感覚がする。

「彼女にお願いしていたのです。学院での貴方の様子を伺うようにと」
「騙してしまって申し訳ない」
「じゃあ、貴方は学院の生徒では……」
「ええ、違います」

やっぱり。
どこか彼女の正体に気づいていたため、驚きはしなかった。

しかし、まさか聖女様と繋がっていたとは思いもしなかったけれど。

でも、今なら確かめても問題ないのかもしれない。
そう判断し彼女を見つめ、問いかけた。

「シリウスは、白龍なのですか?」

途端、沈黙が支配した。
聞いてはいけないものを聞いてしまったのだろうか。

なんだか申し訳なくなって撤回しようと口を開きかけた。
と、それより早く深いため息の吐く音が聞こえた。

そうして答えたのはシリウスではなく、正面に座っていた聖女様だった。

「やっぱり、バレてしまっていたのですね。仕方のない龍さんですねぇ」

聖女様は冷ややかな目で白龍を見つめる。
けれどシリウスは聖女様のその視線をあまり気にしていないようだ。

「全く。できれば遠くで見守るぐらいに留めておいて欲しかったのですが……。貴方にちょっかいを出しまくっていたようですね」

物凄くどうしようもない子供でも見つめるようにシリウスを見つめる。
なんだかこちらまで申し訳なくなるぐらいの反応だった。

これなら話題に出さなければよかったかも。

なにか、何か話題を変えなければ。

「と、いう事はシリウスは貴方の使いだったのですね」
「いいえ、彼女は誰の使いでもありませんよ」
「え? 違うのですか?」

きっぱりと言い切った聖女様の言葉に驚いてしまう。

白龍は黒龍に次いで人間嫌いだと言われている。
もともと人をあまり好まない龍であるから、その拒絶は相当だろう。

黒龍はリヴェリオの事があるから例外だとしても、こんなに人に接触する龍など全くもって珍しい。

だからてっきり契約かなにかをしていると思っていたのだが。
聖女様クラスになると、契約していなくても龍に好かれるのだろうか。

目の前のやり取りを見ている限り完全に主導権は聖女様にあるように見えるし。

「強いて言えば、神の使いですかねぇ」

そういってシリウスを横目でチラリと見た。
シリウスはそんな彼女の視線さえも無視して目を瞑っている。

とういうより、躱しているような感じだった。

いや、こうして見てみると聖女様の事もあんまり好きじゃなさそう。

ん?

だったらどうしてシリウスはこんなところにいるんだろう。

「それにしても、記憶を思い出してほしいからと言ってあんな無理やりな方法を選ぶなんて、さすがの私でもしないですよ。ドン引きです、ドン引き。ベルフェリト様、我らが主に代わり私が謝罪いたします」
「私はそんな悪いことをした覚えはっ!」

”主”という単語が出た途端、それまで平静を保っていたシリウスの表情が焦りのものに変わった。
反論しようと何かを言いかけたものの、そこまで言って言葉を飲み込む。

私の顔を伺っているような仕草をすると、黙り込んでしまった。

「まぁ、本人も反省しているようですから、許してやってください」
「はぁ……」

なんだか話が全く見えないけど、シリウスは反省しているみたいだし別に私もなにか被害があったわけでもないし今の私にはどうでもよい。

「話が逸れてしまいましたね。本題に入りましょう」

改めてそう切り出した聖女様の語気に少しの焦りを感じた。
そういえば、先ほどからチラチラとドアの方を見ている。

恐らくミリアが来ることを心配しているのだろう。

ゴホンと咳払いをすると聖女様は私を真っ直ぐ見つめた。
その真剣な表情に思わずこちらも姿勢を正してしまう。

そして聖女様が口にした言葉は思いもしないものだった。


「ベルフェリト様、どうか私たちの教会へ来てくださいませんか?」


「へ?」

なに?
どういうこと?

教会へ遊びに来い、なんてフランクな感じじゃない。

やはり、私が悪人だから連れて行こうとしているのだろうか。
確かに教会は全ての人間の救済を謳うもの。

私が悪人だとしても、更生しているのなら敵意は向けないのかもしれない。まだ何も悪いことは行っていないけれど、もし前世の悪事まで今世に受け継がれるなどという思想があるとすれば……。早いうちに手を回して善良な市民、もとい信者に取り込もうと考えてもおかしくはないだろう。

それに、それが成功すれば王族に大きな借りを作ることもできるし。

しかし、それにしたって彼女の真意がわからない。
更生させようとしている人間に対して、聖女様が直々に勧誘してくるなんて異常だ。

とはいえ、それは私の憶測にすぎない。
感想 7

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