悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第5章

253.生まれ変わり方

「答えは主です」

そこでやっと彼女が上を指さしている理由に気づいた。

「主ってつまり……。神様ってこと?」
「ええ」

龍と神様の関係性は根強い。
特に白龍と黒龍は顕著なのだそう。

神の使いとまで言われるその2種は、時に聖女や教皇ですら聞けない神のお告げさえも耳にすることができるのだという。

とはいえ、この2種は人との交流がないせいで本当にそんな事ができるのか証明できてはいないのだけど。

しかし、白龍の言っていることに嘘はない気がする。
私の頼りない直感ではあるけれど。

「主は自分の子供である人間に、いくつかの試練をお与えになります。その時、私たちの存在が邪魔になる可能性があるのです」
「試練の邪魔?」

いきなり試練だのなんだの言われても、こっちとしては理解できない。神の試練なんて言葉は物語なんかでよく使われるけど、あれはいわば悲惨な現状を嘆く比喩表現だ。実際に神からの試練だなんて本気で思う人間なんてほとんどいないのではないだろうか。

いやまぁ、エヒム教とかの熱狂的な信者だったらそう思うかもしれないけど。

とはいえそこまで信仰が厚いわけではない私にとっては、神の試練なるもののことなどわからない。そしてその過程で白龍が邪魔になる可能性などもっとわからない。唸る私に少し困ったような顔をした。

顎に手をあて、少し考えるような仕草をすると顔を上げる。

「例えば、貴方が今から1万の軍に立ち向かわなければならない状況に立たされたとします。その時、貴方1人で立ち向かえばすぐに殺されてしまうでしょう。しかし、私たちが傍にいて助けを乞える場面だとしたら? 迷わず私たちを頼るでしょう?」
「それは……」

当たり前だ。
だって龍がいれば人間などひとたまりもないぐらい、龍と人間には力の差がある。
大きさだって龍の方が何倍もあるし、魔力だって相当違うはずだ。

もしかしたら、1万の軍だって退けるかもしれない。

「それが神の試練だった場合、私たちに頼った時点で神の試練を達成できなかったことになってしまう。
主の子供だということは主に似た性質を孕んでいます。人よりも一貫した精神を持っている龍だとしても、その存在に私たちが酔わない可能性はゼロではないのです。ですので私たちはその障害になるわけにはいかないのです」

なるほど。
もしかしたら龍って本当は人間の事をすごく好きなのかもしれない。

黒龍の例もあるし。

「龍たちが人に関わらないのはわかったわ。でもそもそも神の試練なんて達成してどうするの?
さっきの例をとってみても、頼らないと死んじゃったら意味ないじゃない」
「?」

ん?
あ、あれ?

なんだか伝わってない?

どうやら白龍には今の私の言葉の意味が分からなかったようだ。
コトリと首を傾げると、わずかに眉を寄せた。

「神の試練は死したときに判決されるものです。もしそれが達成できれば、主に望みを叶えてもらうことができるのですよ? それなら死んでしまっても試練を達成できたのなら、それが幸せの近道なのでは?」
「えっ」

な、なにそれっ⁈

死んだあとに願い事が叶う?
初耳なんだけど。
神の試練って死んだ後にそんな恩恵があるの?

でも、死んだあとに願い事を叶えたって意味ないんじゃ……。

あれ?
ちょっと待って。

死んだあとに願いが叶えられるのだとしたら、もしかして……。

「人が生まれ変わるのってその願いを叶えたからなの?」


「ええ、おそらくそうでしょう」


一呼吸おいてから、白龍はそう答えた。

う、嘘でしょう……。
まさか生まれ変わりの原理がそんなものだったなんて。

「じゃあ、この世で大成を果たすこととか関係なく神の試練さえ乗り越えられれば生まれ変わることができるってこと?」
「主の試練は難しいものなので、試練を乗り越えた時点でそれ相応に大成しているような気がしますが……。そうですね。試練の大きさにもよりますが概ねその通りです」

ってことは。
私も前世で神の試練を乗り越えた。

だから生まれ変わることができたってわけ?

「ねぇ、もしかして試練を乗り越えたなら悪人でも生まれ変わる願いを叶えられるってことなの?」

私を見るめる白龍の瞳が僅かに鋭くなった。
彼女には私の真意などお見通しなのだろう。

「なるほど。貴方はそうやってご自分を害してしまうのですね」

呆れたように息を含んだ声だった。
下を向いた表情を見せつけられ、自分が如何に愚かなことを聞いたのかを自覚させられるようだ。

でも、仕方がないでしょう?
だって誰も私の事を教えてくれないのだもの。

全てを知っている黒龍だって。

目の前の白龍だって。

「そもそも、貴方の場合神の試練とかそういう次元の話ではないのです」
「なにそれ?」

一瞬にして、体の芯が冷えていく。

また私が大事とかそういう話?
でも、そう言う事を言うのっていつも教会の人間か黒龍ばっかり。
しかも私には何も教えてくれない。

それならまだ、私が極悪人だといって詰め寄る人間の方がまだ信用できるわ。
だってちゃんとした理由があるもの。

私をあしらったりしないもの。

彼らは私を大事だと言いながら、私の言葉なんて聞き入れてくれない。

私を大事にしてくれない。
そんな言葉だけの感情ならいらないわ。

もういい加減うんざりよ。
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