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第6章
303.教会と彼
「黒龍様……」
酷く驚いた様子のプアドールの顔には先ほど憎悪を含めた表情をしていたとは思えないほど呆けた顔をしている。だが何かに気づいたように瞬時に顔色を変えると、今度は黒龍まで睨みつけた。
「貴方も彼女を追い詰めるのですか」
どこか呆れたような力の抜けた声だった。
そんな彼を前にしても、黒龍は顔色一つ変えずに……というかまるで興味もなさそうにしていた。
目の前の人が見えていないのかと思うほど彼の姿すら捉えず明後日の方向を向いている。
「この国の人々はおかしい。なぜ力もない少女にそんなに残酷になれるのですか」
嘆く声は廊下に響いている。
ここまで騒げば誰かが駆け付けても良いぐらいなのだが、廊下には人っ子一人いなかった。
執務室から騎士が出てくる様子もない。
人払いでもしているのか。
チラリと黒龍を見てみるが、相変わらずつまらなさそうな様子だった。
「貴方は当時の事を知っているのでしょう? ならわかるはずです。彼が辿った運命を。彼の最期思えばどんな残酷な行為をしていたとしても、罪を償ったと判断するのは当然の事だとは思わないのですか?」
「はぁ?」
プアドールが言葉を切った瞬間、黒龍は苛立ちと共に短い言葉を彼にぶつけた。どう考えても彼の逆鱗に触れる言葉だったのだが、おそらくそんな事は僕ぐらいしかわからないだろう。
現にプアドールは酷く困惑した顔をしていた。
「罪? 罪ってなんだ? 彼の皇帝はどんな罪を犯したっていうんだ? 知ってるなら教えろよ」
一歩一歩、ゆっくりとプアドールに近づいていく。
ここからでは彼の後ろ姿しか見えないため、どんな表情をしているのか伺い知れないがおそらく鬼の形相であるのだろう。プアドールの青い顔がそれを物語っている。見えなくて本当に良かった。
ゆっくり近づき、目の前まで近づくと少し見上げる形で彼の顔を見つめている。
恐怖におののきながらもプアドールは口を開いた。
「い、今はそのような話をしている場合では――」
「そうだな、そんな場合じゃない。でも掘り起こしたのはお前だろ? 何も知らない癖に善人ぶりやがって。だから教会の人間は嫌いなんだ」
話を逸らそうとして明らかに失敗している。
怒りと呆れを含めた恨み事を吐き捨てるとクルリとこちらに振り返った。
そこにはすでに怒りの色は無く、相変わらず冷たい顔のままの彼がそこにいた。
「今回教会が手を出すことは許さない」
「!」
彼の発した言葉に少し驚く。
今回の彼女の状況を考えると、教会の人間に相談するのは得策なはず。
なんせ前世の所為で罪なき少女が捕らえられているのだ。
この状況に手を差し伸べない聖職者などいないだろう。
加えてエヒム教の最高責任者であろう教皇と聖女が彼女を酷く贔屓にしているのだ。
彼らに声を掛ければこの状況は劇的に変わるかもしれない。
まぁ僕にはそんな力もコネもないため彼らに声を掛けるなどできないが。
「お前たちはこの城に何があるのか知らない。下手に動き回られたら迷惑だ。俺がここにいる以上、お前たちがこの城の敷地内に足を踏み入れることはできないからな」
冷たい声は更に彼らとの距離を感じるような気がした。
黒龍も教会も彼女を大事にするのは同じ。
だが黒龍は教会を拒絶する。
遠ざけるように。
嫌悪ほどではないが好意的には見ていないのだろう。
たしかに黒龍が彼女を大事にするのと、聖女が彼女を大事にしているのはどこか違うような気がした。
そう、根本的な部分が違うような……。
まぁ、もしかしたら同族嫌悪的なものなのかもしれない。
そもそも彼が心を開く相手など1人だけだろうからわかりあうことなどないのだろうけど。
「言っておくが、お前も例外じゃないから」
チラリとプアドールを睨みつけると、背を向けてこの場を後にする。
温度など一切ないような冷たすぎる声だった。
酷く驚いた様子のプアドールの顔には先ほど憎悪を含めた表情をしていたとは思えないほど呆けた顔をしている。だが何かに気づいたように瞬時に顔色を変えると、今度は黒龍まで睨みつけた。
「貴方も彼女を追い詰めるのですか」
どこか呆れたような力の抜けた声だった。
そんな彼を前にしても、黒龍は顔色一つ変えずに……というかまるで興味もなさそうにしていた。
目の前の人が見えていないのかと思うほど彼の姿すら捉えず明後日の方向を向いている。
「この国の人々はおかしい。なぜ力もない少女にそんなに残酷になれるのですか」
嘆く声は廊下に響いている。
ここまで騒げば誰かが駆け付けても良いぐらいなのだが、廊下には人っ子一人いなかった。
執務室から騎士が出てくる様子もない。
人払いでもしているのか。
チラリと黒龍を見てみるが、相変わらずつまらなさそうな様子だった。
「貴方は当時の事を知っているのでしょう? ならわかるはずです。彼が辿った運命を。彼の最期思えばどんな残酷な行為をしていたとしても、罪を償ったと判断するのは当然の事だとは思わないのですか?」
「はぁ?」
プアドールが言葉を切った瞬間、黒龍は苛立ちと共に短い言葉を彼にぶつけた。どう考えても彼の逆鱗に触れる言葉だったのだが、おそらくそんな事は僕ぐらいしかわからないだろう。
現にプアドールは酷く困惑した顔をしていた。
「罪? 罪ってなんだ? 彼の皇帝はどんな罪を犯したっていうんだ? 知ってるなら教えろよ」
一歩一歩、ゆっくりとプアドールに近づいていく。
ここからでは彼の後ろ姿しか見えないため、どんな表情をしているのか伺い知れないがおそらく鬼の形相であるのだろう。プアドールの青い顔がそれを物語っている。見えなくて本当に良かった。
ゆっくり近づき、目の前まで近づくと少し見上げる形で彼の顔を見つめている。
恐怖におののきながらもプアドールは口を開いた。
「い、今はそのような話をしている場合では――」
「そうだな、そんな場合じゃない。でも掘り起こしたのはお前だろ? 何も知らない癖に善人ぶりやがって。だから教会の人間は嫌いなんだ」
話を逸らそうとして明らかに失敗している。
怒りと呆れを含めた恨み事を吐き捨てるとクルリとこちらに振り返った。
そこにはすでに怒りの色は無く、相変わらず冷たい顔のままの彼がそこにいた。
「今回教会が手を出すことは許さない」
「!」
彼の発した言葉に少し驚く。
今回の彼女の状況を考えると、教会の人間に相談するのは得策なはず。
なんせ前世の所為で罪なき少女が捕らえられているのだ。
この状況に手を差し伸べない聖職者などいないだろう。
加えてエヒム教の最高責任者であろう教皇と聖女が彼女を酷く贔屓にしているのだ。
彼らに声を掛ければこの状況は劇的に変わるかもしれない。
まぁ僕にはそんな力もコネもないため彼らに声を掛けるなどできないが。
「お前たちはこの城に何があるのか知らない。下手に動き回られたら迷惑だ。俺がここにいる以上、お前たちがこの城の敷地内に足を踏み入れることはできないからな」
冷たい声は更に彼らとの距離を感じるような気がした。
黒龍も教会も彼女を大事にするのは同じ。
だが黒龍は教会を拒絶する。
遠ざけるように。
嫌悪ほどではないが好意的には見ていないのだろう。
たしかに黒龍が彼女を大事にするのと、聖女が彼女を大事にしているのはどこか違うような気がした。
そう、根本的な部分が違うような……。
まぁ、もしかしたら同族嫌悪的なものなのかもしれない。
そもそも彼が心を開く相手など1人だけだろうからわかりあうことなどないのだろうけど。
「言っておくが、お前も例外じゃないから」
チラリとプアドールを睨みつけると、背を向けてこの場を後にする。
温度など一切ないような冷たすぎる声だった。
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お楽しみいただけると幸いです。