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第6章
285.牢屋生活
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食べ物に関して過激な表現がありますので、ご注意ください。
***
幻聴から目覚めると、小さな窓から眩しいくらいの日差しが差し込んでいた。
一度不規則に眠ってしまえば、今が何時なのかがわからなくなってしまう。
きっとこれを繰り返す内に、時間の感覚が狂っていくのだろう。
まぁ、そうなる前にここから出られるのでしょうけど。
それがどういう状況かは、私にはわからない。
尋ね人など来るはずもなく、ただ横に寝そべってぼんやりと鉄格子を見つめる。
今更気づいたが、身に着けているものが肌着同然の白いワンピース一枚着ただけの姿になっている。
恐らく世話をしに来たメイドあたりがはぎ取っていったのだろう。
囚人の世話をするメイドがどういう身分なのかは、分かっているつもりだから。
「でも不思議。全然寒くないわ」
声は震えていたが、本当に寒さなど感じていなかった。
「おい、起きろ!」
腹に鈍い痛みを感じ、目を開ける。
いつの間にか意識を失っていたようだ。
少しだけ顔を上げると見下したように私を見つめる騎士の姿があった。
後ろにはメイドが控えているが、こちらも侮蔑の表情を浮かべながらこちらを見つめている。
腕を引かれ、上半身を無理やり起こされると目の前に小さなボールを突きつけられた。
木でできたそれは所々が変色しており、見るからに不潔なことがわかる。
中に入っているスープは完全に冷めているようで薄緑色をしていた。
「ほら、食べなさいよ。あんたが食べないと私たちが怒られるんだから」
メイドはさらにグイッとボウルを近づけると飲めとでもいうように上下させた。
食べたくない。
料理にケチをつけるのは好きではないが、これは見るからに食べられる代物ではない。
元々食欲が無い私にとっては、口を開くことすら嫌だった。
だが、メイドには関係ないのだろう。
徐々にイライラを募らせていたが、それもすぐ我慢の限界が来たのだろう。
「ほら食えよ!」
「いやっ――」
彼女は急に私の頭を鷲掴みにすると、押さえつけるように力を入れる。
その力に抗う事が出来ず、ただ小さく体を揺らすことしかできない。
ボウルを押し当てられ、口と鼻にスープが張り付いた。
何とか口を塞ぎ息を止めていたが、それも数秒しかもたない。
苦しくて口を大きく開けた瞬間、スープがおもいきり口の中へと流れ込んでいった。
「んんっ――」
鼻につく酸っぱい匂いが嫌悪感を加速させる。
舌を刺激するそれは気持ち悪くて喉を搔きむしりたくなるような味がした。
どうやらあの薄緑色はもともとの色ではなかったようだ。
耐えきれず思いきり頭を揺らすとなんとか彼女の手から逃れることができた。
「げほっ、げほっ。……おぇ」
瞬間、床に両手を付き咳き込む。
おそらく気管にでも入ったのだろう。酷い咳が止まらず咳が出るたびに体が上下した。
ある程度咳が止むと、今度はスープへの嫌悪感から胸がむかむかしてくる。
なんとかスープを吐き出そうとしたものの、一度喉元を過ぎてしまったものは二度と口から出てくることはなかった。
「ほら、これも食べろ」
私の咳が止んだのをみて、今度は小さな丸い塊を差し出してきた。
所々青緑に変色している。
おそらく、パンか何かだったのだろう。
それをそのまま口に突っ込まれると、そのまま床に倒れてしまう。
覆いかぶさるように彼女は私の上に乗っかると、嫌悪感を丸出しにした顔で睨みつけていた。
「全く面倒かけさせないでよ! これぐらい我慢して食べろっ!」
もう抵抗する気も失せた私は彼女が押し付けてくる物体をなんとか咀嚼し飲み込む。
味など感じないよう咀嚼したが硬すぎるそれは何度も噛まないと飲み込めないほどで、食べ物とは思えないようなものだった。
「ったく。あんまり面倒かけさせんじゃないわよ」
やっと解放された事に安堵する。
また安心したのか、徐々に彼女たちの顔がぼんやりと滲んでいった。
「あつい……」
目を覚ますと体がだるく、体中が熱くて堪らなかった。
特に胸のあたりが燃えるような感覚に襲われている。
掻きむしるように胸に爪を立てるが力が入っていないためか、少しもマシにならなかった。
口の中の熱を少しでも吐き出そうと呼吸を激しくするが全く改善しない。
苦しい……。
声に出す事も出来ず内に溜まってていく一方でさらに苦しくなっていく。
誰か、誰か助けて――――。
心の中で激しく叫ぶがいくら繰り返したところで誰にも届かない。
苦痛のあまり、目じりから涙が零れ落ちていた。
カシャン。
金属が何かにぶつかったような軽い音がした。
また騎士かメイドが来るのかと思い、体が震え出す。
たかがあれぐらいのことでこんなにも怯えていることに少しだけ驚いた。
「だれ……?」
恐る恐る音の主に呼びかける。
鉄格子の向こうは真っ暗でその先に何がるのかすらわからなかった。
それがより恐怖心を煽っていった。
声を掛けたことを後悔したが、もう遅い。
少しずつ近づいてくる足音が鉄格子の前で止まる。
窓から零れた月明りがぼんやりとその姿を照らしていた。
