勇者様とリトの赤魔法ー結ばれた契約ー

ユ性ペン

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リトの赤魔法

吸血鬼との契約

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 重く喉が腫れているような感覚でリトは目を覚ました。そのままゆっくりと上体を起こす。
 場所は気を失う前と変わらず、洞窟のような場所だ。どれくらい気を失っていたわからない。喉は渇き、空腹が襲ってきていた。相変わらず体調も悪い。この手足の枷を外す力もまだ戻っていなかった。
 ミラは、大丈夫だろうか。男が食事に入れてたと言っていたのは睡眠薬だったはずだ。ひとまずその言葉を信じるしかない。

「(それにしてもあの男、いきなり血を飲ませてくるとは……。俺が赤魔法使いだってことを知ってたってことだよな? でも、どこでその情報を……)」

 そんなことを考えていると再び足音が聞こえてきた。例の吸血鬼と思しき男だ。リトをさらった時に生えていた羽は見当たらなかった。あれは自らの血を操って作り出していたものらしい。

「起きていたか。一応自己紹介をしておく。お察しの通り俺は吸血鬼だ。デシルという名はあるが、好きなように呼んでくれ。」

 無表情なままリトに近寄り屈んだかと思うと、コップに入った水と、紙に包まれたパンを目の前に置いた。

「そろそろ腹が減るころだろう。食え。」
「…………」

 いくらお腹が減ってるとはいえ、敵である吸血鬼からもらったものをのこのこと食べる気には流石になれない。リトが無反応であることで警戒していることを察したデシルが声を掛ける。

「別に毒も入れてないし、拒絶反応が起こるような物も入れてないさ。そもそも殺す気ならこんなところまでわざわざ連れてこない。」

 デシルは喋りながら洞窟の壁にある出っ張りに腰掛ける。

「……じゃあ、何が目的なんだ。」
「ようやく口を利いたか。……とりあえずは、お前を手中に収めることだ。お前の力が必要でな。」
「何のために?」
「……復讐さ。」
「誰に?」
「おいおい、質問攻めにするなよ。」
「最初から端的に教えてくれれば、こっちも質問しなくて済むんだけど。」
「お前、自分の立場わかってんのか?」
「ああ、分かってるよ。俺を利用したいんだろ? 価値ある俺に、お前は手出しできない。」
「……生意気なガキだな。」
「そもそも、どこで俺が赤魔法使いだと気付いた?」
「以前から、俺の結晶を壊して回ってた勇者が邪魔でな、マークしてたんだ。そしたらお前が仲間になった。しばらく様子を見てたら赤魔法を知ってるやつならすぐ分かるさ。」
「赤魔法のこと、知ってるのか。」
「吸血鬼の間じゃ、赤魔法使いのことは有名だったからな。」

 今の話を聞くに、邪魔なのはおそらくミラだ。

「(ミラへの復讐に、俺を利用しようってのか……)」
「もういいか? 答えるのも疲れてきた。そのパン、さっさと食ってくれ。じゃあな」

 リトが少し考えている間に、デシルが面倒くさそうに頭を掻きながらそう言い、離れていった。リトは目の前に残されたパンと水を見つめる。やはり腹が減っていた。
 たとえ毒が入っていて、それが自分に効いたとしても、死んだらあいつへ協力しなくて済む、と、思い切って用意されたパンと水を食べた。

 その後も数時間おきにデシルはリトの元を訪れ、少しずつ自らの血をリトに流し込んでいった。リトとしては取り込むこと自体本意ではなかったため、居なくなった隙に吐き出してやろうと思っていた。しかし、デシルは飲み込んだかその都度口を開けて確認させてくるため、飲み込まざるを得なかった。

 回を追うごとに、拒否反応が軽くなっているのがわかる。昼夜を問わず起こされては取り込まされるため、睡眠不足は感じていたが、次第に自身の治癒力が戻ってきているのか、体調の悪さはマシになっていた。

 そして、幾度目かの面会で、デシルがリトの拒否反応がかなり収まっていることに気付き、その効力を確認し始めた。

「そろそろ取り込んだ量が多くなってきたか。右手を上げろ。」

 そうデシルが命じた瞬間、リトの意識とは関係なく右手が掲げられる。

「う、そだろ……」
「仕上がってきたな……体力の消耗も、なさそうだな。」

 確認するように近づいてきたかと思うと、そのままリトに顔を寄せてきた。

「少しだけ、吸わせてくれ。じっとしてろ。」

 そう小さく命じると、デシルはリトの首筋に牙を立てた。命令の効力なのか、リトは抵抗できない。噛みつかれた場所に痛みはなく、むしろくすぐったいような甘い感覚が吸われている所からうなじにかけてぞわぞわと駆け上ってくる。

「……く、っ……何を……?」

 デシルが牙で開けた穴からリトの血を吸い出す。ひとしきり吸血したころ、首筋から口を離した。

「ん……む……。っはァ……。……よし、異常はないな?」

 デシルがリトの顔を見て何かを確認している。

「異常って……?」
「対象が生きている状態で吸血すると、普通吸われた側は死ぬか吸血鬼になっちまうんだよ。だが、赤魔法使いは違う。死にもしないし、吸血鬼にもならない。」
「まじかよ……」
「実際今吸血鬼になってないだろ。ま、当時吸血鬼と赤魔法使いの勢力はあまり良い関係ではなかったからな。実際に試す人はそういなかったよ。……そういえば、あいつなら試していたかもしれないな」

 そこで、デシルが急にあることを思い出したようだ。
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