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第6章
294.塔の牢獄
先週は諸事情でお休みしました。
予告なくてすみません。
***
まずは彼女が今どういう状況なのかを把握しなくては。投獄された塔はもう何十年も使われていない建物。あの場所が貴族にとって精神的にも肉体的にもあまり良くない状態であることは明らかだ。
加えて彼女はあまり丈夫ではない。
前世と比べれば物凄くマシにはなっているが、比べる相手があまりにも貧弱すぎるためあまり参考にはならない。
黒龍は別の理由で彼女を心配して早く連れだそうと焦っているようだが、僕にとってもあまり長居してほしくない場所だった。とはいえ、今の彼女は王宮にとって国一と言って良いほどの危険人物。王子が許可を得て会いにいけるような状況ではない。
ならばこっそり会いに行くしかない。
と、考えれば行動できるのは見つかりにくい夜になるだろう。
王宮から離れ、木々に囲まれた場所にあるため見つかりにくいとはいえ王子が抜け出して会いにいっているとバレれば大変なことになる。
ここは慎重に行かなければ。
夜になると早速彼女のいる塔へと足を踏み入れた。
監視がいるだろうと警戒していたが、それらしき人は誰もいない。
サボっているのかもともといないのかわからないが、さすがにこの対応には呆れた。
僕にとっては都合が良いが。
中に入ると円形の部屋にそって丸見えの鉄格子で囲われた牢獄が出迎えている。
真ん中には上に続く螺旋階段があった。
10個ほどの牢獄を見てみるが彼女の姿はない。人の気配はしないし、おそらくここではないのだろう。石で作られた冷たい階段を登っていく。2階、3階と牢獄を見て回るが彼女の姿はやはりない。階数が上がるごとに牢獄の数も少なくなっていった。
最上階の5階に着くと流石に息が上がっている。
そこは階段を上がってすぐに牢獄が見えていた。
恐らくこの階には1つしか牢獄がないのだろう。
その牢獄の中に、彼女はいた。
夜中だからなのか、床に横たわり静かな寝息を立てている。
起こさぬようゆっくりとした足取りで牢獄の前まで近づく。
「! なんでこんな姿に……」
彼女が見に纏っているのは昨日まで着ていたはずのドレスではなく、どう見ても肌着にしか見えない薄汚れた白いワンピースのみ。暑い夏の日ならばそれで十分なのだろうが、今は初冬の肌寒い夜だ。
何十年も昔に使われていたこの牢獄の中では布団さえもない。
冷たいだけの石の床に寝てしまっていては体温は奪われるばかりだろう。
これでは健康な体の人であっても体を壊す。
「せめて何か上に掛けなくては」
上に着ていた薄い外套を脱ぎ、魔法で彼女の上に掛けた。
あまり厚さのない布の為効果はないかもしれないが、無いよりかはマシだろう。
あとは……。
外套を掛ける前に見えた体には、擦り傷と青あざが見えた。酷い怪我は負わされていないようだが、あまり良い扱いを受けていないことは明らかだ。今後それが増えないとも限らない。
「治療魔法なんてあまり使えないけど」
彼女に触れようと手を伸ばす。
しかし、どう体制を変えようとも鉄格子に阻まれる。
何分か格闘していたが、結局触れることは叶わなかった。
起こすわけにもいかず治療は断念する。
一息つき、時間を確認すると私室を出てもう1時間近く経っていた。
夜中とはいえ、定期的に見回りが来るはず。
鉢合わせしてしまえば、二度とここにくることはできなくなってしまうだろう。
「とりあえず、今日のところはこれで帰ろう」
明日また来たときは彼女を起こして治療しよう。
この環境にいてはいつ体を壊してしまうかわからない。
いや、もう壊しているのかも。
嫌な予感を感じながらもその思考を首を横に振って追い出すと、牢獄に背を向けた。
少しだけ後ろ髪を引かれながらも塔を後にする。
明日は元気な姿の彼女を見たい。
そう思いながら。
しかし、その考えがどこまでも甘いものだということを僕は次の日知らされることになる。
