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第6章
314.ぶつかり合う親子
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「さぁ、もう良いだろう。証言は全て終わった。そして彼女の悪行は皆も知るところとなった。ならば処罰を下すときだ」
国王陛下はこれ以上聞く必要のないものと判断し、証言の終わりを告げた。
いよいよ、私の罪状が示される。
そして、どんな罰が下されるのかも。
結果がどうであれ、私に明日はない。
たとえこの国が罰してくれなくても、私は……。
瞳を閉じ、国王陛下の声にただ耳を傾けた。
「偽証罪、そして数々の者たちに恐怖と不安を与え、仰いだ。その行為は非常に残酷だ。よって彼女を――」
「待ってください」
皆が待ち望んだその言葉を遮るように、大きな声が場内に響き渡った。
声の主に一斉に視線が集まる。
「ヴァリタス殿下……」
国王陛下の後ろに控え、静かにこの場を見守っていた王子がこちらを見下ろしている。
堂々とした彼とは反対にその場にいる人々は動揺していた。
国王陛下も例外ではない。
振り向き、息子を凝視している。
「どうしたヴァリタス。何か問題があったか?」
この場での一番の被害者であるヴァリタスには、さすがの国王陛下も気を遣っているようだ。
ヴァリタスは国王陛下に視線を向けたが、すぐに前を向くと歩き出した。
国王陛下より少し前まで出てくると、声を張り上げた。
「まずは証言してくれた方々に感謝申し上げます。傷心している者もいたでしょう。辛い経験を思い起こさせてしまった事、お詫びします」
ヴァリタスは少しだけ顔を下げるとすぐに顔を上げた。
だが、誤っているはずなのに彼の顔に感情は感じられない。
少しだけ違和感を覚えた。
「しかし、私には不可解な点があります。彼女は本当に罪人なのでしょうか?」
ヴァリタスの言葉に一瞬場が硬直する。
目を見開き、彼の言葉を疑ったのは私だけではなかった。
一体彼は何を言っているのだろう。
「確かに、彼女がいじめを行ったのは事実です。しかし、先ほど証言してくれた3人の令嬢もそのいじめに加担していました。彼女を罰するのなら、あの3人も罰するべきです。それはベルフェリト公爵にも同じ事が言えるでしょう」
徐々に周りが騒がしくなっていく。
けれど、彼の言っていることに矛盾はなかった。
「ま、待てヴァリタス。それはおかしくはないか」
慌てた様子の国王陛下がヴァリタスの言葉に割って入ってきた。
ヴァリタスは国王陛下に視線を向ける。
その瞳は相変わらず冷ややかで、まるで父に、この国の長に向けるものではない。
「おかしい? どこがです?」
「先ほど証言してくれた令嬢たちも、ベルフェリト公爵もあの者に脅され従わざるを得なかった。ならばあの者を裁くのは当然の事のはずだ」
見物人が国王陛下の言葉に頷いているのを感じる。
主犯を裁くというのは確かに正しい事。
「では証拠は?」
「し、証拠?」
そう、それが真実であるならば。
はじめに私を冷遇したのは父であった。
最後こそ私が指示していたとはいえ、彼女たちがいじめを行ったのは私に関わる前の話。
私が起因となっているのかは判断できない。
否定もできなければ、肯定もできないのだ。
「彼女が彼の悪逆皇帝である証拠は示されています。しかし、それ以外の証言には不確かな事が多すぎる。これでは彼女が悪事を企んでいる証拠にはならないはずです」
しばらく、静寂に包まれる。
誰しもが彼の言葉に反論できなかった。
「勘違いしてほしくはないのですが、私は彼女を庇っているわけではありません。この国は不条理に侵され、苦しんだ先人たちが手に入れた希望の国です。その信念を曲げるような事態を国王が率先して行うことを防ぎたいだけです」
瞬間、キッと鋭い視線がヴァリタスに突き刺さる。
視線の主は彼の隣に立っている国王陛下だった。
「何を言っているのだヴァリタス!」
紅潮した顔に同じく真っ赤に充血した瞳は明らかに興奮してる。
