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あの人達のあの日あの時。(八百屋のタカシ編)1
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商店街の八百屋の息子っっていうので、子供のころから同級生によく言われていたのは、お前のところで野菜買ってやってんだぞ、っていうひとこと。
正直、気に入らなければよそで買えば?って思うけど、そういう時に親が一生懸命に働いてる姿を見ている俺としては、ありがとうしか選択肢がない。
お前らこそ、八百屋がなければ、いや、それぞれの店がなければどうやって食材を手に入れるんだ?って話なんだけど、そういう頭の悪い連中に割く時間はないので、適当にあしらうのに慣れてきた。
女子までそういう連中の真似をして話しかけてくることも増えたけど、適当にあしらってた。
幼馴染で悪友のマサキ(こいつも実家はおんなじ商店街の魚屋)とつるんでいるうちに、いろんなところから喧嘩吹っ掛けられるようになった。オヤジの方針で男は強くあれという事で、空手や合気道もガキの頃からやらされて、いっぱしの人間には負けない位の強さにはなっていた。
高校の時には学校の頂点を極め、マサキと共にツートップって言われていた。
決して面倒見がいいわけじゃないけど、後輩がほかの学校でトラブル起こしたり、迷惑かけたときはマサキと一緒に出向いて行って始末をつけてきたリ、馬鹿な事やったりして楽しく過ごしていた。結構充実してたよ。イイ女との出会いもあったけど、学校卒業した途端に嫁に行くって反則だよ。
おかげで告ってもないうちに撃沈した。結構自分に自信もあったから、向うから告らせるっていう壮大な計画がパアだ。
あれくらいマジに惚れる女はなかなかいないだろうなって確信はある。離婚するまで待つか?
マサキは、学校卒業近くに母親が入退院を繰り返していてすっかり真面目に家の仕事を手伝うようになっていた。
もともと気の優しい奴だし結構顔も良いからモテてはいたようだけど、家の仕事を優先している内に、女の方が去っていくパターンが多かった。マサキはおばさんの面倒も見ていたからってのもあるけど、そこは自分も入院中のカレシのお母さんを見舞うなり手伝うなりしてアピールするべきだろう?全く、付き合ってるんだから自分を優先して大事にするべきだ、なんておめでたい女が多いのを目の当たりにしてげんなりする。相手に大事にされたきゃ、自分も相手を大事にするっていう基本がわかってないだろう。そういう積み重ねが自分の価値を上げるってことに気づかない女ってマジ馬鹿だなって思うよ。そんで、そんな馬鹿が親友に付きまとうってなんか許せなかった。
マサキの落ち込んだ姿は見てられないから、最初の彼女以降はほどほどでテストして反応を見るようになった。傷は最小限がいいだろう。もう、最初の彼女の時みたいに大打撃を受けて暗い顔をしたマサキを見たくもないし。
ある日、商店街の近くに大型スーパーが進出してくるって噂が聞こえてきた。
確かに遊ばせるには惜しいくらいの土地だ。近いうちにスーパーは出来るだろう。
そして、いつまでも人情に縋っているような経営しかできない商店街の未来はあまり明るいものでもない。
マサキの兄貴は、色んな伝手でネットで名前の知られていない魚を格安で流通させる試みを始めたって言ってた。革新的なアイデアをやってみてダメならまた考えるっていうアイデアマンだ。
漁港にも漁師にもコネがあるからこそ出来る一手だと思う。
商店街、という街を盛り上げるために、なんかいい案ないかなぁって事あるごとにマサキと話をするんだけど、いつも真面目に話をするマサキが、気もそぞろに一点を見ていた。
視線の先には、あのエミさんの家の居候のユキちゃんが居た。
俺の視線に気が付いて慌てて話を戻そうとするけど、マサキがユキちゃんに気があるのは明らかだ。それに、ユキちゃん自身もなんかドンヨリとした空気をまとう女の子だ。何かあってエミさんのところに厄介になっているんだろう。最近でこそ笑顔も見られるようになってきたけど、マサキがすごく気にしていたし、からかってやろうか、とユキちゃんを呼んだ。
単にマサキをおちょくるだけだったので、まさかマジに商店街にとっての革新的なアイデアが出てくるなんて、しかもこんな普通の女の子からって誰も予想できないじゃん。
ユキちゃんのアイデアは、子供をターゲットにしていた。それくらいはゴールデンウィークっていう事を考えたらまぁアリっちゃアリな意見なんだけど、子供に何か体験させることで教育の一環にもなるし、子供の関わったものを親や孫バカの爺さん婆さんが奪い合うように買うってことも、その親やジジババ達が時間をつぶせる場所として普段客の落ち着いている喫茶店や、早めに開けた居酒屋がたいそう潤ったと感謝していた。子供に付随する大人の落とすお金が半端なかった。
