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第5章
259.興味なんて、ないくせに
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私が何も言えないことを良い事に、追い打ちをかけるようにエウリカ子息が口を開く。
「本当です殿下! 現に彼女が他生徒の参考書を捨てるのをこの目で見ているのです。証拠ならあそこのゴミ箱の中に!」
彼が指さした方へヴァリタスが視線を向ける。
そこには私が先ほど捨てた参考書が山のように重ねられている。
やはり、あの参考書も計画のうちだったというわけか。
最近ミリアを連れていないことで、あれを私自身が捨てることを予想していたのかもしれない。
一体何の目的があってこんなことをしているのかはわからないが、少なくとも彼らが私をいじめて楽しんでいることだけはわかる。ただの娯楽でするにはあまりにも非道だ。
でも、公爵家の令嬢だと分かっていてどうしてこんな大胆な事ができるのだろう。ヴァリタスとの仲が悪くなったといっても、私の地位は変わらない。こんなことをすれば公爵家から報復されることなど予想できるはずだ。
おかしい。
まるで私にベルフェリト家の後ろ盾がない事を知っているような……。
彼の歓喜を無視するように、何かが気になるのかヴァリタスはゴミ箱の方へ足を進める。そしてあろうことか、彼はゴミ箱に捨てられたた参考書を手に取った。
エウリカ子息だけでなく、周りに集まった人々がその行動に驚き唖然としている。
それは私とて同じだった。
王子がゴミ箱の中身を拾い上げるなんてありえない。
貴族でさえもほとんどしないような行動だ。
「殿下……?」
エウリカ子息が思わず声を溢す。
だが、ヴァリタスは彼など一切見ずに拾った参考書を私へ向けた。
「これは貴方のものでは?」
冷ややかな瞳には感情など見えない。
この状況で肯定できるほど私には勇気がなかった。
思わず視線を逸らした私に、答えが返って来ないことを察したのかもしれない。
ヴァリタスはエウリカ子息の方へ向くと今度はその冷たい視線を彼に向けた。
「一体どういうことです? なぜ彼女の参考書がこんなに濡れて、ゴミ箱に捨てられているのですか?」
「な、なぜベルフェリト様のものだと?」
明らかに動揺している。
しかし、ヴァリタスは彼の動揺など見向きもせず淡々と答える。
「彼女は先生方と張り合えるほどの頭脳の持ち主です。それに、私が今拾った参考書は高等学生が持つレベルのものではありません。少なくとも、私は彼女以外にこれを嗜む生徒を見たことがありません」
言葉を詰まらせるエウリカ子息。
私はといえば、彼とは全く違う理由で言葉を詰まらせていた。
というか、呆気に取られていた。
なぜ、私の読んでいる参考書など把握しているのだろう。
まさか、ずっと知っていたの?
私が何を好み、何を欲しているのか。
ヴェリタスは王族なため、そこそこ勉強はできるが私ほどの探求心はない。私が参考書を読み漁り始めたころは少し話をしていたが、すぐに興味を失くしていた。だから、私の持っている参考書など把握していないと思っていたのに。
対して興味のない事まで把握していたの?
そんなに、私の事が好きだったの?
私はそんな貴方の好意を無碍にしたという事なのね。
隠して裏切って、捨てた。
そういうことなのよね。
すっと心が重く沈んでいく。
「それで? もう一度説明してくださいませんか。一体なんの騒ぎなのです?」
「それはっ」
顔色が悪い。
彼はこの先の事を考えて青ざめているのだ。
王族に嘘を付けば罪に問われる。
他の国よりも罪は軽いものの、投獄される恐れだってある。
流石の伯爵子息であっても、避けたい自体であろう。加えて彼は3男。次男までは今後の事も考えて追い出されることもないだろうが、3男ともなれば絶縁されてもおかしくはないのだ。
「こ、これはベルフェリト様っ! どうやら私の勘違いだったようです。無礼をお許しください!」
勢いよく頭を下げると、彼は逃げるようにその場を後にした。
周りに集まっていた人たちも同様に、蜘蛛の子を散らすように去っていく。
まぁ、賢明な判断だろう。
これ以上ヴァリタスに詰められては真実を言うしかない。
恐らく、私の参考書を駄目にした犯人もあの中にいただろう。
誰が主犯かはさておいて。
彼にそのことを問われてしまえば、一巻の終わりだ。
少なくとも、私はまだ彼と婚約関係にあるしね。
そんな相手の事を敵に回すほど、愚かではなのだろう。
まぁ、私の私物を駄目にした時点で相当な愚か者ではあるけれど。
2人してその場に佇む。
ずっとこのままでいるわけにはいかないし、挨拶してさっさと帰ろう。
彼に向き直り、頭を下げようとした瞬間。
またしても彼の冷たい声が降ってきた。
「ベルフェリト嬢、気を付けてください。今の貴方は簡単にこういった騒ぎを起こす問題児なのです。御父上との確執も広まっているようですし。もう少し、言動には気を付けていただかないと」
お父様との事が広がっている?
社交界では少しづつバレ始めているというは噂で聞いているけれど、それが子息令嬢たちにまで広がっているというの?