真っ黒な外套を全身に纏い、フードを目深に被った人物がそこにいた。
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幻聴から目覚めると、小さな窓から眩しいくらいの日差しが差し込んでいた。
一度不規則に眠ってしまえば、今が何時なのかがわからなくなってしまう。
きっとこれを繰り返す内に、時間の感覚が狂っていくのだろう。
まぁ、そうなる前にここから出られるのでしょうけど。
それがどういう状況かは、私にはわからない。
尋ね人など来るはずもなく、ただ横に寝そべってぼんやりと鉄格子を見つめる。
今更気づいたが、身に着けているものが肌着同然の白いワンピース一枚着ただけの姿になっている。
恐らく世話をしに来たメイドあたりがはぎ取っていったのだろう。
囚人の世話をするメイドがどういう身分なのかは、分かっているつもりだから。
「でも不思議。全然寒くないわ」
声は震えていたが、本当に寒さなど感じていなかった。
「おい、起きろ!」
腹に鈍い痛みを感じ、目を開ける。
いつの間にか意識を失っていたようだ。
少しだけ顔を上げると見下したように私を見つめる騎士の姿があった。
後ろにはメイドが控えているが、こちらも侮蔑の表情を浮かべながらこちらを見つめている。
腕を引かれ、上半身を無理やり起こされると目の前に小さなボールを突きつけられた。
木でできたそれは所々が変色しており、見るからに不潔なことがわかる。
中に入っているスープは完全に冷めているようで薄緑色をしていた。
「ほら、食べなさいよ。あんたが食べないと私たちが怒られるんだから」
メイドはさらにグイッとボウルを近づけると飲めとでもいうように上下させた。
食べたくない。
料理にケチをつけるのは好きではないが、これは見るからに食べられる代物ではない。
元々食欲が無い私にとっては、口を開くことすら嫌だった。
だが、メイドには関係ないのだろう。
徐々にイライラを募らせていたが、それもすぐ我慢の限界が来たのだろう。
「ほら食えよ!」
「いやっ――」
彼女は急に私の頭を鷲掴みにすると、押さえつけるように力を入れる。
その力に抗う事が出来ず、ただ小さく体を揺らすことしかできない。
ボウルを押し当てられ、口と鼻にスープが張り付いた。
何とか口を塞ぎ息を止めていたが、それも数秒しかもたない。
苦しくて口を大きく開けた瞬間、スープがおもいきり口の中へと流れ込んでいった。
「んんっ――」
鼻につく酸っぱい匂いが嫌悪感を加速させる。
舌を刺激するそれは気持ち悪くて喉を搔きむしりたくなるような味がした。
どうやらあの薄緑色はもともとの色ではなかったようだ。
耐えきれず思いきり頭を揺らすとなんとか彼女の手から逃れることができた。
「げほっ、げほっ。……おぇ」
瞬間、床に両手を付き咳き込む。
おそらく気管にでも入ったのだろう。酷い咳が止まらず咳が出るたびに体が上下した。
ある程度咳が止むと、今度はスープへの嫌悪感から胸がむかむかしてくる。
なんとかスープを吐き出そうとしたものの、一度喉元を過ぎてしまったものは二度と口から出てくることはなかった。
「ほら、これも食べろ」
私の咳が止んだのをみて、今度は小さな丸い塊を差し出してきた。
所々青緑に変色している。
おそらく、パンか何かだったのだろう。
それをそのまま口に突っ込まれると、そのまま床に倒れてしまう。
覆いかぶさるように彼女は私の上に乗っかると、嫌悪感を丸出しにした顔で睨みつけていた。
「全く面倒かけさせないでよ! これぐらい我慢して食べろっ!」
もう抵抗する気も失せた私は彼女が押し付けてくる物体をなんとか咀嚼し飲み込む。
味など感じないよう咀嚼したが硬すぎるそれは何度も噛まないと飲み込めないほどで、食べ物とは思えないようなものだった。
「ったく。あんまり面倒かけさせんじゃないわよ」
やっと解放された事に安堵する。
また安心したのか、徐々に彼女たちの顔がぼんやりと滲んでいった。
「あつい……」
目を覚ますと体がだるく、体中が熱くて堪らなかった。
特に胸のあたりが燃えるような感覚に襲われている。
掻きむしるように胸に爪を立てるが力が入っていないためか、少しもマシにならなかった。
口の中の熱を少しでも吐き出そうと呼吸を激しくするが全く改善しない。
苦しい……。
声に出す事も出来ず内に溜まってていく一方でさらに苦しくなっていく。
誰か、誰か助けて――――。
心の中で激しく叫ぶがいくら繰り返したところで誰にも届かない。
苦痛のあまり、目じりから涙が零れ落ちていた。
カシャン。
金属が何かにぶつかったような軽い音がした。
また騎士かメイドが来るのかと思い、体が震え出す。
たかがあれぐらいのことでこんなにも怯えていることに少しだけ驚いた。
「だれ……?」
恐る恐る音の主に呼びかける。
鉄格子の向こうは真っ暗でその先に何がるのかすらわからなかった。
それがより恐怖心を煽っていった。
声を掛けたことを後悔したが、もう遅い。
少しずつ近づいてくる足音が鉄格子の前で止まる。
窓から零れた月明りがぼんやりとその姿を照らしていた。
真っ黒な外套を全身に纏い、フードを目深に被った人物がそこにいた。
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