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第5章
243.わかりあえない僕たち
「きっと主様は優しいから、お前が生き返られるように何かしたんだ」
呟く黒龍に疑問が浮かぶ。
黒龍の言うようなことが万が一起こっていたとして、なぜ彼がそんなことをする理由がない。自分を殺した相手を生き返らせるなど、頭がおかしくなっていたとしてもあり得ないことだ。優しいとかそんなレベルではないほどに。
そんな破天荒な事を考える黒龍に対しても理解に苦しむ。
「貴方の言っていることは無茶苦茶です。そもそも人間にそんな力はありませんし、彼はそんな聖人のような人間ではありませんよ」
鼻で笑いながら顔を背けた。
黒魔術が使えないと主張している癖に、彼が僕を生き返らせたと言う。
まるで矛盾している彼の主張に若干呆れていた。
自分の言った事の矛盾点を突かれ怒ったようで、またしても鋭い瞳で見つめてくる。
「何を言っても無駄みたいだな。お前、はじめから理解する気がないだろ」
やっと気づいたか。
神の使いと言われてはいても、彼はこの城から出たことのない世間知らずだ。
加えて主の都合の良い事以外を受け入れられないほど精神的に幼稚である。
つまり、彼の言葉など真面目に聞いても意味などない。
時間の無駄だ。
「そうですね。どうやら僕らは話をしても無駄のようです」
もうこれ以上話をしてもお互い不快感を募らせるだけだろう。
黒龍との会話を諦め、自室へと帰ることにした。
「話掛けたりして、申し訳ありませんでした。そうやら僕たちが話をしても、平行線に流れるだけみたいですね。それでは僕はここで失礼させていただきます」
「なっ! ちょっと待て!」
僕は体を翻すと、彼に背を向けた。
まだ話足りないのか、黒龍は焦ったような声で僕を引き留めようとしている。
しかし、彼の焦りで考えを改めるほど僕は彼へ心を開いていなかった。
どうして彼に話掛けなどしたのだろう。
何か目的があった気がしたが、もう忘れてしまった。
黒龍はまだ言いたいことがあった様子だったが、どうせ大したものではない。
勝手に判断し、歩みを進めた。
止まる気のない僕の意志を理解したのか、後ろから大声で叫ぶ。
「早く主様と縁を切れ! 主様を信じられないなら、障りを運んでくるお前は主様にとって最大の弱点になるんだよ!」
縁を切れるなら、僕だってそうしたい。
一刻も早く彼女との関係を終わらせたかった。
自然と歩く速度が速くなる。
彼らのことなど、もう考えたくもなかった。
自室に戻ると、酷く疲れたようで思わずベッドへと体を預けた。
普段ならこんな行儀の悪い事などしない。
まさか彼との会話だけでこんなに疲れるとは思わなかった。
いや、違う。
彼との会話だけじゃない。
この気だるさは、昨日から続いていたものだ。
どうしたって頭を過る、彼女の姿。
もうこれ以上彼女の事を考えたくない。
目を瞑り休もうとするものの、真っ暗な視界のはずなのにぐるぐると回っているようで気持ちが悪い。
すぐに目を開けると腕を額に乗せた。
頭が痛い。
なぜこんなにも憂鬱になるのだろう。
やはり、昨日の事で相当ダメージを受けているということなのだろう。
でも、一体何に?
彼女の前世の正体がリヴェリオだったから?
それとも自分が彼女の首を絞めたこと?
分からない。
あの時まで憎悪は確実にあった。
でも、彼女が去っていった後に残ったものは後悔だった。
憎んで憎んで、死んでもなお憎み続けた相手ははずだ。
生まれ変わっていても、その憎しみは変わっていなかったはずなのに。
どうしてあの時彼女を殺そうとしたことを後悔したのだろうか。
まだ彼女が何もしていないから?
何だかそれとはまた別な気がする。
もっと根本的な、もののような気が……。
ぐるぐると考えを巡らせるものの、結局答えは出てこなかった。
体を横にし、別の事へと考えをシフトさせる。
そういえば、黒龍が発したものの中に妙に引っかかる言葉があった。
『僕が彼女にとっての弱点になる』
それに障りを運んでくるものだとも。
どうして僕が障りを運んでくるのかはよくわからない。
だが、彼女を貶めることへと繋がるのだという事は理解できた。
なら、もっと傍にいてやろうか。
一瞬邪な心が僕の頭を支配しそうになる。
その感情に飲まれそうになり、ぎゅっと目を瞑った。
駄目だ。
そんな事をしたら、彼女の前世と同じ人間になってしまう。
最悪な、人間に……。
リヴェリオ。
僕の両親を殺し、婚約者を奪った最悪の皇帝。
まるで人畜無害な顔をして、その中に秘めていた邪悪さを15年以上僕にでさえ隠し続けた正真正銘の悪人。
彼と過ごした日々は僕にとっては宝物のようだった。
両親にも兄弟にも見放されていた僕に唯一手を差し伸べてくれた人。
それなのに、僕が家族と和解した途端その幸福を奪っていった。
そして、婚約者だって。
普通に考えて、そんな相手を一回殺したぐらいで許せるはずもない。
でも彼女はまだ何もしていない。
そんな彼女に制裁を加えたら、今度は僕が悪人になってしまう。
もう、憎み合うのは疲れた。
そんな負の感情を抱えて生きていきたくなどない。
彼女ともう一度話をしてみよう。
そして今度は、彼女の事をわかった上で――――