予告なくてすみません。
***
まずは彼女が今どういう状況なのかを把握しなくては。投獄された塔はもう何十年も使われていない建物。あの場所が貴族にとって精神的にも肉体的にもあまり良くない状態であることは明らかだ。
加えて彼女はあまり丈夫ではない。
前世と比べれば物凄くマシにはなっているが、比べる相手があまりにも貧弱すぎるためあまり参考にはならない。
黒龍は別の理由で彼女を心配して早く連れだそうと焦っているようだが、僕にとってもあまり長居してほしくない場所だった。とはいえ、今の彼女は王宮にとって国一と言って良いほどの危険人物。王子が許可を得て会いにいけるような状況ではない。
ならばこっそり会いに行くしかない。
と、考えれば行動できるのは見つかりにくい夜になるだろう。
王宮から離れ、木々に囲まれた場所にあるため見つかりにくいとはいえ王子が抜け出して会いにいっているとバレれば大変なことになる。
ここは慎重に行かなければ。
夜になると早速彼女のいる塔へと足を踏み入れた。
監視がいるだろうと警戒していたが、それらしき人は誰もいない。
サボっているのかもともといないのかわからないが、さすがにこの対応には呆れた。
僕にとっては都合が良いが。
中に入ると円形の部屋にそって丸見えの鉄格子で囲われた牢獄が出迎えている。
真ん中には上に続く螺旋階段があった。
10個ほどの牢獄を見てみるが彼女の姿はない。人の気配はしないし、おそらくここではないのだろう。石で作られた冷たい階段を登っていく。2階、3階と牢獄を見て回るが彼女の姿はやはりない。階数が上がるごとに牢獄の数も少なくなっていった。
最上階の5階に着くと流石に息が上がっている。
そこは階段を上がってすぐに牢獄が見えていた。
恐らくこの階には1つしか牢獄がないのだろう。
その牢獄の中に、彼女はいた。
夜中だからなのか、床に横たわり静かな寝息を立てている。
起こさぬようゆっくりとした足取りで牢獄の前まで近づく。
「! なんでこんな姿に……」
彼女が見に纏っているのは昨日まで着ていたはずのドレスではなく、どう見ても肌着にしか見えない薄汚れた白いワンピースのみ。暑い夏の日ならばそれで十分なのだろうが、今は初冬の肌寒い夜だ。
何十年も昔に使われていたこの牢獄の中では布団さえもない。
冷たいだけの石の床に寝てしまっていては体温は奪われるばかりだろう。
これでは健康な体の人であっても体を壊す。
「せめて何か上に掛けなくては」
上に着ていた薄い外套を脱ぎ、魔法で彼女の上に掛けた。
あまり厚さのない布の為効果はないかもしれないが、無いよりかはマシだろう。
あとは……。
外套を掛ける前に見えた体には、擦り傷と青あざが見えた。酷い怪我は負わされていないようだが、あまり良い扱いを受けていないことは明らかだ。今後それが増えないとも限らない。
「治療魔法なんてあまり使えないけど」
彼女に触れようと手を伸ばす。
しかし、どう体制を変えようとも鉄格子に阻まれる。
何分か格闘していたが、結局触れることは叶わなかった。
起こすわけにもいかず治療は断念する。
一息つき、時間を確認すると私室を出てもう1時間近く経っていた。
夜中とはいえ、定期的に見回りが来るはず。
鉢合わせしてしまえば、二度とここにくることはできなくなってしまうだろう。
「とりあえず、今日のところはこれで帰ろう」
明日また来たときは彼女を起こして治療しよう。
この環境にいてはいつ体を壊してしまうかわからない。
いや、もう壊しているのかも。
嫌な予感を感じながらもその思考を首を横に振って追い出すと、牢獄に背を向けた。
少しだけ後ろ髪を引かれながらも塔を後にする。
明日は元気な姿の彼女を見たい。
そう思いながら。
しかし、その考えがどこまでも甘いものだということを僕は次の日知らされることになる。
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お楽しみいただけると幸いです。