悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第5章

242.皇帝の忘れ形見

「しかし、エスティは前世で黒魔術を――」
「馬鹿かお前」

おかしなものでも見るような瞳を向けられた。そしてふっと笑うとまるで幼子を見るように、嘲るような顔で笑われた。黒魔術を使って生き返った彼女の事をあげれば、少しは黒龍に反撃できると考えていたが甘かったようだ。

まるで子供を相手にするような余裕を見せる黒龍に悔しさが滲む。

「主様が黒魔術なんて使えるはずない。ただでさえ魔力なんて持ってない人だぞ? 黒魔術なんて魔力を大量に使う魔法なんて使えるなんてどうして思う?」

正論ではある。
だが、黒龍は見落としている。

彼が使えなくても他の誰かに頼んでいたとしたら?

「確かに、彼自身は黒魔術は使えないでしょう。しかし、彼ではなく他の魔法使いが黒魔術を使って彼を生き返らせた場合、どうでしょう?」

もし、誰かにかけるような魔法なら本人でなくても魔法は使える。
そして生き返りの魔法ならば、誰かが魔法を掛けてくれれば実行できるかもしれない。

だが、その予想さえも黒龍は呆れた様子で一蹴した。

「主様がどれほど穢れに弱いのか、まさか知らなかったなんて言わせないぞ。掛けられるなんてもっての外、魔法陣を見ただけで倒れる恐れのあるような人だったんだぞ?」

「本当に何もかも忘れてるんじゃないのか?」と、呆れた様子で言われ言葉に詰まった。

確かに、彼の事について憎悪が勝ったばかりに忘れていることも多いだろう。
しかし、だからと言ってここまで詰られるほど酷いことをしているだろうか。

やはり黒龍はリヴェリオを大事にしすぎだと思う。

「今の主様は生まれ変わる前と違って免疫があるみたいだから多少の穢れに触れても問題ないみたいだけど、それは前世と比べたらの話であって今だって常人よりもはるかに黒魔術への免疫はないはずだ」

つまり生き返るなんてできない。
そう言いたいのだろう。

だが、それならなぜ彼は生き返ることができたのか。
あんなに国中の人を見殺しにした人が、自分の欲に忠実だった人がどうして神の恩恵を受けられるのか。

どうしても理解できなかった。

「それよりも黒魔術で生き返りそうなのはお前だよ」
「私?」

急に標的が自分に移ったことに少し驚く。

「なんであの時、主様が笑った理由もわからなんだろ? 主様の優しさに触れても何も思わないんだろ? それが理由だよ」

笑ったって。
まさか処刑されたときの事か?
それとも昨日エスティの首を絞めたときのこと?

確かに両方とも笑っていた。
苦しそうに顔を歪めながら、それでも僕に笑ってみせた。

まるで懺悔するように。

あれに理由があったのか?

それに優しさなんて。
彼女は人並みに優しさは持ち合わせていたけれど、それでリヴェリオを許せるほどにはならない。
そんなものを押し付けられても、鬱陶しく思うとこはあっても心を許すほどのものにはならないだろう。

これが黒魔術で生き返るように見えるだろうか。
黒龍が言っていることはまるで滅茶苦茶だ。

「お前は結局、主様の穢れを肥やす道具にしか成れないんだよ。だから最初はアイツによって生み出された模造品なのかと思ってた」

納得していない僕を無視して黒龍はさらに話進める。
彼の言う事はリヴェリオに忖度しているようで、聞く耳を持てなくなってきていた。

このまま彼の好きなように話させて終わりにすればいいか。

「でも、それじゃあ説明がつかないんだよ」
「説明?」
「お前と主様の魂の繋がりが強すぎる。お前が主様に障りを移されるほどに」

障り。
その単語には聞き覚えがあった。

確か初夏の頃に偶然会った彼からそんなものが付いていたと言われた。
呪いやら呪詛の一種だと。
けど、どうしてそんなものが僕についているのだろう。

誰かに呪われるほど、何か悪いことをした覚えはないのだが。

まさか王族に歯向かうものがいるのか。
それとも犯人はもしや……。

一瞬頭を過った考えを首を振って否定する。

しかし、魂の繋がりが強すぎるとは一体どういうことなのだろう。
推測するに、おそらく信頼とか愛とか、そういう人たちとの心の繋がりのことなのだろうが……。
そういうものは友情や愛情を積み上げてきた人たちの事を言うのではないだろうか。

初めからエスティは僕を信じてなどいなかった。
なら今までの僕が一方的に育んでいたとしたら、僕たちの間に魂の繋がりなどできるはずもない。

だって片方が受け入れていないのだから。

まぁそれも昨日までの話だけど。

「はじめはアイツがお前に障りを植え付けてるんだと思ってた。でも、どう考えてもおかしいんだ。お前の障りは主様が持っているものと全く同じもの。城一帯に近づけないアイツがお前に障りを移せるわけがないんだ。それに――――、障りを移されるものは魂同士が繋がったもの。それも血の繋がった家族ぐらいしか本来は繋がれないはずなんだ」
「え?」

淡々と話す黒龍はその事実に衝撃を受けている僕の様子など少しも気づいていない。

魂の繋がりが血と関係しているだって?

それってつまり……。
つまり、僕と彼女は血が繋がってるということか?

それとも、リヴェリオと今の僕に血の繋がりが……?

バカな。
彼は誰とも子供を生める関係にはなれなかったんだ。

血縁自体が途切れているのに、子孫が残っているはずない。

「お前、主様とどんな契約をした?」

今までで、一番憎悪の籠った瞳だった。
まるで親の仇でも見ているかのよう。

いや、彼にとっては親の仇みたいなものなのだろう。
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