悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第6章

302.怒りの魔法使い

驚愕する父とプアドール。
だが両者が僕に向ける感情には大きな違いがあった。

父はただ単に驚きの表情で。
プアドールは憎悪を含ませた表情だった。

悪魔にでも対面したかのようにわなわなと震えている。

「なんて残酷なっ! なぜそこまで無情になれるのですか!」

少しの恐怖と憎しみを持って声を上げるとこちらに襲い掛かろうとした。
だが両脇に構えていた騎士がそれを許さない。

執務室には強力な術がかけれており、この部屋の主である父以外は魔法は使えない。
それは目の前の天才であっても抗えないものだったようだ。

またも捕らえられた彼は暴れることもせずこちらに憎悪を向けていた。
一連の動きに少々動揺したものの、構わず続ける。

「私が彼女の解放を望んでいたのは、この状況があまりにも中途半端だったからです。ただあの場に閉じ込めるだけでは国民の不安を煽るだけでしょう。彼女がどれほど罪深い存在なのか、はっきりと証明し罰を下さなければ」

ニヤリと笑うと父でさえ冷や汗をかいていた。
少し考えこむような仕草をすると、顔を上げ問いかける。

「確かに名案ではあるが……。本当に良いのか? 一応はお前の元婚約者なのだぞ?」
「陛下は私と彼女の間にどんな因縁があるのかご存じでしょう? そんなものの前に元婚約者などという軽薄な関係は無意味です」

はっきりと告げると今度こそ父は黙ってしまった。
しばらくの沈黙が流れた後、期待混じりに問いかけた。

「それはお前の前世の意志でもあるということか?」
「はい」

なぜそんなことを聞くのか良くわからなかったが、間髪入れずに肯定した。
その方が都合が良さそうだと判断したからだ。

変わらない表情の中に僅かな安堵を感じ取り、嫌な気分になった。

「わかった。考えておこう」

ほとんど答えと言ってもよい返事に安心する。

「早めの方が宜しいかと思います。我が国民の平穏のためにも」

それだけ言うと背中を向け、執務室を後にした。
できるだけ早くこの場から立去りたかった。

なんせこの部屋を後にすれば恐ろしいほどの危険に晒される。
人目のある場所まで逃げきれればどうにかなるだろうか。

一歩執務室から出た途端、走りはじめようとした瞬間――。
バチッと強い閃光が目の前で飛び散った。
身を守る体制など取る暇もなかった。

流石に驚き目を見張ると、恨めしそうなプアドールの顔が目の前にある。

酷い痛みを感じるかと身構えたが、一向にその気配はない。
不発……?

どう考えても今の魔法は相当強力なもののはず。
食らっていたらひとたまりもなかっただろう。
だが、有るはずの外傷はどこにもない。

状況が飲み込めず固まっていると恨めしそうな声が廊下に響いた。

「なぜっ、あのような無慈悲な事を思いつくのです! 彼女が何をしたというのですか! もう良いでしょう。彼女は前世で罪を償ったはずです。なのにまだ償えというのですか!」

怒りに任せるように叫ぶと、またしても魔法を発動させる。
彼が眼前に翳した手のひらに美しい魔法陣が現れた。

彼の体の半分以上を飲み込むような大きさの魔法陣で、それだけでどれほど強力な魔法を発動させようとしているのかがわかる。
今度こそやられる!

恐怖から逃げることもできずただそこに立ち尽くすことしかできなかった。

「こんなところで暴れるな」

後ろから聞こえたのは酷く冷たい声だった。
瞬間、プアドールの手のひらに現れていた魔法陣に亀裂が入りバラバラに砕け散る。
散り散りに霧散すると何事もなかったような静寂が訪れた。

振り返るといつものように無表情の黒龍がそこに立っている。

「そんな魔法をここで発動させようとするなよ。今は主様だっているんだ。下手に刺激して何か起こったときお前責任とれるのか?」

いや、少し怒っているかもしれない。
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