なんか、今後の商店街の活路が見えた気がした。
正直、気に入らなければよそで買えば?って思うけど、そういう時に親が一生懸命に働いてる姿を見ている俺としては、ありがとうしか選択肢がない。
お前らこそ、八百屋がなければ、いや、それぞれの店がなければどうやって食材を手に入れるんだ?って話なんだけど、そういう頭の悪い連中に割く時間はないので、適当にあしらうのに慣れてきた。
女子までそういう連中の真似をして話しかけてくることも増えたけど、適当にあしらってた。
幼馴染で悪友のマサキ(こいつも実家はおんなじ商店街の魚屋)とつるんでいるうちに、いろんなところから喧嘩吹っ掛けられるようになった。オヤジの方針で男は強くあれという事で、空手や合気道もガキの頃からやらされて、いっぱしの人間には負けない位の強さにはなっていた。
高校の時には学校の頂点を極め、マサキと共にツートップって言われていた。
決して面倒見がいいわけじゃないけど、後輩がほかの学校でトラブル起こしたり、迷惑かけたときはマサキと一緒に出向いて行って始末をつけてきたリ、馬鹿な事やったりして楽しく過ごしていた。結構充実してたよ。イイ女との出会いもあったけど、学校卒業した途端に嫁に行くって反則だよ。
おかげで告ってもないうちに撃沈した。結構自分に自信もあったから、向うから告らせるっていう壮大な計画がパアだ。
あれくらいマジに惚れる女はなかなかいないだろうなって確信はある。離婚するまで待つか?
マサキは、学校卒業近くに母親が入退院を繰り返していてすっかり真面目に家の仕事を手伝うようになっていた。
もともと気の優しい奴だし結構顔も良いからモテてはいたようだけど、家の仕事を優先している内に、女の方が去っていくパターンが多かった。マサキはおばさんの面倒も見ていたからってのもあるけど、そこは自分も入院中のカレシのお母さんを見舞うなり手伝うなりしてアピールするべきだろう?全く、付き合ってるんだから自分を優先して大事にするべきだ、なんておめでたい女が多いのを目の当たりにしてげんなりする。相手に大事にされたきゃ、自分も相手を大事にするっていう基本がわかってないだろう。そういう積み重ねが自分の価値を上げるってことに気づかない女ってマジ馬鹿だなって思うよ。そんで、そんな馬鹿が親友に付きまとうってなんか許せなかった。
マサキの落ち込んだ姿は見てられないから、最初の彼女以降はほどほどでテストして反応を見るようになった。傷は最小限がいいだろう。もう、最初の彼女の時みたいに大打撃を受けて暗い顔をしたマサキを見たくもないし。
ある日、商店街の近くに大型スーパーが進出してくるって噂が聞こえてきた。
確かに遊ばせるには惜しいくらいの土地だ。近いうちにスーパーは出来るだろう。
そして、いつまでも人情に縋っているような経営しかできない商店街の未来はあまり明るいものでもない。
マサキの兄貴は、色んな伝手でネットで名前の知られていない魚を格安で流通させる試みを始めたって言ってた。革新的なアイデアをやってみてダメならまた考えるっていうアイデアマンだ。
漁港にも漁師にもコネがあるからこそ出来る一手だと思う。
商店街、という街を盛り上げるために、なんかいい案ないかなぁって事あるごとにマサキと話をするんだけど、いつも真面目に話をするマサキが、気もそぞろに一点を見ていた。
視線の先には、あのエミさんの家の居候のユキちゃんが居た。
俺の視線に気が付いて慌てて話を戻そうとするけど、マサキがユキちゃんに気があるのは明らかだ。それに、ユキちゃん自身もなんかドンヨリとした空気をまとう女の子だ。何かあってエミさんのところに厄介になっているんだろう。最近でこそ笑顔も見られるようになってきたけど、マサキがすごく気にしていたし、からかってやろうか、とユキちゃんを呼んだ。
単にマサキをおちょくるだけだったので、まさかマジに商店街にとっての革新的なアイデアが出てくるなんて、しかもこんな普通の女の子からって誰も予想できないじゃん。
ユキちゃんのアイデアは、子供をターゲットにしていた。それくらいはゴールデンウィークっていう事を考えたらまぁアリっちゃアリな意見なんだけど、子供に何か体験させることで教育の一環にもなるし、子供の関わったものを親や孫バカの爺さん婆さんが奪い合うように買うってことも、その親やジジババ達が時間をつぶせる場所として普段客の落ち着いている喫茶店や、早めに開けた居酒屋がたいそう潤ったと感謝していた。子供に付随する大人の落とすお金が半端なかった。
なんか、今後の商店街の活路が見えた気がした。
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