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第5章
255.食欲減退の原因
「ねぇ、シリウス? 一体どうしたの? 私の体に何かあったの?」
随分と弱気な声だけど、許してほしい。
だっていまだにずっと目を見開いたままの彼女って迫力があってちょっと怖いんだもん。
ちょっと人間っぽくないっていうか、龍の本性みたいのが垣間見れている感じだし。
1分ほど沈黙が続いたが、納得したように徐々に瞳がいつもの調子に戻っていった。
ホッとしつつ、再度彼女に問いかける。
「ねぇ、シリウス? 私ってどこかおかしいの?」
下から覗き込むように彼女を見つめるとやっと私の存在に気付いたようだった。
小さく身じろぎすると、焦ったように口を開いた。
「あの、えっと、その……」
戸惑う彼女に違和感を覚える。
あれ? もしかして。
さっきの言葉、相当気にしてる?
目を泳がせる彼女は、見たことのない姿で少しだけ可愛いと思ってしまった。龍を揶揄うなんて恐ろしいことは考えられないけど、こんなに可愛い反応をされてしまうと内に秘められていた悪戯心が芽生えてしまいそうだ。
「それも、私には話せない事?」
責めるような言い方にならないよう、なるべく優しく言ったつもりだった。
けれど彼女の顔色は一層青ざめてしまう。
まさかここまで気にしているとは思わなかった。
「違うのです! ただ、貴方を傷つけるのではないかと、思って……」
しゅん、と音が聞こえそうなほど落ち込んでいる。
いやいや待ってよ。
私を傷つけるほどの事って。
そんな事を言われたらすごく気になるじゃない。
「それってどうしても話せない事? 私が懇願しても、教えられない事?」
じっと見つめると、シリウスは眉を寄せた。
そんな顔しても私は引かないわよ。
なんでもかんでも隠せると思ったら大間違いなんだから。
目を逸らし、私の視線から逃げ続ける彼女を穴が開くほどの勢いで見つめ続ける。
すると流石の白龍でも私の視線の強さに折れたのだろう。
はぁ、と息を吐くと下を向き諦めたような表情をした。
その瞬間、自分の勝ちを確信する。
どうやらこれは教えてくれるらしい。
なんだ、意外と白龍も押しに弱いのかもしれない。最後の方になぜか若干頬が赤くなったのは、私の押しに負けたのが悔しかったからだろう。
やっぱり、意外と可愛いかも。
「わかりました。貴方の身の危険もありそうなので。それにしても、ちょっと卑怯なやり方だとは思いますが」
「ありがとう」
どこが卑怯なやり方なのかはわからないけれどまぁ良いだろう。
「その前に1つお聞きしたいのですが。エスティ様、食欲がなくなったのは一体いつ頃からでしょうか?」
「え? ええっと、いつ頃からと言われても……」
食欲がないのはいつもの事だ。
物心ついた時にはもう、そんなに多く食べられるような子供ではなかったような気が……。
いいえ、違う。
小さい頃はそれどころか結構食べる方だったような気がする。
え?
じゃあ、一体いつから?
「ええっと、その、あの」
思い出そうとしても、記憶が曖昧で答えがでない。
前世の事ならまだしも、自分の事なのにわからないなんて。
「10歳の頃からではないですか?」
「え?」
な、なんでそんな具体的な年齢を。
10歳のときなんて、もうあんまり食欲なかったんじゃないかなぁ。
……。
いいえ、違う。
彼女の言う通りだ。
確かに10歳ごろから食欲がなくなっていったような気がする。
しかし、どうしてシリウスがそんなことを。
「やはり、そうなのですね」
「なんで、分かったの?」
ふと顔をあげる。
昔から私を知っているわけではないはずの彼女がどうして知っていたのだろう。
もしかして、さっき触れたことで分かったの?
「食欲は人間が生きる上で重要な欲望です。それを阻害するものとして考えられるのは貴方に向ける怨念や憎悪。先ほど、貴方に触れたことで貴方の中にある怨念を覗き見たのですが、そこであることがわかりました」
「ま、待って。私に向けられた怨念や憎悪って。食欲を妨害されるほど強い憎悪を向けられる覚えはないと思うのだけど」
セイラをいじめたことを大勢の前で暴露したから、多少の嫌悪や憎しみは向けられているだろう。それに加え、ヴァリタスに正体がバレたことで彼からも強い負の感情を抱かれていたとしても不思議ではない。
しかし、彼女の口ぶりからしてそんな少数から受けているものでは無いような気がする。
それに加え昔から食欲がない事がその怨念だか憎悪だかが原因だとしたら……。
「そうですね。そのことも貴方には伝えていなかったのですね」
シリウスは寂しそうに笑いながら私に教えてくれた。
「前世で抱かれた負の感情は、生まれ変わっても引き継がれることが往々にしてあります。それは憎悪や憎しみといった負の感情は魂にへばりつくように蓄積されるからです。そのため、どんなに生まれ変わったとしても人々の怨念を解かない限り負の感情は貴方の魂にくっついたままでしょう」
「そんなっ」
生まれ変わってから、悪い事などほとんどしていない。
それなのに、前世から憎しみが引き継がれているのだとしたら。
一体どれほどの憎悪や怨念といった負の感情が私へと注がれているのだろう。
想像するのも恐ろしい。
随分と弱気な声だけど、許してほしい。
だっていまだにずっと目を見開いたままの彼女って迫力があってちょっと怖いんだもん。
ちょっと人間っぽくないっていうか、龍の本性みたいのが垣間見れている感じだし。
1分ほど沈黙が続いたが、納得したように徐々に瞳がいつもの調子に戻っていった。
ホッとしつつ、再度彼女に問いかける。
「ねぇ、シリウス? 私ってどこかおかしいの?」
下から覗き込むように彼女を見つめるとやっと私の存在に気付いたようだった。
小さく身じろぎすると、焦ったように口を開いた。
「あの、えっと、その……」
戸惑う彼女に違和感を覚える。
あれ? もしかして。
さっきの言葉、相当気にしてる?
