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第一章 チート勇者の存在
2.クロフィア
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「……ユウマ様を殺すなんて、あんた馬鹿じゃないの?」
と、朝から俺の布団を干そうと引っ張っているのは、俺の婚約者に成る、予定かも知れない……いいや、幼馴染……、居候。
もとい、俺の仕事仲間のクロフィアだ。
青髪の長髪で、とても胸が大きく、プリプリした尻が俺の目を惹きつける、俺好みの肉厚な女性だ。
歳は俺の一つ下の23で、5年前から同じギルドの同じ部署に配属されて仲良くなった。
そして一年程前に、宿を追い出されたと言う彼女を俺の家に泊めている、と言った状況だ。
家事・雑用・仕事の依頼の確認などの凡ゆる事をして貰って居るので、俺的にはかなり助かっているパートナーだ。
……だがこの女、一年も一緒に住んでる癖にガードは強固なのだ!
夜にクロフィアの部屋に入ろうと思っても、二重に鍵を掛けられていて手出しが出来ないのだ。
……そんなんだから、いつまで経っても彼氏が出来ないんだぞ!
まぁ、それはもう良い。
「クロフィア、俺は許せないのだ。何の苦労も鍛錬もせずに『チートガチャ』なるもので簡単に勇者の力を得てしてしまうなど、まるで俺の人生全てを否定されているみたいだ。君はこらまでの努力を『運』や『恩恵』の幻などに負けて良いのか?!」
「別に、良いんじゃないの? ユウマ様は事実として私たちよりも強いし、千年以上悩まされて来た魔王の攻撃も難無く防ぎ、バッタバッタ魔物を倒してる。世界が平和に成って、戦う必要が無くなるんなら良いんじゃない?」
「何を言うかクロフィア! 戦いこそ人生だった俺達に取って、それを奪われるのは人生を奪われる事に同じ! 『平和になれば良い』などと腑抜けた事を言いよって!」
と、俺はクロフィアが剥ぎ取ろうとする布団をこちら側へ思い切り引っ張る!
が、奴も奴とて共に戦う戦士だ、相当な力が俺の布団を離さない!
「ギルディア! あんたは平和に成る世を目指して戦ってんでしょ! それなら良いじゃない! 私たちはもう戦う必要は無い! ユウマ様が世界を救うんだから!」
「それが嫌だと言って居るのだクロフィア!」
と、俺は力一杯 布団を引っ張った!
……動物の羽根が部屋の中に舞い散り、俺達は忽ち真っ白な化粧を成した。
クロフィアの顔が歪む。
「……世界を救う、あんたの夢は分かるわよ。でも、勇者になれる席は、この世に一つしかない。それを奪う為に、ユウマ様を殺すなんて。つまり、魔王がしようとしてる事と同じよ? あんたはどう見たって人間、道徳を尽くしてこそ理性を全うできる生物なの。駄々を捏ねる余裕が有るなら、両親の所に行ってあげたら?」
「……世界を救いたいんじゃない。一矢報いたいだけだ、父さんや母さんを殺した魔王軍の奴らにな。敵討ちする筈のこの体で、だ。魔王に一生敵わないとしても、俺は『転生勇者』にだけは魔王を殺して欲しくないんだ。因縁の相手を遊戯感覚で殺されるくらいなら、この世界の住人のみんなで力を合わせて殺したい。それだけなんだ」
俺は破れた布団を抱き締め、人の首を絞める様にギュッと抱き締めた。
俺は、結局の所、平和なんてどうでも良い。
魔王を殺せれば、それで良いのだ。
魔王を殺せれば、俺は死んでも良い。
ただ、俺は魔王を殺す為だけに生きて来たのだから。
「……部屋の羽根、掃除しといてよ。私は洗濯しなきゃだし」
と、クロフィアは踵を返して部屋の外に出て行く。
誰か、俺を救ってくれよ。
俺をもっと強くして欲しい、もっと恩恵が欲しい、もっと悪に染まりたい……!!
強くなれるなら、俺は何だってする。
そう、俺は転生勇者を殺してでも。
『よぉく言ってくれましたよ、ギルディア様!!』
と、脳内に急に響き渡る甲高い声!
「「な、なんだ?!」」
と、クロフィアも振り返って羽毛だらけの部屋を見渡す。
真っ白な風景の中に映し出されたのは更に真っ白な肌を持つ女性で、羽毛を巻き上げながらふわりふわりと舞い降りて来た。
『……その覚悟、しかと受け止めました。ギルディア様、貴方は実に強い魂を持っておられますね、うふふっ』
彼女はそう言い、素足をトンと部屋に着けてにこやかに笑った。
真っ白なワンピースと青い装飾のみを纏った彼女、細い足が艶めいており、潤った美顔をこちらに向ける。
赤い髪は未だにフワフワと浮いて、まるでこの世の物では無い様で、薄っすらと透けている。
透けた赤髪の女性の奥に、驚きの余りに口を大きく開けたクロフィアが見えた。
「もも、もしかして! ふぃ、ふぃふぃ、フィローラ様ぁぁ?! そうですよね?!」
クロフィアは叫び、羽根舞う部屋の中でぴょんぴょんと飛び跳ね回る。
『はい、私の名前はフィローラ。【夜明け】を司る女神・フィローラです』
つづく。
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