実話!親ガチャ大失敗!夜逃げ中に生まれて捨てられ老夫婦に育てられた俺はワンオペ認知症介護で人生詰んでます!転生ざまぁはいつですか!

他山小石

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認知症、ワンオペ、在宅介護編

認知症、ワンオペ、在宅介護編 6話

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 介護殺人してしまった人の証言の中に「母の皮をかぶった化物に見えた」とある。俺も似た感想だった。
 母の人格は死んでしまったと感じていた。

 母に手をあげたことは一度だけあった。
 手元にあった枕、母の足元あたりの位置から勢いよく投げつけてしまった。
 枕は羽毛の入った軽く柔らかいものだったから、ベッドに寝ていた母にはダメージはなかった。
 15歳から介護を覚悟していた。福祉大学を卒業した。そんな男ですら八つ当たりをしてしまう。母の顔付近にあたった枕は、ベッドの向こう側まではねて転がった。
 母はぼけっとしたまま上を向いていた。何が起こったのか理解できなかったようだ。

 紙パンツの中に手を突っ込むのは不快感からだろう。ボリボリとかきむしる。爪の間は、尿を含んだ垢がまじって非常に臭い。 
 これはふいてもどうにもならず、洗うしかなかった。ステンレス製の流し台をベッドサイドに設置して排水はタンクで受ける。園芸用の小型じょうろに温水を入れ洗ってもらった。不潔、不衛生は福祉の敵だ。

 第二次世界大戦中、イギリスのベヴァリッジ報告書というのがあった。福祉の敵は、「貧窮」「疾病」「無知」「不潔」「怠惰」だそうだ。 5大悪という。

「不潔」が病気を招く。
 福祉といえば障害者や高齢者の施策が頭に思い浮かぶ人が多いだろうが、本来は公衆衛生なども福祉の一環だ。
 とにかく清潔にしないと、 体力の低下した高齢者はすぐに病気になる。病気になったら介護サービスも利用できない。本人のためにも家族のためにも、清潔はかかせない。

 本人の認知機能はどんどん低下していく。息子の名前も思い出せない瞬間が出てくる。テレビを見ても意味が分からない。
 ただはっきりしている時もある。そんな時でも、恐竜の特集番組を見て「あんなもんがほんまにおったんか、怖いわ、怖い」と怯えだす。CGが理解できないようだ。

 介護は逆転現象と言うべきものがある。
 足が弱ったので徘徊が少なくなる。家の中で徘徊するも便を漏らし始める。 外に行かない分だけ他人に迷惑をかけない分、心労はマシになる。
 便を漏らすので洗濯が多くなって体力は削られる。家じゅうが汚れるので、別の意味で負担は大きくなる。

 ほぼ寝たきりになって留まってくれている。これで外に迷惑をかけず、汚れる場所は少なくなった。正直、ほっとした。安心してしまった。
 それでも、睡眠時間が削られることになる。
  本人が弱って動けなくなる方が介護としてはマシになる。暴れたり外に飛び出すよりも家の中でいてくれた方が介護はしやすい。
 だからといって本人が弱ることを望んでいるわけではない。複雑な気持ちなのだ。
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