悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第5章

282.彼女の目論み

彼女の笑顔はまるで悪魔のよう。
たっぷりの悪意を込めて見つめる瞳は酷く嬉しそうだった。

「ごきげんようエスティ嬢。この間ぶりですわね」

シャルロット。
忌々しいこの国の王女殿下。

私の妹を自分の娯楽の為だけにいじめるような最悪な女王様は妹に向けたものと同じものを今度は私に向けている。昔から私とフィーネ様を目の敵にしていたけれど、学院に入るまではその内容は可愛いものだった。

腐ってもクロネテス家の人間なら、彼の子孫なら人道に外れることはしないだろうという謎の信用も無意識にしていたのかも。まさかあそこまで酷い性格になるだなんて。甘やかされた結果なのかしら。でも上の2人はそんな事ないのに、どうしてこの子だけ……。

「あら、ご挨拶も返してくれませんの?」

ぼうっと見つめていたら、目の前の彼女は言葉とは裏腹に気分を害した様子もなく不敵に笑う。
その反応が不気味だった。

こんなに冷静に人をあしらう子ではなかったのに。
1年の間に、いいえ、この半年の間にこの子に何が……。

「そのドレス、とってもお似合いですね。貴方がそうするなら、私も同じようなものを着てくれば良かったですわ。この式を台無しにするぐらい、おしゃれなドレスを」

クスクスと笑う彼女のドレスはヴァリタスやベリエル殿下が身に着けていたものと同じ系統の白を基調としたものだった。恐らく王族は皆、同系統の正装で揃えているのだろう。

普段彼女が参加するときのドレスはもっと派手だった。
そう考えると、今日の彼女は珍しく大人しい恰好で収まっている。
なんだか嫌な感じがする。

「そうだわ、貴方にも紹介しましょう」

体を横に向け、小さく避けると彼女の後ろにいた人物が私の目の前に現れる。
そこで初めて同行者がいることに気が付いた。

髪は真っ黒く長髪で目が細くまるで狐が化けたような男だった。
彼は小さく会釈するとこちらに笑いかける。

「初めまして、王女殿下専属の魔法使いをしております。プレイグと申します」

専属の、魔法使い……?
聞きなれない言葉に首を傾げる。

「私はお兄様方よりも魔法の扱いが上手くなかったので、この春から彼に協力していただいていたのですわ」

横にいたシャルロットが補足する。
そんな弱みを簡単に言ってしまうなんて。
やはりこの子は私の知っている王女殿下ではない。

「先生は本当にすごい魔法使いですのよ。そうですわ! 貴方にもそのすごさ、教えてあげましょう」

腕を掴まれると、強引に引っ張られる。
不意打ちだったため、抵抗することもできずただ彼女に引かれるまま足を動かしていた。

彼女は私を会場の上方、現国王夫妻のいる壇上近くまで導くと会場に向けて振り返る。
ニヤリと笑うと会場全体に向けて口を開いた。

「ごきげんよう、皆さま! 本日は我が兄、ベリエル第1王子の結婚記念パーティにお集まりいただき感謝申し上げます」

一斉に会場にいた全ての人々の視線が私たちに集まった。
大きな声を出していないのに、まるでオペラ歌手のようにシャルロットの声は全体まで行き届いている。

チラリと魔法使いを見ると紫色の魔法陣を発動させていた。
これが彼女の見せたかった魔法なのだろうか。

「祝福に満ち足りたこの時間をお借りして、私から皆さまにお伝えしなければならない事があります」

そういうと彼女は突然私の腕を強く引っ張った。
危うく転びそうになるのを何とか持ちこたえる。
前を向くと大勢の視線が私に集まっている。

その中には困惑したヴァリタスの姿もあった。

「本来であればこのような場でお伝えするべき事ではありません。しかし、この場でお知らせしなければ私はこの国を守ることができない。そう思い、本日この場でお伝えすることにしました」

彼女は私の腕を掴んだまま高く腕を上げると、先ほどよりも声を張り上げこの場にいる全ての人に告げた。

「この者、エスティ・ベルフェリトは私たちに偽りの前世を公言し私たちを騙していた! しかし、この者の本来の前世は――――


彼の悪逆皇帝、リヴェリオ・オルフェリウスである!


憎き皇帝にして200年前我が領土を脅威に陥れた最低最悪の皇帝の生まれ変わりなのです!」

意識が固まる。
全ての時間が止まったかのような静寂が流れた。

茫然と口を開いたまま動けない。

「どういうことだ、シャルロット! このような祝いの場でそのような事を言うとはなんと不謹慎か!」

後ろにいた国王陛下がシャルロットを叱責する。
しかし、いつも平静を保っている国王があからさまに動揺していた。

「申し訳ありません、国王陛下。しかし、私もつい先ほど知りえた情報で、この場で知らせるのが一番の得策だと思ったのです。彼女が悪事を働く前に早く皆様にお伝えせねばと」

落ち着いた様子で淡々と告げるシャルロットに国王は言葉を詰まらせた。
その隣で憂いを帯びた瞳の国王妃がシャルロットを責める。

「貴方の考えはわかったわ。でも、このような場で知らせるような事ではありません。それは貴方もわかっているでしょう?」
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