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第5章
263.お姉さまの手紙
「久しぶりね、シルビア様。しばらく顔を出せなくてごめんなさいね」
目の前に悪魔が座っている。
上座に座った彼女の近くに、笑顔で歪んだお母さまが座っている。
2人の笑顔はまるで呪詛のように私の心を蝕んでいく。
はやく、早く助けて。
早く帰ってきて、お姉さま。
俯いた目に移ったティーカップの中身は、どす黒く染まった液体が見えた。
まるで私の心の中みたい。
飲み干したら、どこまでいけるのだろう。
「聞いているの? シルビア」
お母さまの強い口調で現実に引き戻された。
「だから、シャルロット殿下を貴方のお部屋に連れて行きなさいと言っているの。シャルロット殿下が直々に貴方のお部屋でお話したいと言っているのよ? ちゃんと話を聞いていなさい」
怒った口調で捲し立てられ、拒否することもできない。
笑みを浮かべたままの女王様が責めれらている私を見て愉悦に浸っている。
ああ、なんて最悪なの。
地獄に心まで落とされた気分だ。
お腹がキリキリと悲鳴を上げ始める。
さっきまで死んでいた癖に、どうして恐怖にはこんなにも弱いのだろう。
自分の事が嫌になる。
「さっ、シャルロット殿下。シルビアの部屋にご案内します」
「あら、夫人直々に案内してくださるなんて。とっても嬉しいですわ」
私が立ち上がるより先に、2人して応接室を後にしてしまう。
今から行く先は私の部屋のはずなのに。
部屋につくと、すでにお茶の用意ができていた。
仕方なく彼女の前に座る。
こういう時に限って、お母さまは私を残してさっさとどこかへ消えてしまった。
1人残された私は、俯いて彼女の言動に答えるしかない。
酷く体調が悪い。
吐いてしまいそうなのを、必死に堪えた。
「貴方のお母さまって、私はすごく好きよ。綺麗で、扱いやすくて、一緒にいてすごく居心地が良いんだもの」
「そう、ですか」
お母さまが侮辱されているのは分かっていた。
けれど私にどうしろっていうの?
彼女の言葉を否定する勇気なんて、私にはない。
私の受け答えが心底つまらなかったのか、シャルロット殿下は退屈そうに髪をいじり始める。
しかし、何かを思いついたように顔を上げると私を見てニヤリと笑った。
彼女の笑顔を見た瞬間、いじめられていた時の感覚がフラッシュバックして私を襲う。
「貴方との会話なんて面白みも何もないから退屈だわ。だからさっさと用事を済ませることにするわね」
シャルロット殿下は立ち上げると、私の隣にまでやってきた。
彼女の行動の先が読めず、近くに来られたことに恐怖を感じ体が硬直する。
バンッ!
目の前で彼女が机を思いきり叩いた音だった。
飛び跳ねた体はそのまま動かなくなってしまう。
「で? 貴方の姉の弱みを教える気になった?」
顔を近づけ覗き込むように私を見つめる。
目を合わせられない。
「……」
「本当に、貴方って聞き分けないのね」
何も口に出せないでいると、呆れたように彼女が呟く。
彼女の言葉に私は勢いよく目を瞑った。
まただ。
また、彼女から魔法をぶつけられる。
詰まらない私にはいつもそうだから。
こうなってしまったら、心を無にして耐え続けるしかない。
私は覚悟してその先の暴力を待った。
しかし、いくら待てど彼女が魔法を発動する気配はない。
様子の違う彼女に違和感を覚え、チラリと顔を上げると視界に彼女の顔が映った。
「――――っ!」
笑っている。
まるで私をいじめて楽しんでいたあの時のように。
どうして?
私はまだ、何もしていないのに。
酷く楽しそうに笑っている。
その狂気が恐ろしくて逃げ出したくなった。
「なら、良い物を見せてあげるわ」
笑ったまま、彼女はどこからかそれを手にした。
「これ、なんだかわかる?」
手にしているのは封筒。
おそらく誰かが人に宛てた手紙だろう。
そんなものをどうして今、私に見せるのだろうか。
「これはね、ある最低な人間がか弱い女性に送った最悪な手紙なの」
説明されてもちっとも理解できない。
こんなものを見せられたところで、私に一体何を?
「読む?」
バッと便箋が眼前に差し出される。
乱暴に握りしめられており、目から近すぎてこれでは読むことができない。
しかし、その文字には見覚えがあった。
「お姉さまの、字?」
それは間違いなく、私の大好きなお姉さまの字で書かれた手紙だった。
お姉さまの字を私が見間違うはずがない。
だってお姉さまの字はとてもきれいで好きだったから。
「正解~。これは紛れもなく、貴方のお姉さまが書いた手紙よ」
ニヤリと笑ったのが気配でわかった。
でも、どうしてシャルロット殿下がお姉さまの書いた手紙を?
