発展科学の異端者

ユウ

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3章

37.世界を破滅に導く男

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 世界は、一つの希望、英雄を求めていた。

 こんな化け物たちに支配されるぐらいなら、死を選ぶほどに混沌とした世界で……。

 そんな時に現れた一人の希望が現れた。

「この程度かしら……。なんか期待外れね」
「そうは言うな。これでも、普通の人間だったら、相手にできないレベルだぞ」
「そうなの。このモンスターたち、動きが遅くて、やわらかいよ」
「それは、私たちが強いからさ。さあ、このくだらない戦争を終わらせよう」

 それからは、信じられないほどの一方的な戦争に変わる。

「信じられん。あの化け物を止め切った」
「あり得ませんね。たった二人で……」
「ああ。あれこそが、この世界が今求める、真の英雄だ」

 それは、終わりに向かっていた世界を救う。最後の希望となる。だがそれは、絶望の始まりでもあった。

「うーん。もう終わったね。お父様」
「ああ。手応えが無かったのが、非常に残念だが……。まあ、こんなものか」
「これからどうするの」
「……。世界を見る」
「世界を…見る?」
「ははは……ははっはははは」

 ジンは笑う。それは、次の目的に向けてだった。

 それから時は流れ、2年が経過していた。

「今日もお疲れさまでした」

 そう言われながら、少女は部屋に向かって歩く。

「疲れたか?」
「いいえ。この程度、朝飯前ですよ、お父様」
「そうか。怪我をしないのが一番だからな。明日から私は外国に出向く」
「……分かりました」
「この国を、しばらく頼むぞ」

 少女はそれを聞くと、軽く頷く。そして部屋に入る。

「ふぅ。お腹すいた」
「すぐに料理を、持ってまいります」
「よろしくー」

 この部屋にはメイドの人がいる。それは、この戦力が一般市民に向かない対策でもあった。

 少女は、部屋にある新聞を読み始める。読み続けとある記事で手が止まる。

「ふん。私たちの力がないと生きていけないくせに、こんな記事を書きやがって」

 その記事のタイトルは、『新科学武器の開発に着手 真の平和が自分たちの手で』と書かれていた。

「科学武器の弱点をどうやって、克服するつもりかな」

 そのタイミングと同時に、食事が部屋に運ばれてくる。

「お食事の準備が整いました」
「頂きます」

 少女は急に態度を変える。そして運ばれてきた料理に手を付ける。

 この日、世界は大きく動くこととなる。

「大丈夫でしょうか。こんなことをしても……」
「大丈夫とは何だ。これは世界を守るための法律であるぞ」
「そう言っても、この国も彼らを頼らなければ……」
「失礼するぞ」

 その男は、ノックもなくこの国のトップの部屋に入ってくる。

「なっ。ジン」
「悪いな。急に……」
「何の用だ」
「貴様。ここを誰の部屋だと思っている」

 側近が叫んだ瞬間、側近の首が宙を舞う。

「なっ」
「くそ、汚れたじゃないか」

 そう言いながらジンは、ハンカチで血を拭う。

「なっ、何をしに来た」
「ははっ。決まっているだろう。世界を支配しに来た」
「……っ。なるほどな」
「それに、理由などはいらんだろう」

 ジンはにやりと笑う。ジンは、ゆっくり歩き、この国のトップを殺した。

「ははははっ。世界は、新時代に行く。止めたければ、止めてみせよ」

 その笑いは、世界が壊れる始まりに過ぎなかった。

 それから時は現在に戻る。

「教皇」
「…。うん。なに」
「七星教会が、動き始めました。多分ここを狙ってきています。避難の準備を……」
「……。いや、避難はしないでおこうかな。なんかその方が楽しそうだし」
「で、ですが……」

 部下の男が、否定しに入ろうとした時に、クリスは殺気を部下にぶつける。

 その瞬間に部下の男が、後退りする。続けるように、クリスは口を開いた。

「こっからさ。世界を変える大戦争の幕開けだ」

 クリスが言った言葉は、これから起こる戦争の始まりに過ぎなかった。

 そして場所はルーア国内に戻る。

「社長。化け猫事務所とスターナイト事務所から共同クエストの依頼が来ております」
「共同?そんなにやばいのか?」
「規模としてはどれくらいかは分かりませんが、B級のモンスター災害です」
「B?なら、戦おうとはならないよね」
「……。他の社員に回しておきます」

 須永は諦めたような表情を浮かべて、南城の方に行く。それを零は眺めていた。

「本当に、B級か……」

 それは、B級のモンスターが、危険なことを知っていたとしても参加しようとまではこの時の零は思っていなかった。
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