30 / 43
リトの赤魔法
吸血鬼との契約
しおりを挟む
重く喉が腫れているような感覚でリトは目を覚ました。そのままゆっくりと上体を起こす。
場所は気を失う前と変わらず、洞窟のような場所だ。どれくらい気を失っていたわからない。喉は渇き、空腹が襲ってきていた。相変わらず体調も悪い。この手足の枷を外す力もまだ戻っていなかった。
ミラは、大丈夫だろうか。男が食事に入れてたと言っていたのは睡眠薬だったはずだ。ひとまずその言葉を信じるしかない。
「(それにしてもあの男、いきなり血を飲ませてくるとは……。俺が赤魔法使いだってことを知ってたってことだよな? でも、どこでその情報を……)」
そんなことを考えていると再び足音が聞こえてきた。例の吸血鬼と思しき男だ。リトをさらった時に生えていた羽は見当たらなかった。あれは自らの血を操って作り出していたものらしい。
「起きていたか。一応自己紹介をしておく。お察しの通り俺は吸血鬼だ。デシルという名はあるが、好きなように呼んでくれ。」
無表情なままリトに近寄り屈んだかと思うと、コップに入った水と、紙に包まれたパンを目の前に置いた。
「そろそろ腹が減るころだろう。食え。」
「…………」
いくらお腹が減ってるとはいえ、敵である吸血鬼からもらったものをのこのこと食べる気には流石になれない。リトが無反応であることで警戒していることを察したデシルが声を掛ける。
「別に毒も入れてないし、拒絶反応が起こるような物も入れてないさ。そもそも殺す気ならこんなところまでわざわざ連れてこない。」
デシルは喋りながら洞窟の壁にある出っ張りに腰掛ける。
「……じゃあ、何が目的なんだ。」
「ようやく口を利いたか。……とりあえずは、お前を手中に収めることだ。お前の力が必要でな。」
「何のために?」
「……復讐さ。」
「誰に?」
「おいおい、質問攻めにするなよ。」
「最初から端的に教えてくれれば、こっちも質問しなくて済むんだけど。」
「お前、自分の立場わかってんのか?」
「ああ、分かってるよ。俺を利用したいんだろ? 価値ある俺に、お前は手出しできない。」
「……生意気なガキだな。」
「そもそも、どこで俺が赤魔法使いだと気付いた?」
「以前から、俺の結晶を壊して回ってた勇者が邪魔でな、マークしてたんだ。そしたらお前が仲間になった。しばらく様子を見てたら赤魔法を知ってるやつならすぐ分かるさ。」
「赤魔法のこと、知ってるのか。」
「吸血鬼の間じゃ、赤魔法使いのことは有名だったからな。」
今の話を聞くに、邪魔なのはおそらくミラだ。
「(ミラへの復讐に、俺を利用しようってのか……)」
「もういいか? 答えるのも疲れてきた。そのパン、さっさと食ってくれ。じゃあな」
リトが少し考えている間に、デシルが面倒くさそうに頭を掻きながらそう言い、離れていった。リトは目の前に残されたパンと水を見つめる。やはり腹が減っていた。
たとえ毒が入っていて、それが自分に効いたとしても、死んだらあいつへ協力しなくて済む、と、思い切って用意されたパンと水を食べた。
その後も数時間おきにデシルはリトの元を訪れ、少しずつ自らの血をリトに流し込んでいった。リトとしては取り込むこと自体本意ではなかったため、居なくなった隙に吐き出してやろうと思っていた。しかし、デシルは飲み込んだかその都度口を開けて確認させてくるため、飲み込まざるを得なかった。
回を追うごとに、拒否反応が軽くなっているのがわかる。昼夜を問わず起こされては取り込まされるため、睡眠不足は感じていたが、次第に自身の治癒力が戻ってきているのか、体調の悪さはマシになっていた。
そして、幾度目かの面会で、デシルがリトの拒否反応がかなり収まっていることに気付き、その効力を確認し始めた。
「そろそろ取り込んだ量が多くなってきたか。右手を上げろ。」
そうデシルが命じた瞬間、リトの意識とは関係なく右手が掲げられる。
「う、そだろ……」
「仕上がってきたな……体力の消耗も、なさそうだな。」
確認するように近づいてきたかと思うと、そのままリトに顔を寄せてきた。
「少しだけ、吸わせてくれ。じっとしてろ。」
そう小さく命じると、デシルはリトの首筋に牙を立てた。命令の効力なのか、リトは抵抗できない。噛みつかれた場所に痛みはなく、むしろくすぐったいような甘い感覚が吸われている所からうなじにかけてぞわぞわと駆け上ってくる。
「……く、っ……何を……?」
デシルが牙で開けた穴からリトの血を吸い出す。ひとしきり吸血したころ、首筋から口を離した。
「ん……む……。っはァ……。……よし、異常はないな?」
デシルがリトの顔を見て何かを確認している。
「異常って……?」
「対象が生きている状態で吸血すると、普通吸われた側は死ぬか吸血鬼になっちまうんだよ。だが、赤魔法使いは違う。死にもしないし、吸血鬼にもならない。」
「まじかよ……」
「実際今吸血鬼になってないだろ。ま、当時吸血鬼と赤魔法使いの勢力はあまり良い関係ではなかったからな。実際に試す人はそういなかったよ。……そういえば、あいつなら試していたかもしれないな」
そこで、デシルが急にあることを思い出したようだ。
場所は気を失う前と変わらず、洞窟のような場所だ。どれくらい気を失っていたわからない。喉は渇き、空腹が襲ってきていた。相変わらず体調も悪い。この手足の枷を外す力もまだ戻っていなかった。
ミラは、大丈夫だろうか。男が食事に入れてたと言っていたのは睡眠薬だったはずだ。ひとまずその言葉を信じるしかない。
「(それにしてもあの男、いきなり血を飲ませてくるとは……。俺が赤魔法使いだってことを知ってたってことだよな? でも、どこでその情報を……)」
そんなことを考えていると再び足音が聞こえてきた。例の吸血鬼と思しき男だ。リトをさらった時に生えていた羽は見当たらなかった。あれは自らの血を操って作り出していたものらしい。
「起きていたか。一応自己紹介をしておく。お察しの通り俺は吸血鬼だ。デシルという名はあるが、好きなように呼んでくれ。」
無表情なままリトに近寄り屈んだかと思うと、コップに入った水と、紙に包まれたパンを目の前に置いた。