婚約破棄をしよう。
呟く黒龍に疑問が浮かぶ。
黒龍の言うようなことが万が一起こっていたとして、なぜ彼がそんなことをする理由がない。自分を殺した相手を生き返らせるなど、頭がおかしくなっていたとしてもあり得ないことだ。優しいとかそんなレベルではないほどに。
そんな破天荒な事を考える黒龍に対しても理解に苦しむ。
「貴方の言っていることは無茶苦茶です。そもそも人間にそんな力はありませんし、彼はそんな聖人のような人間ではありませんよ」
鼻で笑いながら顔を背けた。
黒魔術が使えないと主張している癖に、彼が僕を生き返らせたと言う。
まるで矛盾している彼の主張に若干呆れていた。
自分の言った事の矛盾点を突かれ怒ったようで、またしても鋭い瞳で見つめてくる。
「何を言っても無駄みたいだな。お前、はじめから理解する気がないだろ」
やっと気づいたか。
神の使いと言われてはいても、彼はこの城から出たことのない世間知らずだ。
加えて主の都合の良い事以外を受け入れられないほど精神的に幼稚である。
つまり、彼の言葉など真面目に聞いても意味などない。
時間の無駄だ。
「そうですね。どうやら僕らは話をしても無駄のようです」
もうこれ以上話をしてもお互い不快感を募らせるだけだろう。
黒龍との会話を諦め、自室へと帰ることにした。
「話掛けたりして、申し訳ありませんでした。そうやら僕たちが話をしても、平行線に流れるだけみたいですね。それでは僕はここで失礼させていただきます」
「なっ! ちょっと待て!」
僕は体を翻すと、彼に背を向けた。
まだ話足りないのか、黒龍は焦ったような声で僕を引き留めようとしている。
しかし、彼の焦りで考えを改めるほど僕は彼へ心を開いていなかった。
どうして彼に話掛けなどしたのだろう。
何か目的があった気がしたが、もう忘れてしまった。
黒龍はまだ言いたいことがあった様子だったが、どうせ大したものではない。
勝手に判断し、歩みを進めた。
止まる気のない僕の意志を理解したのか、後ろから大声で叫ぶ。
「早く主様と縁を切れ! 主様を信じられないなら、障りを運んでくるお前は主様にとって最大の弱点になるんだよ!」
縁を切れるなら、僕だってそうしたい。
一刻も早く彼女との関係を終わらせたかった。
自然と歩く速度が速くなる。
彼らのことなど、もう考えたくもなかった。
自室に戻ると、酷く疲れたようで思わずベッドへと体を預けた。
普段ならこんな行儀の悪い事などしない。
まさか彼との会話だけでこんなに疲れるとは思わなかった。
いや、違う。
彼との会話だけじゃない。
この気だるさは、昨日から続いていたものだ。
どうしたって頭を過る、彼女の姿。
もうこれ以上彼女の事を考えたくない。
目を瞑り休もうとするものの、真っ暗な視界のはずなのにぐるぐると回っているようで気持ちが悪い。
すぐに目を開けると腕を額に乗せた。
頭が痛い。
なぜこんなにも憂鬱になるのだろう。
やはり、昨日の事で相当ダメージを受けているということなのだろう。
でも、一体何に?
彼女の前世の正体がリヴェリオだったから?
それとも自分が彼女の首を絞めたこと?
分からない。
あの時まで憎悪は確実にあった。
でも、彼女が去っていった後に残ったものは後悔だった。
憎んで憎んで、死んでもなお憎み続けた相手ははずだ。
生まれ変わっていても、その憎しみは変わっていなかったはずなのに。
どうしてあの時彼女を殺そうとしたことを後悔したのだろうか。
まだ彼女が何もしていないから?
何だかそれとはまた別な気がする。
もっと根本的な、もののような気が……。
ぐるぐると考えを巡らせるものの、結局答えは出てこなかった。
体を横にし、別の事へと考えをシフトさせる。
そういえば、黒龍が発したものの中に妙に引っかかる言葉があった。
『僕が彼女にとっての弱点になる』
それに障りを運んでくるものだとも。
どうして僕が障りを運んでくるのかはよくわからない。
だが、彼女を貶めることへと繋がるのだという事は理解できた。
なら、もっと傍にいてやろうか。
一瞬邪な心が僕の頭を支配しそうになる。
その感情に飲まれそうになり、ぎゅっと目を瞑った。
駄目だ。
そんな事をしたら、彼女の前世と同じ人間になってしまう。
最悪な、人間に……。
リヴェリオ。
僕の両親を殺し、婚約者を奪った最悪の皇帝。
まるで人畜無害な顔をして、その中に秘めていた邪悪さを15年以上僕にでさえ隠し続けた正真正銘の悪人。
彼と過ごした日々は僕にとっては宝物のようだった。
両親にも兄弟にも見放されていた僕に唯一手を差し伸べてくれた人。
それなのに、僕が家族と和解した途端その幸福を奪っていった。
そして、婚約者だって。
普通に考えて、そんな相手を一回殺したぐらいで許せるはずもない。
でも彼女はまだ何もしていない。
そんな彼女に制裁を加えたら、今度は僕が悪人になってしまう。
もう、憎み合うのは疲れた。
そんな負の感情を抱えて生きていきたくなどない。
彼女ともう一度話をしてみよう。
そして今度は、彼女の事をわかった上で――――
婚約破棄をしよう。
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お楽しみいただけると幸いです。