国王陛下が激怒しているのは火を見るよりも明らかだった。
「本当のことではないですか!」
だが、ヴァリタスも引く気はない。
同じように大声をぶつけ、互いに睨みあった。
国王陛下はこれ以上聞く必要のないものと判断し、証言の終わりを告げた。
いよいよ、私の罪状が示される。
そして、どんな罰が下されるのかも。
結果がどうであれ、私に明日はない。
たとえこの国が罰してくれなくても、私は……。
瞳を閉じ、国王陛下の声にただ耳を傾けた。
「偽証罪、そして数々の者たちに恐怖と不安を与え、仰いだ。その行為は非常に残酷だ。よって彼女を――」
「待ってください」
皆が待ち望んだその言葉を遮るように、大きな声が場内に響き渡った。
声の主に一斉に視線が集まる。
「ヴァリタス殿下……」
国王陛下の後ろに控え、静かにこの場を見守っていた王子がこちらを見下ろしている。
堂々とした彼とは反対にその場にいる人々は動揺していた。
国王陛下も例外ではない。
振り向き、息子を凝視している。
「どうしたヴァリタス。何か問題があったか?」
この場での一番の被害者であるヴァリタスには、さすがの国王陛下も気を遣っているようだ。
ヴァリタスは国王陛下に視線を向けたが、すぐに前を向くと歩き出した。
国王陛下より少し前まで出てくると、声を張り上げた。
「まずは証言してくれた方々に感謝申し上げます。傷心している者もいたでしょう。辛い経験を思い起こさせてしまった事、お詫びします」
ヴァリタスは少しだけ顔を下げるとすぐに顔を上げた。
だが、誤っているはずなのに彼の顔に感情は感じられない。
少しだけ違和感を覚えた。
「しかし、私には不可解な点があります。彼女は本当に罪人なのでしょうか?」
ヴァリタスの言葉に一瞬場が硬直する。
目を見開き、彼の言葉を疑ったのは私だけではなかった。
一体彼は何を言っているのだろう。
「確かに、彼女がいじめを行ったのは事実です。しかし、先ほど証言してくれた3人の令嬢もそのいじめに加担していました。彼女を罰するのなら、あの3人も罰するべきです。それはベルフェリト公爵にも同じ事が言えるでしょう」
徐々に周りが騒がしくなっていく。
けれど、彼の言っていることに矛盾はなかった。
「ま、待てヴァリタス。それはおかしくはないか」
慌てた様子の国王陛下がヴァリタスの言葉に割って入ってきた。
ヴァリタスは国王陛下に視線を向ける。
その瞳は相変わらず冷ややかで、まるで父に、この国の長に向けるものではない。
「おかしい? どこがです?」
「先ほど証言してくれた令嬢たちも、ベルフェリト公爵もあの者に脅され従わざるを得なかった。ならばあの者を裁くのは当然の事のはずだ」
見物人が国王陛下の言葉に頷いているのを感じる。
主犯を裁くというのは確かに正しい事。
「では証拠は?」
「し、証拠?」
そう、それが真実であるならば。
はじめに私を冷遇したのは父であった。
最後こそ私が指示していたとはいえ、彼女たちがいじめを行ったのは私に関わる前の話。
私が起因となっているのかは判断できない。
否定もできなければ、肯定もできないのだ。
「彼女が彼の悪逆皇帝である証拠は示されています。しかし、それ以外の証言には不確かな事が多すぎる。これでは彼女が悪事を企んでいる証拠にはならないはずです」
しばらく、静寂に包まれる。
誰しもが彼の言葉に反論できなかった。
「勘違いしてほしくはないのですが、私は彼女を庇っているわけではありません。この国は不条理に侵され、苦しんだ先人たちが手に入れた希望の国です。その信念を曲げるような事態を国王が率先して行うことを防ぎたいだけです」
瞬間、キッと鋭い視線がヴァリタスに突き刺さる。
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「何を言っているのだヴァリタス!」
紅潮した顔に同じく真っ赤に充血した瞳は明らかに興奮してる。
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