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第一章 チート勇者の存在

4.未来

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 ◆◇◆

 風がある。

 気が付くと、俺とクロフィアは真っ黒と真っ赤な荒野の真ん中にポツンと立っていた。
 辺りから漂う焦げ臭い匂いと死体の匂い。
 下を見ると、そこは地獄の底と言うには言葉の表現力が足りぬ程に酷く乾き切っていた。

「ど、何処だ? ってか! 俺の鎧が違うのになってる! どう言う事だ?!」

「わ、私の武器も変わってる! ってか、ギルディア! あんた、いつからレベル100を越えたのよ」

 と、クロフィアは俺の胸元を指差して口を開ける。
 俺は何のこっちゃと自分のステータス欄を開いて、余りの驚きにビュッと口から唾が飛び出る!

「な、な、な何だこれ!」

【ギルディア・セクト・アーカムレス】

 性別:♂
 LV.168
 職業:グラディエーター
 HP(体力):4583
 MP(魔力):842
 ATK(攻撃力):1403
 DEF(守備力):2450
 SPD(脚力):396
 WIS(知力):99
 LUK(運):208

 努力値(MAX10)
 →レベル5上がる毎に★を貰え、振り分けると自分のステータスの基礎上昇率が上げる。特定の条件達成でランダムなステータスに★を得られる事もある。

 HP(体力):★★★★★★★★★★10
 MP(魔力):★★★★★5
 ATK(攻撃力):★★★★★★★★★★10
 DEF(守備力):★★★★★★★★★★10
 SPD(脚力):★★★★★5
 WIS(知力):★★2
 LUK(運):★★★★★★★7

 計 49個(レベル★33個+条件達成★16個)

 特異個性

『オリハルコン装甲』
 一定時間のみ、自分の体を合成金属へと変化させ、圧倒的な防御力を得ることが可能になる。
 特殊な展性効果により素早さを維持する事が可能に成り、形状変化を使い熟せば数倍の脚力を得る事も可能。


 おいおいおい!
 何だってんだ突然、レベル168だと?!

 装備も、これってオリハルコン特注性の奴だ!
 俺がいつか欲しいなぁってカタログで見た超レア物だぞ!

「く、クロフィアのステータスも凄い事に成ってるぞ、よく見てみろ!」

 と、俺もクロフィアのステータス画面を確認する為にスキル『スキャナー』を開く!

【クロフィア・アセルダ・カームロイド】

 性別:♀
 LV.154
 職業:ソーディアン《レベル:テトラ》
 HP(体力):3907
 MP(魔力):2071
 ATK(攻撃力):1279
 DEF(守備力):1468
 SPD(脚力):875
 WIS(知力):1640
 LUK(運):651

 努力値(MAX10)
 →レベル5上がる毎に★を貰え、振り分けると自分のステータスの基礎上昇率が上げる。特定の条件達成でランダムなステータスに★を得られる事もある。

 HP(体力):★★★★★★★★8
 MP(魔力):★★★★★★★★8
 ATK(攻撃力):★★★★★5
 DEF(守備力):★★★★★★★7
 SPD(脚力):★★★★★★★★8
 WIS(知力):★★★★★★★★8
 LUK(運):★★★★4

 計 48個(レベル★30個+条件達成★18個)

 特異個性

『共鳴:大自然効果』
 半径3kmの距離の位置把握が可能になる。
 相手の人数の把握、正確な距離、鼓動の音、重力・風速補正が全て目視で可能になる。
 また、魔法弾・投球などの遠距離射撃の命中率は普通倍率+50%になり、急所命中率が飛距離に関係なく+15%になる。


「う、嘘でしょ! 私の共鳴スキルの倍率が40%も上がってる! てか、急所命中率って何?!」

 クロフィアは自分のステータス画面に大満足しているのか、ぴょんぴょん飛び跳ねている。

 ど、どうなってやがる……。


『……それが、貴方達二人が本来【ユウマ・スノウウィ】に挑む時のステータスですよ』

「はっ!」

 俺は後ろを振り向くと、フィローラ様がにこやかに笑ってこちらを見ていたのだ。
 相変わらず彼女は透けており、まるでゴーストの様だ。

「ゆ、ユウマスノウウィ? 何の話だよ」

『ユウマ・スノウウィ。彼が闇堕ちした際にギルドから討伐命令が出たのです。新型の魔物、【転生魔族】としての異名、それがユウマ・スノウウィです』

「な、闇堕ち?! ギルドからそんな話は一つも聞いてないぞ! しかも、なんでこんなに荒廃してんだよ! 俺達、さっきまで部屋に居たよな?!」


 俺は悪い癖でフィローラ様に質問責めをしてしまったが、こればかりはせざるを得なかった。


『……今居る世界は、紛れも無くアンサルト。でも、もう生きている人間はレベル100以上の頑丈な者だけです。言い遅れました、今は716回の夜明けを迎えた未来の風景です。貴方達は、私の恩恵の力を悪用してしまった勇者・ユウマを倒すべく立ち上がった真の勇者なのですよ』

「716回……、つまり俺達は約二年後の世界を見てるって事か?!」

『そうです。私を殺し、神の恩恵を奪い、毎朝一度のみ訪れる明星の光を躊躇い無く吸収し続けました。その結果、誰にも倒せない化け物へと成長してしまったのです』

「つ、つまり、ユウマは716回もチートガチャを使ったって事だな?! なんてこった!」

 チートガチャとは、一日に一回、ランダムで最高峰のスキルを獲得が出来る破格スキル!
 それを716回も使用したとあれば、それはそれはあり得ないほどの力をユウマは手に入れたのだろう。

「血の匂いが凄すぎる」

 クロフィアは、口を手で押さえ、吐き物をどうにか胃に押し戻す。

 俺は燃え尽きそうな世界を目の当たりにして息が吐けなくなった。
 何も無い、完全に地平線が見える。

 この風景を、あんな芋坊主が作ったってのか?!





「……ギルディア! 3km先から物凄い速さで近付いて来る物体が一つ! な、なにこれ! ステータスが読み込めない!」

 クロフィアはお得意の共鳴スキルで察知したのだろうが、俺にだって或る程度の目視は出来る!
 わ、分かるぞ、あれだけ気配レベルが大きけりゃガキだって理解出来りゃ!


「ま、マジかよ」


 俺は右腕を肩の方に回し、見たことも無い歪な大剣を抜刀する。

 奴だ。


「まだ生きてたの、死んだかと思ってたよ」

 と、目の前に突然手の様な物が見えた!
 俺は声と同時に聞いた風切り音をスキル『感知能力増強』により判断し、すぐに大剣を顔前に構える!

 あ、あんな化け物に俺たちが勝つ!?
 全く想像がつかない、勝てる未来が見えない!
 なんなんだよ、あれは!
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