だからさっき……。
こんな大胆な事をするぐらいだからもしかしたらとは思っていたけれど、その予想が本当に当たるだなんて。思ったより、ショックが大きい。
「本当です殿下! 現に彼女が他生徒の参考書を捨てるのをこの目で見ているのです。証拠ならあそこのゴミ箱の中に!」
彼が指さした方へヴァリタスが視線を向ける。
そこには私が先ほど捨てた参考書が山のように重ねられている。
やはり、あの参考書も計画のうちだったというわけか。
最近ミリアを連れていないことで、あれを私自身が捨てることを予想していたのかもしれない。
一体何の目的があってこんなことをしているのかはわからないが、少なくとも彼らが私をいじめて楽しんでいることだけはわかる。ただの娯楽でするにはあまりにも非道だ。
でも、公爵家の令嬢だと分かっていてどうしてこんな大胆な事ができるのだろう。ヴァリタスとの仲が悪くなったといっても、私の地位は変わらない。こんなことをすれば公爵家から報復されることなど予想できるはずだ。
おかしい。
まるで私にベルフェリト家の後ろ盾がない事を知っているような……。
彼の歓喜を無視するように、何かが気になるのかヴァリタスはゴミ箱の方へ足を進める。そしてあろうことか、彼はゴミ箱に捨てられたた参考書を手に取った。
エウリカ子息だけでなく、周りに集まった人々がその行動に驚き唖然としている。
それは私とて同じだった。
王子がゴミ箱の中身を拾い上げるなんてありえない。
貴族でさえもほとんどしないような行動だ。
「殿下……?」
エウリカ子息が思わず声を溢す。
だが、ヴァリタスは彼など一切見ずに拾った参考書を私へ向けた。
「これは貴方のものでは?」
冷ややかな瞳には感情など見えない。
この状況で肯定できるほど私には勇気がなかった。
思わず視線を逸らした私に、答えが返って来ないことを察したのかもしれない。
ヴァリタスはエウリカ子息の方へ向くと今度はその冷たい視線を彼に向けた。
「一体どういうことです? なぜ彼女の参考書がこんなに濡れて、ゴミ箱に捨てられているのですか?」
「な、なぜベルフェリト様のものだと?」
明らかに動揺している。
しかし、ヴァリタスは彼の動揺など見向きもせず淡々と答える。
「彼女は先生方と張り合えるほどの頭脳の持ち主です。それに、私が今拾った参考書は高等学生が持つレベルのものではありません。少なくとも、私は彼女以外にこれを嗜む生徒を見たことがありません」
言葉を詰まらせるエウリカ子息。
私はといえば、彼とは全く違う理由で言葉を詰まらせていた。
というか、呆気に取られていた。
なぜ、私の読んでいる参考書など把握しているのだろう。
まさか、ずっと知っていたの?
私が何を好み、何を欲しているのか。
ヴェリタスは王族なため、そこそこ勉強はできるが私ほどの探求心はない。私が参考書を読み漁り始めたころは少し話をしていたが、すぐに興味を失くしていた。だから、私の持っている参考書など把握していないと思っていたのに。
対して興味のない事まで把握していたの?
そんなに、私の事が好きだったの?
私はそんな貴方の好意を無碍にしたという事なのね。
隠して裏切って、捨てた。
そういうことなのよね。
すっと心が重く沈んでいく。
「それで? もう一度説明してくださいませんか。一体なんの騒ぎなのです?」
「それはっ」
顔色が悪い。
彼はこの先の事を考えて青ざめているのだ。
王族に嘘を付けば罪に問われる。
他の国よりも罪は軽いものの、投獄される恐れだってある。
流石の伯爵子息であっても、避けたい自体であろう。加えて彼は3男。次男までは今後の事も考えて追い出されることもないだろうが、3男ともなれば絶縁されてもおかしくはないのだ。
「こ、これはベルフェリト様っ! どうやら私の勘違いだったようです。無礼をお許しください!」
勢いよく頭を下げると、彼は逃げるようにその場を後にした。
周りに集まっていた人たちも同様に、蜘蛛の子を散らすように去っていく。
まぁ、賢明な判断だろう。
これ以上ヴァリタスに詰められては真実を言うしかない。
恐らく、私の参考書を駄目にした犯人もあの中にいただろう。
誰が主犯かはさておいて。
彼にそのことを問われてしまえば、一巻の終わりだ。
少なくとも、私はまだ彼と婚約関係にあるしね。
そんな相手の事を敵に回すほど、愚かではなのだろう。
まぁ、私の私物を駄目にした時点で相当な愚か者ではあるけれど。
2人してその場に佇む。
ずっとこのままでいるわけにはいかないし、挨拶してさっさと帰ろう。
彼に向き直り、頭を下げようとした瞬間。
またしても彼の冷たい声が降ってきた。
「ベルフェリト嬢、気を付けてください。今の貴方は簡単にこういった騒ぎを起こす問題児なのです。御父上との確執も広まっているようですし。もう少し、言動には気を付けていただかないと」
お父様との事が広がっている?
社交界では少しづつバレ始めているというは噂で聞いているけれど、それが子息令嬢たちにまで広がっているというの?
だからさっき……。
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