実話!親ガチャ大失敗!夜逃げ中に生まれて捨てられ老夫婦に育てられた俺はワンオペ認知症介護で人生詰んでます!転生ざまぁはいつですか!

他山小石

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認知症、ワンオペ、在宅介護編

認知症、ワンオペ、在宅介護編 20話

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 記憶の中の母を思い出す。

 2020年施設で母の体調を崩した。
 その後、夢を見た。夢の中の母は必死に下着を洗っていた。
 おもらしで汚れたズボンを台所で洗っている夢だった。母はもう寝たきりなのだから歩くことはない。そんな母が夢の中に現れる時は杖も使わず自らの足で立ち歩いていることが多い。「歩いて大丈夫なのか」腰を支えに近づく。夢の中の母に俺の声は届かない。

 俺の中の母は未だに汚した下着を俺に見られたくないころの母なんだ。
 俺の中の生命に刻まれた記憶はなかなか消えてくれない。長い介護生活だった。

  時系列順に書いているが、あえて最後に持ってきた話がある。
 2014年の年始、母に挨拶をした。ウインタミンという薬が効いたのか穏やかな時も多くなっていた。
「今年もよろしく」
「なあ、お金あるか?」
「あるけど、どうした」
「1万円でいいから持ってきて」
 俺は母に手渡した。
「なあ、お前も大きいなって、こんなんもらう年じゃないけど。これで最後やから。お年玉な。受け取ってくれ」

 俺はしばらく硬直した。認知能力が衰え、幻覚やせん妄がおこっていた時期だ。
 まさか息子をいたわる言葉が出るとは思っていなかったのだ。
「ありがとうな」とお年玉をもらった。
 おそらくまともな会話が出来たのはこれが最後だ。
 
 2016年外出許可をもらった。母の車椅子を押して父に会いに行く。これが家族の揃う最後の日となった。
 2018年に父が亡くなったのだ。母には10年以上つきっきりだったのに、父には差し入れを入れる以上のことができなかった。父に対して後ろめたさがあった。母が入所して父にどこか行きたいとこないかと尋ねた。
 1年で数カ所、父の車椅子を押して初詣に行き、観光名所を回った。リクエストは全て回れたが、衰えた父を見て残り時間が少なくなっていくのを感じていた。
 その父ももういない。俺の介護記録が世に出るまで間に合わなかった。

 本来なら2018年までに書き上げていたはずだったのに。メンヘラストーカーくんに時間を奪われていた。 介護が一段落した後につきまとい被害。心身ともに追加で大ダメージだった。
 その間に事故にもあっている。2018年前後に母は完全に入所した。腰も限界だったので温泉にいったのだ。
 温泉そのものは良かった。腰にも良かったんだろう。だいぶ楽になった。帰り道、過積載のトラックにぶつけられてしばらく倒れた。

 本当はすぐに書き始めたかった。生の感情が俺の中で轟いていた時に、心が煮えたぎっている時にかきたかった。強く望んだものほど邪魔が入り、実現しない人生だった。



 


 在宅介護については以上になる。

 くれぐれも伝えたいことがある。俺は人生のあらゆる可能性を捨てて介護に向き合った。だが他の方に同じような生き方を望むわけではない。人生の大半をかけて親の面倒を見た。美談のように受け取る方もいるかもしれない。
 実際はそう美しいものではない。俺はたまたま生き残れたにすぎない。
 倒れるまで介護。こんなの本当は駄目なのだ。介護しているものが倒れたら皆共倒れになる。
 俺は自己犠牲を他人にまでは求めない。どうか、ごく稀な俺のような事例を出して、他人に美談を求めないでほしい。

 残りは、父との思い出、メンヘラストーカー、施設側や世間に対する家族の悲鳴。 
 意味がないと思っていた時間が、誰かに触れることによって意味のある時間となる。
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