まさかお姉さまが彼女と手紙のやり取りをするなんて考えられないし。
困惑する私を前にさらに彼女は楽しそうに笑う。
「ほら、ちゃんと読んで。何が書いてあるのか、貴方の目でちゃあんと確認するのよ」
一体なんだというのだろう。
どうしてこんなにうれしそうなんだろう。
理由はわからなし、知りたくもない。けれど、グイグイと差し出す手紙を拒絶するわけにもいかず彼女から手紙を受け取るとそれに目を通すことにした。
目の前に悪魔が座っている。
上座に座った彼女の近くに、笑顔で歪んだお母さまが座っている。
2人の笑顔はまるで呪詛のように私の心を蝕んでいく。
はやく、早く助けて。
早く帰ってきて、お姉さま。
俯いた目に移ったティーカップの中身は、どす黒く染まった液体が見えた。
まるで私の心の中みたい。
飲み干したら、どこまでいけるのだろう。
「聞いているの? シルビア」
お母さまの強い口調で現実に引き戻された。
「だから、シャルロット殿下を貴方のお部屋に連れて行きなさいと言っているの。シャルロット殿下が直々に貴方のお部屋でお話したいと言っているのよ? ちゃんと話を聞いていなさい」
怒った口調で捲し立てられ、拒否することもできない。
笑みを浮かべたままの女王様が責めれらている私を見て愉悦に浸っている。
ああ、なんて最悪なの。
地獄に心まで落とされた気分だ。
お腹がキリキリと悲鳴を上げ始める。
さっきまで死んでいた癖に、どうして恐怖にはこんなにも弱いのだろう。
自分の事が嫌になる。
「さっ、シャルロット殿下。シルビアの部屋にご案内します」
「あら、夫人直々に案内してくださるなんて。とっても嬉しいですわ」
私が立ち上がるより先に、2人して応接室を後にしてしまう。
今から行く先は私の部屋のはずなのに。
部屋につくと、すでにお茶の用意ができていた。
仕方なく彼女の前に座る。
こういう時に限って、お母さまは私を残してさっさとどこかへ消えてしまった。
1人残された私は、俯いて彼女の言動に答えるしかない。
酷く体調が悪い。
吐いてしまいそうなのを、必死に堪えた。
「貴方のお母さまって、私はすごく好きよ。綺麗で、扱いやすくて、一緒にいてすごく居心地が良いんだもの」
「そう、ですか」
お母さまが侮辱されているのは分かっていた。
けれど私にどうしろっていうの?
彼女の言葉を否定する勇気なんて、私にはない。
私の受け答えが心底つまらなかったのか、シャルロット殿下は退屈そうに髪をいじり始める。
しかし、何かを思いついたように顔を上げると私を見てニヤリと笑った。
彼女の笑顔を見た瞬間、いじめられていた時の感覚がフラッシュバックして私を襲う。
「貴方との会話なんて面白みも何もないから退屈だわ。だからさっさと用事を済ませることにするわね」
シャルロット殿下は立ち上げると、私の隣にまでやってきた。
彼女の行動の先が読めず、近くに来られたことに恐怖を感じ体が硬直する。
バンッ!
目の前で彼女が机を思いきり叩いた音だった。
飛び跳ねた体はそのまま動かなくなってしまう。
「で? 貴方の姉の弱みを教える気になった?」
顔を近づけ覗き込むように私を見つめる。
目を合わせられない。
「……」
「本当に、貴方って聞き分けないのね」
何も口に出せないでいると、呆れたように彼女が呟く。
彼女の言葉に私は勢いよく目を瞑った。
まただ。
また、彼女から魔法をぶつけられる。
詰まらない私にはいつもそうだから。
こうなってしまったら、心を無にして耐え続けるしかない。
私は覚悟してその先の暴力を待った。
しかし、いくら待てど彼女が魔法を発動する気配はない。
様子の違う彼女に違和感を覚え、チラリと顔を上げると視界に彼女の顔が映った。
「――――っ!」
笑っている。
まるで私をいじめて楽しんでいたあの時のように。
どうして?
私はまだ、何もしていないのに。
酷く楽しそうに笑っている。
その狂気が恐ろしくて逃げ出したくなった。
「なら、良い物を見せてあげるわ」
笑ったまま、彼女はどこからかそれを手にした。
「これ、なんだかわかる?」
手にしているのは封筒。
おそらく誰かが人に宛てた手紙だろう。
そんなものをどうして今、私に見せるのだろうか。
「これはね、ある最低な人間がか弱い女性に送った最悪な手紙なの」
説明されてもちっとも理解できない。
こんなものを見せられたところで、私に一体何を?
「読む?」
バッと便箋が眼前に差し出される。
乱暴に握りしめられており、目から近すぎてこれでは読むことができない。
しかし、その文字には見覚えがあった。
「お姉さまの、字?」
それは間違いなく、私の大好きなお姉さまの字で書かれた手紙だった。
お姉さまの字を私が見間違うはずがない。
だってお姉さまの字はとてもきれいで好きだったから。
「正解~。これは紛れもなく、貴方のお姉さまが書いた手紙よ」
ニヤリと笑ったのが気配でわかった。
でも、どうしてシャルロット殿下がお姉さまの書いた手紙を?
まさかお姉さまが彼女と手紙のやり取りをするなんて考えられないし。
困惑する私を前にさらに彼女は楽しそうに笑う。
「ほら、ちゃんと読んで。何が書いてあるのか、貴方の目でちゃあんと確認するのよ」
一体なんだというのだろう。
どうしてこんなにうれしそうなんだろう。
理由はわからなし、知りたくもない。けれど、グイグイと差し出す手紙を拒絶するわけにもいかず彼女から手紙を受け取るとそれに目を通すことにした。
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お楽しみいただけると幸いです。