「そろそろ腹が減るころだろう。食え。」
「…………」
いくらお腹が減ってるとはいえ、敵である吸血鬼からもらったものをのこのこと食べる気には流石になれない。リトが無反応であることで警戒していることを察したデシルが声を掛ける。
「別に毒も入れてないし、拒絶反応が起こるような物も入れてないさ。そもそも殺す気ならこんなところまでわざわざ連れてこない。」
デシルは喋りながら洞窟の壁にある出っ張りに腰掛ける。
「……じゃあ、何が目的なんだ。」
「ようやく口を利いたか。……とりあえずは、お前を手中に収めることだ。お前の力が必要でな。」
「何のために?」
「……復讐さ。」
「誰に?」
「おいおい、質問攻めにするなよ。」
「最初から端的に教えてくれれば、こっちも質問しなくて済むんだけど。」
「お前、自分の立場わかってんのか?」
「ああ、分かってるよ。俺を利用したいんだろ? 価値ある俺に、お前は手出しできない。」
「……生意気なガキだな。」
「そもそも、どこで俺が赤魔法使いだと気付いた?」
「以前から、俺の結晶を壊して回ってた勇者が邪魔でな、マークしてたんだ。そしたらお前が仲間になった。しばらく様子を見てたら赤魔法を知ってるやつならすぐ分かるさ。」
「赤魔法のこと、知ってるのか。」
「吸血鬼の間じゃ、赤魔法使いのことは有名だったからな。」
今の話を聞くに、邪魔なのはおそらくミラだ。
「(ミラへの復讐に、俺を利用しようってのか……)」
「もういいか? 答えるのも疲れてきた。そのパン、さっさと食ってくれ。じゃあな」
リトが少し考えている間に、デシルが面倒くさそうに頭を掻きながらそう言い、離れていった。リトは目の前に残されたパンと水を見つめる。やはり腹が減っていた。
たとえ毒が入っていて、それが自分に効いたとしても、死んだらあいつへ協力しなくて済む、と、思い切って用意されたパンと水を食べた。
その後も数時間おきにデシルはリトの元を訪れ、少しずつ自らの血をリトに流し込んでいった。リトとしては取り込むこと自体本意ではなかったため、居なくなった隙に吐き出してやろうと思っていた。しかし、デシルは飲み込んだかその都度口を開けて確認させてくるため、飲み込まざるを得なかった。
回を追うごとに、拒否反応が軽くなっているのがわかる。昼夜を問わず起こされては取り込まされるため、睡眠不足は感じていたが、次第に自身の治癒力が戻ってきているのか、体調の悪さはマシになっていた。
そして、幾度目かの面会で、デシルがリトの拒否反応がかなり収まっていることに気付き、その効力を確認し始めた。
「そろそろ取り込んだ量が多くなってきたか。右手を上げろ。」
そうデシルが命じた瞬間、リトの意識とは関係なく右手が掲げられる。
「う、そだろ……」
「仕上がってきたな……体力の消耗も、なさそうだな。」
確認するように近づいてきたかと思うと、そのままリトに顔を寄せてきた。
「少しだけ、吸わせてくれ。じっとしてろ。」
そう小さく命じると、デシルはリトの首筋に牙を立てた。命令の効力なのか、リトは抵抗できない。噛みつかれた場所に痛みはなく、むしろくすぐったいような甘い感覚が吸われている所からうなじにかけてぞわぞわと駆け上ってくる。
「……く、っ……何を……?」
デシルが牙で開けた穴からリトの血を吸い出す。ひとしきり吸血したころ、首筋から口を離した。
「ん……む……。っはァ……。……よし、異常はないな?」
デシルがリトの顔を見て何かを確認している。
「異常って……?」
「対象が生きている状態で吸血すると、普通吸われた側は死ぬか吸血鬼になっちまうんだよ。だが、赤魔法使いは違う。死にもしないし、吸血鬼にもならない。」
「まじかよ……」
「実際今吸血鬼になってないだろ。ま、当時吸血鬼と赤魔法使いの勢力はあまり良い関係ではなかったからな。実際に試す人はそういなかったよ。……そういえば、あいつなら試していたかもしれないな」
そこで、デシルが急にあることを思い出したようだ。
0
あなたにおすすめの小説
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話
紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。
理想の彼氏はスパダリよ!
スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。
受:安田陽向
天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。
社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。
社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。
ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。
攻:長船政景
35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。
いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。
妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。
サブキャラ
長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。
抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。
兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。
高田寿也:28歳、美咲の彼氏。
そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。
義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる