悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第6章

309.愛の告白

「大丈夫。例えどんな言葉でも、僕は貴方を信じています」

きっぱりと、とても優しく彼は応えてくれた。
感極まって一瞬にして瞳に涙が溢れ零れていく。
恥ずかしさで俯くとまたしてもヴァリタスは心配そうに声を掛けた。

でもしっかりと言わなくては。
ちゃんと彼の顔を見て、伝えなければ。
例え夢であっても彼に届くように。

勢いよく顔を上げると、不安そうなヴァリタスの顔があった。

「私、私はっ――――。

ヴァリタス様、貴方の事が好きです! 

貴方の優しさも真っ直ぐに私を思ってくれていた姿も。それが私の前世を知らないからこその気持ちだと、分かっていました。私がしたことを思えば、そんな感情を持つこと自体貴方を害するとこだってわかっています。けれどこの想いを止めることはできなかった。あの辛い日常の中で、貴方は私を一番に思っていてくれた。安らぎをくれた。誰にも向けられたことのない思いを私に感じさせてくれた。それがとても愛おしくて、とても嬉しかった……」

嗚咽交じりに声を張り上げる。
しかし最後には振絞ったような声になりちゃんと言葉にできていたかも怪しかった。

夢の中でこんなに喚いていては、現実の私まで可笑しなことを口走っているかもしれない。
だが、心はどこか晴れ晴れとしていた。

言いたかった言葉を言えた喜びが胸いっぱいに広がる。
こんなにも幸せな気持ちになったのは初めてかもしれない。

俯いたまま涙を流し続ける私の手に、ヴァリタスはそっと自分の手を重ねた。
はっとして顔を上げると、相変わらず優し気な笑顔で私を見つめている。

だが、彼の瞳の中にも零れ落ちそうな涙が溜まっていた。

「貴方がそんな風に思っていてくれていたなんて、思いもしませんでした。ずっと恨まれているのだとばかり……」

勢いよく顔を横に振る。
たしかに恨んだことも彼を恐ろしいと思ったこともあった。

けれどそれ以上に私にくれたもののほうがずっと、大事だった。
かけがえのないものだった。

だからこそ、私は彼への思いを諦めることができなかった。

「嬉しい、今まで君がしてくれたものの中で一番嬉しいよ。生きてきた中で一番、幸せだ」

冷たく薄暗い塔の中。
とても酷い扱いを受けて心身ともに疲弊しきっている。

しかし彼の言った言葉は私も確かに感じていたものだった。

「ええ、私もよ」

笑いあう二人の間に、深い因縁などないようだった。
ただ好きあう男女のようで、それが何より私の手に入れたいものだったのかもしれない。

しばらく見つめ合った後、私たちの顔は引き寄せられるように互いを求めあった。
自然と目を瞑ると、頬に鉄格子の感触が伝わる。

そのままじっとしていたが、いくら待てども唇に何かが当たる感触はない。
薄く目を開けると、彼の顔は確かに目の前にあって唇同士は重なっていた。

けれどやはり、唇には何の感触もない。

夢なのだと思い知らされる。
少し寂しさを感じたが、感触を感じないかといってそれがなんだというのだ。
そんなものどうでも良い。

ただ彼と口づけを交わした。
その記憶さえあれば良い。

再度目を瞑り、その幸せを嚙みしめた。

しばらくそうしていたが、さすがにずっとそのままでいるわけにもいかない。
以前とを離すと、私の体は限界を迎えた。

座っているのも辛くなり、その場で床に寝転がる。
またしてもヴァリタスは心配そうな表情になった。

「ありがとうヴァリタス様。貴方とこうして通じ合う幻を見れた。夢でもとても幸せでした」

この夢が覚めれば、私は最期の日を迎える。
最期の最期で見た夢がこんな夢だとは。
私は自分で思っている以上に、彼を好いていたのだろう。

でもきっと、これで未練なくあの世に行ける気がする。

「幻? 夢? 何を言っているのですか?」

彼は突然戸惑い始めた。
それはそうだ。
夢の中の彼がここが夢なのだと理解しているはずもない。

なんだかそれがおかしくて笑いそうになるが、すでに顔は表情を作るほどの元気まで失っていた。

徐々に意識が遠のいていく。
最後に見た彼は酷く焦って、何度も名前を呼んでくれていた――――。
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