目を泳がせる彼女は、見たことのない姿で少しだけ可愛いと思ってしまった。龍を揶揄うなんて恐ろしいことは考えられないけど、こんなに可愛い反応をされてしまうと内に秘められていた悪戯心が芽生えてしまいそうだ。
「それも、私には話せない事?」
責めるような言い方にならないよう、なるべく優しく言ったつもりだった。
けれど彼女の顔色は一層青ざめてしまう。
まさかここまで気にしているとは思わなかった。
「違うのです! ただ、貴方を傷つけるのではないかと、思って……」
しゅん、と音が聞こえそうなほど落ち込んでいる。
いやいや待ってよ。
私を傷つけるほどの事って。
そんな事を言われたらすごく気になるじゃない。
「それってどうしても話せない事? 私が懇願しても、教えられない事?」
じっと見つめると、シリウスは眉を寄せた。
そんな顔しても私は引かないわよ。
なんでもかんでも隠せると思ったら大間違いなんだから。
目を逸らし、私の視線から逃げ続ける彼女を穴が開くほどの勢いで見つめ続ける。
すると流石の白龍でも私の視線の強さに折れたのだろう。
はぁ、と息を吐くと下を向き諦めたような表情をした。
その瞬間、自分の勝ちを確信する。
どうやらこれは教えてくれるらしい。
なんだ、意外と白龍も押しに弱いのかもしれない。最後の方になぜか若干頬が赤くなったのは、私の押しに負けたのが悔しかったからだろう。
やっぱり、意外と可愛いかも。
「わかりました。貴方の身の危険もありそうなので。それにしても、ちょっと卑怯なやり方だとは思いますが」
「ありがとう」
どこが卑怯なやり方なのかはわからないけれどまぁ良いだろう。
「その前に1つお聞きしたいのですが。エスティ様、食欲がなくなったのは一体いつ頃からでしょうか?」
「え? ええっと、いつ頃からと言われても……」
食欲がないのはいつもの事だ。
物心ついた時にはもう、そんなに多く食べられるような子供ではなかったような気が……。
いいえ、違う。
小さい頃はそれどころか結構食べる方だったような気がする。
え?
じゃあ、一体いつから?
「ええっと、その、あの」
思い出そうとしても、記憶が曖昧で答えがでない。
前世の事ならまだしも、自分の事なのにわからないなんて。
「10歳の頃からではないですか?」
「え?」
な、なんでそんな具体的な年齢を。
10歳のときなんて、もうあんまり食欲なかったんじゃないかなぁ。
……。
いいえ、違う。
彼女の言う通りだ。
確かに10歳ごろから食欲がなくなっていったような気がする。
しかし、どうしてシリウスがそんなことを。
「やはり、そうなのですね」
「なんで、分かったの?」
ふと顔をあげる。
昔から私を知っているわけではないはずの彼女がどうして知っていたのだろう。
もしかして、さっき触れたことで分かったの?
「食欲は人間が生きる上で重要な欲望です。それを阻害するものとして考えられるのは貴方に向ける怨念や憎悪。先ほど、貴方に触れたことで貴方の中にある怨念を覗き見たのですが、そこであることがわかりました」
「ま、待って。私に向けられた怨念や憎悪って。食欲を妨害されるほど強い憎悪を向けられる覚えはないと思うのだけど」
セイラをいじめたことを大勢の前で暴露したから、多少の嫌悪や憎しみは向けられているだろう。それに加え、ヴァリタスに正体がバレたことで彼からも強い負の感情を抱かれていたとしても不思議ではない。
しかし、彼女の口ぶりからしてそんな少数から受けているものでは無いような気がする。
それに加え昔から食欲がない事がその怨念だか憎悪だかが原因だとしたら……。
「そうですね。そのことも貴方には伝えていなかったのですね」
シリウスは寂しそうに笑いながら私に教えてくれた。
「前世で抱かれた負の感情は、生まれ変わっても引き継がれることが往々にしてあります。それは憎悪や憎しみといった負の感情は魂にへばりつくように蓄積されるからです。そのため、どんなに生まれ変わったとしても人々の怨念を解かない限り負の感情は貴方の魂にくっついたままでしょう」
「そんなっ」
生まれ変わってから、悪い事などほとんどしていない。
それなのに、前世から憎しみが引き継がれているのだとしたら。
一体どれほどの憎悪や怨念といった負の感情が私へと注がれているのだろう。
想像するのも恐ろしい。
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